未知の物はまず試す
学校からの帰宅後に店の手伝いを挟み、今回のログインをする。
今回の滞在予定日数は二日。
初日はダルク達がレベル上げと装備の強化、俺はパンと麺と刻み麺のストックと食材の補充、そして飯作りをする。
「ますたぁ!」
サードタウンマーズの広場に現れると既にカグラ達がいて、ほぼ同時に現れたイクトが腰の辺りにしがみついてきた。
今日も今日とて元気だな。
「おっし、今日もやるぞー!」
ほぼ同時にログインしたダルクは早くもやる気満々だ。
昨日はタウンクエスト発生以降が散々だったから、それを取り戻そうと気合いが入ってる。
「しっかりレベルを上げて、装備用にお金も稼がないと」
「冒険者ギルドの依頼を受けてお金を稼ぎやすくして、素材も手に入れるだけ手に入れる」
「この辺りだと、これといった食材が手に入らないのは残念だけどね」
メェナとセイリュウの発言はともかく、カグラの発言には同意せざるを得ない。
目新しい食材があればいいってわけじゃないけど、有った方が楽しみなのは否定しない。
「じゃ、行動開始だね。トーマ、ストックも大事だけど今日のご飯もよろしく」
ゲーム内の時刻は昼過ぎ。
今から作るとなると晩飯だな。
「分かってる。気をつけてな」
「「「「はーい」」」」
別行動をするダルク達を見送ったら一度料理ギルドへ向かい、必要な食材を揃える。
さらに貢献度が上がって新たに購入できるようになった調理器具、深型フライパンを購入。
持ち手は違えど形状は中華鍋と似てるから、普通のフライパンより馴染みがあって使いやすそうだ。
「さて、次は香辛料を……うん?」
転移屋を利用してスコーピのところへ香辛料を買い足しに行こうと思ってたら、ポッコロからメッセージが届いた。
なになに? 見せたい野菜があるから、会えないかだって?
何か珍しい野菜でも手に入れたのかな。
とりあえず了解の旨に現在地を添えて返信。
少ししたら、サードタウンマーズには行ったことがないから来てほしいというメッセージが返ってきた。
それ自体は構わないんだけど、問題は手持ち金。
今回の移動は飯に関わることになりそうだから、自分で稼いだ金以外にダルク達から預かった食費を使ってもいい案件だ。
だけどファーストタウン、スコーピがいるセカンドタウンサウスを順番に回るとなると少々心もとない。
二回の転移でどちらか一方を往復するなら問題無いけど、三回の転移で二つの町を回るのは難しい。
しかもスコーピのところで香辛料も買うとなると、なおさらだ。
「ますたぁ、どうしたの?」
こっちを見上げて首を傾げるイクトになんでもないと返し、ひとまずダルク達へ相談のメッセージを送る。
少し時間を置いて届いた返信には、俺の好きにしていいとあった。
だったら今回はファーストタウンへ行くかな。
香辛料は少なくなってきたから買い足そうってだけで、無くなったわけじゃない。
残ってる分でやりくりして、資金が溜まったら買いに行こう。
そう決断してポッコロへメッセージを送り、畑で合流することになった。
「よし、行くぞイクト」
「どこに?」
「ポッコロとゆーららんの畑だ」
「ぽっころおにいちゃんと、ゆーららんおねえちゃんのところ? いくいくー!」
両手を挙げて喜んだイクトに手を繋がれ、引っ張られ気味に転移屋を目指す。
周囲からは生暖かい視線が向けられてるけど、もう気にはしない。
転移屋へ到着したら代金を払ってファーストタウンへ転移し、ポッコロとゆーららんの畑へ直行すると収穫作業中の二人を発見した。
「おーい、二人とも。来たぞ」
「おにーちゃーん! おねーちゃーん!」
イクトと一緒に呼びかけると、二人がこっちに気づいた。
「「あっ、お兄さん!」」
声を揃えて反応した二人が作業を中断して駆け寄ってくる。
先に畑から出てきたゆーららんは楽しそうにイクトとハイタッチを交わし、後から出てきたポッコロは俺の前で立ち止まる。
「待ってましたよ!」
待たせてしまったのは悪いけど、なんで嬉しそうに笑いながら目をキラキラさせてリスの尻尾を勢いよくブンブン振るんだ。
会うのが久々ってわけでもないのに、どうしてこんな反応をしてるのだろうか。
「待たせて悪かったな。それで、見せたい野菜ってなんだ?」
「これです、これ」
そう言ってポッコロがアイテムボックスから出したのは、ザルに積まれた大ぶりのナスが数本。
とても大きくて食べ応えがありそうだけど、その色合いは毒々しさを感じる濃い紫色で食欲が湧いてこない。
なんだこのナスは。白ならともかく、どうやったらここまで毒々しい紫になるんだ。
色々と気になるけど、まずは情報を調べてみよう。
ドクモドキナス
レア度:3 品質:6 鮮度:92
効果:満腹度回復1%
通常のナスの変異種
一回り大きくて食べ応えがある上に味わいも良く、果肉は焼くとトロリとする
見た目は毒々しいが外敵から身を守るためのもので、毒は一切無い
あっ、そういう理由でこの色合いなのか。
見た目が毒々しいのは毒が有ると警告する場合と、外敵から身を守るために毒があるように見せかける場合があるけど、このドクモドキナスは後者のようだ。
「ますたぁ! これ、ぜったいにどく! ぜったいにたべられない!」
しがみついてきたイクトが必死の形相で、ドクモドキナスを指差して毒だと主張する。
これは見た目だけで判断したのか、虫系による本能なのか。
どっちにしても、これは毒じゃないと分かってもらう必要があるな。
「イクト、これに毒は無いぞ。毒があるふりをしてるだけだ」
「……そうなの?」
「そうなんだよイクト君」
「う~?」
ゆーららんが毒の存在を否定しても、イクトはドクモドキナスへ疑いの眼差しを向け続けてる。
「どうでしょうお兄さん。もう説明は見たでしょうが、この見た目ですけど美味しいみたいです」
「そうだな。ところで説明に変異ってあるけど、UPOの農作物にはそういうのが起きるのか?」
「農業ギルドの職員に確認したら、低確率で発生するそうです」
突然変異なんて言葉があるくらいだし、そういうのが設定されてて発生してもおかしくはないか。
毒化したなら問題だけど、見た目が毒っぽいだけなら問題は無いだろう。
「知り合いの農業プレイヤーの人達にも聞いたんですが、何人かが発生させてました」
「ゲーム内での昨日、その件で集まって実物も入手しました」
へぇ、それは興味があるな。
「それはどういうのだ?」
「ここじゃなんですから、畑の納屋へどうぞ」
この畑、納屋があるんかい。
所有者以外のプレイヤーが畑と納屋へ入るにはシステム的な許可が必要だからと、それを得て畑へ入る。
「わー!」
畑一面に広がる作物にイクトが目を輝かせてる。
ここ以外にも畑があるそうだけど、栽培されてる作物は現状で手に入る物ばかり。
とはいえこれだけ立派に育ってる光景を見ると、否が応でも見入ってしまう。
「よくここまで見事な畑にしたもんだな」
「ゲームだからですよ」
「現実ではこう上手くいきませんよ」
それもそうか。
ゲームなら天候不良とか害虫とか害獣の被害が無いもんな。
二人によると作物が病気に掛かることはあるそうだけど、それは農業ギルドが販売してる薬を畑に撒けば防げるとのこと。
なお、その薬の有無で味や品質や変異率に影響が出ることは無いそうだ。
「それよりも、納屋はこっちです」
「早く行きましょう」
おっと、そうだそうだ。
用があるのは畑じゃなくて納屋だ。
まだ緑色のトマトの実に顔を近づけて見てるイクトを呼び寄せ、肝心の納屋へ案内される。
納屋の外見は地味な小屋って感じで、中にあるのは木製の箱が二つと椅子が四つと小さなテーブルが設置してあるだけ。
とても質素だけど、休憩やちょっとした用事でしか使わないからこれで十分らしい。
「で、他の変異した野菜っていうのは?」
「これです」
全員が椅子に座ったタイミングで尋ねると、ポッコロはアイテムボックスから野菜が積まれたザルを順番に取り出してテーブルへ並べていく。
普通より一回り大きくて、皮が茶色と白の縦縞か横縞の模様になってるタマネギ。
大きさは普通のものとそう変わらないけど葉が真っ黄色なキャベツ。
通常の大きく育ったものより二回りは大きい、薄黄緑色で丸々と育ってるピーマン。
同じく丸々と大きく育ってるのに、まだ緑色をしてるトマト。
どれも見た目からして少し変わってるな。
「しましまのたまねぎ、へんなの」
「こら、やめろ」
縞模様が気になるのか、縦縞のタマネギを指でつつくイクトを注意する。
「これらはドクモドキナスとの交換で入手したんです」
「持ち主の方々と会って実際に見せあった後、物々交換しました」
なるほどね。
これらはこの後で農業ギルドへ持ち込み、種や苗を入手して栽培する予定とのこと。
だけど二人はその前に、これらとドクモドキナスの味を調べたいらしい。
表示される情報によると問題は無いそうだけど、自分達が育てる作物の味や食感がどうなのか気になるようだ。
「つまり俺を呼んだのは、これを見せるだけでなく味見に協力してほしいってことか」
「その通りです!」
「お礼はこの通り、ちゃんと用意しました」
そう言ってゆーららんがアイテムボックスから出したのは、いくつものザルに積まれた普通の野菜の山。
ギルドでも普通に買えるタマネギやニンジンの他、俺が預けて育ててもらってるシイタケやニンニクやサツマイモなんかも大量にある。
しかし、単なる味見の手伝いにしては量が多いな。
「こんなにいいのか?」
「お兄さんにお手数をかけてもらうんですから、これくらい当然ですよ!」
ふんすと鼻息を吐いて胸を張るポッコロが、イクトほどじゃないけど弟可愛い。
「気にしないでください。お兄さんから預かった野菜のお陰でだいぶ儲かってますし、【ベジタブル・パイオニア】の称号も取得したんです。色々と融通してしっかり縁を繋いでおいた方が、後々のリターンも大きいでしょうからね」
爽やかな笑みでサラッと子供らしからぬことを言ったよ、この子。
でもゆーららんのそういうところ、嫌いじゃない。
世の中タダほど高いものは無いから、きっちりとリターンを求めるのは当然だ。
「ふっふっふっ。ゆーららん、お主も悪よのう」
「いえいえ、お兄さんだからこそです、はい。その代わり、今後も珍しい野菜か薬草が手に入ったら融通を頼みますぜ」
「委細承知した」
「「くっくっくっくっくっ」」
あえてやったこういうノリが通じるところも嫌いじゃない。
「ぽっころおにいちゃん、ますたぁとゆーららんおねえちゃんがわるいかおでわらってるよ? なんで?」
「なんでだろう? 僕にはよく分からないよ」
二人は分からなくてよろしい。
さて、俺としてもゲームならでは食材は気になるところだけど、まずは情報を確認しないとな。
シマシマタマネギ
レア度:3 品質:5 鮮度:87
効果:満腹度回復2%
通常のタマネギの変異種
皮は縞模様だが剥けば通常と同じ色をしてる
縦縞は辛みが強く、横縞は甘味が強い
バチバチキャベツ
レア度:3 品質:6 鮮度:91
効果:満腹度回復2%
通常のキャベツの変異種
どう調理しても口の中でバチバチと弾ける食感になる
別名炭酸キャベツ
ギッチリピーマン
レア度:3 品質:6 鮮度:90
効果:満腹度回復1%
通常のピーマンの変異種
中の空洞が無くなるほど果肉の部分が分厚い
苦いどころかとても甘く、目隠しして食べれば果物と勘違いしそう
エバーグリーントマト
レア度:3 品質:5 鮮度:91
効果:満腹度回復1%
通常のトマトの変異種
完熟してもずっと緑のままのトマト
皮ごと食べても苦さや青臭さは無く、甘さより爽やかな酸味が特徴
なかなか個性的な野菜達じゃないか。
縞の向きによって甘いか辛いか違うタマネギ、炭酸のように弾ける食感のキャベツ、肉厚どころじゃない厚みがある果物のように甘いピーマン、そして爽やかな酸味がある緑色のトマト。
どれをどう使おうか今から悩ましい。
「ますたぁ、これたべるの?」
「そのつもりだ」
「なにつくるの⁉」
早くもイクトの目が期待に満ちてキラキラしてる。
いや、ポッコロも似たような目を向けてるか。
「私も気になります。どう調理するんですか?」
ゆーららんは目をキラキラさせてないけど、表情がすごく楽しそうだ。
そうだな、この材料なら……待てよ。
「先にちょっと連絡させてくれ」
「どうぞ」
許可をもらってダルク達へ連絡を取る。
味見程度とはいえ、今から調理したら間違いなく晩飯が遅れる可能性が高い。
なら連絡を取っておかないと、後で文句を言われかねない。
報連相、とても大事。
「おっ、返ってきたか」
少しして届いた返信を要約すると、了解したけど早く戻って来てね。
これは向こうへ戻ってから飯を作るんじゃなくて、こっちで作って持って行った方がいいかもしれない。
ついでにストックもこっちで作っておくか。
そう思いつつ、許可が取れたことを伝えて四人で作業館へ向かう。
「らんちゃらっちゃ、らっちゃっちゃ♪」
本日もよく分からない歌を軽快に歌ってくれてるな、イクトは。
しかも俺と手を繋いでるのは毎度のことだからいいとして、今回はスキップ気味に移動中だ。
「イクト君、楽しそうですね」
「ただ移動してるだけなのにね」
そう言ってるポッコロとゆーららんも、なんで俺とイクトと手を繋いでるんだ。
右端のポッコロがイクトと手を繋ぎ、真ん中ではイクトと俺が手を繋いで、左端のゆーららんが俺と手を繋いでる。
なんかイクトが俺の手を繋いだら、それに続くように繋がれたんだけど何故に?
周囲のプレイヤー達は一部が驚いてるけど、ほとんどは生暖かい視線を向けてくる。
「なにあの和やか集団」
「お兄さんと楽しそうに手を繋ぐロリショタ達、だと……」
「引率? あれ、保育士って職業あったっけ?」
「ていうか、あのサラマンダーのお兄さんってひょっとして」
誰かが呟いた引率って言葉が妙にしっくりくる。
今は非表示の前掛けがエプロンだったら、間違いなくそうとしか見えないだろう。
そんな晒し者に近い状態で作業館へ到着したら、作業台とオーブンを借りて作業場へ入る。
「なんだあいつら。ガキばっかりで」
「おっ、おいあの男って――」
「なんでここに――」
借りた作業台の前でバンダナと前掛けを表示させ、必要な道具を準備してる間にイクトは踏み台を持って来て、いつも通り横から見学する準備を整える。
さらにポッコロとゆーららんも、以前のように正面に陣取ってかぶりつきで調理を眺める気満々でいる。
「それでお兄さん、何を作るんですかっ!」
「今回は味見が目的だから、シンプルにいく」
やや興奮気味のゆーららんに返事をしたら包丁を装備して調理開始。
今回は変異野菜の味の確認だけだから、それぞれを一つずつ調理する。
ドクモドキナスはヘタを取って縦に四等分して切り、シマシマタマネギはくし切りにしたら縦縞と横縞の区別がつくように別々のボウルへ入れ、空洞が一切無いほど果肉が厚いギッチリピーマンは細切り、バチバチキャベツは葉の部分を一口大程度にざく切りにして芯の部分は細切りに。
そしてエバーグリーントマトはくし切りにしてヘタを取り除いたら、皿に盛って塩を振るだけで完成。
試食は他のと一緒にするから、一旦アイテムボックスへ入れる。
「なんだ、あの変わった野菜――」
「まさか噂の変異種――」
コンロにフライパンを置いて油を敷いて熱したら、まずはドクモドキナスを焼く。
焼きナスは皮付きか皮無しか、焼き方がどうとか色々あるけど今回は皮付きをフライパンで両面焼きにする。
素材の味そのものを確認するのが目的だから、味付けはシンプルに塩のみ。
焼き上がって味付けをしたら皿へ盛り、熱々状態を保つためアイテムボックスへ入れる。
そこからさらにシマシマタマネギの縦縞と横縞、ギッチリピーマン、バチバチキャベツと順番に炒めていく。
「ジャジャジャジャー♪」
「毎度のことながら手際が良いわね」
「うん、お母さんよりずっと上手だよ」
隣から聞こえるイクトの擬音による妙な歌や、かぶりつきでガン見してるポッコロとゆーららんの会話を聞き流して調理を続け、変異野菜による料理六品が一皿ずつ出来上がった。
焼きドクモドキナス 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:7 完成度:93
効果:満腹度回復12%
魔力+3【2時間】 知力+3【2時間】
ドクモドキナスを縦切りにして両面焼きにした一品
皮はサクッと切れて果肉はトロリとしてる
味付けが塩のみなので、良い味わいなのがよく分かる
シマタマネギ炒め 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:8 完成度:90
効果:満腹度回復10%
俊敏+3【2時間】 器用+3【2時間】
縦縞のシマシマタマネギの炒め物
縦縞のみを使ったので辛味が強い
しかし刺々しい嫌な辛さではなく、食欲を掻き立てる爽快な辛さ
シマタマネギ炒め 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:8 完成度:91
効果:満腹度回復10%
俊敏+3【2時間】 器用+3【2時間】
横縞のシマシマタマネギの炒め物
横縞のみを使ったので甘味が強い
シャキッとした歯応えながらも甘いので、甘さと歯応えが両立してる
バチバチキャベツ炒め 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:7 完成度:88
効果:満腹度回復11%
俊敏+3【2時間】 運+3【2時間】
バチバチキャベツの芯と葉の炒め物
噛むと口の中でバチバチ弾けるような食感がする
それと同時にキャベツの甘味と旨味が口中に広がる
ギッチリピーマン炒め 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:7 完成度:89
効果:満腹度回復13%
体力+3【2時間】 腕力+3【2時間】
ギッチリピーマンを種ごと炒めた一品
分厚い果肉は歯応え十分、味も絶品
種ごと炒めてますが、ピーマンの種は食べても大丈夫です
おつまみエバーグリーントマト 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:8 完成度:94
効果:満腹度回復13%
器用+3【2時間】 知力+3【2時間】
エバーグリーントマトを切って塩を振っただけのシンプルな料理
しかし侮るなかれ、爽やかな酸味が味覚を刺激する
その後にじんわりと甘味も感じられます
素材のレア度が3だからか、シンプルに仕上げたのに料理のレア度も3だ。
だけど肝心の味はどうだろうか。
「さあ皆、試食しよう」
「「はい!」」
「はーい!」
今すぐにでも食べたそうに料理を見てるイクトとポッコロとゆーららんにフォークを渡し、思い思いの順に食べていく。
「ますたぁ! このなす、どくない! たべられる! すごくとろとろしてる!」
「甘っ⁉ この横縞のシマシマタマネギ、思った以上に甘味がしますよ」
「うわっ。このギッチリピーマンって、苦みがほとんど無いから食べやすいわ」
「うおぉっ。バチバチキャベツのこの弾け具合、まるで炭酸を一気に口へ含んだようだな」
どれも味は上々、エバーグリーントマトの暑さで食欲が落ちてる時でも食べたくなる爽快な酸味が良いし、唯一心配だった縦縞のシマシマタマネギも説明通り刺々しい辛さじゃないからイクト達も少量ずつなら食べられる。
「シンプルイズベスト――」
「単純な物ほど――」
「やっぱりあれ、噂の変異野菜――」
外見は少々不安だったけど、食べてみれば不安は吹き飛んだ。
ポッコロとゆーららんも同様なのか、顔を見合わせて頷きあってる。
「協力ありがとうございます、お兄さん!」
「これなら安心して栽培できます!」
それはなによりだ。
こっちもこういった食材が手に入るのなら、手伝った甲斐があるってものだからな。
「ではこちら、約束のお礼です」
納屋で見せてくれた大量の野菜をアイテムボックスから出して、お礼として差し出してくれた。
「ああ、ありがたく受け取ろう。それと変異野菜だけど」
「分かってますよ。栽培して量を確保できたら、真っ先に連絡して売らせていただきます」
みなまで言わずとも分かってくれるゆーららんと、がっちり握手を交わして互いに笑みを浮かべる。
「ぽっころおにいちゃん。ますたぁとゆーららんおねえちゃん、またわるいえがおになってるよ」
「本当だね。なんでだろうね?」
首を傾げるイクトとポッコロは、できればずっとそのままでいてくれ。
さて、用件を済ませて食材も手に手に入れたことだし、このままパンと麺と刻み麺のストック作りとダルク達の晩飯作りに取り掛かるか。




