セーフティー
更新少し遅れました。
すみません。
「門を開けー!!」
「開門ーー!!」
そんな掛け声とともに、夜は閉ざされている王都の巨大な扉が開かれる。
王都の周りを囲む石壁、大体百メートルくらいのそれに、東西南北と一つずつ取り付けられた扉だ。
扉もどうやら特別な金属のようなものでできている様で、単純な物理攻撃ではほぼ確実に破壊できないらしい。
「ねえ、ユキ。夜のうちに王都についた商人とかって、外で待ってなきゃいけないの?」
「ええと、確か、外には石造りの兵士の詰め所があって、お金を払えばそこで過ごせるらしいよ」
「へぇ、でも、わざわざ閉めてしまわなくても、夜も開けていてもいいと思うんだけど」
ソフィアの問いには、すぐに答えが返ってきた。
「何百年か前に、人に化ける魔物がいたんだけど、日の光を浴びたら化けの皮が剥がれちゃうんだって」
「なるほど、だからなのか」
かなりの人数で埋め尽くされた門から外に出る。
途中で検問があるかと思っていたが、特にそんなものはなかった。
その代わりに、どうやら王都に入っていく人たちはかなり詳しい検査を受けているようだ。
なるほど、とソフィアは納得する。
どうやら、出て行く人たちより、入っていく人たちのほうが危険だと思っている様だ。
宿から出ると直ぐに門まで来たが、目的地の町の途中にある小さな町、『アラク』まではそれなりの距離がある。
テントなどの道具をなぜ持っていかないかをユキに聞いたところ、こんな答えが返ってきた。
町と町との間には道があり、そこは定期的に魔物などの駆除を行っているため、魔物などはあまり寄り付かない。
その道には、『セーフティー』と呼ばれる木造の家や、洞窟などの天然の、寝ることのできる場所が二キロ間隔であるそうだ。
なのでこの世界では、未開の地に行くのでもない限り、テントをはじめとするキャンプ道具は必要ない。
ちなみにアラクとは、ソフィアの世界では確か蒸留酒の名前だったが、別に酒の生産地というわけでもない。
その日は特に何もなく、ソフィアたちは『アラク』と王都とのちょうど真ん中あたりの『セーフティー』に泊まった。
この世界では王都などの例外を除き水道などは普及しておらず、当然ながら風呂などは存在していない。
なので、近くを流れる川で、二人は体を洗うことにした。
とはいえ、交互に入ることにしたため、特にイベントは起きなかった。
これはソフィアから申し出たのではなく、ユキが
「一応警戒は必要だから」
と言ったからだ。
(よく考えたら、異世界に来てから入浴するのは初めてだったっけ……まあ、風呂とは呼べないけど)
先にユキに入ってもらい、交代で川へと入ったソフィアは、考え事をしていた。
(たぶん私がこの世界に飛ばされたのにも、何かの意味があるはず。たぶん、あの兵士たちの雇い主辺りが私を召還したんだ……。理由は魔王の復活とかの、国家は認知できるけど、一般人は知らないくらいの事のはず。なら、戦争ということでもない)
自分が召還された理由を、無数にある可能性をいくつかに絞っていく。
そしてたどり着いたのが、人類そのものの危機になりうる、危険なものが目覚めること。
ソフィアもまた、この世界の危機に関しては推測ではあるものの、知ることができたのである。
(やっぱり魔王か何かかな)
さらに推測を重ねながら(どんぴしゃではあるが彼女にはそれを知る手段はない)、全身を軽く布で拭き、川から上がる。
ソフィアも元は男であるが、ロリコンではなくとも十分に興奮しうる美少女の裸を見ても、何の反応もないことに気づき、もはや諦めた。
服を着て、ログハウスのような『セーフティー』に入る。
周りの草原からは生き物の気配はないが、念のために二階建てのログハウスの屋根へ、飛び上がる。
「……これから、なにをしようか」
往々にして、異世界へとわたった人物たちは、世界の脅威を排除してから元の世界に返るのが常識だ。
しかし、彼は違った。
家族は疎遠で、ここ数年は顔すら見ていなかったし、他に知り合いというものがいるわけでもない。
そうであるがゆえに、あまりにもこれからの自由度が高すぎるのだ。
しかし。
「何か、何か重要なことを忘れている気がする」
僅かな違和感。
それがソフィアの頭の中に、この世界に来てからずっと引っかかっていた。
いつも隣にいた何かがいない。
そんな気がしてならなかった。
「あ、ソフィアちゃん!?そんなところで何してるの!?」
しかし、ソフィアの思考は、ユキの声によってさえぎられた。
見下ろすと、ユキがこちらを見上げている。
「……、重要なことなら、いつか思い出すかな」
そうつぶやき、屋根から飛び降りる。
いくつかの問答の後、保存の利くパンとユキが魔術でろ過した水を飲み、少し硬いベッドで寝る頃には、なぜかそのことを忘れてしまっていた。
やばい、文字数が足りない……!!




