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怪しい味


 久々に会った情報屋のミミミと玄十郎。

 ちょうどいいからピチーの実とかの入手方法が判明したかを聞いて、ついでにさっきのバイソン牧場での出来事を伝えよう。


「ますたぁ、このひとたちだれ?」


 食事を終えて満足そうに腹を撫でてたイクトが、初対面のミミミと玄十郎に首を傾げる。


「俺達の知り合いだ。悪い人達じゃないよ」

「ますたぁと、おねえちゃんたちのしりあい?」

「そうだ。ほら、挨拶しな」

「はーい。はじめまして、いくとです」


 うん、元気よく挨拶できたな。偉いぞ。


「あら、ご丁寧にどうも。私はミミミ、よろしくね」

「玄十郎だ。その子は他の使徒に比べて随分と明るいな」


 そういえば他の使徒は性格が違うって、昨夜に聞いたな。


「そうね。生意気な子やわがままな子は、ここまでちゃんとした挨拶をしなかったわ」

「ツンデレ、面倒くさがり、やさぐれも相当だったぞ」


 なんか難しい性格ばかりだな。

 イクトがこの性格で良かったよ。


「聞いた話だと好奇心旺盛ってことだけど、その辺はどうなの?」

「えっとだな」

「ちょっと待ちなさい。ミミミ、それは情報の仕入れと認識していいの?」


 おおそうだ。

 今の質問って、情報を仕入れてるようなものじゃないか。

 危うく喋るところだった。


「あらごめんなさい。勿論、相応の対価は出すわ」

「ただ、ここまでに仕入れた情報だと使徒に能力的な差異はほとんど無いから、性格に関するものだけになるかもな」


 だとしても金が入るなら問題無い。

 イクトを膝の上に乗せて長椅子のスペースを空けて二人に座ってもらい、念のためボイチャにしたらイクトの言動や能力を伝える。


「以上だ」

「やっぱり数値が微妙に違うだけで、能力に差異は無いか」

「性格の方は他の個体に比べると、随分子供っぽいわね」


 そうそう、まるで好奇心旺盛な幼い弟ができたみたいなんだよ。


「じゃあ情報料だけど」

「待った。教えたい情報があるから、それと合わせて払ってくれるか?」

「それなら私達は聞きたい情報があるし、最後にまとめて会計しましょう」

「あら、その方が手っ取り早くていいかもしれないわね」


 待ったを掛けた俺に続いてメェナとカグラが口を挟んできた。

 そうだな。いちいち金のやり取りをするのも面倒だし、最後にまとめてやった方が早いか。


「こっちは構わないわ。ねっ」

「ああ。それで、聞きたい情報ってのはなんだ?」


 ミミミと玄十郎からの承諾も得て、情報交換開始。

 こっちが教えてもらう情報は、サードタウンマーズへの道中に出現するモンスターとそのドロップ品の情報。

 モンスターだけでなくドロップ品の情報まで求めたのは、新たな食材を入手できるかもしれないからだそうな。

 でも残念なことに食材をドロップするという情報は無かったため、ダルク達はとてもがっかりした。


「情報としてはこれくらいだけど、他に何かある?」

「あっ、じゃあ俺から」


 小さく挙手をして、バーテンダーから聞いた新たな木の実の件を尋ねる。

 するとこの件は情報屋仲間によってまだ検証中の案件で、こうかもしれないという推測の域を出ないんだとか。

 そんな不確かな情報は売れないと言われて購入は見送り、代わりにバイソン牧場での出来事を教えた。


「マジか?」

「ああ。おまけのパンも付けたけど、約束通り前回と同じスープを渡したら乳製品を買えるようになったんだよ」


 身を乗り出して確認する玄十郎に肯定で返して、再度簡略した説明をした。

 するとミミミが無言で席を立ち、少し離れたところに移動すると両手を頭にやって叫び出した。


「まーたーあーたーらーしーいーじょーうーほーうー!」


 おお、今回のオーバーリアクションは頭を抱えて体をぐわんぐわん回してる。

 そのために、わざわざ席を立ったのか。


「けーんーしょーうーじゅーうーたーいー!」


 検証渋滞?

 ああ、検証が多くて渋滞状態ってことか。

 うん? 膝の上から降りたイクトがミミミに近寄って……真似してる!

 何かの遊びと勘違いしてるのか、頭を抱えてというよりカチューシャを押さえて楽しそうに体をぐわんぐわん回してる。

 この光景にダルク達、大爆笑。


「いーいーかーげーんーにーしーてー!」


 出ました体を大きく前後に動かして頭を上下に激しく振るヘッドバンギング。

 この前も見たけど、実に見事なヘドバンだ。

 そしてこれも遊びと勘違いしたイクトが、楽しそうにヘドバンしてダルク達の大爆笑が続く。


「おーいミミミ、ほどほどにしろよ。真似されてるぞ」

「へっ? あっ」


 玄十郎に指摘され、ようやくイクトが自分の真似をしてることに気づいたミミミは顔を真っ赤にすると、そそくさと席に戻るとダルク達の笑いは収まった。

 直後にイクトも戻ってきて、また俺の膝の上に座った。


「ますたぁ、たのしかった!」

「そっか、良かったな」

「うん!」


 どこが楽しかったのか俺にはサッパリだけど、イクトが楽しめたのならそれで良し。

 嬉しそうに揺れる触覚とレッサーパンダ耳に気をつけつつ、頭を撫でてやる。


「失礼したわね。今のはまだ未発見情報だから買い取らせてもらうわ」


 前みたいに赤字って騒がないから、今回は予算に余裕があるんだな。


「それと、もう一つ伝えたいことがあるんだけどいいか?」

「な、なによ」


 そんなファイティングポーズを取って身構えるなよ。

 チェーンクエストで行く調理用の魔道具店で求められる証が、料理ギルド認定証なのかを確認しに行くって話だから。

 やたら警戒するミミミに経緯から説明し、結果が分かったら連絡すると伝えたら警戒を解いてくれた。


「ふう、安心したわ。また検証事案が増えるのかと思ったわよ」


 そりゃ良かったね。


「分かった。結果が判明したらすぐに教えてくれ」

「オッケー。あっ、でも料理プレイヤーの知り合いには教える約束してるんだけど」

「そういうことなら教えて構わないわよ。代わりに、情報料は安くさせてもらうわね」


 商売上手め。

 別に教えなくてもいいけど、もう伝えることを了承しちゃったから受けるしかないか。

 でも、一応ダルク達に確認を取ろう。


「という話らしいけど、構わないか?」

「いいよ」

「トーマ君が構わないなら、私は構わないわ」

「好きにして」

「トーマの思うようにすればいいわ」


 なら、まーふぃん達との約束とたった今交わした約束を守るために話を受けよう。

 承諾の意思を伝えたら話は終わり、今回の情報料の計算をする。

 その結果、売った情報よりも買った情報の方が高くついてこっちの支払いが発生。

 モンスターとドロップ品の情報を細かく聞いたのが、高くついた原因だと玄十郎は語る。

 それでも未確認の情報を売ったから、支払う代金は割と少なかった。

 証の件は結果を伝えた後で情報料を貰う形でまとまり、二人と別れたら皿とかを片付けてサードタウンマーズへ向けて出発。

 戦闘は勿論、ダルク達とイクトにお任せだ。


「かかってこいやコラァッ!」


 森の近くを歩いてて遭遇した筋骨隆々のデカいゴリラ、パワードゴリラをダルクが挑発して注意を引き付ける。


「いくわよ、イクト君!」

「はーい。むーびんぐも~ど」


 拳を盾で受け止めるダルクの援護をするため、横から接近したメェナがふくらはぎの辺りにローキックを打ち込み、脚を蜘蛛に変化させたイクトは背後に回って背中に張り付き頭まで登って頭頂部をポカポカ殴る。

 それによってイクトにも平手が向けられるけど、そこはさすが蜘蛛の脚。

 素早くカサカサと動いて回避すると、体中を這いまわって攪乱する。


「ヘイヘイどうした、筋肉ゴリラ!」


 イクトに気が移っていたパワードゴリラをダルクが再度挑発して注意を引きつけ、その隙にメェナとイクトがチクチク叩く。

 だけどミミミ達の情報通り、物理攻撃はあまり効いてないようでHPの減りが悪い。

 まあだからこそ、俺の傍に控えてるカグラとセイリュウが物理より効果のある魔法の準備してるんだけどな。


「準備できたわ!」

「分かったー! メェナ、イクト君、離脱!」

「オッケー!」

「はーい!」


 カグラの掛け声に反応してダルクがパワードゴリラから離れ、そのダルクの声によってメェナとイクトもパワードゴリラから距離を取る。


「バブルスマッシュボム!」

「シャイニングジャベリン!」


 そこへ飛来する、セイリュウが放った強烈な勢いの泡とカグラが放った光の槍。

 ボムというだけあって頭部に命中した泡は爆発して、直後に腹部へ槍が刺さってパワードゴリラが悲鳴を上げ、あまり減ってなかったHPが大きく減った。


「よし、このまま削るよ!」

『オッケー!』

「はーい!」


 事前にモンスターの情報を仕入れ、イクトとも連携の練習をしておいたこともあって戦闘はスムーズに進む。

 途中でアクシデントや想定外の出来事も無く、カグラが放った魔法がトドメになってパワードゴリラは倒れた。

 勝利に喜んで飛びついてきたイクトを褒める一方で、ダルク達はドロップがパワードゴリラの胸毛だと分かって表情を引きつらせてる。

 そりゃなあ、胸毛を入手して喜ぶ女子高生はいないだろう。


「どうする? ミミミは布製の装備品の良い素材になるって言ってたけど」

「「「う~ん……」」」


 良い素材だけど胸毛ってことでだいぶ悩んでる。

 特にカグラとセイリュウは布製の装備品を使ってるから、ダルクとメェナ以上に悩んでる。


「なあ、とりあえず考えるのは後にして先に進まないか? どうせ今すぐ装備品に加工するわけじゃないんだし」


 イクトの頭を撫でながらそう告げると、ダルク達もそうしようと判断して移動を再開。

 盾で防いでたとはいえ攻撃を受けていたダルクにHP回復ポーションを、魔法で攻撃してたカグラとセイリュウにMP回復ポーションを、それぞれに渡して回復してもらいながらサードタウンマーズへの道を行く。

 勿論、渡したポーションはどれも水出しの美味いやつだ。


「回復完了! この調子で行くよ!」

「おー!」


 ポーションを飲み終えたダルクの掛け声にイクトだけが応える。

 こうしていくつもの戦闘を乗り越えてもらい、サードタウンマーズへ到着。

 ところが到着した時にはすっかり日が暮れて暗くなっていた上に、目的の魔道具店は閉店時間。

 こうなった原因は、出現するモンスターの経験値が良いからと脇道に逸れてまで戦闘したことで余計に時間をくったためだ。

 お陰でレベルは上がった。ダルク達はレベル27、モンスターが強いこともあって俺はレベル19、同様の理由でイクトはレベル14だ。

 だけど目的の魔道具店には入店すらできず、玄十郎から聞いていた町の象徴、町を囲む橙色の防壁の色が暗くてよく分からなかった。

 看板がCLOSEになってる魔道具店の前で、思わずダルク達を軽く睨む。


「あちゃ~、調子に乗り過ぎたね、あっはっはっ」


 あっはっはっ、じゃない。

 目を逸らしてないでちゃんと謝れ。


「ご、ごめんなさい。手応えのあるモンスターばかりだったから、つい」

「お詫びに食費とは別に、謝礼金をあげるからお許しを」


 頭を下げて謝ったからカグラとセイリュウは許そう。


「あまりの楽しさに率先して戦闘をしていたことを深く後悔して、謝罪申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」


 深々と頭を下げるメェナのそれは、もはや謝罪会見だ。

 嬉々としてモンスターと戦いに行ったのは事実だし、それを謝罪したから良しとしよう。


「ますたぁ、いくとわるいことしちゃった?」

「少しだけな」


 一応注意は促してたのに、一緒になって戦闘を楽しんでたから悪いことをしてないとは言えない。


「こういう時はどうするんだっけ?」

「ごめんなさい」

「よろしい」


 ちゃんと謝ったのなら許す。

 さて残るは……。


「誠に申し訳ありませんでしたー!」


 カグラ達とイクトが謝ったとあって、さすがのダルクも深々と頭を下げて謝罪した。

 とはいえ最初は誤魔化そうとしてたから、邪魔にならないよう道の端で少しばかり説教させてもらった。


「うぐぅ、なんで僕だけ」

「素直に謝らないからでしょ」


 メェナの言う通りだ。

 うんうんと頷きつつ食費と謝礼金を受け取ったら町中を移動。

 サードタウンマーズはこれまでに行った町より規模が大きいことと、暗くてよく分からなかった橙色の防壁に囲まれてること以外、特にこれといって変わった様子は無い。

 建物は他の町と同じ西部劇に出てくるような造りで、住人らしきNPC達の服装も同じく西部劇風。

 しいて違いを挙げるとするなら、建物が大きかったり大通りが広いことかな。


「ねぇますたぁ、どこいくの?」

「ひとまず製薬ギルド寄ってから作業館だ」


 消費した分の水出しポーションを用意するために薬草を購入して、今夜の晩飯と明日の朝飯を用意しなくちゃならない。

 到着が遅れた分、他の余計なことはしてられない。

 そういうわけでダルク達も伴って製薬ギルドへ寄って必要な薬草を買ったら、そのまま作業館へ直行。

 町が大きいから作業館も大きく、入った作業場も他所よりずっと広くて作業台の数が多い。

 でも設備はそのままか、残念。


「ん? なああれ――」

「えっ、まさか――」

「聞いてる特徴と――」

「メンバーが――」


 作業台が多い分、生産活動に勤しむプレイヤーも多いから少々騒がしい。

 だけどこの程度なら、店が満席の時に比べればマシだ。

 なにせ酔っ払いのデカい笑い声や、注文が飛び交う声がしないんだから。


「それでトーマ君、今夜は何にするの?」

「鶏肉が結構あるから、それをメインで使う」


 バンダナと前掛けを表示。

 作業台の上に必要な物を揃え、まずは時間のかかる水出しポーション作りから取り掛かる。

 必要な薬草を乾燥させてすり潰し、HP用とMP用でそれぞれ種類と分量を調整してボウルに張った水に入れ、水出しポーションになるまで放っておく。

 それじゃ、まずは晩飯作りといこうか。

 ありったけの手羽先と手羽元を作業台に出し、手で肉を取ってボウルへ入れて骨はバットへ入れていく。


「あっ、それって昨日の夜に教わったやつ?」

「そうだ。ちょっと時間は掛かるけど、それは勘弁してくれよ」


 皆の満腹度と給水度にはまだ余裕があるから、多少時間が掛かるくらいなら大丈夫だろう。


「構わないわよ。私達のせいで予定が遅れたんだしね」


 メェナの言葉にイクト以外の全員が頷く。

 頷いてないイクトはというと、調理の様子を見学するため自分で踏み台を持ってきて、真向かいでそれの上に乗って調理の様子を見てる。

 文句を言わないのは肯定と捉え、肉と骨を分ける作業を進める。

 骨に残った肉片までしっかり取り、小さくとも大量に積み重なった骨は水を張った鍋に入れ、臭み消しにタマネギとネギとニンジンとニンニクを加えて煮込む。

 ボウルに入れた肉片は一度まな板に広げ、包丁二刀流で叩いてミンチ状にする。


「おーっ!」


 歓声を上げて身を乗り出すイクトについ微笑んでしまう。


「自分でミンチーー」

「話に聞いてたけど、本当に――」

「骨は――」


 肉をミンチにしたらすり鉢へ移してすりこぎですり潰し、つなぎに小麦粉と塩を加えてよく練ったら丸めてつくねにする。

 合間に鍋の灰汁取りをしながらつくねを量産してバットへ並べ、肉を全てつくねにしたら薄く油を敷いたフライパンで焼く。

 焼き上がったつくねは別のバットへ移したら冷めないよう、アイテムボックスに入れておく。


「やっぱり本物――」

「焼き鳥――」

「いや、スープの具に――」


 つくねを全て焼き終え、骨を煮込んでる鍋に浮いた灰汁を取ったら、つくね以外の具材用にネギを切ってこれもアイテムボックス行き。

 スープができるのはまだ時間が掛かりそうだから、この間に二品目の調理に入る。

 別に鍋を用意して水を張ったら火に掛け、お湯が沸くまでの間に鳥の胸肉とモモ肉とささみを1センチくらいの厚さに切り分ける。

 お湯が湧いたら鍋にザルをセットして、底がお湯に触れないのを確認したら切った三種類の鶏肉をザルへ並べて蓋をして蒸す。

 鶏肉が蒸してる間にやるのは野菜の準備。

 スープに浮いた灰汁を取ったらトマトと形の悪いキュウリとキャベツを取り出し、トマトはくし切りのさらに半分に切り、キュウリは薄切り、キャベツは千切りにする。


「蒸し鶏と野菜――」

「棒棒鶏か――」


 これらを別々のボウルへ移したらスープを確認。

 灰汁を取ってお玉で小皿に少量取って味見……もう少し煮込もう。

 小さいから味は出やすいし数で味の濃さを補うとはいえ、まだ煮込みが足りてない。


「ますたぁ、いくとも! いくともあじみする!」

「これ、まだ美味くないけどいいか?」

「……おいしくないならいい」


 両手を伸ばして主張してたのが一転、味見への興味を失って大人しくなった。

 ちょっと申し訳なく思いつつ鶏肉を確認。

 うん、今回は予め切っておいたからもう蒸し上がってるな。

 火を止めて布巾を手に巻いてザルを持ち上げ、鶏肉をバットへ移して冷めるのを待つ。

 無論、ただ待つんじゃなくてその間にソース作りだ。

 用意するのは塩、砂糖、油、酢のようにしたサンの実の果汁、熟成させた豆板醤、ゴマ、ニンニク、ビリン、ジンジャー。

 これらを調合して作るのは、怪しい味と書いて「ガイウェイ」と読む怪味ソース。

 複雑な味という意味があるソースで、蒸した鶏肉をこれで味付けしたものを怪味鶏ガイウェイチーという。

 料理人によってタレに使う材料に違いはあるけど、塩味や甘味や酸味といった様々な味が複雑に交わってるのが特徴だ。

 今回の材料は醤油が無いから代わりに塩を使う点と、酒や一部調味料が無い点以外は中華桐谷とほぼ同じだ。

 ちなみにこういう複雑な味わいのソースは好き嫌いが分かれるからと、日替わりでもたまにしか出してない。

 早速調合をする前に、下準備としてニンニクとジンジャーはおろし金でおろし、ゴマは空いてるコンロで軽く炒って香りを出す。

 そして人数分の椀を用意して、それぞれの好む味で調合する。


「ソース――」

「あんなに――」

「どういう味付け――」


 強い味わいが好きだけど辛いのが苦手なダルクは油とニンニクとジンジャーを利かして、豆板醤とビリンは極少なめ。

 甘いのが好きなカグラは砂糖と酢を多めにして、甘酸っぱい味わいにしよう。

 アッサリ目が好みのセイリュウは塩とサンの実の果汁を主体にして、他はあまり加え過ぎないように注意。

 辛いのが好きなメェナは、言うまでもなく豆板醤とビリンをふんだんに使う。

 俺はニンニクとジンジャーとビリンは少なめ、酢とゴマは少し多めがいいな。

 でもってイクトの分だけど、あまり刺激が強くない方がいいだろうからビリンと豆板醤はちょっとだけ、ニンニクとジンジャーと酢も控えめにして塩と砂糖を中心に据えた甘じょっぱい感じにしてみよう。

 

「一人一人味を変えるの?」

「お前達の好みの味は知ってるからな、それくらいの調整はできるさ」


 イクトは想像だけどな。

 子供は辛いのだけでなく、酸っぱいのも嫌う場合があるから甘じょっぱくしてみるんだ。


「いや、手間かかるじゃん」

「美味いのを食ってもらうためなら、大した手間じゃないさ」


 なにせ分量を調整するだけだからな。

 しかも六人分だけなら騒ぐほどの手間じゃない。


「好みに合わせてって――」

「それはそれで難し――」

「リアルでも知り合い――」


 調合したそれぞれのソースはスプーンでちょっとだけ取り、手の甲に乗せて味見。

 合間に水を挟んで口直しをしつつ、鶏肉や野菜と一緒に食べることを考慮した濃さに調整する。

 途中でイクトから味見すると言われたけど、これもまだ出来てないと説明して却下させてもらった。

 そうしてソースが完成したら皿にキュウリとキャベツを敷いてトマトを添え、冷ました蒸し鶏のモモと胸とささみをそれぞれ乗せて怪味ソースを回しかけて怪味鶏ガイウェイチーの完成。

 野菜と肉を怪味ソースで和えるのもあるけど、今回はかけるだけにした。




 色々鶏肉の怪味鶏ガイウェイチー 調理者:プレイヤー・トーマ

 レア度:3 品質:7 完成度:86

 効果:満腹度回復17%

    魔力+3【2時間】 器用+3【2時間】

 蒸し鶏のモモと胸とささみに手作り怪味ソースをかけた一皿

 複雑な味わいのソースは好みが分かれる

 肉と野菜と和えて食べるのも良し




 味の方は……よし、肉や野菜と一緒に食べてもソースが勝ちすぎてない良い濃さだ。


「ますたぁ、いくともあじみする!」

「待て待て待て、これは俺用だからイクトはこっち」


 俺用のを味見しようとするのを止め、イクト用のを味見させる。

 ダルク、そんな物欲しそうにこっちを見るな。


「おいしっ! あまくてすこししょっぱくて、ん? おくち、ちょっとぴりぴりする?」


 それは豆板醤とビリンによるものだな。

 かなり量を控えたつもりだけど、ピリピリ程度には感じるのか。


「食べられないか?」

「ううん! たべられる、おいしい!」


 ならこのままでいいな。

 完成した怪味鶏ガイウェイチーはどれが誰のか分かるよう、添えたトマトの配置や向きで区別がつくようにしてアイテムボックスへ入れておく。


「えっ、ちょっ、食べさせてくれないの!?」


 驚愕するダルクに賛同するように、カグラ達やイクトからもおあずけされた犬みたいな表情を向けられた。

 いやだって、まだスープとかつくねを使った一品ができてないだろ?


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