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紅顔組の結成

10月3日。ナミキリ公国で紅顔組が結成された。イリヤたちはアニメ会社[エチュード]に所属。イリヤとクレハは原画。ミエルは背景。ルファは声優兼ナレーター。4人はテレビ会社への就職も考えたが、現状では魔法戦士のニュース映画に携われそうもない。エチュードは黎明期だし小さな会社だが勢いが感じられた。今は[虹の鯨とアップルパイ]という短編アニメを制作中。わずか2時間の作品。しかも原作が書かれたのは40年近くも前。リアルでは完全に忘れ去られた小説。1秒48コマなので従来の24コマよりキャラクターの動きがスムーズ。ようやく異世界は1秒24コマの時代から脱却しつつあった。リアルに例えるならば[虹の鯨]は[アキラ]のような位置づけだろう。冷戦末期に書かれた日本の小説。この次は[崖の館]を制作予定。これまた原作は30年近くも前の小説。佐々木丸美の代表作だが、これ以外はパッとしない。崖の館も2時間の予定。この次が[武装酒場]。樋口明雄の代表作。これも2時間の予定だが続編は作らないと社長は明言した。つまらないからだ。でもジブリが全く流行らない異世界で樋口明雄が静かなブームになりそうな予感がするという。この次を何にするか。企画会議が開かれた。まずイリヤは[バックステージ]を挙げた。バックステージはアダルトゲーム。演劇をテーマにした地味な恋愛物語だがシナリオが秀逸。主人公は地味だが脇を固めるメンツが濃くて魅力がある。次にクレハは[季節を抱きしめて]を挙げた。これはコンシューマーゲーム。ヒロインの麻由と背景の桜と主題歌は素晴らしいが主人公がアカン。伊藤誠よりも酷い。シナリオもアカン。なのでリメイク版のアニメを作りたい。次にミエルが[ぶっちぎり]を挙げた。中原裕のケンカ野球漫画。確かに長いし今読み返してもふつうに面白い。次にルファが[エース]を挙げた。本田恵子のバレー漫画。[りぼん]に長期連載され、なかなか熱い。最後に社長のカイエが推したのが宮川匡代。カイエは摩訶不思議な男であり漫画家を志すも会社の面接で落ちまくった。その理由は[いつも面接官と激論を交わすから]だという。見た目はひ弱だしあんまりそんな闘争的な人には見えない。彼は小学校入学と同時に世界児童文学全集を読み始めた。世界名作劇場も大好きで原作とアニメの違いを常にチェックしていた。更には大好きな作品の翻訳者と違う翻訳者の本を学校の図書室で借りて読み始めた。[やっぱり世界児童文学全集の訳が最高だ!!]カイエはそこまで突き詰める早熟な子だったのだ。そして世界名作劇場が[ふしぎの海のナディア]に差し掛かった頃、彼はあまりの陳腐さにがく然とした。そして2度と世界名作劇場に戻らなかった。小6の秋。酷いイジメを受けた。若い女性担任までもが陰湿なイジメに加担。カイエは[モンテクリスト伯]を読んでいたが、ラストの陳腐さにがく然とした。ダンテスは復讐を終えたのに快哉を叫ぶことはなかった。彼はしょせんフィクションだとユゴーを蔑視した。次にハマったのが[りぼん]。おばが持ってきてくれたりぼんはまさに昭和末期。底抜けに面白かった。カイエは[ねこねこファンタジア]以外全部読んだ。でも幸せは長く続かなかった。まず太刀掛秀子がヤク中で消えた。りぼんの最盛期を担った[元文学少女たち]がどんどん消えていったのだ。気の抜けたサイダーみたいになったりぼんはつまらなくなった。彼は[ポストりぼん]を探すもなかなか見当たらなかった。かろうじて[別冊少女コミック]がその役目を果たすかに見えた。そこで出逢ったのがあの宮川匡代だったのだ。「なあみんな、女の子が泣き虫の話を読んだことがあるか?」「お、男の子が泣き虫のドラマなら聞いたことあります」「今はペ・ヨンジュンの時代じゃないだろ」「そ、そうですね。韓流はたぶん来ないでしょう」「僕はやっと見つけたよ」カイエの目は潤んでいた。も、もしかしてこの人ペ・ヨンジュンより泣き虫?だが彼は社長。若干20歳でもトップには違いない。でも結局決まらなかった。宮川匡代は異世界では全く知られておらず本屋にも出回っていない。[ボーイフレンド]も有力視された。惣領冬美のデビュー作。昭和末期に描かれた熱血バスケ漫画。主人公がクールだしライバルのアキラくんも意外といいヤツ。顧問の先生との確執も見応えがある。ヒロインが病気がちで留年して歳上という設定も当時は斬新だった。ただコミックスが6巻でややボリューム不足なのが難点。異世界では女流棋士が最近注目を集めている。「[しおんの王]はどうだ?」「確かに[月下の棋士]より面白いです」「[真剣師小池重明]はもうちょい後にしようかな」「そうですね。[しおんの王]をまず先に出すべきです」ややボリューム不足ではあるが、女流棋士がイキイキと描かれている。アニメ化すればそれなりに視聴率が取れそうだ。

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