隠された才能
「5ゲームでいいか?」
「う、うん」
只今コートにはサーブの準備をする蒼園、レシーブのために構える柊
「どうしたんだろうね?」
そして外には観戦をする三人の姿があった
「…お前の力、見してもらうぜ!」
限界能力察知を発動してコースを割り出す
「そこだ!」
柊がサーブに反応ができない
「……す、すごいな、なんか変な感じだったよ」
「攻略してみな」
サーブ4本全てに限界能力察知を使用した蒼園が第1ゲームを制した
「………ん?」
サーブ権は只今柊にあるのだが、その柊はというと蒼園をガン見していた
「順平…もしかして限界能力察知やろうとしてないか?」
図星なのか柊の顔が歪む
「だったらやめとけ…初心者に出来るようなことじゃないぜ」
蒼園の発言は正しいのだが、ひとつ言えば、熟練者でもそうそう出来ることではない
「うーん……むむむむ」
柊がボールを空に投げる
そして落ちてきたボールにヒットさせる
「……っと…」
蒼園は一瞬反応が遅れたが、見事なレシーブを返す
この時蒼園が反応に遅れた理由は、柊が見事なサーブを打ったからだと自らに理由付けていた
しかしそれは…蒼園がポイントを取り1-0になった時に違うとわかったのであった
「……いけ!」
柊自身、今日初めてサーブを打った身なので、コントロールの方は奇跡だったのかもしれない
だが、確かにこの時…
「……そんな…ばかな…」
蒼園の後ろには柊がうったボールが転がっていた
「おぉ、これサービスエースって言うんだよね!やった!」
「…ノータッチエースな…」
蒼園はサーブが来て感じた
自分の動きが遅くなるのを
(柊の飲み込みの早さには驚くぜ…)
彼の打ったあのサーブは紛れもない蒼園の限界能力察知のそれだったのである
「順平!もっと上手くなったらまたシングルスやろうぜ!」
「うん!」
そしてそのあと柊にスーパープレーはなく、ゲームは3-0で蒼園が勝利するのであった
「あーぁ、蒼園だっせぇ、順平にノータッチエースされてやんの」
竜野がこれでもかとばかりに蒼園をばかにする
「うっせぇよ、てめぇ相手なら1ポイントも取られねぇよ」
「なんだと!勝負するか!?」
「まぁまぁ、ふたりとも…」
柊がふたりをなだめる
「でも今日楽しかったね♪風太のテニス姿も見れたし」
工藤が感想を言う
「ふんっ、俺はお前が打ちそびれて豪快にすっ転んだのを見れて満足だぜ」
「なによー!バカ風太!」
1年生5人は、それぞれの夢へと、確かに歩き初めているのであった