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エタリップ海賊団と海の神  作者: みーこ


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第32話 演技指導の後で

「つかれたぁ~」

「うん……。本当にね……」


 夜。宇海うみとココは甲板の上で大の字になっていた。

 あの後、ピカネートの厳しい演技指導が(なぜか宇海だけでなくココも強制参加させられ)何時間にもわたって続けられた。ああでもない、こうでもない、もっとああしてみよう、いやいややっぱりこっちがいい……。そんな具合で、ピカネートが納得するまで試行錯誤が繰り返された。おまけにその方が雰囲気が出るから、とサミニクの演奏も交えてやっていたのだが、サミニクもあれこれと注文をつけてくるものだから何度か口論になりかけた(もちろんピカネートとサミニクで、だ)。

 解放されたのは空がオレンジ色に染まってから。しかも理由はピカネートのお腹が減ったから。さすがにこれは宇海も自分勝手すぎると思ったが、宇海自身お腹がペコペコだったから文句は言えなかった。同じくペコペコのヘトヘトになっていたココは、その状態で料理をすることに不満そうだった。しかしなんと、ピカネートが演技指導に熱を入れすぎていることに気がついたアーレフが、既に食事を作ってくれていた。嬉しさのあまり、ココはアーレフにお礼を言いながら抱き着いた。

 夕食を終えた宇海とココには、一休みしたことで疲労がどっと押し寄せてきた。そこで二人は邪魔かもしれないと思いつつ甲板に身を投げ出したのだった。……もちろん、すぐにそれを見とがめたゴルタヴィナに「危ないからやめな」と注意されたのだが。


「疲れたのはわかるけど、寝るなら部屋で寝るんだよ。こんなところで寝転がっていたら、誰かに踏まれても文句は言えないからね」

「「ごめんなさい……」」


 とは言え、そんなゴルタヴィナも疲れて眠いのか、何度かあくびをかみしめていた。


「ヴィーナさんはこれから操舵? 疲れてるなら少し休んだら?」


 ココが問うと、ゴルタヴィナは首を横に振った。


「疲れていても、誰かが舵を取らなきゃいけないんだ。みんなで眠っていたら、その間に船の方向が変わっちゃうかもしれないからね」

「そっか。夜中も誰かがずっと起きてなきゃいけないから、何日も航海するのって、すごく大変なんだね」


 今まで宇海はそこまで深く考えたことがなかったが、よく考えたらそれは当たり前のことだった。陸上と違って海には道がない。だから太陽や星を見て進む方向を決めている。それなのに見る人が誰もいなければ、とたんに道を外れてしまう。朝も昼も夜も、誰かが進む方向を見定めていなければならないのだ。


「そう。大変なことだよ、航海は。危険も多いからね。でも、だからこそ船乗りは昔から勇敢さの証と言われているんだ」

「へぇ~! かっこいい!」

「そうだろう? 私もずっと憧れていたからね。自分で舵輪を握っている時なんかは、今でも気分が上がるよ。同時に、身が引き締まる思いもする。今、この船の命運を握っているのは私なんだ、ってね」


 そう言ったゴルタヴィナの顔は、使命感に満ちているように見えた。


「さて、ここで立ち話ばかりしていたら、船長の休む時間を減らしちゃうね。私はもう行くから、あんたたちは早く休みな」

「うん。ボクは部屋で休むことにするよ。ウミちゃんは?」


 ココに聞かれ、宇海は「わたしも」と言おうとして思いとどまった。


「わたし……もうちょっとヴィーナさんのお話聞いてもいい?」

「私の話?」

「うん。もっと色々聞いてみたい。ピカネート船長からも、みんなの話を聞いてって言われてるし」

「わかった。本当は早く寝なさいって言いたいところだけど、話していれば眠気覚ましにもなりそうだしね。でも、朝まで、なんてのはなしだからね?」

「うん。ありがとう!」


 宇海とゴルタヴィナは船室へと向かうココと別れ、舵輪の元へと歩いていった。


「船長! 交代するよ」

「おう!」


 ピカネートは元気よく返事をすると、ゴルタヴィナと場所を交代した。


「ウミ、今日はお疲れ様。あー……昼中は、何時間も付き合わせちゃって悪かったね。さすがにやりすぎたと反省してるよ」


 宇海を見て、ばつが悪そうに言うピカネート。宇海は、ううんと首を横に振る。


「大変だったけど、海軍に負けないためだもんね。わたし、アドリブ得意じゃないから、いっぱい練習できてよかった。何もしないまま海軍と会ったら、あんなことできる自信ないもん」

「ああ。あれだけ練習したんだから、明日はきっと大丈夫だ。あんまり夜更かししすぎないで、早めに寝るんだよ。フラフラの状態じゃあ練習が台無しだからね」

「うん!」


 先に少し休んでいるよ。と言ってピカネートは去っていった。宇海とゴルタヴィナ、二人きりになった夜の甲板に、ミリーの音が降り注ぐ。


「……サミニクさんって、いつ休んでるの?」

「さあ……? その辺り、サミニクは謎が多いからねぇ……」


 二人してサミニクのいる見張り台を見上げながら、そろって首を傾げた。

 宇海が寝室として使っている部屋は、ピカネートに案内された時にはココとサミニクも使っていると言われた。でも、サミニクがあの部屋にいるのを見たことがない。いったいいつ、どこで眠っているのだろう?


「気になるなら、本人にでも聞いてみるといいよ」

「うん。でも、今は……」

「私の話だね。さて、どこから話そうかな……。ううん、こうやって改まって自分の話をするのって、意外と難しいね。子供のころの話からした方がいいのかな。でも、あんまり長くなりすぎないように、かいつまんで話すね」

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