飯に圧力かけよう
ダルク達に出す予定の晩飯は既に決めてある。
まずは下準備のため、シイタケの石突きを取って傘も茎もスライス、ニンジンは薄めの輪切り、エリンギをやや厚めに縦切りにする。
これを乾燥スキルで干し野菜にして、水を張った鍋で煮込んで出汁を取る。
圧力鍋で作ってもいいけど作りたい量に対して大きさが足りないし、主食のストックも準備しなくちゃならないから普通に仕込む。
さて、出汁を取ってる間にストック作りだ。
ボウルへ小麦粉を入れ、水と塩を加えてこねて麺と刻み麺用の生地を作って寝かせる。
一旦鍋の様子を確認して灰汁取りやら火加減の調整やらをしたら、さらに生地作りを続ける。
これを何度も繰り返して大量の生地を作り、途中からパン用にバターと砂糖入りの生地を作ったらスキルで発酵させて寝かせ、先に寝かせていた生地から順に麺棒代わりの棒で伸ばして折り畳んで太麺と細麺に切り、一部は米代わりの刻み麺にする。
「「「おぉ~!」」」
麺を切ってると、横と正面からかぶりつきで見学してるイクトとポッコロとゆーららんから歓声が上がった。
というか、ポッコロとゆーららんはまだ見学を続けるのか? 別に構わないけどさ。
「麺を作れるとは聞いてましたが、本当に作れるんですね」
「祖母ちゃん仕込みだ」
教わったのはうどんだけど、厚さと太さを調整すれば細麺だって作れる。
そうして作った麺と刻み麺はアイテムボックスへ入れていき、パン用の生地はガス抜きをしてから包丁で切り分けて成形してスキルで二次発酵させ、借りてきた魔力オーブンで焼く。
焼いてる間に出汁の鍋を見て、灰汁を取って小皿で味見。
良い味になってるのを確認したら、隣から味見したそうな目を向けてくるイクトにも小皿を渡して火を止めて蓋をする。
「おいしー!」
そうかそうか、それは良かった。
ポッコロ、ゆーららん、あげたくなっちゃうから自分達も欲しそうな眼差しを向けないでくれ。
「出汁の香りが――」
「ちゃんとした出汁なんて――」
「インスタントとは――」
周りは周りでなんかざわついてるし、またどこかで小さい暴発が起きてる。
こうも製作に失敗するなんて、難しい物でも作ってるのかな。
「ますたぁ、ぱんやけたよ」
ナイスタイミング、お陰でポッコロとゆーららんの物欲しそうな視線から外れることができた。
それでも向けられ続ける物欲しそうな視線に耐えつつ、パンを焼いてはアイテムボックスへ入れる作業を繰り返し、合間を縫って晩飯の調理を始める。
出汁とは別の鍋へ水を張って火に掛け、キャベツを上下逆にして包丁を刺して芯を切り抜いて、お湯が沸いたら塩を加えて芯を抜いたキャベツを丸ごと茹でる。
「丸ごと茹でるんですか?」
「そうだ」
ポッコロの疑問に返事をしたタイミングで、最後のストック用のパンが焼き上がった。
それをアイテムボックスへ入れ、この後の晩飯用のパン生地をオーブンへ入れて焼く。
キャベツは……いい具合かな。
ザルを流しへ置いて鍋からキャベツとお湯を流し、茹でたキャベツをそのままザルに置いて冷めるのを待つ。
鍋を片付けたらタマネギを数個みじん切りにして、油を敷いて熱したフライパンで刻みタマネギを炒め、しんなりしてきたらボウルへ移しておく。
この間に晩飯用のパンが焼けたからオーブンから出し、熱々のうちにアイテムボックスへ入れる。
「「「あぁ~」」」
ポッコロとゆーららんはともかく、この後で食べられるイクトはなんで残念そうにするんだ。
不思議に思いつつも、ザルに入れたまま冷ましてたキャベツの葉を一枚ずつ取ってバットへ移しておく。
続いてタックルラビットのモモ肉を細かく切り分け、キャベツの芯をみじん切りにする。
そして遂に、先日入手した魔力ミキサーの出番だ。
これへ細かく切ったタックルラビットのモモ肉を入れ、魔力を注いで起動させてひき肉にする。
「お兄さん、そのミキサーはどうしたんですか?」
「星座のチェーンクエストは知ってるか? あれで手に入れた」
ポッコロからの質問に答え、粗びきぐらいになったタックルラビットのひき肉をボウルへ出す。
「マジか――」
「あれがあれば――」
「頑張って進めないと――」
ミキサーの中を洗って綺麗にしたら、ひき肉にしたタックルラビットのモモ肉へ炒めたタマネギとみじん切りにしたキャベツの芯と塩と胡椒を加え、粘りが出るまでよく混ぜる。
白っぽくなって粘りが出てきたらタネは完成。
バットからキャベツの葉を一枚取ってタネを乗せ、しっかり巻いて包んでいく。
「キャベツでひき肉を――」
「ということは――」
「さっきの出汁で――」
肉を包んだキャベツは別のバットへ並べていき、それが済んだらトマトとズッキーニを出し、ズッキーニは厚めの半月切りにしてトマトはヘタを取って細かく刻む。
そしてこれまた先日手に入れた、おもり式の圧力鍋の登場。
普通の鍋でもいいけど、せっかく入手したんだし時間短縮にもなるからこれで作ろう。
「それもミキサーと同じ、星座のチェーンクエストで?」
「そうだ。これがあると煮込み料理に便利だからな」
あっ、そういえば魔力ミキサーもそうだけど、星座チェーンクエスト関連だって言っちゃったな。
情報はとっくにミミミへ伝えたとはいえ、これは拙いか?
まあ今となってはもう遅いから、この件は後でミミミへ謝罪のメッセージを送っておくとして、今は調理を続けよう。
蓋を開けた圧力鍋へ肉を包んだキャベツを並べ、厚めの半月切りにしたズッキーニを加える。
ここへさっき作った出汁と、煮込んだことですっかり戻った干し野菜をお玉で注ぎ入れる。
そして刻んだトマトを再登場の魔力ミキサーでドロドロ状態にして、これも圧力鍋へ入れる。
味付けに塩と砂糖を加え、蓋をしたら火を点けて煮込み開始。
「さて、後片付けをするか」
「お兄さん、ロールキャベツが作れるんですね」
「まあな」
「ろうるきゃべつ?」
首を傾げるイクトには分からないか。
中華じゃないから日替わりでしか出してないけど、中華桐谷では隠れた人気メニューだ。
回鍋肉とかで使うキャベツで、麻婆豆腐や餃子なんかで使うひき肉と刻みタマネギを包んで、ラーメンや定食なんかで使うスープで煮込む中華風ロールキャベツ。
今回はそれにミキサーにかけたトマトとズッキーニを加えた感じだな。
「いいなぁ、食べたいなぁ」
「お兄さん」
「駄目だ。これはダルク達用だ」
「「えー」」
えー、じゃない。
変異種の野菜の件はとても楽しかったけど、それはそれこれはこれ。
用件は済ませてそのお礼を貰った以上、この料理を振る舞う理由は無い。
だからそんな目をウルウルさせて、食べたいオーラを発しないでくれ。
それとイクト。お前はパンと同じで後で食べられるんだし試食もさせてやるから、二人と一緒になってウルウルするんじゃない。
頑張って視線を受け流しながら後片付けに取り掛かる。
こまめに圧力鍋の様子を確認してると、内部に圧力が掛かってきてピンが上がってきた。
「お兄さん、今日はもう料理は作らないんですか?」
「そのつもりだ」
あまりダルク達を待たせる訳にもいかないし、最大の目的のストックと晩飯は作ったからな。
明日は全員でサードタウンジュピターを目指す予定だから、朝飯は起きてから作っても大丈夫だし、その時に昼飯も作っておけば移動中に飯が必要になっても対処できる。
「ますたぁ、おなべがおこってる」
鍋が怒ってる?
ああ、蒸気が噴き出ておもりが揺れてるのか。
この音を怒ってるって表現したんだな。
「イクト君、あれは怒ってるんじゃないのよ」
「そうなの? おなべ、おこってないの?」
「怒ってるんじゃなくて、美味しいご飯を作るために頑張ってるんだよ」
「おーっ!」
なにあの姉弟みたいな会話、凄く微笑ましくて和む。
イクトとポッコロとゆーららんのやり取りにそんな感想を抱きつつ、内部に圧力が掛かりすぎないように火を弱める。
「おなべさん、がんばれ」
そこで鍋を応援するか。
なにこの溢れるイクトの末っ子感。
微笑ましい行動にポッコロとゆーららんだけでなく、周りのプレイヤー達も和んだ表情をしてる。
あっ、見とれてる誰かが製作中の何かが暴発した。
「わーっ! しまったーっ!」
「あれを見てたら無理ない――」
「あの一角だけファミリー感――」
「料理長は歳の離れたお兄さん――」
「いえ、若いお父さん――」
周りがざわつくほど今のイクトは微笑ましいか。
そしてそれを否定しない。
今も音を立てて蒸気を噴き出す圧力鍋に頑張れって言い続けてるし。
「イクト、あまり近づき過ぎると危ないからもう少し離れろ」
火は弱めたけど内部には圧力が掛かってるし、蒸気は意外と熱いからな。
「あっ、はーい」
「イクト君、こっちに来なよ」
「お兄さんとお姉さんと一緒に見ましょう」
「はーい」
踏み台をポッコロとゆーららんの間に運び、再度それに乗って作業台に手を置いて身を乗り出して圧力鍋を眺めるイクトに、ポッコロとゆーららんが笑いながら危ないよと声を掛けてる。
あの三人が固まるとイクトの末っ子感が強まるな。
「よし、後片付け完了」
後はロールキャベツが完成するのを待てばいい。
さてと、煮込み時間もそろそろいいし火を止めるか。
「できたの、ますたぁ!」
「まだだ。このまましばらく置いておく」
圧力鍋の注意点、火を止めたらしばらく放置して圧力が抜けるのを待つ。
目安としては、ピンが下がっておもりを傾けても蒸気が出なくなるまでだ。
便利な圧力鍋だけど、使い方を誤ったら圧力の関係で爆発しかねないから注意するように。
「あじみまだかぁ……」
残念だけどまだなんだよ。
触覚とレッサーパンダ耳が力なく下を向き、両手を前に出して作業台の上に体を預けるイクトに心の中でそう呟く。
「我慢しなよ、イクト君」
「そうよ。食べられない私達よりマシよ」
切実な表情でそう言って、再度訴えるように目をウルウルさせてこっちを見ないでくれないか?
駄目なものは駄目、これは譲れない。
そんな二人の視線に耐えてると、ダルクからメッセージが届いた。
どうやらレベル上げを終えて新しい装備も整え、今夜の宿を取ったようだ。
晩飯は宿の食堂で食べるから、早めに来いとある。
「どうしたんですか?」
「ダルク達から、宿で待ってるから早く飯を持ってこいだとさ」
了解の返事を書いて送信。これでよし。
「ますたぁ、はやくつくろう!」
無茶言うな。ピンがまだ下がってないから蓋を開けられないんだよ。
「もうちょっと待ってな」
「はぁい……」
イクトは何もせずに待つのが苦手なのか?
ジッとしてられないところが、外見通りの幼さをより強調して末っ子感が余計に増してくる。
「そういえばお兄さん、この前のタウンクエストは参加しましたか?」
「私達、昨日は用事があってそれがあったこと自体知らなかったんです」
「生憎と俺も不参加だったから、聞いた以上の情報は無いぞ」
「「なんだぁ」」
そんなこと言われても、店の手伝いを疎かにするわけにはいかないんだって。
苦笑いを浮かべつつ、条件さえ満たせば全部の町でタウンクエストが発生するのか、もしもあるのならどんなのかなんて話をして時間を潰す。
ポッコロなんか毎週欠かさずニチアサを見てるだけあって、変形や合体するゴーレムを見たかったと力説して残念がって、イクトに頭を撫でられてた。
そうしてる間に圧力鍋のピンは下がり、おもりを傾けても蒸気は出てこない。
これでようやく開けられるようになった蓋を取ると、封じられてたトマトの香りが一気に広がった。
「「「わあぁぁぁぁっ!」」」
この香りにイクト達から歓声が上がった。
「おおぉっ――」
「こんなにトマトの香りが――」
「やべっ、ミス――」
しっかり煮込まれたロールキャベツとズッキーニは味が染みて美味そうに見えるけど、見えるだけじゃなくて本当に美味くなくちゃ意味が無い。
皿とナイフとフォークとスプーンを出し、お玉でロールキャベツとズッキーニを一つずつ皿へよそってトマトソースも掛ける。
トマトソースのロールキャベツ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:2 品質:6 完成度:86
効果:満腹度回復17% 給水度回復8%
魔力+2【1時間】
和洋中、どのソースで煮込んでも美味しい万能料理
圧力鍋で煮込まれたため、短時間でも味はしっかり染みてます
一緒に煮込まれた野菜類もトマトソースを吸って美味
情報を確認したらロールキャベツとズッキーニを半分に切り、まずはロールキャベツを試食。
美味い。あっさりめのタックルラビットのモモ肉が、しっとりするまでトマトソースを吸ったキャベツとそのトマトソースと合わさって旨味が増してる。
ニンニクやハーブで香りづけをしてないからトマトの風味がよく分かるし、全体的に優しい味になってる。
トマトソースを吸ったズッキーニもいいし、スプーンで一口すすったトマトソース自体も美味い。
出汁の基になったニンジンとシイタケとエリンギも、ソースの具材として十分に良い味をしてる。
添える予定のパンにこのソースを付けるだけでも、きっと美味いだろう。
「ロールキャベツなんて、何年――」
「そういえば近くの洋食屋に――」
「帰省して母ちゃんに――」
じっくり味を確認してたら、横から腕をポンポン叩かれた。
「ますたぁ……」
おっと、イクトの口から涎が溢れ出そうになってる。
「残り、食べるか?」
「たべりゅ~」
輝く笑顔で料理と食器を受け取ったイクトが試食すると、美味しいを連発して興奮で触覚とレッサーパンダ耳がギュンギュン動く。
その様子を眺めながらお玉を洗い、蓋をした圧力鍋ごとロールキャベツをアイテムボックスへ入れる。
自分達も欲しいっていう、ポッコロとゆーららんの視線は全力で受け流す。
「ますたぁ。ししょく、おいしかった!」
トマトソースで口の周りを真っ赤にしたイクトが、満面の笑みで触覚とレッサーパンダ耳をピコピコ動かしながら空になった皿を差し出す。
その姿にポッコロとゆーららんが笑い、何故笑ってるのか分かってなさそうに首を傾げるイクトへ手拭いを渡して口を拭かせ、その間に皿と食器類を洗ってアイテムボックスへ入れる。
「よし、そろそろ行くか。ダルク達が待ってる」
「はーい」
口を拭いたイクトに手拭いを返してもらい、手を繋がれて作業館を出て転移屋へ向かう。
途中までポッコロとゆーららんも一緒に同行して、別れ際に改めて変異種の野菜の件を約束する。
そうしてようやく転移屋を使ってサードタウンマーズへ戻り、さっき届いたメッセージにあった宿へ向かいながら、もうすぐ着くとダルクへメッセージを送ると食堂で待つと返ってきた。
了解のメッセージを送り、すっかり日が落ちて暗くなった通りを上機嫌なイクトに手を繋がれ、周囲の露店やプレイヤー達の様子を眺めながら歩く。
たまにはこういう時間を過ごすのもいいなと思ってる最中、ミミミへ謝罪メッセージを送る件を思い出した。
「そうだ、それも送っておかないと」
謝罪の言葉と経緯の文面を書いて送信。
少ししたら返信があって、強めの文面で注意するようにと叱られた。
申し訳ないから改めて謝罪の言葉と、さっきの情報の代金の割引きを申し出るとそれで勘弁してもらえた。
一安心しつつ、今後は気をつけようと思ってるうちにダルク達が取ったという宿に到着。
そのまま食堂へ入ると、空いてる席に座ってるダルク達を発見した。
おっ、装備が変わってる。
ダルクは黒だった鎧が灰色になって、形状も前のよりスッキリした感じだ。
カグラの巫女服は上が白で袴が赤だったのが、上は青白くなって袴の赤色が明るくなってる。
セイリュウはマントから白いローブ、三角帽子から銀色のサークレットに変わってる。
そしてメェナはへそ出しのハーフシャツとハーフパンツに革製の胸当てだったのが、へそ出しのノースリーブのシャツにホットパンツになって胸当てが鉄製になって、脚に至っては膝下から甲冑みたいになってる。
動きやすそうではあるけど、今のメェナの格好は少々目のやり場に困る。特に腹周りとか太ももとか。
「よっ、待たせたな」
「おねえちゃんたち、おまたせー!」
声を掛けながら歩み寄ると、待ちかねた様子のダルク達が一斉にこっちを向いた。
「待ってたよトーマ! 早くご飯!」
「落ち着きなさいよダルク」
「うふふっ、何を食べさせてくれるのか楽しみね」
「変異した野菜っていうのも気になるけど、今はそれよりも夕ご飯ちょうだい!」
身を乗り出して飯を求めるダルクをメェナが落ち着かせ、落ち着いてるように見えるカグラは早く食べたそうにソワソワして、セイリュウは目をキラキラさせて両手を前に出して飯を求めてる。
装備が変わってることは気になるけど、あまりジロジロ見るのはマナー違反だろうし、装備のことは後にして今は飯を優先した方がいいな。
「すぐに出すから、大人しく座ってろ」
そう言ったらダルク達だけでなく、イクトまで大人しく椅子に座った。
お前達は飯を待ちわびる子供かと思いつつ、アイテムボックスからパンと食器を取り出して並べる。
そして今日のメイン、ロールキャベツが入ってる圧力鍋を出して蓋を開ける。
「この匂い、トマト?」
「なんだろう。煮込みハンバーグかな?」
ちょっと惜しいと思いつつ、お玉でロールキャベツとズッキーニを皿へよそってソースを掛け、順番にダルク達の前へ置いていく。
「ロールキャベツだっ!」
「トーマ君のおうちで出してるの、美味しいよね」
「そっちとは違ってトマトソースなのね」
「イクト君、試食は美味しかった?」
「おいしかった!」
並ぶ料理に皆が反応すると、なんか周囲がざわついた。
「美味そう」
「どこで買ったんだ?」
「いや待て。あのサラマンダー、トーマって呼ばれてたぞ」
「まさか、赤の料理長か?」
色々な声がしてイマイチ何を言ってるのか聞こえないけど、敵意は無さそうだ。
「じゃあ早速、いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
手を合わせたダルクの掛け声に続き、カグラ達とイクトも手を合わせていただきますをして食事を開始した。
「んー! 噛むと肉汁とトマトソースが口の中で混ざり合ってサイコー!」
「ズッキーニも美味しい」
「ソース自体も美味しいわ。具材はニンジンとなにかのキノコね」
「このソースをパンに付けるだけでも十分よ」
「ますたぁ、おいしー!」
好評のようでなによりだ。
皆の反応を確認したら俺も飯としてロールキャベツを食う。
うん、改めて食っても美味い。
でも祖父ちゃんや父さんが作るのに比べるとまだまだかな。
「すげぇ――」
「やっぱ噂通り――」
「腹減って――」
「ちょっとログアウトしてご飯――」
もしもこれを、あの変異種の野菜で作ったらどうなっただろう。
爽やかな酸味がするエバーグリーントマトを使った緑色のソース。
それを吸ったバチバチキャベツが口の中でソースと肉汁を弾けさせて、さらに刻んで炒めた横縞のシマシマタマネギの甘味が広がる、ていう感じかな。
いや、縦縞のシマシマタマネギをちょっとだけ加えて、辛さをプラスしても面白そうじゃないか?
バチバチキャベツで辛さが口の中で弾けて広がりそうだけど、ちょっとだけならダルクとイクトも平気だと思う。
「トーマ、ロールキャベツのおかわりはある⁉」
「ますたぁ、ぱんもちょうだい!」
そのダルクとイクトからおかわりを求められた。
はいはい、どっちもあるから安心しろ。
こうなることを見越して作ったから、パンもロールキャベツもまだあるぞ。
「あるぞ。欲しい奴は皿を渡せ」
「「「「「はい!」」」」」
ダルクとイクトだけでなく、カグラ達もか。
しかもパンにつけたのか、全員ソースまで綺麗になくなってる。
まあいいさ、そこまで食べてくれるのは作った側としては嬉しい限りだ。
「はいよ。あっ、おかわりはこの一回きりだから」
「「「「「えーっ!」」」」」
文句言うんじゃない。
太らないしいくらでも食べられるとはいえ、予算にも食材にも限りがある。
無限に食わすことはできないんだ。
「文句あるなら明日の朝飯はパン一個と水だけな」
「「「「「ごめんなさい!」」」」」
ちゃんと謝ったのなら良しとしよう。
さあ、おかわりをよそうからしっかり食えよ。




