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名も無き世界 異世界編  作者: 有加田 慧条
奪われるという事
23/26

強襲と事実

更新しますね!



因みに。

本来、ブル・ラングは森の生き物ではない。

迷宮などの場所で、数体が集まって過ごしており、ダンジョンの中ボス的な存在である。

つまり、この森の中にあるダンジョンから、何らかの原因でブル・ラングが這い出てきたということである。

ということは、新手の敵が出てくる可能性があるということだが、それ以上に――――


「発見。右は私が押さえます」

「了解。左を狙う」


その生き物を、より強い力で追い出した輩がいるということなのである。


ソフィアとユキの頭上の木の枝に、二つの人影があった。


ソフィアの耳がぴくっと動き、それと同時に右手が短剣の柄を持つ。

ユキもまた、手のひらに魔方陣を展開させた。


「『(ルーク)・エクスプローション』!!」

「防御、『(ばん)(りん)の舞踏』」

「捕縛、『魂盗みの亡霊(ソウルスナッチャー)』」

「『ムーンサルト』ッ!!」


ユキの魔法が、大きく弧を描いて真上から敵に迫る。

しかしその軌道を知っていたのか、敵の頭上に機械的な時計の部品が姿を現し、触れた瞬間起爆したユキの魔法を防ぎ切った。

それと同時に、もう一人の敵が発動した魔法により、半分骸骨になった死体が現れる。

亡霊もろとも術者を切り裂こうとしたソフィアの攻撃は、しかし亡霊をすり抜け、さらに術者の直前まで立っていた枝を切り裂くにとどまった。

因みに、ムーンサルトは適当につけた技名である。


瞬時に着地し、さらに後ろへ飛び下がったソフィアに、亡霊を出した方のローブが問いかける。


「停止、我々には貴方への敵意はありません」

「ならなぜ攻撃したっ!」


敵意をあらわにして怒鳴るソフィアに、もう片方のローブが答える。


「解答、我々の目標は、貴方の隣にいるホルムンクルスだけ」

「肯定、貴方には興味はありません」


隣と言われて、ユキを見る。

その顔が蒼白になっていることに気づき、一瞬戸惑った。


「ホルムンクルス?ユキが?」

「肯定。我々と同じホルムンクルスです」


あっさりと返されて、しかし、怯えたユキの顔を見たソフィアは答えた。


「ユキがどうであれ、貴方たちがやろうとしている事は誘拐。つまりは犯罪。悪、即、断!!」


一瞬剣による攻撃の意志を見せ、左手に隠していた魔方陣十個をばらまく。


「『スタングレネード』!」


それぞれが、強烈な光を発し音を響かせることで感覚を破壊する魔法であり、さしものローブにも隙ができた。


「ていっ!!」


そして亡霊を出しっぱなしにしているほうのローブの頬を切り裂いた。

さらに追撃しようと振り向き、しかし猛烈に嫌な予感がした瞬間には、もう遅かった。


「うあああぁぁぁ!!」


森に、ソフィアの悲鳴が響いた。


亡霊が、右腕を掴んでいるのだ。

そこから寒気とも恐怖ともつかぬ感覚が、徐々に心臓に向かって這い上がってくる。

これが心臓に至れば致命傷になると、そう直感したソフィアは、


「……仕方ないか」

「質問。それは諦めたという意味で……っ!?」

「ぐううぅぅううああ!!」


右腕を切り落とした。


初めて動揺を見せたローブだったが、それに気づく暇もない。

生まれて初めての、四肢を失った痛みが、ソフィアを襲っていた。


「質問。貴方に、そこまでしてこれを守る意味があるのでしょうか」

「これとか言っている間は、絶対に分からないっ!!」


ローブは首をかしげ、しかし、痛みに苦しむソフィアを気にせず、震えているユキに近づく。


「提案。貴方が我々と来れば、彼女を殺さないでおきます」


ユキは一瞬抵抗するような素振りを見せたが、しかしローブ側がソフィアの命を握っていることを明確に示され、諦めたように答えようとし、


「……分かりま……」

「へ?何を言ってるの?私を殺すと?」


瞬間、ローブが激しく動揺した。

それこそ、ソフィアが腕を切り落とした時以上に。


「『主神を殺した狼の咢は死を意味する』」


全く無表情のソフィアが、詠唱を終えた瞬間。

頬を切り裂かれたローブが。

透明な何かに喰われた。

今回の話の伏線(?)はしっかりと回収します!!

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