強襲と事実
更新しますね!
因みに。
本来、ブル・ラングは森の生き物ではない。
迷宮などの場所で、数体が集まって過ごしており、ダンジョンの中ボス的な存在である。
つまり、この森の中にあるダンジョンから、何らかの原因でブル・ラングが這い出てきたということである。
ということは、新手の敵が出てくる可能性があるということだが、それ以上に――――
「発見。右は私が押さえます」
「了解。左を狙う」
その生き物を、より強い力で追い出した輩がいるということなのである。
ソフィアとユキの頭上の木の枝に、二つの人影があった。
ソフィアの耳がぴくっと動き、それと同時に右手が短剣の柄を持つ。
ユキもまた、手のひらに魔方陣を展開させた。
「『弧・エクスプローション』!!」
「防御、『盤輪の舞踏』」
「捕縛、『魂盗みの亡霊』」
「『ムーンサルト』ッ!!」
ユキの魔法が、大きく弧を描いて真上から敵に迫る。
しかしその軌道を知っていたのか、敵の頭上に機械的な時計の部品が姿を現し、触れた瞬間起爆したユキの魔法を防ぎ切った。
それと同時に、もう一人の敵が発動した魔法により、半分骸骨になった死体が現れる。
亡霊もろとも術者を切り裂こうとしたソフィアの攻撃は、しかし亡霊をすり抜け、さらに術者の直前まで立っていた枝を切り裂くにとどまった。
因みに、ムーンサルトは適当につけた技名である。
瞬時に着地し、さらに後ろへ飛び下がったソフィアに、亡霊を出した方のローブが問いかける。
「停止、我々には貴方への敵意はありません」
「ならなぜ攻撃したっ!」
敵意をあらわにして怒鳴るソフィアに、もう片方のローブが答える。
「解答、我々の目標は、貴方の隣にいるホルムンクルスだけ」
「肯定、貴方には興味はありません」
隣と言われて、ユキを見る。
その顔が蒼白になっていることに気づき、一瞬戸惑った。
「ホルムンクルス?ユキが?」
「肯定。我々と同じホルムンクルスです」
あっさりと返されて、しかし、怯えたユキの顔を見たソフィアは答えた。
「ユキがどうであれ、貴方たちがやろうとしている事は誘拐。つまりは犯罪。悪、即、断!!」
一瞬剣による攻撃の意志を見せ、左手に隠していた魔方陣十個をばらまく。
「『スタングレネード』!」
それぞれが、強烈な光を発し音を響かせることで感覚を破壊する魔法であり、さしものローブにも隙ができた。
「ていっ!!」
そして亡霊を出しっぱなしにしているほうのローブの頬を切り裂いた。
さらに追撃しようと振り向き、しかし猛烈に嫌な予感がした瞬間には、もう遅かった。
「うあああぁぁぁ!!」
森に、ソフィアの悲鳴が響いた。
亡霊が、右腕を掴んでいるのだ。
そこから寒気とも恐怖ともつかぬ感覚が、徐々に心臓に向かって這い上がってくる。
これが心臓に至れば致命傷になると、そう直感したソフィアは、
「……仕方ないか」
「質問。それは諦めたという意味で……っ!?」
「ぐううぅぅううああ!!」
右腕を切り落とした。
初めて動揺を見せたローブだったが、それに気づく暇もない。
生まれて初めての、四肢を失った痛みが、ソフィアを襲っていた。
「質問。貴方に、そこまでしてこれを守る意味があるのでしょうか」
「これとか言っている間は、絶対に分からないっ!!」
ローブは首をかしげ、しかし、痛みに苦しむソフィアを気にせず、震えているユキに近づく。
「提案。貴方が我々と来れば、彼女を殺さないでおきます」
ユキは一瞬抵抗するような素振りを見せたが、しかしローブ側がソフィアの命を握っていることを明確に示され、諦めたように答えようとし、
「……分かりま……」
「へ?何を言ってるの?私を殺すと?」
瞬間、ローブが激しく動揺した。
それこそ、ソフィアが腕を切り落とした時以上に。
「『主神を殺した狼の咢は死を意味する』」
全く無表情のソフィアが、詠唱を終えた瞬間。
頬を切り裂かれたローブが。
透明な何かに喰われた。
今回の話の伏線(?)はしっかりと回収します!!




