制限の無い料理集う
夜の冒険者ギルド二階。
そこにある大会議室のテーブルには多種多様の料理が多く並び、テーブルを囲むように二十三人のプレイヤーとイクトが席を立って飲み物を手にしている。
「では。イベントのお疲れさま会と新たな仲間のイクトを歓迎して、乾杯!」
『乾杯!』
料理プレイヤーの青年が様々な木の実や野菜を使って研究し、開発したというジュースやスムージーを飲み物で乾杯をして着席する。
俺が飲んでるのはヴィシソワーズっていうスープを参考に、ジャガイモと牛乳を主体に作ったっていう飲み物。
スープなのか飲み物なのかよく分からないけど、味はいいし細かくすりおろしたジャガイモの喉越しもなかなか良い。
「いいな、これ」
「似たようなのでコンの実を使った、冷製コーンポタージュみたいなのもあるぜ」
そう口にするエルフの青年は飲み物の開発に注力してて、単なるジュースやスムージーだけでなくスープをベースにした飲み物も研究してる。
普段はこういった飲み物を屋台で売っており、どの飲み物にも一つとはいえバフ効果があるから繁盛してるそうだ。
だからなんだろう、プレイヤー名がバーテンダーなのは。
「ますたぁ、これあまくておいしい!」
椅子に座らず俺の膝の上に座ってるイクトが、両手で持ったコップで飲んでる物の感想を口にする。
バーテンダーによると、ニンジンやトマトを使った野菜ジュースとのこと。
「この味なら繁盛するのも分かるな」
「ありがとな。たださ、調子に乗って品数を増やし過ぎて仕込みが大変なんだよ。だから最近は商品を何組かに分けて、ローテーションで販売してるんだ」
本人が自覚してる通り、調子に乗ってメニュー開発をし過ぎるとそうなる。
良いのができたからって、なんでもかんでも販売してたらキリがない。
たまにやたらメニューが多い飲食店を見かけるけど、あれは本当によくやってるもんだよ。
まあよく見ると、使ってる材料に共通点がある料理だったりするんだけど。
もやし炒めともやしが入ってる野菜炒め、麻婆豆腐と冷ややっこと麻婆ナス、みたいな感じで。
「いくつか知らない木の実があるけど、これはどこで入手したんだ?」
並んでる飲み物の情報を表示されて読んでると、知らない木の実がいくつかあった。
どこで入手したのかバーテンダーに尋ねると、ガニーニの所で入手したそうだ。
「ガニーニと仲良くなれば、もっと色々な種類の木の実を貰えないかと思って通ってたら、何が切っ掛けか分からないけど本当に貰えるようになったんだよ」
そう言ってアイテムボックスから三つの木の実を出して見せてくれた。
モモとよく似てるピチーの実、マンゴーに似てるマゴンの実、そして細長いカボチャのような外見と固さだけど、加熱したら皮ごと食べられるくらい柔らかくて中身がねっとりとした食感になるというパプンの実。
他にもいくつかあるそうだけど、使い切ってしまって今は手元に無いらしい。
木の実がテーブルに広げられると他の料理プレイヤー達も興味を引かれ、バーテンダーから使った感想を聞いてる。
「このカボチャのポタージュみたいなのは、パプンの実をどうしたの?」
「礼は出すから、ガニーニの所へ通ってやってたことを教えてくれ」
「入手した情報はとっくに情報屋へ売った。今は入手方法を確定させるため、検証中なんじゃないか?」
既に情報屋に売ったのなら、後でミミミか玄十郎かイフードードーへ連絡してみるかな。
ちなみにバーテンダーはこれに熱中してて、ガニーニ以降のチェーンクエストを進めてないそうだ。
あれって結構序盤だったよな?
「ますたぁ、このおにくおいしいよ!」
木の実について話しあっていたら、触覚とカチューシャのレッサーパンダ耳をギュンギュン動かすイクトが串焼き肉を食べ、目と表情を輝かせていた。
口の周りを脂だらけにして満面の笑みを浮かべてるから、よほど美味いんだろう。
「あっ、それ俺が作ったやつだ」
バーベキュー作だという串焼き肉は、スコーピの店で入手したという香辛料や乾燥させたハーブ類をふんだんに使ったもの。
イクトの口周りを拭ってやってから一本もらうと、香辛料とハーブの良い香りが漂ってくる。
配合を決めるのに苦労したというだけあって味も良く、香辛料の刺激とハーブの風味が肉を引き立ててる。
「美味いな、これ」
「肉は……北の方にいるヘビーゴートの肉ね」
ヘビーゴートはセカンドタウンノースからさらに北へ進んだ山間部にいる、体重の重い羊のモンスターらしい。
重いだけでなく防御力が高い上に群れるから、なかなか厄介なモンスターと言われてるようだ。
バーベキューの知り合いの戦闘職パーティーが大量に入手して、美味く料理してほしいと頼まれて作った試作品とのこと。
無論、味見はしてあるそうだ。
「しっかしイベントの時のような食事情でなければ、こんなに美味い料理が並ぶんだな」
『それな』
まったくもってその通りだ。
ダルクは二度揚げした唐揚げを貪ってるし、セイリュウはカルボナーラ風に仕上げられた麺を黙々と食べてるし、カグラはニコニコ笑顔で砂糖水に漬け込まれた木の実類ばかり食べてるし、メェナは辛口のオーク肉炒めに例の辛さ激マシマシの七味的なのをこれでもかと振りかけて食べて周囲を引かせてる。
ポッコロやゆーららんやルフフン達も思い思いの料理を食べ、ギョギョ丸達に至っては何故か俺が作ったトマトクリームスープとコンマヨ牛乳パンを食べて騒いでる。
「まさか料理長が個人で作った料理を食べられるなんて!」
「あいつらに思いっきり自慢してやろう!」
「うおぉぉっ! 大好物のコーンマヨネーズみたいなパン! しかも料理長の手作り、キタコレ!」
……よく分からないけど、彼らは放っておこう。
「お兄さん、このスープ美味しいです!」
「トマトクリームソースのパスタは現実のお店で食べたことがありますけど、スープでも美味しいですね!」
リスの尻尾をブンブン振る右隣のポッコロと、髪を触手のようにゆらゆら揺らす左隣のゆーららんが、スプーンとスープの入った器を手に感想を口にする。
そうかそうか、そう言ってくれると作ったこっちも嬉しいよ。
ありがとうと伝え、それがチェーンクエストの始まりになったシープン一家へ出した料理だと説明すると、料理プレイヤー達がざわついた。
「こ、このスープとパンが星座チェーンの切っ掛け」
「これのお陰で香辛料に辿り着けたのか」
「トーマさんがこれを作ったから、木の実を入手できたのね」
反応が大袈裟だな。
「パンはチーズが無いからコンマヨに変えたけど、それ以外は同じだぞ」
「もー、トーマってばこんな美味しいのを僕らに出さずにいたの? ちゃんと出してくれなきゃ困るよ」
右手に二度揚げの唐揚げを挟んだ箸、左手にコンマヨ牛乳パンを持ったダルクが文句を言ってる。
文句を言う前に、その食い方は行儀が悪いからやめろ。
イクトやポッコロやゆーららんが真似したらどうするんだ。
「今食べてるんだから、それでいいじゃないの」
「そうよ。あまり細かいことをブツブツ言ってると、揚げ物を作ってくれなくなるわよ」
「それはやだ! 発言を取り下げるから、どうかお許しを!」
失言した政治家か。
だけど一応は謝ったし些細なことだから、オークトンカツとパンを同時に持ってる点を注意して改めさせることで手打ちにした。
「ますたぁ、これもおいしい」
注意が終わった直後に声を掛けてきたイクトが、さっき拭いたばかりの口の周りをクリームでベタベタにした状態で、フォーク片手に手元にあるクリームを乗せたパンケーキの皿を指差す。
イクトはもうちょっと、食べ方について躾けた方がいいかもしれない。
「あっ、それは私が作ったパンケーキのカスタードクリーム乗せね。イクト君、美味しい?」
「うん! おいしー!」
輝くほどの満面の笑みで美味いのは分かったけど、まずは口を拭け。
再度布巾を取り出して口の周りを拭い、パンケーキを一口分けてもらう。
美味い。前に俺が作ったカスタードクリームより濃厚で卵の風味がしっかりしてるのに甘さはそこまで強くなく、舌触りも滑らかだ。
「確かに美味いな、これ」
「ふふん。私、現実でもパティシエ目指してますから。このカスタードクリームもパンケーキも、完成度90ですよ90! 美味しくないはずがありません!」
調理者の女性プレイヤーが立ち上がって胸を張って宣言すると、小さな歓声と拍手が起きる。
すると恥ずかしくなったのか、真っ赤になってペコペコ頭を下げだした。
しかし完成度90は凄いな。
前に俺が作った時は、完成度80ぐらいだった気がする。
「イクト、俺の川魚のムニエルハーブソースも食ってくれよ」
「こっちは鶏の手羽先と手羽元のハーブ焼きだ。食べるか?」
「たべりゅ~!」
今日の主役のイクトへ、料理プレイヤー達が次々に自分の料理を食べさせてる。
なるほど、これがさっきから近くにない料理も色々食べてる理由か。
というかイクト、今のたべりゅ~ってなに。
自然に出たのか? それとも誰かに教わったのか? だとしたら教えたのは誰だ?
「括目せよ! メガリバーロブスターのフライに、タルタルソースの降臨である!」
タルタルソースだと。
しかもそれっぽいものじゃなく、マヨネーズと茹で卵とピクルスと乾燥ハーブを使った本物だ。
これがメガリバーロブスターのフライ、即ちエビフライに合わないはずがない。
「鶏白湯の鶏団子スープです。手羽先と手羽元を肉と骨に分けて、骨でスープの出汁を取って、具の鶏団子は肉をすり鉢ですりおろして作りました」
手羽先と手羽元を肉と骨に分けて、骨で出汁を取る。その手があったか。
今度その方法を使って鶏白湯のラーメンを作ろう。
肉はこの鶏団子みたいなつくねにして、刻みネギを散らせばそれっぽい形になるはず。
「んー! おいしいのいっぱい!」
勧められた料理を順番に食べ、その度にイクトは笑顔を見せる。
今日はお前が主役なんだから、好きなだけたくさん食べるといいさ。
でも食べる度に口周りを汚していくのは、どうしても気になる。
まあ料理は喜んで味わうのが一番だし、せっかくの歓迎会で躾けるのは無粋だからいいけどさ。
「うん、どれも美味しい。実家のご飯を思い出す」
「現実ではコンビニ生活だから、こういうのは染みるぜ」
「ゲームとはいえ、人の手作りだものね」
ルフフン達はルフフン達で、ちょっと違った方向性で料理を堪能してる。
まあいいさ、楽しみ方は人それぞれさ。
「パンとスープのスクショは撮ったぞ。これは永久保存だ」
「この味も永久保存したいぜ」
「はっはっはっ! あいつら悔しがるだろうな!」
よく分からない楽しみ方をしてるギョギョ丸達もな。
そんな感じで進むお疲れさま会兼イクトの歓迎会は、最初こそ料理の話題で盛り上がったものの、徐々に落ち着いてくると話題はイベントにおける別のサーバーの話に移る。
「うわぁ。エータの奴、ブレイザーと同じサーバーだったのか」
真向かいにいるまーふぃんから話を聞き、嫌な奴を思い出す。
インプの坊ちゃんと呼ばれてる料理プレイヤー、ブレイザー。
あいつには前に絡まれたことがあるけど、エータはイベントで三日も同じサーバーで過ごしたのか。
「そうなんです。かなり自分勝手にやらかしてたみたいで、うんざりしてました」
だろうな。あいつの絡み方って面倒くさいし。
できることならもう二度と会いたくない。
そしてあいつの所業を聞いて、なお会いたくないと心の奥底から強く思った。
「えっ!? あの眷属達、倒すヒントあったの!?」
「ええ。他のサーバーにいた知り合いが教えてくれたわ」
「献上の試練のヒントもあったの?」
「うぐぅっ、もっと深く追求してれば……」
離れた席でルフフンやシャロルと話してるダルク達の会話が聞こえたけど、ヒントあったんだ。
えっ? NPCの文官に資料を見せてもらったり、兵士達からさらに話を聞けばヒントに繋がった?
しかも薬吉の話を聞くと、そのNPC達は俺も声を掛けた相手だ。
うわぁマジか。結果的にノーヒントでクリアできたけど、ヒントを知ってればもっと楽にクリアできたのに。
「いくととおなじこ、ほかにもいるの?」
「そうだよ。ちょっと性格は違うけどね」
「あいたい!」
「どこにいるか分からないけど、会えると良いわね」
「うん!」
俺の膝の上に座ってコンマヨ牛乳パンを食べながら、両隣りに座るポッコロとゆーららんと喋ってるイクト。
どうやら他のサーバーで試練をクリアしたプレイヤーが、イクトと同じ存在を得たことを話してるようだ。
「なにあの、おにショタロリの塊。尊すぎていくらでも見れるわ。今年の最押し確定じゃない」
「こういう場でそういうのはやめろって」
鼻を押さえてるミーカが意味不明のことを口にして、レイモンドに諫められてる。
よく聞こえなかったけど、なんの塊だって?
「あっ、トーマさん。エクステリオさんと冷凍蜜柑さんとメアリーさんからメッセージです」
「どうした?」
「あの人達、チェーンクエストを進めてサードタウンマーズにある調理用の魔道具店を尋ねたみたいなんです」
おお、あの続きか。どうだったんだろう。
「でもフィシーさんへミヤギさんの燻製肉を渡してアスクさんの名前も出したそうですが、何も買えなかったし頼み事もされなかったそうです」
えっ? なんで?
頼み事すら無いんじゃ、進めようが無いじゃないか。
「ただ一言、証を持ってきたら売ってやる。そう言われたそうです」
「証?」
「それについて尋ねても、証は証だと返されたそうです」
つまりその証とやらを得られれば、頼み事をクリアせずとも調理器具を売ってもらえるわけか。
でもそれが何か分からない。
ん? あっ、俺にも同じメッセージ届いた。
「俺も同じのを受け取った。何か知らないかってある」
「発見者はトーマさんですからね。心当たりはありませんか?」
心当たりねぇ……。
「ひょっとしたら、何かの違う言い方なのかもよ」
話を聞いてた料理プレイヤー達も、料理関連のチェーンクエストとあって今の話に興味を示して口を挟んできた。
「何かってなんだよ」
「それが分かれば苦労は無いわよ」
「職業じゃないか? 最低でも一回は転職してるとか」
「いいえ。冷凍蜜柑さんとエクステリオさんは、料理人から調理師へ転職してるのでそれは違うかと」
へぇ、あの二人はもう転職してるのか。
料理人の次って調理師なんだな。
「まさか称号とか?」
「確かに証だけど、なんの称号が必要なんだ?」
「料理系ならなんでもいいんじゃないか?」
称号なんだとしたら、【クッキング・パイオニア】を持ってる俺はなんとかなりそうだ。
でもユニークタイプの称号が条件なはずがないしな。
「でも冷凍蜜柑さんは、【レシピ・パイオニア】の称号を持ってるんですよ?」
「ああ、料理ギルドへオリジナルレシピを三つ提供すれば誰でも得られるあれか」
へぇ、そういう称号があるのか。
今の話から察するに、【クッキング・パイオニア】の廉価版って感じかな。
「まさか、それ以外の称号が必要なのか?」
「それ以外の称号ってなんだよ」
ユニークタイプだっていう【クッキング・パイオニア】はまずないな。
もしもそうなら、俺しか購入できないし。
「称号とは限らないでしょ。他の何かかもしれないじゃない」
称号以外の何かねぇ。
「お兄さん、心当たりは思い浮かびましたか?」
イクトに木の実の砂糖漬けを食べさせてるポッコロに尋ねられ、何かないかと改めて考える。
そしてふと思った。
「証ってこれじゃないかな?」
心当たりをアイテムボックスを取り出し、皆へ見せる。
それは料理ギルドへオリジナルレシピを提供し続けて入手した、料理ギルド認定証と書かれた木札。
名称に証ってあるし、これを見せれば食材や食器だけでなく調理器具を買う際にも割り引きしてくれるから、調理器具を売ってる店には有効なはずだ。
「なんだそれ?」
「料理ギルド認定証? あっ、知ってる。情報屋でそれの情報買った」
「ギルドへオリジナルレシピをいくつか提供すれば、貰えるんだよな。まだオリジナルレシピ開発二つしかできてないから、持ってないんだよ」
「私もオリジナルは一つだけだから持ってない」
情報はあれど、俺以外は持ってないようだ。
まーふぃんが確認してみたところ、冷凍蜜柑達も持ってないらしい。
「案外持ってないんだな」
「オリジナルレシピの料理なんて、そう簡単に作れないって」
「それに割り引きになるぐらいなら、別にいいかって思うわね。現実ならともかく、ゲームだもの」
現実では割引に拘るけど、ゲームなら値上がりとかの心配が無いから気にしないってことかな。
「【レシピ・パイオニア】の称号を貰ってからは、全く提供してませんね。そもそも、オリジナルレシピは三つしか作れてませんけど」
「MMOでは情報を秘匿しがちだものね。料理ギルドで公開されるからって、オリジナルレシピを提供してない料理プレイヤーは多いわよ」
そういえば、前にポッコロとゆーららんからそんな話を聞いたっけ。
「お兄さんは、なんでもかんでも秘密にするんじゃなくて、公開した方が色々な変化を見られるからってレシピを提供してるんでしたよね」
「今はいくつ提供してるんですか?」
左右にいる当人達からの質問がきた。
膝の上に座るイクトも、口の周りにタルタルソースを付けながら興味深そうにこっちを見上げてる。
えっと確か、【クッキング・パイオニア】を入手した時点では。
塩焼きうどん
乾燥野菜出汁の塩スープ
茹で肉の油ソース掛け
この三つだった。
それから料理ギルド認定証を入手した時点では。
豚肉の茹で汁スープ
ボーンズスープ
ペペロンチーノ風焼きそば
川魚のつみれ汁
ポーションまぜそば
これを加えた八つ。
ただし後半三つは一度に提出したから、料理ギルド認定証に必要なのがいくつなのかは正確には分からない。
で、その後も折を見て提供し続けて今回のために材料調達をした時にまた提供したから、現在は。
コロッケ風春巻き
カボチャコロッケ風春巻き
ゴロゴロ野菜のトマトクリームスープ
刻み麺のチャーハン仕立て
混沌出汁
カスタードクリームの揚げ饅頭
刻み麺のガーリックライス風・熟成オーク肉乗せ
リバークラブの天津飯風
酢兎
牛乳入り果実スムージー
刻み麺の親子飯風
この十一個を加えた十九個だな。
でもって、たった今ゆーららんが最後の一個を食べてるコンマヨ牛乳パンは提供後に作ったから、唯一まだ未提出の品だ。
「提出済みが十九で、未提出なのは今ゆーららんが食べてるコンマヨ牛乳パンだけだな」
『多っ!?』
『秘匿って言葉知ってます!?』
なんかダルク達とイクト以外から、一斉にそんなことを言われた。
「トーマらしいね」
「いつも通りのトーマ君ね」
「逆に安心する」
「まさしくトーマクオリティね」
どういう意味だお前ら。
「ますたぁ、どうしたの?」
口の周りにタルタルソースが付いてるけど、状況を理解してないイクトが今はありがたいよ。
そう思いつつなんでもないと返し、布巾で口周りを拭ってやる。
その後、フィシーの言う証が料理ギルド認定証を指すのかどうかの確認は、そこへ行く予定になってることもあって俺が検証することで決定した。
なお、お疲れさま会兼イクトの歓迎会は夜遅くまで続き、解散したのは主役のイクトが眠くなって寝落ちしてからだった。




