欲しい物は誰に聞くか
予定を変更して向かった先は、セカンドタウンサウスのはずれにある農耕地。
ここにポッコロとゆーららんが新たに入手した畑があるようで、そこの見学も兼ねて合流場所をそこにした。
こっちで新しい畑を入手した理由は、ファーストタウンで入手できる畑の数が上限に達してしまったから。
そこで戦闘職の知り合いにキャリーっていうのをしてもらい、セカンドタウンサウスへ移動して新たな畑を入手したそうだ。
「入手できる畑に上限があるんだな」
「調べてみたんだけど、一つの町で所持できる畑の数が決まっているみたいだね」
手を繋いで前を歩くイクトとミコトを見守りつつ、セイリュウの説明を聞く。
一つの町で所持できる数は農業ギルドへの貢献度で決まり、それが高ければ高いほど所持できる畑の数が増えるそうだ。
ただ、貢献度を上げるには一つの町だけでなく、他の町でも農作業をすることが関係しているのではないかと推測されているらしい。
「お兄さん、こっちです!」
聞こえてきた声に前を見ると、飛び跳ねながら両手と尻尾を激しく振るポッコロを発見。
その様子が栗鼠人族なのに犬のように見えるのは何故だ。
家が飲食店だからペットを飼ったことは無いけど、そう見えて仕方ない。
隣にいるゆーららんは、その場に立って大人しくしている。
「ぽっころおにいちゃん、こんにちは!」
「うん、こんにちは」
ちゃんと挨拶をしたイクトと返事をしたポッコロが、両手でタッチを交わす。
「お兄さん、ご足労をおかけしました」
「別に気にしなくていいぞ。それより、二人に紹介したい奴がいるんだ」
丁寧に頭を下げるゆーららんにそう返した後、二人へ初対面のミコトを紹介する。
「昨日、タウンクエストで新しく仲間になったバンシーのミコトだ」
「初めまして。ミコトなんだよ」
「こちらこそ、はじめまして。ポッコロです」
「ゆーららんよ」
姿勢を正してペコリと挨拶するミコトにつられ、ポッコロとゆーららんも姿勢を正して挨拶した。
「ところでメッセージの件だが、これが現物だ」
アイテムボックスから落花生とブルットを出して二人へ見せる。
「確かに落花生と葡萄みたいな果物ですね」
「ふっふっふっ。お兄さんから連絡を貰った後で調べたんですが、この二つはまだ未発見ですよ」
なんだって? ということはこれの入手方法だけでも、金になるってことか。
ミミミか玄十郎かイフードードーはログインしているかな。
「なのでミミミさんへ連絡を取って、新情報があるから来てほしいと言っておきました。すぐに来ると言ってましたから、もうすぐ来るかと」
「ナイスだ、ゆーららん」
好判断にサムズアップすると、ゆーららんもサムズアップで返してくれた。
「これのおねえちゃん、くるの?」
ミミミのことをヘドバンの情報屋と覚えているイクトが、レッサーパンダ耳のカチューシャを押さえてヘドバンしだした。
どういうことか分からずに首を傾げるセイリュウ達へ説明すると、ポッコロとゆーららんは腹を抱えて大爆笑、セイリュウは口を押えて震えながら笑いを堪え、一人無表情で冷静なミコトはなるほどと頷く。
「こ、このこと、ミミミさんは知っているんですか?」
「イフードードーが伝えていれば、知っているはずだ」
前に同じやり取りをイフードードーとした時、今度ミミミへ教えるとか言っていたからな。
「おーい!」
おっ、噂をすればなんとやら。ミミミがウサギ耳を揺らしながら駆けてきた。
「二人ともお持たせ……ってトーマさん!? ひょっとして新情報を見つけたのって、またトーマさん!? それとイフードードーから聞いたわよ、ヘドバンの件!」
急ブレーキを掛けて滑るように現れたと思ったら、俺を見て騒ぎだした。
笑っていると思ったら驚いて怒ってと表情がコロコロ変わるし、その際に大げさに跳ねたり強く地団駄を踏んだりと反応がいちいち激しい。
オーバーリアクションは今日も健在のようでなによりだ。
「ひとまず落ち着こう。ヘドバンの件は一旦置いといて、情報の話をしよう」
「私としてはヘドバンの件を問い詰めたいんだけどっ!? イフードードーってば、五分ぐらいずっと大笑いしていたのよ!」
ついさっきまで、ポッコロとゆーららんも大笑いしていたよ。
あっ、思い出したセイリュウとポッコロとゆーららんが笑いを堪えている。
「こんにちはー、うさぎのおねえちゃん。きょうもこれするの?」
そこで再びヘドバンするかイクトよ。
「「「ぶふうっ!」」」
とどめを刺されて笑いを堪えられなくなった三人が、噴いた直後に大爆笑。
付近の農業プレイヤーが何事かと振り向くほど大笑いするから、ミミミも怒り狂ってヘドバンしだしてさらに大爆笑が続く。
「カオスなんだよ」
俺と同じく笑わずにいたミコトの呟きに無言で頷き、話が進まないから皆を落ち着かせて場を治めた。
「はー、はー。あー、久々に大笑いした」
「こんなに笑ったのは、お笑い特番でドツボにはまったネタを見て以来だよ」
「ミミミ、ドンマイ」
「あぁもう! なんでこうなるのよー!」
頭を掻きながら天を仰ぐミミミへ、そのオーバーリアクションが原因だと心の中で呟く。
ほら見ろ、早速イクトが面白がって真似しているぞ。
「さてと、それはそれとして情報を伝えたい」
「私的にはそれで片付けてほしくないけど、何かしら?」
腕を組んで不機嫌気味なミミミへ、落花生とブルットを見せて入手した経緯を説明する。
「へえ。通い詰めることで買える種類が増えるって情報はあるけど、そのパターンは聞いたことがないわね」
ガニーニのところで買える種類が増える話は、前にバーテンダーから聞いて知っている。
確か栽培している別の物を売ってもらえないかと交渉したり、常連になるために何度も買いに行ったり、収穫や製造を手伝ったりしたんだってな。
「ガニーニのところで売っていない物を、どこで買えるか聞いていないってことか?」
「むしろ、どうしてトーマさんがそんなことをしたのか聞きたいわ」
どうしてと言われてもな……。
「欲しい物があれば、取り扱っているところに聞くのは当然だろ」
「はあ……」
至極普通のことを言ったはずなのに、何故かミミミが溜め息を吐いた。
「あのねぇ。情報が欲しければ、まずは私のような情報屋に聞くものじゃない?」
「いや、まずは専門家だろ」
肉を探して八百屋や魚屋に行く奴はいない。
だから餅は餅屋とばかりに、木の実や果物を取り扱っているガニーニに聞いたんだ。
「現実ならそうかもしれないけど、ここはゲームの中で相手はNPCなのよ? 確かにNPCが情報を持っている可能性はあるわ。でも持っている保証は無いじゃない」
「だからって、尋ねて損は無いだろう?」
専門家に欲しい物を入手したいとお願いしても、名前は知っているけど入手ルートを知らない、なんてのは無い話じゃない。
それに尋ねるだけならタダだし。
「そりゃそうだろうけど」
「諦めてミミミ。トーマ君はこういう人なの」
今の発言はどういう意味なのかな、セイリュウよ。
「はぁ、もういいわ。とにかくこの情報は買い取らせてもらうわ。代金は――」
「おっと、それとは別件でこいつの情報が欲しくないか?」
「ぬぐぅ。そうだったわね、その子のことがあったわね。教えてちょうだい」
柵越しに畑をずっと見ているイクトとは違い、隣で突っ立っているミコトの頭に手を置いて尋ねると、悔しそうな表情で情報を求めてきた。
特殊条件のことは知っているから、教えるのはミコトのステータスやスキル構成。
あとは参考までに、テイムする前の様子も伝えておく。
「ふむふむ、なるほどね。オッケー、じゃあさっきのと合わせて代金を支払うわ」
今日の情報くらいじゃ、オーバーリアクションはしなかったか。
「あっ、でもその前に一つ情報を買わない?」
おっと、今度は向こうからの売り込みか。
いつも買ってもらってばかりだし、たまにはこっちが買ってもいいな。
「一体何の情報なんだ?」
「ああ、ごめんなさい。トーマさんじゃなくて、ポッコロ君とゆーららんちゃん向けなの」
「僕達ですか?」
「なんの情報なの?」
「ひょっとするとだけど、今の二人じゃブルットを育てられないかもしれないわ。その理由と、育てるために必要な情報よ」
なんだって? ブルットを育てられないって、どういうことだ?
「「その情報、買うので教えてください!」」
「まいどありー!」
ミミミよ、まさかとは思うけど俺への情報料を払うために、二人へその情報を売るんじゃないだろうな?
そんな疑いを抱いたけど、語られた内容はとても価値があった。
なんでもサンの実やシュトウを育てようとした農業プレイヤーが、農業ギルドで実物と交換して苗を入手したものの、植えたらあっという間に枯れてしまったらしい。
すぐに農業ギルドへ駆け込んでNPCの職員へ尋ねたところ、果樹を育てるには農業スキルとは別に育樹スキルを習得する必要があるそうだ。
そしてポッコロとゆーららんのどちらも、その育樹スキルを習得していない。
「じゃあ、今ブルットの苗を入手して植えても枯れるだけ?」
「そうなるわね。しかも育樹スキルの習得方法は不明だから、知っていたら教えてほしいくらいだわ」
がっくりと肩を落とすポッコロとゆーららんだけど、こればかりは仕方がない。
「ぽっころおにいちゃん、ゆーららんおねえちゃん、げんきだして」
「あーあ。ウサギのお姉さんのせいで、二人が泣いちゃったんだよ」
「私のせいなの!? ていうか、どっちも泣いてないわよね!?」
慰めるイクトはともかく、ミコトはズバッと言うなあ。
イクトの微妙な歌にもハッキリ言うし、そういう性格に設定されているのか?
ただ、泣いていないのに泣いていると言うのはやめてやれ。でないとミミミの方が泣きかねない。
「トーマ君。この状況を治めないと、またカオスになりかねない」
「だな」
セイリュウの意見に同意して割って入って場を収めた後、ミミミはポッコロ達から情報料を受け取って俺へ情報料を支払うと、検証があると言い残して去って行った。
やっぱり俺への支払いのため、ポッコロ達へ情報を売ったのか?
「そういう訳でお兄さん。落花生の方は間違いなく育てますが、ブルットは育樹スキルを入手するまで待ってください」
「分かった。その時はよろしく頼む」
「任せてください! ごっほごっほ!」
背筋だけでなく、耳も尻尾もピンと伸ばしたポッコロが力強く胸を叩いたまでは良かったけど、咽てせき込んでいる。
締まらないなと苦笑しつつ落花生を預け、ついでに野菜とポーション用に薬草をいくつか買わせてもらい、二人と別れた。
その後はシープン一家の牧場へ行き、牛乳と乳製品を必要なだけ買って遊ぼうと強請る子供達と少しだけ遊んでやったら牧場を後にして、作業館へ向かう。
受付でいつも通りオープンスペースの作業台を選んだ後、セイリュウから個室を勧められたけど、今回は主に試作で秘密の物を作るわけじゃない。
だからそのままオープンスペースから変更はせず、ついでにオーブンを借りた。
ただし、同じオープンスペースでも一階の作業場は埋まっていたから、今回は二階の作業場だ。
「この建物で何するの?」
「ますたぁが、おいしいごはんつくってくれるの!」
階段を使わず浮遊して二階へ移動するミコトの問い掛けに、イクトが嬉しそうに触覚とレッサーパンダ耳を動かしながら、両手を挙げて簡潔すぎる説明をした。
間違ってはいないけど、もう少し具体的に説明してくれ。
「ねえトーマ君。そのオーブンは何に使うの?」
「今回最初の飯は、セツナから貰った余りのスープとストックのパンって言っただろ? それにちょっと手を加えようと思ってな」
俺が作ったからちゃんと味がするとはいえ、そのままだと味気ないしな。
特にミコトには初めて食べてもらうんだし、少しでも美味い物を食べてもらいたい。
そういう訳で二階の作業場で借りた作業台に到着したら、前掛けとバンダナを表示させる。
さてと、試作の前の腹ごしらえといきますか。
「ねえ見て、あそこ」
「ひょっとして赤の料理長か?」
「あれが噂のイクト君とミコトちゃんね」
「今日は何を作るんだ?」
周囲がざわざわしだしたのは気にせず、セツナから貰ったタウンクエストで作ったスープの残りが入った鍋を出し、少し冷めかけだからコンロで弱火に掛ける。
セイリュウ達が椅子を運んでくる間にハーブを刻み、ニンニクをすりおろし、シープンの牧場で買ったチーズを薄く切っておく。
次いでオーブンに何も入れず動かして内側を温めている間に、ストックのパンを二つ用意して縦切りで二つに切り分ける。
内側の面にシープンの牧場で買ったバターを薄めに塗り、刻んだハーブを散らしたら温めておいたオーブンで焼く。
「コッペパンのトーストだね」
「そういうこと」
焼いている間にストックのパンをさらに取りだし、同じく縦切りで二つに切り分けておく。
おっ、バターとハーブの良い香りがしてきたぞ。
「良い匂いがするんだよ」
「はやくたべたい」
無表情ながら興味深そうなミコトとワクワクした表情のイクトが、オーブンに近づいて釘付けになっている。
熱いから危ないぞと注意を促しつつ、温まってきたスープをお椀へよそってスプーンを用意する。
焼き終わった音がしたらオーブンからパンを出して皿に乗せ、作業台の上に置く。
コッペパントースト 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:1 品質:6 完成度:89
効果:満腹度回復9%
MP最大量+10【1時間】 魔力+1【1時間】
食パンじゃなくてコッペパンを使ったトースト
バターとハーブの風味が絶妙にマッチ
溶けたバターがしみ込んだパンを存分に味わってください
トーストだから大丈夫だろうけど、念のため一つ取って味見する。
ん、美味い。噛むと溶けてパンに染みたバターが口の中に広がってくるし、薄く塗ったからパンがバターの味に支配されていない。
そしてハーブとバターの香りも良い感じに調和している。
「ますたぁ、たべていい?」
待ちきれない様子でこっちを見るイクト。
同様にセイリュウも待ちきれない様子でこっちを見てるし、ミコトは無表情のままトーストとスープをじーっと眺めている。
「いいぞ。俺は追加を焼くけど、気にせず食え」
「はーい!」
「いただきます!」
「美味しそうなんだよ」
返事をしてトーストへ手を伸ばす三人を見つつ、次のパンにもバターを薄く塗り、すりおろしたニンニクを少量塗る。
「おいしーっ!」
「コッペパンのトーストもいいね。食パンとは違った食感だし、ハーブの香りと微かな苦みも効いてる」
満面の笑みで食べるイクトと、じっくり味わうセイリュウはいつも通りっと。
さて、ミコトの反応はどうだ?
「……」
無言でリスみたいにコッペパントーストを食べている。
凄まじい勢いだから、気に入ってもらえたようだ。
そんな様子を見ながらニンニクを塗ったパンをオーブンで焼き、次のパンにはバターを塗らずに薄く切ったチーズを乗せ、軽く胡椒を振っておく。
「昨日も飲んだけど、やっぱりこのスープ美味しい」
「おやさいいっぱいでおいしー」
「……」
スープを飲んでもミコトは無表情かつ無言だけど、口を直接付けて目を輝かせながら飲んでいるから、気に入ってもらえたようだ。
「みことちゃん、おいしい?」
「美味しいんだよ。リュウの作ったご飯も美味しかったけど、マスターのも美味しいんだよ」
へぇ、リュウも飯を作れるのか。
そういえばドゥームの弟子だったんだっけ。なら料理が出来てもおかしくないか。
なにかの節にまたあの集落に行ったら、話をしてみるかな。
おっ、次が焼けたな。
「はいよ二つ目、こっちがガーリックバターな」
ガリバタコッペパントースト 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:1 品質:6 完成度:90
効果:満腹度回復9%
体力+1【1時間】 運+1【1時間】
おろしニンニクとバターが香るコッペパントースト
どうしてニンニクとバターってこんなに合うのでしょうか
食べた後の匂いは気にするな!
ガーリックとバターだからガリバタってか。
本当、なんでニンニクとバターって合うんだろうな。
そう思いつつ味見して、バターの塩味と甘味に加わったニンニクの微かな刺激を堪能し、次のチーズと胡椒を乗せたパンをオーブンへ入れて焼く。
「ますたぁ、これにおいすごいけどおいしい!」
「おろしたニンニクだから香りが強いけど、それが食欲を掻きたてるね」
「……っ! っ!」
ミコト、美味いのは分かったから、それを伝えるために食べながら身振り手振りでパタパタ動くのは行儀が悪いからやめろ。
「ついでに普通のパンも出しておくから、スープを浸けて食べてくれ」
「はーい!」
「それ、絶対に美味しいやつ」
「食べるんだよ」
追加でストックのパンを出すと、揃ってスープに浸して食べだした。
こちらも反応は上々。でもミコトは変わらず無言だ。
食べる勢いは凄いから口に合わない訳じゃない。
ということは、ミコトは食べる時は無言のタイプなのかな。
そう思いつつ焼けるのを待ちながら、自分のスープを飲む。
「ただのコッペパントーストなのに美味そう」
「そりゃ、ハーブとかニンニクで小技を効かせてるからな」
「というかその二つの香りがあるから、美味しそうなのよ」
「今もチーズの良い匂いがしているしね」
「ログアウトしたら食パン買ってきて、明日はトーストにしよう」
うん? なんか周囲の視線が集まっているな。
そんなに変わった物は作ってないのに、なんでだ?
おっ、チーズのも焼けたか。
オーブンから取り出すと、パンから垂れそうなほどチーズが溶けて美味そうだ。
チーズコッペパントースト 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:1 品質:6 完成度:87
効果:満腹度回復10%
知力+1【1時間】 器用+1【1時間】
溶けたチーズがなんともいえない魅力を発するコッペパントースト
バターの有り無しは個人の好みでどうぞ
胡椒の刺激が良いアクセント
個人的にはチーズを乗せるなら、バターは塗らない派だ。
双方の種類や量にもよりけりなんだろうけど、くどくなりそうな気がするからバターはいらない。
その代わり、今回のように胡椒を振ったりピザトースト感覚でケチャップを乗せたりしている。
味も問題ないから作業台へ置くと、奪うように三人が手にしてかぶりついた。
「あふっ! あふっ! まふたぁ、これあふくてのびる! でもおいふい!」
イクト、落ち着いて食え。
美味いのは分かったから、伸びて糸を引くチーズが落ちないようにするんだ。
「伸びるぐらい溶けたチーズに胡椒のピリッとした辛さ。これでソースや具材があれば、ピザトーストだね」
伸びたチーズを上手に食べ、そう呟くセイリュウに同意する。
さすがに本格的なピザは無理だけど、ピザトーストぐらいならいつか作ってもいいな。
「……」
そしてミコトはまだ無言だけど、ものすごい勢いでリスのように食べている。
だけど溶けたチーズをその勢いで食べてると……。
「あちっ!」
ああほら、熱さにやられた。
誰も取らないから、落ち着いて食べなさい。
「ますたぁ! さいしょのもっとちょうだい! あとすーぷおかわり!」
「トーマ君、私はこのチーズにバターを少し塗ったのをちょうだい」
はいはい分かったよ。この調子だと試作とは別に、ストックのパンを追加で作っておかなくちゃならないかな。
えっ? ミコトはガーリックのやつをおかわり? 了解。




