ままならない
火曜日の日中。
平日だからいつも通り登校して授業を受けている中、一つの悲劇が起きた。
その悲劇に見舞われたのは揚げ物狂いの幼馴染、早紀。
机に伏せて落ち込み、重くて暗い空気を発している。
そこには昨日タウンクエストに参加して、しかもクリアできたこともあり、朝からとても高かったテンションの面影は一切見られない。
だけどその理由が理由だから、俺と長谷と狭山は呆れ、能瀬と桐生と晋太郎は仕方なさそうな表情を浮かべ、健と山本は笑みを浮かべている。
「まったく。今日の数学は小テストがあるって、先生が先週から言っていたじゃない」
頭痛に耐えるような素振りをする長谷の言う通り、さっきまで受けていた数学の授業は小テストだった。
なのにそのことをすっかり忘れていた早紀は、碌に解答できなかったらしい。
一応適当に書いて埋めたから空欄は無いそうだけど、結果はおそらく散々だろう。
「点数が悪い人は当日の放課後に補習があることも、ちゃんと言っていたよ」
平坦な口調で淡々と狭山が口にしたことも、先週から言われていた。
このクラスの数学を担当しているのは担任だ。
だから小テストは帰りのホームルームで返却され、40点未満なら放課後に補習を受けることになる。
勿論、今日の放課後に。
「わーん! なんで教えてくれなかったのさ!」
「甘えるんじゃない」
俺はお前の幼馴染で友人でクラスメイトだけど、そこまで面倒見切れるか。
「もう。自業自得よ」
「さすがに小テストを忘れるのは想定外」
桐生と能瀬の意見に同意する。
課題を忘れるのは駄目だけど、小テストを忘れるのはもっと駄目だろう。
「部活の先輩に聞いたんだけど、先生の補習って授業よりもずっと厳しいんだって」
「そんな情報いらないー!」
プラモやフィギュアや二次創作のイラスト。そういった類の作製を主体に活動する、第二美術部に所属している晋太郎からの情報に、早紀は耳を塞いで叫ぶ。
「まあまあ、元気出せよ。俺もヤマが外れて、ほとんどできなかったんだぜ」
「あーしも一夜漬けで微妙なとこだからさ、駄目だったら大人しく一緒に補習受けよ」
健と山本が笑みを浮かべているのは、補習仲間ができるかもしれないからか。
というかこの二人も、先週から言われているのにどうしてヤマを張ったり一夜漬けをしたりするんだ。
忘れていた早紀よりはマシだけど、あまり褒められたものじゃない。
「いーや、まだ分からないよ! ワンチャン、奇跡が起きるかもしれない!」
個人的にはこんなことに奇跡を使いたくない。
どうせ起きてほしいと願うなら、もっと重要な場面で願うね。
「でないと今夜のログインが大幅に遅れて、遊べる時間が減っちゃうじゃないか! 下手したら、ログインしている時間無くなっちゃうよ! トーマの新装備を見繕うつもりだったのに」
問題はそこなのか。
ゲームや俺の装備よりも成績とか内申とか、もっと別のことを気にしろよ。
高校生活をエンジョイするのは構わないけど、留年しないように最低限の勉強はしておこうぜ。
「そうそう。ログインといえば、私と美蘭は塾の関係で今夜のログインができなくなったわ」
「急にごめんなさい。二人で申し込んでいた特別講義、来週のはずだったんだけどそれは塾からの連絡ミスで、今日だっていう連絡が今朝にあったの」
そういえば桐生と長谷が通っているのは、同じ塾だったな。
しかし連絡ミスで当日にいきなりとは、その塾の管理体制は大丈夫か?
「えっ? ということは、今夜のログインは私と桐谷君だけ?」
「待って! 僕にだってまだワンチャンあるから!」
なんか驚いている能瀬に続いて、早紀はまだ諦めの悪いことを言っている。
そりゃね。マークシート方式や選択問題が多いなら、運が良ければなんとかなる可能はあるよ。
だけど小テストがマークシート式のはずがないし、数学で選択問題なんてそうそうあるものじゃない。
実際、さっきの小テストに選択問題は無かった。
適当な解答で全部埋めたそうだけど、それこそ奇跡でも起きないと補習は回避できないだろう。
「というか三人もログインできないなら、今日はログインしなくてもいいんじゃないか?」
「そんなことないよ! 二人だけでもログインしよ! 装備は皆がいないから後日にするとして、桐谷君は試作したい物があるんでしょ? 皆がいない間に、それをやっておけばいいんだよ! 私は昨日のタウンクエストで目立った桐谷君が狙われてもいいように、護衛に付くから!」
「おっ、おぉっ?」
能瀬がグイグイ主張してくるなんて珍しいけど、言っていることは尤もだ。
タウンクエストでやろうと思っていた試作ができてないし、食材や調味料を補充しておきたいし、ミヤギから購入してアイテムボックスに入れっぱなしの肉類の味見をしておきたいし、フィシーの所で買った調理器具で未使用の物の使い勝手の確認もしておきたい。
だけど、どれもそう急ぐようなことじゃないのも事実だ。
とはいえ、新しく加わったミコトも含めて七人分の飯を作りつつ、それをやるのは大変だよな。
でも今日なら作るのは四人分で済む。
あとはミコトの歓迎会を開きたいからその下準備をしたいし、その席には緊急クエストに協力してくれた四人もお礼に招待したい。
……うん、ここはやっぱり能瀬の提案に乗っておこう。
「じゃあ、そうさせてもらうか」
「今回は桐谷君の都合だけで動いていいからね! 私はそれに同行するだけだから!」
分かったから落ち着け。
どうして今日は、そんなに押しが強いんだ。
飯か? ゲーム内での飯に関することだからか?
「ならそうさせてもらうけど、いいのか?」
「いいの!」
向こうが構わないと言うのなら、こっちが断る理由は無いから承諾すると、能瀬はやたら嬉しそうにして桐生と長谷と山本と狭山から頑張れと声を掛けられた。
何をがんばれと言っているのか分からないし、ファイトとも言っているから、俺の用事で振り回されると思っているのか?
心配せずとも、そんなに振り回すつもりはない。
「ねえ! 僕が補習決定なのを前提に話を進めないでくれる⁉」
いや、それはもう決定的だろう。
「ちくしょう、斗真テメェ! なんだかんだで二人きりとか羨ましいぞ!」
「やめなよ健君、見苦しいよ」
ああ、言われてみればそうだな。
昔からの付き合いがある、早紀や健や晋太郎と二人でいることは多いけど、能瀬と二人なのは今までに無かったっけ。
だいたい他の誰かが一緒にいるし、公式イベントでは赤巻布青巻布黄巻布とか薬吉が一緒だった。
そんなことを思い返しながら、笑みを浮かべている能瀬を見ると一瞬ドキリとした。
今度は俺が落ち着け、変な意識をするんじゃない。
そもそも、ログインすればイクトとミコトがいるから、正確には二人きりじゃないんだぞ。
「うぅ……。どうか補習を免れていますように」
そして早紀は潔く諦めろ。
これまでの早紀との付き合いの経験上、奇跡は起きないと断言してもいい。
往生際の悪い早紀は、その後の休み時間も昼休みも奇跡の補習回避を願ったものの、やっぱり現実はそう甘くなかった。
「うわあぁぁぁんっ!」
帰りのホームルームで返却された答案を見て声を上げ、崩れる姿で結果を察した。
同じく補習の可能性が高かった健は、苦々しい表情で頭を掻いてるから駄目だったんだろう。
そしてこれまた補習の可能性があった山本は、小さくガッツポーズをしているから補習を回避できたようだ。
他の皆は余裕で補習を回避できたようで、誰一人として落ち込んでいたり渋い表情をしたりしていない。
無論、俺も余裕で回避できている。
「今日のログインがーっ!」
自業自得だ。自分を恨んでしっかり補習を受けるんだな。
置いて行かないでと手を伸ばす早紀の健闘を祈り、こっそり補習から逃げようとする健を捕まえて教室へ引き摺り戻して担任へ引き渡し、補習を受ける二名と担任を残す教室から去った。
「まったく早紀ってば、何をやっているのよ」
呆れる長谷に同意する。これまでの付き合いで、同じことを何度も思ったもんだよ。
「やればできるはずなのに、どうしてやらないのかしら?」
桐生の言う通り、早紀はやろうと思えば勉強だってできないことはない。
だからこそ、高校に受かったんだからな。
その時は中三の時の担任も驚いていたっけ。
「勉強が心底嫌いだから?」
「だからって、やらないのは拙いよ……」
能瀬の推測にオドオドしながら返す晋太郎に、これまた同意する。
親じゃないから成績云々とは言わないけど、最低限はやってもらいたい。
まあ試験勉強の時ぐらいは協力しようと、幼馴染だからこその情けと甘さを自覚しながら、皆と別れてちょうど来たバスへ乗車した。
それからはここ最近と同じように、約束の時間まで店を手伝って、事前に能瀬と連絡を取り合ってからログインの準備をしてログイン。
沈み込む感覚の後、サードタウンジュピターの広場に降り立った。
「今日は、よろしくね、トーマ君」
おっと、セイリュウは先に来ていたか。
なんか緊張気味だけど、こっちもよろしくと返していたらイクトとミコトが現れた。
「ますたぁ!」
「マスター、待っていたんだよ」
笑みを浮かべたイクトはすぐさま抱きついてきて、無表情のミコトは両手で控えめに俺の左手を握ってきた。
「ああ。今日は俺とセイリュウだけしかいないけど、よろしく」
「はーい!」
「分かったんだよ」
右手を上げて元気よく返事をするイクトと、大人しく頷くミコト。
どっちもちゃんと返事できて偉いぞ。
「うん、そうだったね。イクト君とミコトちゃんいたよね。トーマ君と二人きりじゃないんだよね……」
なんかセイリュウが、暗い表情で俯き気味になってブツブツ呟きながら落ち込んでる!?
どうした、何か落ち込む要素があったか?
「おねえちゃん、どうしたの?」
「元気無さそうだよ? 他のお姉ちゃんいなくて、寂しいの?」
「えっ? あっ、ううん、大丈夫。なんでもないの」
いつものセイリュウに戻って大丈夫アピールをしているけど、本当に大丈夫だろうか。
「……言えないよ。二人がいて、トーマ君と二人きりじゃないのが残念だなんて」
と思ったら、またブツブツ言いだしたよ。
学校では押せ押せだったのにゲーム内だとこの調子だなんて、今日は情緒不安定なのか?
「それでますたぁ、きょうはどこにいくの?」
「ん? あぁ、まずはセカンドタウンサウスへ転移しよう」
それでガニーニとスコーピとシープン一家の下へ行って、コンの実とシュトウとシュウショウと香辛料と乳製品を買おう。
できれば残り少ないサンの実とネンの実も欲しいけど、町の外でセイリュウが採取した以外の入手方法を知らないし、料理ギルドにも売っていない。
どこかで入手できないかガニーニに聞いてみて、分からなかった時はログインしている料理プレイヤーか、情報屋の誰かに聞いてみよう。
それでも駄目だった時は、セイリュウがいるから採取しに行こう。
「わかったー。しゅっぱーつ!」
イクトの声を合図に、転移屋を目指して歩きだす。
両手はイクトとミコトにそれぞれ繋がれ、二人の歩幅に合わせて歩く後ろにセイリュウが続く。
そのセイリュウとは出発前にパーティーを組んでおいたから、万が一離れ離れになってもすぐに場所が分かる。
「なあ、あれが噂のバンシーか?」
「無表情ロリっ子、キタコレ!」
「ていうかあの集団、家族みたいじゃない?」
「どう見ても子供達に手を引かれる父親と、それを後ろで見守る母親だな」
「次男と次女に手を引かれる長男と、それを見守る長女にも見えるわね」
「見守り対象発見、隊員達へ報告だ」
「「サー、イエス、サー!」」
何を言ってるのかよく聞こえないけど、周りが騒がしい。
原因はやっぱり、妖精のミコトが珍しいからか?
とりあえず嫌な感じはしないからそのまま転移屋へ行き、代金を支払ってセカンドタウンサウスへ転移。
まずはスコーピの店へ向かい、ジンジャーと黒ゴマと粉ビリンを購入。
続いてガニーニの工房へ赴き、コンの実とシュトウとシュウショウを購入し、サンの実とネンの実をどこかで買えないか聞いてみた。
「どちらもうちでは育てていないが、知り合いの店にならあるからそっちへ行くといい」
そう言って、知り合いの店とやらを教えてくれた。情報、ありがとうございます。
ほら行くぞ、イクト、ミコト。そんなにジュースをガン見しても買わないからな。
「ますたぁ」
「マスター」
そんなに欲しいと訴えるように目をキラキラさせて、甘えた声で引っ付いてきても一本ずつしか買わないぞ。
ほら、喧嘩しないように同じシュトウジュースを一本ずつな。
「わーい!」
「ありがとうなんだよ」
「……」
ジト目で見ないでくれ、セイリュウ。二人は喜んでいるからいいじゃないか。
俺達にとっては無味でも、二人にとっては甘いのか美味そうに飲んでるから、それでいいだろう。
二人が飲み終わったら瓶を返却し、教えてもらった店へ向かう。
マップデータを確認しながら辿り着いたのは、町の片隅にひっそりと建つ年季の入った小さな建物で、看板にはワンダフル青果店とある。
「わー!」
「おー」
目を輝かせるイクトと、無表情ながら関心の声を上げるミコトが、店頭に並ぶ野菜や果物を凝視する。
サッと見渡して商品を見た感じ、これまでに扱った食材がほとんどで、その中にはサンの実とネンの実もハーブもある。
おっ、クルミやランダムキノコまで。
だけどランダムキノコは扱うのが難しいし、クルミは前にセイリュウが採取してくれたのをまだ使っていないから、買わなくていいや。
それらを除けば、初見の食材は落花生と真っ青な葡萄の二つか。
落花生はともかく、この真っ青な葡萄はなんだ?
ブルット
レア度:2 品質:3 鮮度:71
効果:満腹度回復2% 給水度回復1%
青い皮に覆われた紫の果肉を食べる甘酸っぱい果物
ちょっと渋いが皮ごと食べることも可能
水分が多く、噛むと果肉から甘酸っぱい果汁が溢れる
説明だけで判断するなら、水分が多い葡萄って感じかな。
真っ青な色がちょっと不気味だけど、これも買っておこう。
干し葡萄にしてパン生地に混ぜればぶどうパンが作れるし、スムージーの材料にもできそうだ。
「あれっ、お客さん? ごめんなさい、いらっしゃいませ!」
商品を見ていたら、オレンジの髪と毛並みをした垂れ耳があるNPCの少女が、尻尾を振りながらエプロン姿で奥からやってきた。
店の名前からすると、確実に犬人族だな。
「こんにちは。ガニーニに教わって来たんだ。サンの実とネンの実はあるかい?」
「どっちもあるよ。他に欲しい物はある?」
「落花生とブルットを頼む」
「はーい」
少女が返事をすると目の前に商品が表示され、サンの実とネンの実と落花生とブルットを選んで購入する。
「ますたぁ、あのあおいのもかうの?」
「ああ。甘酸っぱくて美味いぞ」
「あまいの⁉」
「それは楽しみなんだよ」
おいおい、甘いだけじゃなくて酸っぱくもあるんだぞ。
ちゃんと甘酸っぱいって言ったのに、聞こえなかったのか?
「葡萄みたいだから、ジュースにもできそうだね」
「できますよ。ブルットのジュース、甘酸っぱくて美味しいですよ」
NPCの少女が美味しそうな表情でそう言うなら、期待できそうだ。
渋みのある皮を剥いてミキサーにかければ、それだけで果肉入りジュースになるから作ってみるかな。
「あと、専用の道具とか設備があればお酒も造れるよ。お父さん、ブルットで造ったお酒が大好きなの」
酒か。今まで手を付けてなかったけど、これを機に造ってみてもいいかもしれない。
未成年で飲めないっていうだけで、造ることはできるからな。
見た目は葡萄みたいだから、潰して醸造樽に入れておけばワインみたいな酒になるだろう。
そういうことならブルットを追加購入しておこう。
なにせ予算はタウンクエストの報酬でたっぷりあるからな。
ついニヤけつつブルットを追加購入したら、NPCの少女に見送られて退店して、次はシープン一家の下へ向かう。
「ぽっぽらみょりょー、にゃにゅにぇっにぇっ♪」
「イクトの歌は変なのばっかりなんだよ」
「えぇっ⁉」
手を繋ぐイクトがいつもの微妙な歌を口にしていると、反対の手を繋ぐミコトが鋭く指摘する。
そして昨日同様に繰り返される、微妙な歌と鋭い指摘の応酬。
できれば間に俺を挟まずにやってもらいたいけど、微笑ましくてつい表情が緩む。
「本当の姉弟みたいだね」
「そうだな」
後ろから声を掛けてきたセイリュウの言う通り、まだ出会ったばかりなのにもう仲が良い。
そういう設定だからなのか、それとも俺にテイムされた同士だからなのか。
まあ理由はなんでもいいさ、喧嘩しないのならな。
ん? なんかメッセージが届いたぞ。
「ちょっと待ってくれ。メッセージが届いた」
先へ進もうとするイクトとミコトを止め、手を放してもらって通行の邪魔にならないよう端に寄り、届いたメッセージを確認する。
宛先はポッコロか、でもって件名が野菜の変異種について。
そっか、この前の変異種の野菜についての件か。
あれ、どうなったんだろう。
ふむふむ、あーなるほど。これは残念だ。
「トーマ君、誰から?」
「ポッコロだよ。前に教えた変異種の野菜の件」
メッセージの内容を要約すると、こんな感じだ。
変異種の野菜を農業ギルドへ出して種や苗は貰えた。
でも普通の野菜に比べて育つ日数が三倍かかり、収穫量も少ないとギルド職員から教わった。
だから変異種の野菜をある程度確保するまでは時間が掛かります、とのこと。
「というわけでから、変異種の野菜はしばらく待ってくれ」
「え~、あのとろとろのなす、たべられないの?」
残念な顔をしないでくれイクト。俺も使えなくて残念だから。
セイリュウもセイリュウで、無言で食べたかったのにって表情を向けないくれ。
無表情のミコトからも、なにそれとばかりに興味津々の眼差しが向けられている。
三者三様の反応を流し、ポッコロへ了解の返事を書く。
ついでだから落花生とブルットを入手したこと旨を書き、メッセージを送信。
すぐに返信があった時に備えてそのまま待っていたら、予想通り返事があった。
どちらも入手したことがないから、できればすぐにでも会いたいとあり、現在地は都合が良いことにセカンドタウンサウスだ。
「皆、予定変更だ。牧場の前に、ポッコロとゆーららんへ会いに行くぞ」
二人の名前を口にしたら、ミコトが首を傾げた。
「誰?」
「りすのおにいちゃんと、くらげのおねえちゃん!」
イクト、それじゃ分からないって。
ほらみろ、ミコトが首を傾げてるぞ。
「また増える……。二人きりから遠ざかる……」
そしてセイリュウも不機嫌にならないでくれ。
今日は俺の都合で動いていいって、言っていたじゃないか。
そう思いつつポッコロと合流する場所を決めたら、四人でそこへ向けて出発した。




