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名も無き世界 異世界編  作者: 有加田 慧条
奪われるという事
21/26

そして、主人公

更新しますが、文字数が少なすぎますね……。

「少なくとも、契約術式がこの山賊のものではない以上、外部の誰かが提供したのが正しいだろうな」

「B級は国の戦力として使えるほどじゃからな。それに、二席殿が捕えられていた以上、敵国である王国がかかわっているのは間違いないじゃろう」

「これで戦争するには十分な材料になるだろうな」

「まだ、挑むわけにはいかんのじゃがな。早まった真似はするでないぞ?」

「分かってるって、心配すんな。ところで、俺らの姫様はどこに行ったんだ?」

「中庭でおぬしが返ってくるのを待っておる。はぁ、こんな輩のどこがいいのやら……」

「おい、聞こえてんぞ?俺だって分かってねえんだし、おいおいどうにかしていくしかないだろ」


長くかわされた会話の後、彼は魔法を切った。

それと同時に、頭達が光に包まれ、一瞬光ったのちに消えた。


「お前の主さんは、一応こっちの国で保護してあるんだとよ。戦力はきちんと揃えてあるし、俺があやしい輩は粛清したから裏切りはあり得ない。そこは安心していいぞ」

「本当に、かたじけのうござる」

「いいって、気にすんな」


他の人物ならともかく、『雷剣』が粛清を行ったのなら、完全に裏切りの芽は消えたと言ってもいいだろう。

『雷剣』は、戦闘だけでなく情報収集能力にもたけており、そもそもの本業は暗殺だというのだから恐ろしい。


さらに言えば、先ほど発動した転移術式もかなりのものだった。

まともな魔術師では、発動することすらも出来ないほどの魔力が要求される。

連絡していた相手が発動した魔術のようだが、そんなことが出来るのは大陸にも数える程度しかいないだろう。


「これから、俺たちは徒歩で国まで帰る。安全なルートを通りたいし、途中で情報収集もするから、数日かかる。食料を揃えるためにいったん最寄りの『アラトゥー』の町に寄るぞ」

「わかっ……。む?」


鉱山の奥から、何かが走ってくる音がする。

そちらに向き直った『雷剣』が、魔力らしきものを放出する。


「小さいな、少女だ。剣を持ってる。魔力もそれなりにありそうだ。魔人とかじゃなくて人間だな」

「なぜそこまでわかるのだ?」

「足音と魔力ソーナー」

「足音ならわかるのだが、魔力ソーナーとはなんでござるか?」

「えーっとだな、魔力を薄く、規則的に放出するんだ。そうするといくらかが魔力に反応して返ってくるから、相手がどれくらい魔力を持っているのかがわかる代わりに、使ったのがばれる」

「よくそんな魔法を作ったのだな……」


そう話している間にも、足音は少しずつ大きくなる。


「おい!そこで止まれ!」


『雷剣』が叫ぶが、足音は止まらない。


「『牽制:雷鎚』」


牽制用の魔術を『雷剣』が撃ち込んだ。

それは誰も傷つけるようなものではなく、一般人にあたってもせいぜいピリッと来る程度のなのが、二席には分かった。

瞬時に展開、発動した魔術陣から、鎖をつけた鎚が飛んでいく。

本来はどのような魔法であっても、プロセスとしては

魔方陣を描く、魔法語を唱えるといった準備の後、そこに魔力を流し込む必要がある。

しかも、(魔法語はそのまま発動するが)効果の発動には魔方陣の効力、練度によって変わり、指に火を灯す程度の魔法であっても数秒かかる。

それが認識すらできない程の時間で発動させた『雷剣』に、二席は一種の畏怖すらも覚えた。


しかし、『雷剣』は眉をひそめた。

放出した魔力がわずかに分散したのだ。

これは、ダンジョンの入り口から、中に向かって魔術を放った時に起きる現象である。

しかし、その程度のことは気にとめて置けないような事態へと発展した。


「ん?ちょっと待て!俺達は敵じゃねぇぞ!!」


少し焦ったように叫ぶ『雷剣』の声に、二席は柄頭に手を掛ける。

いざという時はすぐに抜刀できるように、である。

走る音は途切れず、むしろ焦り始めたようだ。


数秒後、そして少女が姿を現した。


「おいおい、ニセ勇者かよ」

「ら、『雷剣』!?ユキをどこにやった!」

「いや、知らんぞ。そもそもユキが誰だかも知らん」

「……、それなら、辺りに散らばっていた血肉は、誰がやった?」

「俺達だが?」

「それなら、問答無用!」


少女は、普通の少女であればあり得ない速度で抜刀し、さらに魔法陣を発動した。


戦闘の開始である。


出来れば三千文字くらいはいきたいところです。

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