第1話 異世界へ
初投稿です
「パイロットか……なりたかったなぁ」
同窓会で見せられた卒アルを思い出し、そう呟きながら玄関の扉を開けたら、そこは雪国だった。いや、違う。そこは真っ白な世界だった。
えっ!? と思い振り返ったが、入って来た筈のアパートの扉が無くなっている。思考がついていかず混乱していると、背後から声がかかる。
「次の方、どうぞ」
見れば中年ぐらいの男性が事務机で書類を書き終え、ひとしきり眺めた後『処理済み』とかかれた箱に入れていた。
「あれ? あなた召喚されてませんよね? 巻き込まれたのとも違うようだし。おかしいな……」
そう言って男はタブレットらしき板を操作しだす。が、1分もしないうちにそれを叩き付ける。
「がー! 勝手に最新型だかにしやがって、余計使いにくいわ!」
(あー、あるよね。計算ソフトとか、今までのデザインからガラッと変えられて、使い勝手が悪くなる事)
「まぁいいや。ここに来た時点で向こうに行くことは確定なんだし、さっさと処理するか」
何やら不穏なセリフを吐きつつ男が話しかけてきた。
「えーこちらは『異世界アルカナ』行きの受付窓口です」
(有るのか無いのかはっきりしろよ)
「『異世界アルカナ』は地球でいうところの中世レベルの文明を持つ世界ですが、剣と魔法のファンタジーっぽいところです」
(っぽいってなんだよ)
「当窓口で魂レベルに応じたスキルを取得したうえで『アルカナ』へ転移していただきます。なお転移は強制であり、キャンセルはできません。
ただあなたの場合、召喚などによるブーストがないので素の魂レベルでの査定となります」
男の説明によると、召喚や巻き込まれなど『アルカナ』側の都合の為、魂レベルに下駄を履かせて所謂無双系のチートスキルとやらが手に入るらしい。
だが俺のように、ただ単に紛れ込んだ為そういったスキルは望めない。(一応言語スキルはサービスで付くとのこと)
それでも俺の魂レベルとやらはそこそこ高かったらしく、上位のスキルがもらえるみたいでちょっとラッキー。
選択可能なスキルリストを眺めていると「戦闘系」「魔法系」「特殊系」と分かれており、それぞれ「片手剣・中級」だの「火魔法・初級」だのと並んでいる。
その中で目に付いたのは「召喚魔法・無」。無生物を一つだけ召喚できるスキルらしい。普通はゴーレムとかを選択するのだが、過去には家を召喚したツワモノもいたそうだ。
(家がアリならあれもできるのかな?)
そう思い尋ねてみると、出来るか出来ないかでいえば楽勝! だが、その場合ほかのスキルや肉体強化系は付けられない。
(楽勝! なのか? それ)
だが、同窓会帰りの酔った勢いで後先考えず俺は宣言した。
「先生! 飛空艇のパイロットになりたいです!」
「私はあなたの先生じゃありません」
こうして俺、宮園翔太(みやぞのしょうた)は異世界アルカナに転移したのだった。
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小学校の卒アルによれば、俺は将来パイロットになりたかったらしい。
だが、小さい頃の夢を叶えられる奴なんて多くはいない。
俺の知ってる奴等の中じゃ、漫画の主人公位じゃないかな。
当然俺もフツーに学校行って、フツーに就職し、日々の仕事に追われる
ユメもキボーもないフツーのサラリーマンになった。
しかも縁がなかったのか、未だ彼女無しの独身貴族ってやつだ。
そんな俺が小学校の同窓会帰りに異世界に紛れ込むとかすれば、正直ヒャッハー! な気分にもなるだろう。
なってしまったら昔の夢も追いかけたくなるじゃないか。
だから俺は手に入れたスキル『飛空艇召喚』でこの世界を生きていこうと思う。