そして、主人公
更新しますが、文字数が少なすぎますね……。
「少なくとも、契約術式がこの山賊のものではない以上、外部の誰かが提供したのが正しいだろうな」
「B級は国の戦力として使えるほどじゃからな。それに、二席殿が捕えられていた以上、敵国である王国がかかわっているのは間違いないじゃろう」
「これで戦争するには十分な材料になるだろうな」
「まだ、挑むわけにはいかんのじゃがな。早まった真似はするでないぞ?」
「分かってるって、心配すんな。ところで、俺らの姫様はどこに行ったんだ?」
「中庭でおぬしが返ってくるのを待っておる。はぁ、こんな輩のどこがいいのやら……」
「おい、聞こえてんぞ?俺だって分かってねえんだし、おいおいどうにかしていくしかないだろ」
長くかわされた会話の後、彼は魔法を切った。
それと同時に、頭達が光に包まれ、一瞬光ったのちに消えた。
「お前の主さんは、一応こっちの国で保護してあるんだとよ。戦力はきちんと揃えてあるし、俺があやしい輩は粛清したから裏切りはあり得ない。そこは安心していいぞ」
「本当に、かたじけのうござる」
「いいって、気にすんな」
他の人物ならともかく、『雷剣』が粛清を行ったのなら、完全に裏切りの芽は消えたと言ってもいいだろう。
『雷剣』は、戦闘だけでなく情報収集能力にもたけており、そもそもの本業は暗殺だというのだから恐ろしい。
さらに言えば、先ほど発動した転移術式もかなりのものだった。
まともな魔術師では、発動することすらも出来ないほどの魔力が要求される。
連絡していた相手が発動した魔術のようだが、そんなことが出来るのは大陸にも数える程度しかいないだろう。
「これから、俺たちは徒歩で国まで帰る。安全なルートを通りたいし、途中で情報収集もするから、数日かかる。食料を揃えるためにいったん最寄りの『アラトゥー』の町に寄るぞ」
「わかっ……。む?」
鉱山の奥から、何かが走ってくる音がする。
そちらに向き直った『雷剣』が、魔力らしきものを放出する。
「小さいな、少女だ。剣を持ってる。魔力もそれなりにありそうだ。魔人とかじゃなくて人間だな」
「なぜそこまでわかるのだ?」
「足音と魔力ソーナー」
「足音ならわかるのだが、魔力ソーナーとはなんでござるか?」
「えーっとだな、魔力を薄く、規則的に放出するんだ。そうするといくらかが魔力に反応して返ってくるから、相手がどれくらい魔力を持っているのかがわかる代わりに、使ったのがばれる」
「よくそんな魔法を作ったのだな……」
そう話している間にも、足音は少しずつ大きくなる。
「おい!そこで止まれ!」
『雷剣』が叫ぶが、足音は止まらない。
「『牽制:雷鎚』」
牽制用の魔術を『雷剣』が撃ち込んだ。
それは誰も傷つけるようなものではなく、一般人にあたってもせいぜいピリッと来る程度のなのが、二席には分かった。
瞬時に展開、発動した魔術陣から、鎖をつけた鎚が飛んでいく。
本来はどのような魔法であっても、プロセスとしては
魔方陣を描く、魔法語を唱えるといった準備の後、そこに魔力を流し込む必要がある。
しかも、(魔法語はそのまま発動するが)効果の発動には魔方陣の効力、練度によって変わり、指に火を灯す程度の魔法であっても数秒かかる。
それが認識すらできない程の時間で発動させた『雷剣』に、二席は一種の畏怖すらも覚えた。
しかし、『雷剣』は眉をひそめた。
放出した魔力がわずかに分散したのだ。
これは、ダンジョンの入り口から、中に向かって魔術を放った時に起きる現象である。
しかし、その程度のことは気にとめて置けないような事態へと発展した。
「ん?ちょっと待て!俺達は敵じゃねぇぞ!!」
少し焦ったように叫ぶ『雷剣』の声に、二席は柄頭に手を掛ける。
いざという時はすぐに抜刀できるように、である。
走る音は途切れず、むしろ焦り始めたようだ。
数秒後、そして少女が姿を現した。
「おいおい、ニセ勇者かよ」
「ら、『雷剣』!?ユキをどこにやった!」
「いや、知らんぞ。そもそもユキが誰だかも知らん」
「……、それなら、辺りに散らばっていた血肉は、誰がやった?」
「俺達だが?」
「それなら、問答無用!」
少女は、普通の少女であればあり得ない速度で抜刀し、さらに魔法陣を発動した。
戦闘の開始である。
出来れば三千文字くらいはいきたいところです。




