第102話 魔法講習
そんな訳ないか。そもそもMAGICは英語だし、MUNYOはローマ字表記なだけだからな。異世界なのにアルファベットがあるのも謎といえば謎だが。
まぁ俺が分かり易いように翻訳でもしてるんだろう。
「魔力操作の感覚は分かったな?」
「まぁ、何となくは」
「まぁ、おいおい分かっていけばいい。次は魔法と魔法陣の話に移るぞ」
「はい、よろしくお願いします」
この世界の魔法というのは、基本的に魔法陣とやらで動かすらしい。魔法陣と聞いて俺が想像したのは、地面に丸に五芒星を描くヤツだったけど、微妙に違うらしい。
デザインが違うとか、そういう意味ではなく、魔法陣というより電気回路に近いイメージだった。
魔力で電気回路(魔力回路とでも呼ぶか)を構成して、そこに魔力を通せば魔法が発動する。そんな感じ。
さっき言った地面に描くのは刻印式魔法術と言われ、魔道具の基本になるそうな。
他にも、呪文(声)によって魔力回路を構成して発動する、呪文式魔法術。これは一般的な魔法使いに普及しているやり方らしい。
他にも、指の動き(印)や足捌き(歩法)等動作によって発動する、動作式魔法術とかあるそうだ。
「あれ? でもシャーロットは特に呪文とか使ってなかったよな?」
「要は魔力回路を構成できればいいわけだからな。こうして直接魔力で構成してしまえば、呪文などは必要ない」
そういって手の平に魔法陣が浮かび上がると、そこから水が出てきた。
「つまり呪文や刻印などは、構成を補助する役割ってことか?」
「そういうことだ。理解が速くて助かる」
呪文や刻印は、正しく使えば正しく魔法が発動する。発音のミスや刻印の間違いといった人為的ミスで発動しないことはあっても、きちんと使えれば100%発動する。
だがその補助なしで魔法を使う場合、わずかでも構成を間違えれば発動はしない。
魔法陣の構造が単純な便利魔法でも失敗する時があるのだから、無詠唱のリスクはかなり高いのだろう。
ジョッキやら石飛礫やらをポンポン作ってる奴はこの際気にしないでおこう。まずは呪文式を覚えることからか。
「……灯しぇ」
「違う『灯せ』だ」
早速魔法の実習となった。単純な構成の便利魔法の中でも一番分かり易い『明かり』の魔法だから、覚えるのなんか簡単だと思ってたけど、なかなかどうして。
どうやら言語理解が足りてないのか、呪文の発音が微妙に違うみたいだ。何度やっても上手く発音できない。
発音で躓くとか、英語の授業を思い出す。あの時も巻き舌が出来なくて苦労したんだよな。LとRが強敵だった。
「『灯せ』」
「そうだ、今のは正しく唱えられたな」
巻き舌を意識しながら唱えてみたら、成功したし……あとはこれに魔力を込めればいいのか。
って唱えるときに魔力を込めるってどうやるんだ? 指で押すのとは違うよな?
「『灯せ』」
「『灯せ』」
「『灯せ』」
ダメだな。全然光る様子がない。シャーロット曰く、口の中に魔力を込めるんだってことらしいけど、簡単に言うよな。
口の中にあのムニョっと感を作ればいいのか? グミを噛むイメージで行ってみるか。
「『灯せ』」
光った! 一瞬だったけど光った! 人類にとっては小さな一歩だが、ひとりの人間にとっては偉大な一歩だ!
「やったな」
「あぁ、これで俺も魔法使いだな」
「そ、そうだな」
シャーロットが、便利魔法だけでは……とか呟いてたのは無視する。こまけぇことはいいんだよ!




