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初対面(2)

 その後、店の地下にあるスタジオで秀太のギターの音を聞くことになった。

本当に始めたばかりなので、演奏を聞いてみて組むのは無理だと思ったら遠慮しないで断って欲しい

という、本人たっての希望だった。

店の隅に置いてあったギターケースを細い腕でよいしょっと持ちあげる秀太の姿は、

正に文化祭シーズンの中学生のようだ。

 秀太の後に続いて店の奥の階段を下り、たった一部屋しかないスタジオに入る。

何故か木村もついてきた。千尋もここに来るのは久しぶりだった。

秀太はケースからギターを取り出し、チューナーを手にチューニングを始めた。

「耳を使ってできたらカッコいいんだけど、音痴はこれだから……」と呟きながらペグをまわす。

チューニングが終わると、ピックを持ってパイプ椅子に座り、

 「座ってじゃないと、上手く引けないんだ」

 そう言って簡単なコードを弾きはじめた。

 秀太の演奏は本人が言う程そう悪くはなかった。

いや、寧ろ初心者でここまで出来たらかなり上出来といっていいだろう。

左手のコード進行もスムーズで、ピッキングも軽やかだった。

千尋が軽音楽部時代に、散々難しいと耳にしていたバレーコードも簡単にやって見せた。

千尋の隣で聞いていた木村も、秀太の演奏が終わると拍手をして称えた。

 「蒼井君上手いじゃない!まだ始めたばかりなんだろう?誰かに習ってるの?」

 秀太は少し照れたように笑って、

 「いえ、こっちに越してくる前に父に教えてもらってたんです。このギターも元は父の物で。合格が決まってからの2、3週間は1日中練習してました」

 「へえぇ、お父さんがねえ。随分教え方が上手なんだなあ。あ、そうだ千尋ちゃんもなんか歌う?マイクもあるし」

 「ふぇ!?」

 思わず変な声が出た。そんな心の準備、今日はしてきていない。

なんてことを言い出すのだ、おじさん。

だが、冷静に考えてみれば2人はわざわざお茶するために会った訳じゃないのだからこの流れは当然であり、

ここ数日間顔を合わせることだけで頭が一杯だった千尋に負い目はある。

 「ここでちゃんとアピールしとかないと、アピール」

 「歌うって、アカペラですか!?」

 「そんなフルコーラス歌う必要はないからさ、きみもワンフレーズだけでも歌声を聴いてもらわないと、ね?蒼井君」

 千尋は「困っています」という眼を送ったが虚しくも届かず、秀太は二重の大きな瞳を輝かせて

 「うん、ぜひ聴きたいな」

 と答えた。千尋にもう逃げ道は無かった。

 マイクの準備を始めようとする木村を止めて、千尋は何を歌おうか考えた。

秀太も知っている曲がいい。そして何より上手に歌える曲。予めちゃんと練習してくるべきだった。

 「えと、じゃあ井上陽水さんの『少年時代』のサビの所を歌います」

 父の好きな曲だ。家族でカラオケに行くとよく歌った。

 静かなスタジオの中、無伴奏で歌うのは中学校の時の歌のテストを思い出して気恥ずかしかったが、

短いワンフレーズを無事に歌いきった。

その後秀太は拍手をして「すごく優しい歌声だ」と言ってくれた。

次回は7月15日(金)投稿予定です_(._.)_

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