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エタリップ海賊団と海の神  作者: みーこ


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第11話 アブレリート島

 それからみんなが慌ただしく動き回っているうちに、船はアブレリート島にたどり着いた。ココに頼まれて買い物メモを書いていた宇海うみは、到着の知らせを聞いてココと共に甲板へ出た。


「わぁあ……」


 船着き場には種類も大きさも様々な船が停泊していた。大きいものだと今乗っている船の倍以上の大きさの船が一隻あり、小さいものだと手漕ぎボートが五艘ほどお行儀よく並んでいる。宇海はそれらの船を眺めながら、この中にも海賊船があるのかなと考えた。

 船が船着き場に近づくと、錨を下ろし、港にいる人と協力して、船から渡したロープを係留柱に繋ぎとめた。それから自分たちが上陸するための板を渡し、ようやく上陸することができた。これらの作業は危ないからと宇海はすみっこで見学していたが、その手際の良さに感心するばかりだった。力もいるだろうし、何度も練習しないと身につかなさそうだ。


 留守を務めるゴルタヴィナとサミニクを残し、ピカネート、アーレフ、ココ、そして宇海の四人で市場を目指した(ちなみに宇海は「その格好のままだと目立つから」とピカネートに言われてマントを羽織り、ピカネートとココは男装していた)。港を見ても明らかなように、この島は大勢の人が集まっている。まるで映画の世界に入り込んだようだ、と宇海は興奮していた。野蛮そうな男の人たちや、綺麗なドレスで着飾った女の人たち。あちらこちらの酒場から騒がしい声が聴こえ、道の両脇には所狭しと屋台が並んでいる。


「ウミ。目移りするのはわかるけど、アタシから離れるんじゃないよ」

「あ……うん」


 ピカネートに注意されて、宇海は自分がみんなから少し離れそうになっていることに気がついた。慌てて近づくと、ピカネートにがっしりと肩を掴まれ、反対側からはココに手を握られた。この子はすぐ迷子になりそうだ、と思われたに違いない。

 市場は人でごった返していた。四人は人混みをかき分けながら、目当ての品が売っていそうな店を探す。野菜、果物、香辛料、豚や鳥の肉に、新鮮な魚。見たことも聞いたこともないような食べ物がずらりと並ぶ光景に、宇海は目を奪われていた。思わず立ち止まりそうになったり、匂いに釣られてふらふらと歩いていきそうになっていたので、ピカネートとココに捕まっていなければ本当に迷子になっていたかもしれない。


 塩漬けにしたり乾燥させたりした肉や果実、ビスケットといった保存のきく食糧を購入し、宇海の服を仕立てるための布も、アーレフがはしゃぎながら何枚も買った。買い物を無事に終えた四人は、意気揚々と来た道を帰る。


「いやぁ、大量、大量!」


 両手に荷物を抱えながらピカネートが言った。


「難癖つけられることも揉め事に巻き込まれることもなく買い物ができた! これほどいい日はないね!」

「そうね。これだけの布があれば、ウミちゃんの服だけじゃなくて、みんなの分も一着ずつくらい何か作れそうだわ」


 アーレフもごきげんな様子で答える。


「えへへ。今日は奮発してステーキでも焼いちゃおうかな」

「え、ステーキ⁉ わたし食べたい!」

「いいよいいよ! ボクが腕によりをかけて作るから、楽しみにしててね!」


 ココと宇海も、今日買った食材で何を作るか、何を食べたいか、楽しく話し合っていた。

 市場を抜けると人の密度が減り、大荷物を抱えていてもぶつかる心配がなくなった。船着き場が近づいてくると多少の人だかりも見えてきたが、この人たちもこれから船に荷物を乗せて出港するんだろうな、とその時はみんなそう思い、特に気にもとめなかった。

 しかし近づいていくと、どうも様子がおかしいことに気がついた。


「おいどういうことだよ。船に乗れないって」

「おれたちにずっとここにいろって言うのか?」

「魚が腐っちまうよ」


 港にできた人だかりの中から、抗議するような声が聞こえてくる。何か問題が起きているらしい。


「いったいぜんたい、なにがあったんだい?」


 ピカネートが人だかりに近づいて適当に声をかけると、話しかけられたひげ面の男性が不満げに息を吐いた。


「ああ、なんでもどこぞの海軍が、わざわざこんなところまでおいでくだすったようだぜ。自分たちが追いかけている犯罪者がここに来ている可能性があるから、島内をくまなく探すんだと。そのせいでおれたちゃ足止めさ。海軍様が探し物を終えるまで誰も島から出るなときたもんだ。ったく」

「そいつは困ったもんだね。船に乗れないなら、オレたちは一杯飲みに行くとするよ」

「おいおい。海軍がいるとわかっていて飲むとは、若いのにずいぶん度胸あるな。ハメ外しすぎて捕まるなよ」

「ああ、わかってる。ありがとよ」


 ひげ面の男性との会話を終え、ピカネートはくるっときびすを返した。そして三人が待っているところまで戻ると、小声でこう言った。


「布だけは死守するんだよ。変装に使うからね」

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