公式イベント開始
土曜日の午前は滞りなく進む。
朝の身支度と朝飯を済ませたら祖父ちゃんと父さんと一緒に仕込みをして、少ししか手伝えないけど厨房で昼営業を手伝う。
「斗真、焼き餃子二皿追加だ」
「分かった」
父さんからの指示を受け、先に注文を受けた餃子を包み終えたら焼き台に並べて焼き、その間に追加の二皿分を包む。
「それが終わったら卵を持ってきてくれ」
「はいよ」
追加の分を並べて先に焼いた方へ軽くお湯を掛けながら返事する。
鉄板の温度の低下を可能な限り抑えるのと餃子自体を冷やさないよう、蒸し焼きには水じゃなくてお湯を使う。
さらに掛け過ぎて皮が緩くなるのを防ぐため、掛けるのは少量でいい。
蓋をして蒸し焼きにしてる間に冷蔵庫からパパっと卵を取って祖父ちゃんの傍に置き、すぐに戻って先に焼いてた分を皿に盛る。
「母さん、一番卓の焼き餃子三人前上がったよ」
「はーい」
土曜の昼だけあって家族客が多く、サイドメニューの注文が多い。
特に焼き餃子はサイドメニューの定番だから、さっきから頻繁に注文されてる。
あと、休みだからって昼間から酒を飲んでる飲兵衛達からも。
ビールと餃子はド定番だけど最高の組み合わせだって、飲兵衛の祖母ちゃんと母さんも言ってるけど、まだ未成年の俺にはどれだけ最高なのか分からないし試してみることもできない。
UPOでならと思っても、未成年プレイヤーは飲酒できない。
酒を造ったり買ったり料理に使ったりはできるんだけどな。
「おう三代目! 今日は未来の若女将は誰も来てねぇのか?」
昼から飲んだくれてる飲兵衛が、大ジョッキのビール片手にまたその話題を出してきた。
というか、うちの酔っ払い共はどうして毎回その手の話題を出すかな。
「早紀達なら、今の時間は早紀の部屋で勉強会中です」
「へえ。あの早紀ちゃんが勉強とは珍しいな」
「何言ってんだ、学生なんだから勉強して当然だろ。感心感心」
やらないと今後のゲームに関わるからやってるんであって、決して感心するようなことじゃないと思う。
勉強で感心するとしたら、塾以外にも自主的に勉強してる桐生と長谷、それと塾には通ってなくても自ら予習と復習をしてる能瀬だな。
ちなみに俺は店の手伝いがあるから、課題だけやってるタイプ。
「そりゃそうだけどよ、未来の若女将が誰もいないから三代目は寂しいだろ」
別に寂しくない。
「大丈夫ですよ! いざとなったら、お姉さんとして私が貰ってあげますから!」
その返しは違うんじゃないかな瑞穂さん。
でもってドヤ顔で胸を張るから、今日も前を全開にしてるジャージの下のタンクトップを内側から押し上げて存在感を主張する胸が大きく揺れて、酔っ払い達が声を上げて他数人の男性客がガン見してる。
なお、家族連れの男性客二名が隣に座る奥さんに耳を引っ張られたり脇腹へ肘打ちされたりしてるのは、お約束ということで。
「瑞穂さん、冗談言ってる暇があったらこの焼き餃子二皿を三番卓へお願いします」
「えー、お姉さん冗談なんて言ってないよ。お待たせしました、焼き餃子です」
文句は言いつつも餃子は運んでくれた。
「瑞穂さんは悪ノリする悪癖があるから、本気と受け取れないんです」
「酷い!」
日頃の行いが原因だよ。
「そんなことより斗真、そろそろ上がってお昼食べてきな。早紀ちゃん達との約束に遅れるよ」
おっと、もうそんな時間か。
時間を確認すると12時20分ぐらい。
祖母ちゃんからの指摘に祖父ちゃんと父さんの方を見ると、どっちも黙って頷いたからお言葉に甘えて厨房を出る。
後ろから聞こえる、早紀達との約束を邪推した酔っ払い共の冷やかしを聞き流して居住部のキッチンへ向かい、冷蔵庫にあるもので適当に昼飯を食ったら自室でログインの準備をする。
「今日はいよいよ公式イベントか」
告知の通りなら未開地の開拓らしいけど、俺にできるのは飯を作ることだけ。
それはつまり、開拓作業に勤しむプレイヤーやNPCのために飯を作るしかないってことだ。
幸いバフ効果付きの料理の存在が明るみになったから、同じサーバーの人達に料理を振る舞うのも問題無いはず。
飯を作るぐらいじゃ開拓地への貢献度とは無関係だろうし、報酬はさほど期待せずにいつもの調子でやっていこう。
問題はどんな食材や道具や設備があるかだな。
「さて、行くとするか」
ベッドに寝転がってログインする。
*****
沈み込む感覚から数秒で視界は変わり、最後にログアウトしたファーストタウンの広場へ降り立った。
公式イベント開始の時間が近いとあって広場にはプレイヤーが多くいて、仲間と会話をしたりステータス画面を開いて何かを確認したりしてる。
ダルク達は……まだいないようだ。
勉強会をしてる早紀の部屋から四人揃ってログインするって言ってたから、遅刻は無いだろう。
と思ってたら、目の前にダルク達が現れた。
「あっ、トーマ来てたんだ」
「お待たせ」
「うふふ。いよいよね」
「皆、装備品の最終点検を忘れずにね」
やっぱり四人同時にログインしてきた。
しかし目の前に突然現れたから、ちょっと驚いたぞ。
「俺も今ログインしたところだ。で、課題の方は?」
「うぐっ」
この反応は進んでないな。
「あんまり進まなかったけど安心して。こうなるのは想定内よ」
「うふふ。ちゃんと泊まりの準備はしてきたから、今夜は覚悟しててね」
進まないのを想定して、泊まり込みの準備までしてたのか。さすがだ。
「せめて日付が変わる前に、七割は終わらせてもらう」
「ひいぃぃぃっ?」
ムンクの叫びみたいな顔しても駄目だぞ。
予習と復習をしろとまでは言わないけど、せめて課題はちゃんとやれ。
ちなみに今はどれくらい終わってるんだ?
だいたい二割ぐらい? まだまだ先は長いな。
「も、もう課題の話はいいよ! これから公式イベントなんだから、そんな話は聞きたくない!」
心底嫌そうな表情をしたダルクは耳を塞ぐ。
そうやって今は逃げても、どうせ後から向き合わなくちゃならないっていうのに。
「それにしても、だいぶ人が集まってきたわね」
「ファーストタウンにいれば広場でなくてもいいのに」
「単に仲間との集合場所にしてるだけでしょ、私達みたいに」
「だったら、全員集合した僕達は広場から移動する?」
そうしよう。人口密度が高くなってきた上にざわめきが大きくて、少々煩い気がするから。
というわけでパーティーを組んだら広場を出て、料理ギルドの近くにあるマッシュと初めて会った公園へ移動。
ここにもプレイヤーがいるけど、広場よりはずっと人数が少ないから落ち着いてイベント開始を待てそうだ。
「装備品は予備も含めてちゃんと揃ってるわね」
「バッチリだよ」
「私の応急処置スキルがあれば、さらに持ち堪えられる」
「いざという時はよろしくね」
俺がイベント中でも戦うつもりが無いのと同様、ダルク達は戦う気満々のようだ。
そういえばダルク達はもうすぐレベル20になる上に、見た目は変わっていなくとも装備品自体の強化をしてるんだっけ。
対する俺の方はこの程度か。
*****
名前:トーマ
種族:サラマンダー
職業:料理人
レベル:10
HP:34/34
MP:14/14
体力:21
魔力:13
腕力:31
俊敏:19
器用:35
知力:22
運:9
職業スキル
食材目利き
スキル
調理LV15 発酵LV7 醸造LV3
調合LV8 乾燥LV9
装備品
頭:布のバンダナ
上:布のロングシャツ
下:布のロングズボン
足:革の靴
他:布の前掛け
武器:鉄の包丁
*****
さすがは戦わずに料理と薬しか作ってこなかっただけあって弱い。
ステータスが低いのは当然だし、装備なんて初期装備のままだ。
チェーンクエストも依頼の一種だから、一つ達成していく度に経験値が入ってたけどこんなものだ。
だからといって方針転換する気はこれっぽっちもない。
これからも飯を作るのを主体で、たまに薬を作っていこう。
そういえばポイントがまだ残ってるけど、これはいずれ必要になった時に備えて取っておこう。
「さて、まだ時間あるしどうする?」
イベント開始まで時間はまだ少し残ってるけど、何かをやってるほどの時間は無い。
だったら軽く腹ごしらえでもしておくかな。
「なら、これでも食べてるか?」
アイテムボックスから前回のログインで仕込んだピクルスが入ってる熟成瓶を取り出す。
「それは何?」
「熟成瓶で作ってる最中のピクルスだ。漬け込んでるのはニンジンとピーマンとキュウリ」
「わっ、食べたい。ちょうだいちょうだい」
「待て待て、まずは味見させろ」
今までずっと漬け込んでたから、まだ味見してないんだよ。
さて、出来はどうかな。
ピクルス 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:1 品質:6 完成度:83
効果:満腹度回復3%
知力+1【1時間】
加熱処理したサンの実の果汁を主体にした調味液へ野菜を漬け込んだ
野菜に染み込んだ調味液はちょうど良い塩梅
食事の口直しや前菜にどうぞ
蓋を開けて情報を確認したら、試しにニンジンを一つ。
ん、いいな。
ポリポリした歯応えと酸味の効いた調味液の味わいは、まさしくピクルスだ。
形は悪くとも瑞々しいキュウリとも、微かに苦みがあるピーマンとも合う。
「ほれ、食べてみろ」
「「「「いただきます」」」」
それぞれ好きな野菜に手を伸ばして食べていく。
「パプリカが無いからピーマンなんだね」
「でも美味しいわ。苦味と酸味が意外と合ってるわね」
「このキュウリ、形は変だけど美味しい」
「定番のニンジンも良いよ」
個人的にはもうちょっと酸味と甘味を強くしてもいいかなと思うけど、ダルク達の反応は概ね良好のようだ。
そうしてポリポリ食べてるうちに、気づけば全部食べ尽くしてた。
ひとまず熟成瓶を空けるため、空いてる普通の瓶へ調味液を移してアイテムボックスへ入れておく。
「次は他の野菜でも作って」
「タマネギとかキャベツとか」
「パプリカが欲しい」
「前回入手した、ズッキーニはどう?」
漬物類は作ろうと思えば、大体の野菜で作れるからな。
イベントが終わったら要望通り、他の野菜を漬け込んでみよう。
でもそれだとオークの熟成肉が作れないから、その前に追加の熟成瓶を買いに行くか。
『間もなく公式イベントの参加受付開始時間です。参加希望者はお早めにファーストタウンへ移動してください。なお、受付時間中にパーティーを組んだり解除したりはできませんのでご注意ください』
おっ、アナウンスか。
いよいよって感じで周りのプレイヤー達が盛り上がって、ダルク達もテンションが上がってる。
それから少しして参加受付開始時間になると、パーティーのリーダーってことになってるダルクの前に参加か不参加かを確認する画面が表示された。
「もっちろん、参加する!」
上機嫌に参加するをダルクが押すと、俺達の前にメッセージが表示された。
『パーティーでのイベント参加を確認しました。受付時間が終了後にサーバーへ転送しますので、少々お待ちください』
後は待つだけか。
そう思いつつ周囲を見てると、装備品以外の物を手にしてるプレイヤーが何人かいる。
あれは何をしてるんだ?
「あら、あの人達は噂を試すみたいね」
「噂?」
「掲示板にあった、根拠なんて無い推測中の推測よ」
メェナの言う噂っていうのは、イベント中は装備品以外を使えない点についてのもの。
一部のプレイヤーが、これを装備品以外はアイテムボックスから出せないと勝手な解釈をして、だったら予め出して手に持っておけば使えるんじゃないかと予想したらしい。
こういったゲームに詳しくない俺でも、絶対にそれは無いと思えるんだけど。
「なのに、あのプレイヤー達は試すのか?」
「駄目で元々って感じじゃないの? 持ってるのもただのポーションっぽいし、成功すればラッキーで万が一失ったとしても痛くないってところかな」
ダルクの説明にカグラ達もうんうん頷いてる。
さすがにそんな噂を信じて大事な物を失うわけにはいかないから、試すとしても大したことない物を選んだんだろう。
俺だって、そんな噂を信じて包丁を失いたくない。
「だとしても、試す物がポーションなのか」
「どんなモンスターがいるか分からないからね、戦闘職なら回復アイテムの一つも欲しいよ」
「そうね。ポーションが有るか無いかで、戦い方も変わるもの」
戦わないからよく分からないけど、ダルクとメェナが言うんだからそういうものなんだろう。
それからも掲示板で語られていたっていう、根も葉もない噂話をアレコレしてるうちに時間が経ったようで、目の前にイベント開始のカウントダウンが表示された。
開始まで残り三十秒。
いよいよとあってダルク達も公園にいるプレイヤー達もテンションが上がり、残り十秒で一斉にカウントダウンが始まった。
ほとんどのプレイヤーがカウントダウンに参加してるようで、この公園どころか町全体から声が響き渡る。
これには飯しか作る気の無い俺でも、町全体の熱気に当てられて少しテンションが上がってしまう。
残り三秒から俺も参加し、カウントがゼロになったら視界が数秒だけ暗転。
そして視界に広がったのは、草がぼうぼうに生い茂った大地だった。
周囲には大勢のプレイヤーがいて、周囲を見渡したり誰かと喋ったりしてる。
いくつかのサーバーへ分けて転送されるってあったけど、結構人数が多い。
一部の嘆いてるプレイヤーからは駄目だったとか所詮噂は噂って声が聞こえるから、例の噂を試して失敗したのかな。
「ここがイベント会場の開拓地なんだね!」
「会場、と言っていいかは疑問ね」
興奮した様子で辺りを見渡すダルクに、冷静を装いつつも若干の興奮を隠せないメェナがやや早口で返す。
「見事に何も無い……という訳じゃなさそうね」
「うん、なんか廃屋? 遺跡? そんな痕跡があるね」
周囲を観察してるカグラとセイリュウの言葉につられ、改めて周囲を見渡す。
二人の言う通り、倒壊した小屋や石造りの壁の一部が伸びた草の中に埋もれてる。
「昔はここに人が住んでたのかな?」
「だとしたら、飲める水とか食べられる植物や生き物はいるんでしょうね。でないと生活圏を築くことが出来ないもの」
水と食料は生活する上で絶対に必要。
生活圏を築けたってことは、少なくともそれはあるってことか。
だけど、それならどうして痕跡だけ残って今は何も無いんだ?
「皆さんが各ギルドで依頼を受けてくださった方々ですね」
考え事をしてたら急に声を掛けられ、俺も含めて全てのプレイヤーが声のした方を向く。
振り向いた先には兜を被って鎧を纏った人物を伴った、狐の耳と尻尾が生えてて眼鏡を掛けた若い青年が柔らかい笑みを浮かべてる。
「お待ちしておりました。僕は領主の父より開拓団の団長を命じられました、フルクス・フォクスターと申します」
領主の父より、ということは彼は領主の息子か。
そういう立場のことはよく分からないけど、こういうのは息子に任せるのが普通なのか、それとも肝入りの計画だから息子に任せたのか。
ゲーム上の設定だから別にどっちでもいいけど。
ということは、傍にいる鎧を纏った人は護衛かな。
「拠点となる野営地はあちらになります。詳しい説明は向こうで行いますので、付いて来てください」
フルクスの案内で野営地へ向かうけど、野営地といってもまだテントも柵も何も無い。
あるのはたくさんの馬車だけで、たくさんのNPCが荷車から木箱やなんやらを下ろしてあっちこっちへ運んでる。
「まさかテント設営とかもすんのか?」
「マジかよ。やったことねぇよ」
「それも貢献度に入るのかな」
移動中、他のプレイヤー達はまだ野営地に何も無いことで不安になってたり、だからこそ貢献になるんじゃないかと推測したりしてる。
「ねえねえ、トーマはあの野営地を見てどう思う?」
横からひょっこり顔を出したダルクに尋ねられた。
どう思うかね……。
「何も準備されてないからこそ、やれることは色々ありそうだな。でもまずは、フルクスからの説明を聞こう」
それを聞いてから判断しても遅くはない。
説明があるのなら、まずはそれを聞いたり読んだりしてからだろ。
「トーマ君の言う通りね。まずは説明を聞きましょう」
「何をするのか気になってきた」
「適材適所で自由に動けるのなら、周囲の探索がしたいわ」
メェナの場合、探索じゃなくてモンスターとその戦闘が目的じゃないか?
だって両拳をぶつけ合わせてやる気満々だもの。
「あっ、お兄さん!」
「同じサーバーだったんですね!」
聞き覚えのある声に横を見ると、こっちへ近づいてくるポッコロとゆーららんがいた。
その隣には看護師みたいな服装をしてるダークエルフの女性がいて、俺を見て驚いてる。
二人の知り合いみたいだけど、なんか見覚えのある気がする。
「そうだな。よろしく」
「はい!」
「よろしくお願いします、お兄さん!」
二人と挨拶をしてると周囲がざわついた。
「おいあれ――」
「まさか赤の――」
「本人なら食事は――」
どうやら俺が赤の料理長だってことを喋ってるようだ。
食材や道具は何があるか分からないから、あまり期待され過ぎても困るぞ。
「あっ、お兄さん。紹介しますね。こちらはルフフンさんっていうダークエルフの薬師です」
「水出しポーションを開発した時、周囲に駄々漏れなのを教えてくれたお姉さんです」
ああそうだ、思い出した。
あの時に声を掛けてくれた人だ。
「その節はどうも」
「い、いえいえ、こちらこそ。あなたのお陰で美味しいポーションの研究が進んだので、こちらがお礼を言いたいくらいです」
そういえば、あの時もそんなことを言ってたっけ。
美味しいポーションってどういうのを指すんだろう。
ジュースとかお茶とか出汁とか、そういう系統の美味しさなのかな。
「あの後でお友達になって、今回はパーティーを組んで一緒に参加したんです」
「ルフフンさんのお友達ともパーティーを組んでるので、紹介しますね」
そう言って紹介されたのは三人。
今回初めて会ったという、裁縫士という服飾関係の職をしてる猫人族の女性ミーカ。
ルフフンを通じて知り合い、農業仲間として色々と意見交換してる人族の少女シャロル。
そしてシャロルと同じくルフフンを通じて知り合い、農具のことでお世話になってるドワーフで鍛冶師の男性レイモンド。
分野は違えど、全員ルフフンとは生産者仲間とのこと。
「それにしてもお兄さんが一緒だなんて、心強いです」
「えへへ。ご飯、期待してますね」
「やるだけやってみるけど、材料や道具次第だから期待しすぎるなよ」
笑いながら期待の声を掛けるポッコロの頭に手を置き、髪をくしゃくしゃに撫でる。
嬉しそうな表情で耳をピコピコ動かして尻尾をパタパタ動かしてる様子は、男の子なのに可愛らしい。
「料理長がショタリス君と仲良く。と、尊い。そして推せる!」
「おいやめろ、落ち着け」
「どーどー。一度深呼吸しようね」
そして何故かミーカが目を輝かせながら口に手を添えてプルプル震えて、シャロルとレイモンドに宥められてる。
どうしたんだろうか。
とかなんとかしてるうちに野営地前に到着して、先導をしてたフルクスがこっちを向いた。
「ではこれより、今日からの三日間で皆さんにやっていただくことを説明します」
さて、何をすることになるのやら。




