第1話 おっさんです。一応自己紹介をば
令和5年に33年務めたJAを退職した私。
それでも私は。
できうることはやっていた。
――そう思っていたんだ。
なんだかんだ、JA内で通用する資格をすべて取得。
あとは管理職で悠々自適の終盤戦――
そんな目論見は。
自分の蒔いた種により、悉く霧散していった。
わがJAは真夏の一大野菜産地。
総販売額300億に届こうかという、夏場限定ではかなりの影響力を持つJAだった。
JA内部での地位。
当然のごとく、メインである“野菜”に携わる者はするすると出世。
普通の会社と違う、“組合員”という農家相手のお仕事。
性格上それはやむを得ないのだけれども…
そんな中で私は。
販売額1億にも届かない、花卉の担当だった。
しかも入職して2年目からずっと花卉の指導員という名の何でも屋。
携わる組合員は花卉限定。
そして。
当然のごとく高齢化&実績の目に見える衰退。
はい。
必死だったよ?
マジで『数量が少ないなら…せめて品質で日本一を!!』
そんな熱い想い。
それは異動という仕組みのあるJAでは、むしろ逆効果。
上層部が求めていたモノ。
それは誰でもできる仕事の構築。
真逆に進む、私でしかできない仕組み。
当然だがそれは――“顰蹙”を買っていたんだ。
もちろん私個人の責任ではないよ?
単純にどうすればもっと上に行けるか。
その思いでの改革だったのだから。
でも言われたのは。
『おまえがずっと同じ仕事してるから…お前しかできない仕事、そんなのはただの損失なんだよ』
ショックだった。
目の前が真っ暗になった。
つまり私が休みすら返上し、無給で働いていた事。
JAにとっては害悪でしかなかったんだ。
『もっと早く異動すればいいものを…』
えっとですね。
いつから私に人事権あったのでしょう(笑)
コホン。
理解してしまった。
どうやら上層部は。
私に対し、かなりネガティブな想いを抱いていた。
あとは何しろ私本来の性格。
黙っていられない――
よく言えば恐れることなく上層部に意見を申す男。
でも実際は。
『たいした稼ぎにならない、小さな業務にしがみつく小うるさい男――』
そう捉えられていた。
結果。
異常な勤務と少しのボタンの掛け違い。
――私は“賞罰委員会”にかけられた。
心の折れる音。
そして今までのことが走馬灯のように脳内を駆け巡る。
(ああ、俺のやっていた事…すべからく意味のない事……疲れた…)
えっとですね。
勘違いしてほしくないんですが…
決して“犯罪”ではありませんよ?
ある事情で、花卉の出荷。
隣のJAとの共同作業になっていたんですよね。
つまりは毎日管轄外へ行く私。
半日でその日の業務が終わる、それを報告するのを忘れていた私は。
気が緩んで、報告せずに自分の車でJAを飛び出し。
あまり“ふさわしくない場所”で目撃された。
そういうことでした。
うん。
ぶっちゃけゲームセンターで見られてたんだよね。
必死こいて大きなぬいぐるみを血走った目で見ている中年男性。
ホラーだな(笑)
さらにはその日の報告。
すっかり忘れ“出勤”扱い。
そりゃ不味いよね。
――猛省ですわ。
※※※※※
退職を決めた冬。
有休を消化し始めた頃。
唯一味方であった常務が私を呼び出した。
「…なあ、考え変わらないか?――お前、来年からは“課長”だぞ?」
正直知っていた。
賞罰にかけられたとはいえ。
ただの気のゆるみ。
そういうふうに上層部は納得してくれていた。
ありがたいことに。
少ないとは言っても私は組合員にとって必要な人材だった。
多くの花卉の農家が掛け合ってくれ、ペナルティもほとんどなく。
だけど。
私の心は折れたんだ。
“腎臓不全一歩手前”という事実とともに。
「…ありがとうございます。でも――もう決めました。医者にも『ストレス、一番ダメだよ。このままだと透析だね』…そう言われましたし。――お世話になりました」
「……そうか。…でも…もしも――」
「常務」
「…あ、ああ。すまん」
嬉しかったよ?
こんな私でも必要としてくれる人が…
まだ内部にもいたこと。
そして私は。
33年という長きにわたり勤めたJAを退職したんだ。
※※※※※
はい。
という訳で。
その後の私は農家になりました。
もちろんそこでも色々と騒動はあったよ?
でもね。
後悔はしていません。
次話からは、私の幼少時代の物語。
語っていきますね。
お付き合いいただけると嬉しいです。
新作です!
まあ。
エッセイですけどね。
読んでいただければ幸いでございます。
本日5話。
その後は週一くらいのペースで投稿していきます。
宜しくお願いいたします!




