01話 温泉主追放される
「もう疲れた……。」
パーティーを追放されたレンは森の奥深くを一人さまようように歩いていた。
思い出されるのは数週間前……
▽ ▽ ▽
「おい、レン!」
依頼達成の打ち上げの最中、パーティーリーダーの戦士ガルドが唐突に俺に話しかけた。
「なんだ?」
「なんだじゃないだろ!お前は今日でこのパーティーから抜けてもらう!」
「へ?いきなり何の冗談だよ。」
「こんなこと冗談で言うかよ。お前、今日【スキル】に目覚めただろ?どんなスキルかもう一度
俺に教えてくれよ。」
この世界には、前触れもなく【スキル】に目覚める者がいる。
この俺も、その目覚めた者の一人だ。
しかし……。
「……【源泉掌握】。」
レンがそう答えた瞬間、場の空気がわずかに歪んだ。
「はぁ……やっぱりな。」
ガルドは露骨にため息をつき、額を押さえた。
「なんだよ、その反応。」
「分かってねぇのか?【源泉掌握】なんてスキル、戦闘じゃ役に立たねぇ“外れ”だ。」
「外れ……?」
レンの眉がぴくりと動く。
「そうだ。お前のそのスキル、“魔力の流れを感じて、調整できる”だけだろ?回復でも攻撃でもない、中途半端な補助。今の俺たちにはいらねぇんだよ。」
「……それだけじゃない。使い方次第で――」
「言い訳はいい。」
ガルドはレンの言葉を遮る。
「俺たちはもっと上を目指してる。次のダンジョンは命がけになる。足手まといは連れていけねぇ。」
仲間だったはずの連中も、誰一人としてレンの方を見ようとしなかった。
「……そうかよ。」
短く吐き出したその一言に、わずかな震えが混じる。
「今まで世話になった。」
誰も返事をしなかった。
その日、レンはパーティーを追放された。
▽ ▽ ▽
「……外れ、か。」
森の中でぽつりと呟く。
湿った土の匂い、遠くで鳴く魔獣の声。夜が近い。
腹も減っているし、まともな装備もない。普通なら、とっくに心が折れていてもおかしくなかった。
だが。
「本当にそうか?」
レンは手をかざす。
意識を集中すると、空気の中に“流れ”が見えた。
淡く揺れる光の筋——魔力の流れ。
「……感じる。前よりずっと、はっきり。」
彼はゆっくりとその流れに触れる。
すると、周囲の草木がざわりと揺れた。
「おいおい……」
ほんの少し“整えただけ”で、自然の魔力が活性化する。
地面の下、水脈の流れすら感じ取れる。
「これ……もしかして。」
レンは足元に手を当てる。
意識を深く沈める。
すると——
ゴボッ、と音を立てて地面が割れ、小さな泉が湧き出した。
「……は?」
自分でやっておいて、レンが一番驚いていた。
透き通る水。しかも、ただの水じゃない。
触れた瞬間、体の疲労がじわりと抜けていく。
「回復効果……?」
ごくりと水を飲む。
その瞬間、身体の奥に溜まっていた疲労が一気に消えた。
「なんだこれ……ヤバいだろ。」
レンの心臓が高鳴る。
【源泉掌握】——それは単なる“流れを感じる”スキルじゃない。
自然のエネルギーそのものを“引き出し、形にする”力。
つまり。
「俺……資源そのものを操作出来るってことか?」
水だけじゃない。
魔力、鉱脈、もしかしたら——
「……やべぇな、これ。」
さっきまでの絶望が、じわじわと別の感情に変わっていく。
「外れスキル、ねぇ。」
レンは小さく笑った。
こうしてレンは森の奥で、新たな一歩を踏み出す。




