2話
「ほな、そのハンマー持ってみぃ」
白ヒゲのジジイがそう言って、でかいハンマーをワイに差し出した。
ワイはそれを受け取る。
……重い。
普通なら持ち上げるだけでも大変そうな重さや。
せやけど、不思議と腕にしっくりくる。
「鉄はそこや。適当に叩いてみぃ」
炉の横には真っ赤に焼けた鉄の塊が置いてあった。
ワイはハンマーを構える。
「まぁ、やってみるか」
ガンッ!!
ハンマーが鉄に落ちる。
火花が散る。
その瞬間、ワイは気づいた。
「……あれ?」
体が勝手に動く。
もう一度振り下ろす。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
ハンマーを打つたび、鉄の形が整っていく。
叩く場所も、力加減も、全部わかる。
まるで――
ずっと前からやっていたみたいに。
「……なんやこれ」
気づけば、一本の剣の形になっていた。
ワイは汗をぬぐう。
後ろを振り向くと、ジジイが口を開けて固まっとった。
「……お前」
「なんや」
「初めてハンマー握ったんちゃうんか?」
ワイは肩をすくめる。
「ワイもそう思っとる」
ジジイは剣を手に取った。
刃を指でなぞる。
そして、目を見開いた。
「軽い……しかも、刃の通りがええ」
ワイは自分の腕を見る。
丸太みたいな腕。
腹は出とるし、足は短い。
せやけど――
「まぁ、悪くない体やな」
そのときや。
鍛冶場の扉が、ドンッと開いた。
「誰か!鍛冶師はおるか!」
入ってきたのは三人の冒険者やった。
鎧はボロボロ。
血もついとる。
そのうちの一人が、折れた剣を差し出した。
「頼む……これを直してくれ」
ワイはその剣を受け取る。
ずっしり重い。
折れた断面を見る。
「……ほぉ」
魔力の流れが見える。
鉄の質もわかる。
ワイはニヤッと笑った。
「修理は無理やな」
冒険者の顔が曇る。
せやけどワイは続けた。
「せやけど――」
炉の火を見つめる。
ハンマーを肩に担ぐ。
「もっと強い剣に作り直したる」
冒険者たちは顔を見合わせた。
そのときワイはまだ知らんかった。
この剣が――
魔王と戦う戦いの始まりになることを。




