マルスの日常
9月29日。マイッチング学園とライディーン学園の対抗戦が行われた。最終種目はサッカー。勝った方が優勝。30分ハーフ。60分で決着がつかなければ10分ハーフの延長戦。それでも決着がつかなければ両校優勝。前半はマイッチング学園のボールでキックオフ。高等部1年のカイがFW。シュナがMF。ルイスがDF。レザがGK。この4人がキーマン。前半はカイたちが押し込む展開。しかしライディーン学園のGKエナオが両手を広げて立ちはだかる。彼は対抗戦に出る選手にしては規格外。たびたび奇声を発して空手技を繰り出しボールを弾く。というか彼は正面以外キャッチングしない。DFのゴーレムは敵味方関係なく削りまくる。なので前半からすでに不穏な空気が流れていた。MFにはシュミット。あんまり怖さはないが、たまに凄いプレイを見せる。ムラの激しいアスリートタイプ。FWにはガミラス。足がムチャクチャ速いが走り方が変。両手を振り乱し奇声を上げながら走るので恐れられた。前半アディショナルタイム。マイッチング学園がピンチを迎えた。ゴール前正面。約20メートルの距離で相手にフリーキックを与えた。さあ誰が蹴るか。まずゴーレムが消えた。あまりにもキックの精度が低すぎるからだ。残る3人が譲らず結局エナオがキッカーを務めた。彼は右足で地を這う低空シュートを放った。ボールは壁の下をすり抜けたが、レザが左手でファインセーブ。後半もマイッチング学園が押し気味にゲームを進めた。後半25分。左からのコーナーキック。ショートコーナーでシュナがカイにボールを預け、カイがファーポストを巻くイメージでカーブをかけた。あわやゴールかと思われたが、惜しくもポストを叩いた。後半アディショナルタイム。今度はピンチ。左からのコーナーキック。ガミラスからパスを受けたシュミットが左足のアウトサイドでカーブをかけた。あわやゴールかと思われたが、ニアポストに嫌われた。延長戦。前半は〇対〇。後半7分。マイッチング学園のチャンス。右からのコーナーキック。ショートコーナーからカイが蹴ると見せかけてシュナが強烈なシュート。慌てたエナオが右手で弾いたところオーバーラップしてきたルイスが頭で合わせた。入ったかと思われたがゴーレムにクリアされた。後半アディショナルタイム。マイッチング学園のピンチ。右からのコーナーキック。何とキッカーはエナオ。左足でカーブをかけ、直接ゴールを狙った。レザがパンチングで弾くもガミラスに頭で押し込まれ、〇対1でタイムアップ。試合後はお汁粉とたくあんが振る舞われた。「いやこの組み合わせ絶対におかしいだろ」「でも不思議と合うからな」「僕はお汁粉だけでいいよ」「たくあんは夕食用に持ち帰ろうぜ」帰宅したカイたちは部屋でゴロゴロしていた。[おばけのホーリー]が気になるが見る気力がない。でも[ツバサ主将]だけは見ないとな。彼らはなぜアニメのタイトルが[ツバサ主将]なのかよくわからない。小説のタイトルは[サッカーボーイズ]なのに。続きものなのになぜか何巻とか書いていない。他の本には必ず何巻とか書いてあるのに。ツバサ主将は謎に包まれたアニメ。キャプテン翼と全く無関係だが、なぜかアニメだけタイトルが違う。漫画のタイトルもやっぱり[サッカーボーイズ]。でもなぜか何巻とか書いていない。カイたちはツバサ主将を見てサッカーに目覚めた。異世界ではキャプテン翼は人気がなくて誰も読まない。彼らは日夜ベッドでオーバーヘッドキックの練習に励むというライディーン学園のイレブンに違和感を覚えた。「そんな高度なプレイできるわけないだろ」「僕たちはアマチュアだからな」「頭から落ちたらどうすんだ」「下手すると首が折れちまうぜ」ライディーン学園は2年生が主体。1年生主体で臨んだマイッチング学園は奮闘したといえる。両校は男子校だが、ふだんあまり交流はない。きっかけはマイッチング学園の先輩たちが山奥から放課後に自転車を飛ばし、ライディーン学園にケンカを売ろうとした。だが生徒はすでに下校済み。この年から対抗戦が始まった。ツバサ主将に対抗戦のシーンはなく、カイたちは不思議がった。対抗戦はキャプテン翼に出てくるが、誰も読んだ記憶がない。その由来は謎に包まれたままだ。異世界はあまりにも娯楽が乏しいため、リアルの小説や漫画をアニメ化するようになっている。だがツバサ主将のように原作とタイトルが変わるのは極めて珍しい。彼らはメルティープロジェクトに好感した。ちょっと歳上の彼女ができるのと変わらないからだ。カイはイリヤ。シュナはクレハ。ルイスはミエル。レザはルファが受け持つ。16歳と18歳のマッチング。しかも美人だし気立てがいい。マルスは歓喜した。「頑張った甲斐があるな」「ああ。すっごく楽しみだぜ」「僕たちふだん女の子との出逢いがないからな」「だからこそマルスに志願したのさ」