マジカル組の結成
10月2日。ナミキリ公国でマジカル組が結成された。花苗はエマ。深紅はセリ。沙恵はマヤ。那美はメルが受け持つ。マーキュリーは魔法戦士担当のグループを[マジカル組]。マルス担当のグループを[紅顔組]と呼ぶことにした。後者は紅顔の美少年に由来する。マーキュリーは8人全員が18歳で同期。エマたちの本業は不用品回収業。エマがドライバー。セリが家具及び雑貨。マヤが遺品整理。メルが古雑誌及び古本。4人は会社を立ち上げ、幸いにも事業は順調。エマたちは今日も中古のバンで街を廻りながら不用品を回収していく。最近特に増えたのがカセットコンロ。少し前にススキノで事故が起きた。たぶん若い従業員がオーブンの上にカセットコンロを置き、ガス爆発したのだ。幸いにも死者は出なかったが、ガスボンベの量が少ない状態だったのかもしれない。あれは確かに火力が強く、いまだに焼肉屋チェーンでは現役かもしれない。でもすごく燃費が悪いしガスボンベはすぐなくなる。リアルではいまだに団塊ジュニア世代で使われているようだが、ふだん使いすればガスボンベ代がかさむ。レオパレスみたいにキッチンが狭い部屋では使いにくくボヤを誘発しやすい。なので使い方が難しいのだ。遺品整理の定番は壊れた家電と相場が決まっている。孤独死した人の部屋にはたいがい壊れた洗たく機や冷蔵庫がある。このあたりはリアルと全く同じ。中には遺書の代わりにテープに遺言を吹き込む人がいる。不思議な話を耳にした。孤独死して空家になった高齢男性の家からかすかに音楽が聞こえてきた。それを毎日聞いていた高齢女性が亡くなり、後日判明したのは音楽の発生源と思われるラジカセがどこにも見当たらなかったこと。ではこの女性は毎日何を聞いていたのか?特に痴呆が進んでいたようにも見えなかったという。では高齢男性がこの女性に恋をしていて引っばったのか?いまだに真相はわからない。異世界には3流週刊誌や漫画の週刊誌がないので古雑誌の量は少ない。古本は王族ならラノベ。庶民ならホモ同人誌。そして嫁としゅうとめの確執レディースコミックがトップスリーを占める。「最近は世界名作劇場のビデオが増えたわね」「前半すっごく面白いのに。後半がヘタレなの」「どこで道を踏み外したのかしら?」「[原作にないアニメを僕たちが作っても視聴率が取れる]って中の人がカン違いしちゃったのね」「でしょうね。どこから急につまらなくなったのかはいまだに定説がないそうよ」「[ふしぎの海のナディア]からだと思うんだけどね」「たいがいみんなナディアあたりから記憶が怪しくなるからね」「[ペリーヌ物語]もかなり印象薄いけどね」「[若草のシャルロット]は主題歌だけかすかに記憶あるわ」定跡を無視した差し回しをした中の人の罪は重い。「スナイパーカセットブックも地味に増えたわね」「あの時代にしてはそれなりに頑張ってる感じがしなくもないけどね」「あとは演歌のカセットテープ」「アレは庶民に浸透する余地ないわ」帰宅したエマたちは詩の朗読を始めた。エマはパステルナーク。セリはリルケ。マヤは中原中也。メルは宮澤賢治。それが済むとヨガのエクササイズに励んだ。いち早く体幹を鍛えて実戦に生かすためだ。魔法戦士は参戦が決まり次第ヨガのエクササイズを始める。最後はあビデオ教材の作成。マーキュリーは花苗たちのために専用のビデオを作成しリアルでも学ばせるのだ。その内容はプライベートビデオと性教育と思想教育。これを逆にすればものの3分と持たずに寝落ちする。なのでまず自身を余すところなくさらけ出す必要があった。ビデオ教材はマーキュリーが自分で作成する。新国家にビデオ教材なんてないからだ。ナミキリ公国の魔王さまはエマたちに花苗たちのしつけを任せきった。もちろんイリヤたちにも全幅の信頼を置いた。アナログ社会だからビデオ教材は強力な武器になる。魔王さまはマーキュリー全員にビデオカメラを贈った。ビデオカメラはかなり高価で庶民には高嶺の花。わかりやすい説明書付き。4人はさっそくプライベートビデオを撮り始めた。初めから裸身は撮らず徐々に期待を膨らませるようなビデオにしたい。ふだんから撮影の練習をしておかなければいい絵は撮れない。エマはセリ。マヤはメルと交代でお互いのプライベートを撮ることにした。「花苗たちはどんなものを見たいのかな?」「そりゃあ男の子と変わらないでしょ」「入浴シーンは後回しね」「そうね。機材が傷んだら元も子もないわ」初めはラフな私服姿。すでに異世界は秋。名古屋より涼しい。魔王さまは撮影用にカルーン公国のマルスの正規のコスチュームを一式贈ってくれた。なので私服姿の次はコスチューム姿。部屋の中なので半袖の体操に黒のブルマーでも肌寒くない。でもブルマーの生地が薄め。「下着と変わらないね」「でもすっごく喜ばれそう」コレだけで花苗たちを悩殺できそう。