ブル・ラング
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『アラトゥー』に到着したソフィアたちは、その後すぐにブル・ラングの討伐に向かった。
昼ごろについたため、速めに森に入り、ブル・ラングの居場所を確認しておこうとしたからだ。
うっそうと茂るほど、ではない森の中、二人は森の中を見て回っていた。
「それにしても、さっきから野生の生き物に遭遇しないわね」
「そうだね、ここまで王都に近い村なら、危険な生き物の駆除も定期的に行っているからね」
「へぇ、そうなんだ」
軽い会話をつづけながら、踏みつぶされた下草や削られた後のある木を探す。
ブル・ラングの習性として、木に自分の角をこすり付けるからである。
少しして、ソフィアが感覚強化の力で、大きく抉られた木を見つけ出した。
しかし、抉られた箇所が、明らかに高すぎる。
「あれって、明らかに三メートルはあるね……」
「ってことは、身長三メートルはあるってことね……」
ソフィアたちは、流石にここまでデカいものを討伐に来ているとは思っていなかった。
ギルド職員たちは、自分たちを幾らなんでも買いかぶりすぎだと思う。
心底そう思った。
その直後、ソフィアの耳に、バキバキと言う音が聞こえた。
明らかに、大きい生き物が木々をへし折っている音だ。
風下から聞こえるが、どうもその音は、デカい生き物が標的に接近するために走っているもののように聞こえる。
「えーっと、何か大きいのが近づいてくる音がするんだけど……」
「ここじゃ危ない、すぐに移動しよう」
意外と冷静なユキの声に、ソフィアは動き出す。
恐らく、この世界では大体の人間が戦闘慣れしているのだろうと考えた。
木々の間から見える茶色毛から逃げるために、少し前に見た広場のような場所へ移動する二人。
しかし、追われるということは戦うことよりも精神を消耗する。
「痛っ……こけてたまるかっ!!」
「フィアちゃん大丈夫!?」
木の根に足を引っ掛けこけるというテンプレを、気合で回避するソフィア。
ペースを落とさずに走り続けるが、後ろの毛むくじゃらな塊を突き放せた様子はない。
さらに、なかなか広場が見えない。
「方向間違ったかもしれないわ!」
「そんなことはないよ」
やけに自信のこもったユキの声に従い、そのまままっすぐ走り続ける。
果たして、広場に出ることが出来た。
直径二十メートルほどの、それなりに広い場所だ。端の方には、誰かが置いたままなのか木箱があった。
これで、敵の振り回す武器を見落とす可能性も、魔法が木にあたる心配もない。
ブル・ラングが飛び出てきた瞬間、魔法による多重掃射をすると決断する。
魔法特化のユキほどでなくとも、魔法術を取得しているソフィアにも、軽い魔法の使用は可能だ。
「『ファイアーブラスト』!」
「『マジックキャスティングショット』!」
『ファイアーブラスト』は、炎を数メートル噴射する、危険極まりない技である。
『ファイアー』という簡単な魔法の強化版であるが、ブラストは単純に撃てば家数軒を丸焼きにすることもできる。炎を扱う魔法の中でも、かなり強力な魔法の一つである。
『マジックキャスティングショット』は、魔法の仕組みを知ったソフィアが勝手に作ったもので、散弾として撃ち出された魔法の弾が、敵にあたってから一秒後に、体内で凝固する。
これによって動けば激痛、そうでなくとも体内に自分以外の魔力が存在する場合、魔法の発動がとても難しくなる。
純粋にえげつない魔法である。
魔法とは、魔方陣を展開しそれに魔法力を通すことによって、書いた魔法そのものが発動する物である。
幾つかの系統に分かれているものの、この世界において魔法を使おうとするのなら、魔方陣を魔力で描き出すか、或いはそもそも書いてあるものに魔力を通す。
一応魔法語と言うものもあるが、あまり効率は良くない。詳細を自由に調整できることが利点ではあるが。
『マジックキャスティングショット』は、魔方陣へ魔力を流し込むことを阻害するのだ。
ブル・ラングがその巨躯を現した瞬間、ドドドッという音とともに『マジックキャスティングショット』が体内に打ち込まれ、さらに『ファイアーブラスト』で主に上半身を火であぶられた。
しかし、まるであまり気にすることではないとでも言うかのように、全身を震わせて炎を吹き払う。
その姿はミノタウロスの三メートルバージョンで、薄紫の火を口から漏らし、大きな角が頭の左右から伸びている。
全身が茶色の体毛で覆われ、目は赤く光り、胸の部分では魔法陣らしきものが薄紫に輝いている。
右手には、一体どこから引っこ抜いてきたのか、木でできた棍棒があり、今日の昼食の跡なのか、真っ赤な血が付着している。
「グオオオオ!!」
ドンッという音とともに、棍棒を地面にたたきつける。一種の威嚇行為だ。
しかし一瞬体が浮き上がったと思う隙もなく、ソフィアは抜刀し、ユキは魔法を連射する。
ソフィアはブル・ラングに一瞬で近づき、剛毛で覆われた胸が見えるところまで飛び跳ねる。
更にそこを踏み台にして、顔の前まで飛び跳ねる。
幾つかのスキル補正のおかげで、全く体の軸を揺らすことなく剣戟を放ち、目玉をつぶそうとするが、ブル・ラングの胸が輝いたかと思うと大きく口を開いた。
紫色の炎の弾が、先ほどのユキの『ファイアーブラスト』に負けるとも劣らない威力で放たれる。
しかし、ソフィアは既に、射線上から脱出していた。
ブレスを事前に察知したソフィアが、『三次元立体移動』スキルの効果である、魔力を放出して空を移動するという方法でそこから逃げていたからだ。
大まかな原理としては、エネルギーを噴射して空中を移動するロケットなどと同じである。
「せいっ!!」
真上へ移動したソフィアから鋭い声が放たれ、短刀がブル・ラングの頭へ吸い込まれていく。
それと同時に、ユキが大きな魔法を発動した。
「『串刺しにせよ』」
魔法語で放たれたであろうその魔法は、ブル・ラングが薙ぎ払った木々に対して効果を発した。
瞬時に木が腹を貫き、同時に短刀が頭に突き刺さった。
「グロルルルゥ……」
しかし、木はすぐに焼き切れ、短刀が持ってはいられない程に熱くなった。
突き技の弱点は敵から武器を抜きにくくなることで、それを十分に理解していたソフィアは、魔力を短刀の先から放出、同時に離脱する。
「くっ……!」
「ルボオオォォォ!!」
雄たけびを上げ、血を吐きながらも、棍棒をソフィアへと叩きつける。
咄嗟に右腕を突き出し、魔力を放出して棍棒の軌道から逃れようとするが、
「『ファイアーブラスト』ッ!」
しかし、ユキの魔法が顔面に向かって炸裂し、今度こそ致命傷になったのかそのまま倒れ込んだ。
「けほっ……」
「フィアちゃん大丈夫!?」
「うん、大丈夫。『マジックキャスティングショット』には改良の余地がありそうね」
「ううん、流石にあれ以上は改良できないはずだよ。あれほどの魔法を一人で作るなんて、独創的すぎだよ……」
「……うーむ……」
ユキの耳に入らない程にソフィアは考え込んでいたが、突然叫ぶ。
「そうだっ!早速剥ぎ取らなきゃ!」
ユキは、ソフィアが何を考えているのかよく分からないとばかりに頭を振った。
やっぱり文字数少ないですね。
一週間で三千文字を超えたいのですが、なにぶんパソコンが一日に三十分も使えないもので……。




