3話
炉の火がゴウゴウと唸っとる。
ワイは折れた剣を作業台の上に置いた。
刃の断面をじっと見る。
「……ひどい折れ方やな」
剣の中の鉄の流れが、なんとなく分かる気がする。
どこが弱くて、どこが歪んどるかも見える。
ワイは指で断面をなぞった。
「魔物とやり合ったんか?」
冒険者の一人――背の高い剣士がうなずく。
「ああ……魔王軍の幹部や」
鍛冶場の空気が一瞬止まる。
ジジイが低い声で言った。
「……魔王軍やと?」
剣士は悔しそうに拳を握る。
「仲間もやられた。武器もこの通りや」
ワイは折れた剣を持ち上げる。
重い。
でも、悪い剣やない。
「ええ剣やったんやろな」
剣士は驚いた顔をする。
「……分かるのか?」
「なんとなくや」
ワイは炉の前に立つ。
火を強くする。
赤い炎が大きく揺れる。
「直すだけやったら意味ない」
ハンマーを握る。
「魔王軍と戦うなら、もっと強い剣がいるやろ」
ジジイが腕を組む。
「お前……できるんか?」
ワイはニヤッと笑った。
「ワイに任せとき」
剣を炉の中へ入れる。
しばらくすると、刃が赤く染まった。
ワイはそれを取り出し――
ガンッ!!
ハンマーを振り下ろす。
火花が散る。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
鍛冶場に鉄を打つ音が響く。
不思議と、叩く場所が全部分かる。
どこを打てば強くなるか、体が覚えとるみたいや。
気づけば、ワイは夢中になっとった。
そして――
最後の一撃。
ガンッ!!
静かになる鍛冶場。
ワイは剣を水に入れる。
ジュウウウウ……
蒸気が立ち上る。
しばらくして、ワイは剣を持ち上げた。
「できたで」
剣士が受け取る。
そして軽く振った瞬間――
「……軽い!」
目を見開く。
「しかも、魔力の通りが全然違う!」
後ろでジジイがボソッと言った。
「……とんでもないもん作りよったな」
ワイは肩を回す。
「まぁこんなもんやろ」
そのときや。
外からドタドタと足音が聞こえた。
バンッ!!
鍛冶場の扉が開く。
兵士が叫んだ。
「大変だ!!」
「町の外に魔王軍の魔物が現れた!」
鍛冶場の空気が一瞬で凍る。
剣士はワイの作った剣を握る。
そしてワイを見る。
「……あんたの剣、試してくる」
ワイは腕を組んだ。
「折るなよ」
剣士はニヤッと笑う。
「折れるかよ」
そう言って、冒険者たちは走っていった。
ワイは炉の火を見つめる。
「……魔王軍か」
ジジイがワイを見る。
「お前、どうする?」
ワイはハンマーを肩に担いだ。
「決まっとるやろ」
ニヤリと笑う。
「ワイの武器が通じるか、見に行くわ」
こうしてワイは――
初めて魔王軍と関わることになる。




