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待ち合わせ

時間軸は『序』から繋がっています。

 ゴールデンウィークの間、秀太は帰省していたので会うのは久しぶりだった。

千尋が秀太の顔を見て、あることに気がつく。

 「あ、そういえば髪切った?」

 「やっと!?いつ訊かれるか待ってたのに」

 「女の子じゃないんだから……」

 秀太は長かった髪を、耳がやっと隠れるくらいまでに切っていた。

 「ここまで短くするのは久しぶり。どう?似合う?」

 無邪気に笑うその顔は、

カッコいい男の子というより寧ろボーイッシュな女の子に近かった。

 「うん、似合う似合う。やっぱ夏も伸ばしてたの?」

 「うん。僕の高校、校則緩かったから」

 そういうことじゃないんだけど、と思いながらも突っ込まない。

その代わりに今日の話題を持ち出した。

 「由香里さんって、どんな人かな?」



 ピアノを弾いてくれそうな人が見つかった、という連絡を秀太から電話で聞いたのはゴールデンウィークに入る前日の夜だった。

 「えっ?ホント?」

 「ホント。前に募集記事をいろんな楽器店で貼らせてもらったって言ったよね?そのうちのひとつを見てメールくれたみたい。あれ、もう少ししたら書き直そうと思ってたんだけど。

そういえば、ああいう募集記事っていつまで貼られてるんだろ?やっぱ人が集まったら外してもらいに行かなきゃいけないのかな……」



 3人で会うのはゴールデンウィーク後最初の土曜日、S駅前の広場。

ということで、今回は木村楽器店ではなく、いつも人で溢れるこの大きな街まで出てきて待ち合わせたのだ。

 「たしかK女学院の2回生って言ってたよ。ピアノは3歳から始めたって」

 千尋はそれを聞いて驚いた。

 「3歳!?ひぇ~。K女だし、ひょっとしたらお嬢様かも。でもそんな人がなんでわざわざ?クラシックとかじゃないのかな」

 「わかんないけど、まあ上手だったらそれに越したことはないんじゃない?」

 秀太は至ってお気楽気分でフンフン、と鼻歌まで歌っている。確かに音痴だった。

 千尋はふと、自分たちがまわりの目から見て一体どんな風に映っているのだろうかと気になった。

おそらく男女のカップルとは思われていないだろう、と横目で秀太を見ながら思う。

かくいう千尋自身も童顔で、普段化粧をしないことも加えてしばしば中学生と見間違われる。

ということは、だ。

きっと、女子中学生達が部活もせずに朝から遊びに来てる、なんて思われているんだろうな、とひとつため息がでる。

そして嫌な予感がした。秀太と初めて会った時のことを思い出す。

 「こんなに人がいて、由香里さん私たちだってわかるかな?秀太、由香里さんに私たちのことなんて伝えたの?」

 「え?いや普通に『大学生と女子高生の2人組です』って」

 秀太が不思議そうに答えた。まずい。見つけられないかもしれない。

 「秀太、一応時間になったらギターを思いっきり周りにアピールして」

 「……ヘンな人だと思われるの嫌だよ……。きっと大丈夫だって」

 実際大丈夫じゃなかったんだと千尋が言いかけたその時、

広場から少し離れた駅の駐車場に1台の真っ黒な外車が入って来て止まった。

運転席から紳士的な初老の男性が降りてきて、ガチャッと後ろのドアを開ける。

中から出てきたのは、いかにも上等そうな純白のワンピースに身を包んだ、モデルのような体型をした美しい女性だった。

そんな彼女の姿を見て、千尋と秀太は互いに顔を合わせ、「まさかね」と言って笑う。

運転手が車を出した後、駐車場に残されたその女性は少しキョロキョロとあたりを見回した後、

秀太の足元にギターを見つけると、千尋に目をやり、ほほ笑みながら手を振った。

次回は明日7月18日(月)投稿予定です_(._.)_

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