第16話 体罰と勇気ある正論
「なんや、おどれら…その顔は何じゃい!?」
ビリビリと空気を震わせる怒声。
腹の底がキュウっと嫌な音を立てる。
ほとんど触れたことの無い、大人の男性の怒りの声。
(…こわい……怖い……)
私は――
正直あのときまで『大人の男性の激昂』見たことがなかった。
殆ど接点のなかった父親。
残念ながら怒られた経験すら、無かったんだ。
ただ震え。
涙がにじむ。
ああ。
マジで情けない。
※※※※※
事の発端。
実に下らない事だった。
部活時間中に数名の生徒がつるんで抜け出し。
近所のお店に行って駄菓子を買った。
正直、何が悪いのか。
今になればそう思えてしまう。
でも。
あの当時の“指導”というかなんというか。
まるで軍隊。
完全縦割り社会。
つまり先生や上級生の言葉は絶対だった。
罰として皆の前で立たされ、ビンタで吹き飛ぶ同級生たち。
バチーーン!!
ドオッ!!
中学生とはいえまだ子供。
こん棒の様な、ヤマグチ先生のぶっとい腕から繰り出されるビンタは完全なオーバーキル。
数名は壁に叩きつけられ、口からは鮮血が噴き出していた。
たまらず先生に飛び掛かり、静止を促すオカダ君。
「やめてください!!」
「ああん!?なんや、われ!」
きっと怖かったと思う。
彼の足、震えていた。
でも彼は。
「…こんなの間違ってます。これは……ただの暴力だ」
「なんやと?……もっぺんいってみい!!おら」
※※※※※
たまたま通りかかった教頭先生。
それによりどうにか地獄のような場面は終わったのだけれど。
その日のミーティング。
冒頭に戻る――
※※※※※
部室に集められた卓球部員総勢70名。
嫌な沈黙。
何よりも、青筋を立て竹刀を持ち。
静かに怒り狂うヤマグチ先生。
確か数名は既に涙目になっていた。
「わしの言う事聞けんのやったら、即刻辞めろ。……その代わり内申は覚悟せえよ」
先生の第一声。
それは信じられない暴言だった。
あの当時。
ヤンキーの多い学校とはいえ、何故か部活は重要な地位を占めていた。
いわゆる進学のための内申。
それへの影響が大きかったんだ。
だから基本何かしらの部活に入る。
それは暗黙のルールだった。
そして。
途中で辞めたもの。
それはつまり不適合。
そんなレッテルを貼られる事だった。
……えっとですね。
今思えばそんなことは全然なく(笑)
当然様々な理由で帰宅部だった人もいたわけで。
でもあの当時。
私はそう信じて疑ってなかった。
何より異常な熱量を持ち、クラス内で宗教活動をする怪しい私。
ただでさえ先生たちにやんわりとマークされていた。
部活をやめる=不適合者=退学。
ありえない公式が瞬時に私の中では構築されていたんだ。
背筋が凍る。
なぜか悲しむ母の顔が浮かんでしまっていた。
そして。
「先生」
「……なんや。オカダか。――言いたい事あるんか」
「…先生は間違っています。僕は今日をもって退部します」
一瞬で空気が凍る部室。
いつも威張っていた先輩たちも、驚愕の目を向けていた。
「僕たちは奴隷じゃない。それから内申の事ちらつかせるの…卑怯です」
「ああっ!?」
「殴るんですか?…言う事聞かないと、暴力ですか?……あんたサイテーだよ」
「っ!?」
眼には涙が浮かんでいた。
膝もガクガク震えていた。
ああ。
(――凄いな)
※※※※※
翌日から。
オカダ君は部活に来ることはなかったんだ。
そして。
33名いた同級生は。
その日を境に、少しずつその数を減らしていったんだ。
※※※※※
うん。
マジでカッコいいよね。
抗えない、そんな雰囲気の中でのあの発言。
私はいまだに。
あの時の彼の勇気。
敵う気がしません。
因みに。
後で聞いた話なのですが。
我々1年の時の3年生、どうやら性格の悪い人がいたようで。
『アイツらいつ辞めるか賭けようぜ』
だったらしいです。
あー。
だからめちゃくちゃ扱かれたのね、わたくしたち。
ごめんね先輩?
わたくししっかり最後まで在籍しましたよ?!
3年の夏最後の大会が終わったとき。
同級生7人のみでしたけど?
「面白かった」
「続きが気になる」
と思ってくださったら。
下にある☆☆☆☆☆から作品への応援、お願いいたします!
面白いと思っていただけたら星5個、つまらないと思うなら星1つ、正直な感想で大丈夫です!
ブックマークもいただけると、本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




