爆買い
向こう岸からこっちへ向かっている最中の渡し舟が到着するまでの間、くみみ達と話をして時間を潰す。
イクトは久々に会ったころろとボルボリアと交流し、ミコトとネレアところころ丸はテイムモンスター達と交流。
ダルク達はくみみ達と会話を交わし、そして俺はやたらとメフィストから話しかけられていた。
「君がクリアの一因となった、あの死霊魔法に関するタウンクエスト。あれのお陰で私はこうしてネクロマンサーとなり、死霊魔法も覚えることができたのだよ。アンデッド好きとして、君には心からお礼を言いたい」
「それは……どうも」
「あと、これを是非聞いてみたかったのだが、アンデッドモンスターがドロップした骨で取った出汁はどうだったかね? 一度くみみに作ってみてもらってなかなかに美味かったが、職業が料理人やその上位職の場合はどうなのかね? やや抽象的でも構わないから、是非教えて欲しいのだよ。お礼ならこの通り、私がコレクションしているアンデッドモンスターがドロップした骨の一部を進呈するのだよ。出汁を取るなりなんなり、好きにして構わないのだよ。できればその味がどうだったのか、感想を教えてくれると嬉しいと思う」
不気味な笑みでペラペラとまくしたてられ、こっちはすっかり押されっぱなし。
だけど骨はありがたく受け取っておく。
食材になる物を貰えるのなら、貰っておかないと勿体ないからな。
そういうわけで受け取ると、結構な量があるし形状もバラバラだから複数種類あるんだろう。
「ちなみにこれは何の骨だ?」
「人型の骨を使うのは抵抗があると思い、そういったのを避けて選んだ。スケルトンボア、ボーンホース、デスバッファロー、スカルコンドル、ヘルシャーク、その他にも色々とあるぞ」
念のため自分でも確認すると、確かにどれも人型ではないものばかり。
中にはフランケンオークとかゾンビオーガとかの骨もあるけど、深くは気にしないでおこう。
「これ、別々に使わずに混ぜて使ったらどうなるかな?」
「なんだと?」
「現実のスープ作りも、豚骨と鶏ガラを一緒に煮こむ店があるだろう? だから別々に使わず、複数種類を一緒に煮こめばどんな味がするかと思って」
「実に興味深いのだよ! 一種類ではなく、複数種類のアンデッドモンスターによって生み出される味がどんなものか、私も知りたいのだよ!」
すっごい食いついてきた。
だったらここはしっかり取引をして、ウィンウィンの関係になった方が良いな。
「味に関する情報は可能な限り渡すから、定期的にアンデッドモンスターの骨をくれないか? 組み合わせを変えれば、味のバリエーションは千差万別だぞ」
「くふふっ。実に魅力的な提案だ。良かろう、私も装備に使いたいから全てとはいかないが、余った分で良ければ味の情報と交換で骨を譲ろうではないか」
「いいだろう、契約成立だな」
不気味な笑みを浮かべるメフィストと握手を交わす。
よし、骨の仕入れ先ゲット。
これで出汁の材料に困ることは無いな。
「うわー、ネクロマンサーと料理人が業務提携しちゃったよ」
「単なる契約で、業務提携ではないでしょう」
「だけど骨の仕入れ先としては、最適かもしれないわね。うふふ」
「ボーンズスープみたいなのがたくさん飲めるんだね、楽しみ!」
「セイリュウお姉さん、なんで目をキラキラさせているの?」
「美味しいからじゃない?」
仲間達の反応は気にせず、これまでのアンデッドモンスターの骨で取った出汁の味をメフィストへ伝える。
話を聞いている間の表情は真剣そのものだが、全て伝えた後は不気味な笑みで嬉々とした様子を見せ、もっと知りたいと騒ぎ出した。
そうしているうちに到着した渡し舟は、遠くにいる時は気づかなかったが思っていたよりも大きい。
フェリーや遊覧船とまではいかなくとも、離島のような場所への定期船ぐらいのサイズはありそうだ。
さすがに大型のモンスターは無理そうだけど、ここにいるプレイヤー達とテイムモンスター達なら、全員乗っても大丈夫そうだ。
「調べておいた通りー、大型のモンスターでなければ乗れそうですねー」
「その通りだな。リボーンザウルスを連れて来なかったのは正解だったな」
なんかメフィストの口から、博物館にあるような恐竜の骨が動いているようなモンスターの名前が出た。
少し気になるけど、向こう側から来たプレイヤー達が降りたから、設置された踏み板を渡って船へ乗り込む。
「ますたぁ、どこすわる?」
「適当に座っていいぞ。ただし、迷惑かけるなよ」
「はーい! ころろ、ぼるぼりあ、いちばんまえにいこ!」
「まって、ゆっくりいこうよ」
「おれもまきこむんじゃねぇ! ま、まあ、いくとのたのみならかまわねぇけどよ!」
一番前の席へ走るイクトを、のんびり屋で走りたくないころろが歩いて追いかけ、それを追い抜いてツンデレなボルボリアが後に続く。
その後を追うようにネレアや他のテイムモンスター達、最後にヤレヤレという様子でミコトとおじじが歩いていく。
「モンスターとはいえ、性格が出ますね」
「こらー、危ないから走っちゃ駄目だよー」
テイムモンスター達の後ろ姿を見ながらルーイが呟き、くみみが注意を促すが、テイムモンスター達は既に先頭からの光景に夢中で聞いちゃいない。
「幼稚園とか小学校低学年を引率している先生って、こんな気分なのかな」
テイマーの男性プレイヤーが口にしたことへ、心の中で同意する。
普段からイクト達とポッコロとゆーららんところころ丸、そして大きな子供のダルクまでいるから、その気持ちはよく分かるぞ。
尤も、ダルク以外は素直に言うことを聞いてくれるお陰で、とても助かっているが。
「僕達も早く座ろう。そろそろ出航だよ」
そんなことを思われているとは知らず、空いている席へ座るダルク。
俺達もそれに続いて着席していく。
ダルクはポッコロとゆーららんを連れて前の方へ、カグラとメェナはごゆっくりなんて言い残して後ろの方へ行き、俺とセイリュウは中央列の窓際へ横並びに座る。
まだ何か話したかったメフィストは、くみみやルーイに引っ張られていった。
以前の俺だったらお節介なとか思っただろうけど、今の俺からすればサンキューだった。
乗り場にいた他のプレイヤー達も続々と乗船して席に座り、少ししてNPCの船長による出航の掛け声で船が動き出す。
前方にいるイクト達テイムモンスター軍団とダルクが騒いでいるのは、ポッコロとゆーららんが注意してくれた。
テイムモンスター軍団はともかく、ダルクは年下から注意されているんじゃない。
「そういえば、乗船中はモンスターって出ないのか?」
「今のところこの船に乗っている間は、モンスターが出たって情報は無いよ。川岸にいれば、水棲のモンスターが出るみたいだけど」
ということは、この渡し舟での移動中は安全ってわけか。
「この船もエンジンみたいな魔道具で動くんだよ」
「さすがはゲーム、ご都合主義がまかり通るな」
「手漕ぎや小さい船だと、あっという間に河川を渡りたいプレイヤーで渋滞するか、相当な数が必要だからね」
「そうなるよりは、多少のご都合主義で回転を上げた方がマシか」
せっかくの景観を損ねかねないし、ゲームでまで順番待ちの渋滞に巻き込まれたくないからな。
それからセイリュウと二人で雑談を交わしていると、河川の半ばあたりで景色を見るのに飽きたイクト達が突撃してきた。
大きく景色が変わるものじゃないから仕方ないと判断し、イクト達も交えて話をして過ごす。
途中、ダルクから俺達を撮影した画像と共に、「仲睦まじい一家の」というメッセージが届いた。
確認直後にダルクを見るとニヤニヤ笑顔を向けてきたから、「お前の晩飯は塩を振った茹でもやしに決定。これはどう謝っても覆らない」と返事を送信。
座席でギャーと悲鳴を上げるほど絶望させてやり、画像データはコピーしてセイリュウにも渡してしっかり保存する。
そうしているうちにシクスタウンチャイナの領内へ到着。
接岸した船から、踏み板を順番に渡って上陸する。
「シクスタウンチャイナ、来たぞー!」
「「ぞー!」」
両腕を掲げてダルクが叫び、それを先に船から降りていたイクトとネレアが真似をして、居合わせたプレイヤー達からクスクス笑い声が漏れる。
やめんか恥ずかしい。
「バカなことやってないで、早く進みなさいよ。後ろが詰まっているわよ」
「あっ、ごめん」
降りようとしていたメェナに促されてダルクがその場からどき、全員が降りたら少し離れた場所で、これから川岸を移動して目当てのモンスターを探す予定だというくみみ達と分かれる前に、初対面のテイマー達とフレンド登録を交わす。
くみみ達も後でこの先にある町へ行く予定だというから、後でまた会うかもしれないな。
だからイクト、今生の別れみたいにころろとボルボリアと別れなくていいぞ。
「ではー、また会う時までー」
「味の感想、待っているぞ」
手を振るくみみ達と分かれ、町への街道を行く。
途中で遭遇したモンスターはシクスタウンチャイナへ入ったからか、少し中国の色合いが出ている。
拳法で戦うカンフーオークとか、トンファーやヌンチャクを使うトウシゴブリンとか、四本腕のスーワンパンダとか、杖術で戦う二足歩行の猿のゴクーとか。
そういったモンスターを倒しながら、近くの町を目指してイクトとミコトに手を繋がれて歩く。
「あの四本腕のパンダ、怖いだけで可愛くなかったわね」
「ゴクー、キーキー鳴いてメッチャ煽ってきたのがムカつく!」
前を行くカグラとダルクがモンスターへの不満を口にしている。
確かにパンダは鬼の形相で可愛さの欠片も無かったし、ゴクーは集団でキーキー煽ってきてムカついた。
煽られたダルクが前に出すぎて危ない場面もあったけど、なんとかなって良かったよ。
「カンフーオークがいるなら、カンフーみたいなのをスキルとして習得する方法があるのかしら」
「トンファーやヌンチャクもあるし、そういったことができるようになる特殊なクエストがあるかもね」
隣を歩くセイリュウがネレアと手を繋ぎながら、カンフーゴブリンについて考察するメェナへ意見を告げる。
そういうのがあるのなら、シクスタウンジャパンには刀とかの特殊なクエストがあったんだろう。
剣を使うダルクなら欲しがるだろうけど、刀って盾を持たないイメージがあるから、興味が無かったのかな。
「ますたぁ、そろそろおなかすいた」
「ご飯が欲しいんだよ」
おっと、飯の要求が出たか。
時間を確認すると昼飯時だし、満腹度もだいぶ減っているし、ちょうどいい頃合いだろう。
ダルク達とネレアも同意見のようで、近くにあるセーフティーゾーンの位置を確認している。
さほど離れていないそこへ移動する途中で一回戦闘を挟み、無事に到着。
他のプレイヤーはおらず、適当な場所で円状に座って飯にする。
「はいよ、辛口和え麺と雲白肉、それと肉の茹で汁を使ったスープな」
「待ってました!」
料理を出すと、大きい子供のダルクが真っ先に料理を受け取りに来る。
続けてイクト達、ポッコロとゆーららんところころ丸、セイリュウ、カグラ、メェナと料理を渡して食事開始。
箸やフォークを手に、麺をすすったり肉を頬張ったりスープを飲んだりする。
「うん、ちょっと辛いけど美味しい! 野菜を混ぜれば、辛さも中和できるしね!」
「ちょっとからいけどおいしー!」
「はーっ! 私好みの良い辛さと刺激だわ!」
真っ先に麺をすすったダルクとイクトが感想を述べ、少し遅れてメェナが真っ赤な激辛和え麺を飲み込み、とても嬉しそうにしている。
「固すぎず柔らかすぎないコシと心地良い喉越しがする麺の味が、ほどよい辛さのお陰で引き立っているよ」
さすがは麺好きのセイリュウ、辛さや味だけでなく麺自体の出来にも着目したか。
あと、幸せそうな表情で食べる姿がとても嬉しい。
「うわっ。お兄さん、このお肉すごく美味しいですね」
「薄切りのソーカイキュウリが口の中をスッキリさせてくれるから、飽きずに食べられますね」
「それだけじゃないんだよ。ニンニクが効いた辛めのタレとピリピリネギ、この二つの味と香りによる刺激がお肉の美味しさを引き立てているんだよ。これがあるからお肉の味が単調にならず、キュウリの爽快感との対比がより明確になって、お肉とキュウリの無限循環を生み出しているんだよ」
雲白肉を食べ、驚きの表情を浮かべるポッコロとゆーららんの感想の後に、ミコトの食レポが炸裂。
無表情なのは変わらずとも、バクバクと勢いよく食べる姿が感想を物語っている。
ころころ丸も喜びながらモルモル鳴いて食べているし。
「すーぷおーしーね。おにくなーのに、おにくのあじする」
「茹で汁スープ、懐かしいわね。正式サービス開始直後の頃を思い出すわ」
一息でスープを飲み干して満面の笑みを浮かべるネレアに、懐かしむような表情のカグラ。
確かに、UPOをするようになった最初の頃に作ったからな、このスープ。
だけど前より品質と完成度が上がったし、茹でた肉が違うからレア度も上がっている。
それもあるからか、懐かしいけど以前のよりも美味い。
「トーマ、おかわりある?」
「和え麺は一杯ずつ、肉は一皿ずつ、スープは数杯ずつならあるぞ。欲しい人」
『はい!』
全員が勢いよく手を挙げて応えた。
はいよ、しっかり食ってくれ。
特にダルクは晩飯が塩を振った茹でもやしだけだから、特にな。
そうして昼飯を食って、食器類を回収してアイテムボックスへ入れたら移動再開。
さらに数回の戦闘をしてレベルが上がったり、薬草や木の実を見つけて採取したりしながら移動を続け、シクスタウンチャイナで最初の町へ到着。
町の名前は、シクスタウンチャイナ・ショク。
「三国志か」
「制作側に三国志ファンがいるんだろうね。他にもゴとギがあるし」
思わず口にしたツッコミに、セイリュウが反応してくれた。
シクスタウンチャイナにはショクとゴとギ、三つの町が所属している。
現実で言うところの蜀、呉、魏。
てっきり広州とか上海とか北京とか四川だと思っていたのに、こうくるか。
でも、ゲームならこっちの方が合っているのは否定できない。
「おー、建物の造りも中国風だね」
周囲を見回すダルクの言う通り、建物はどれも中国風で、NPCの服装もそれに合わせて漢服ばかり。
これは色々と期待できる。
「ねえ、一旦解散して自由に町を見て回らない? 見たい物は違うだろうし、自由に動けた方がいいと思うわ」
カグラからの提案に反対する意見は出ない。
そういうわけで、戦闘用の装備を中心に見て回りたいダルク達、食材や調理器具を中心に見て回りたい俺とそれに同行するイクト達、そして作物や薬関係を見て回りたいポッコロとゆーららんところころ丸、この三グループに分かれることになった。
うん、いつもとそう変わらない組み合わせだな。
「セイリュウはトーマと一緒じゃなくていいの?」
「本当は一緒にいたいけど、お互いの見たい物で時間を掛けそうだからね」
ニヤニヤ顔のダルクにセイリュウが尤もな言い分を返し、俺は頷いて同意する。
そうなったら余分な時間を取って、この後の行動に影響が出るからな。
というわけで早速、それぞれ分かれて町を散策する。
両手をミコトとネレアにそれぞれ繋がれ、初めての町で落ち着かないイクトが前を歩く。
「ますたぁ、あれすごい! あそこのおじさん、くちからひふいてる!」
「大道芸だな。口に含んだ油を噴き出して、手に持っている松明で燃やして火を吹いているように見せるんだよ」
「まーたー、あれは?」
「剣舞だ。剣を振って踊る舞だ」
「マスター、あの屋台は何を売っているんだよ?」
「爆竹っていってな、火を点けると小さい爆発を起こすんだ」
イクト達からの質問に答えながら町中を歩いていると、料理ギルドを発見。
ここも中国風の建物になっており、中へ入って受付へ向かう。
「いらっしゃい。今日は何の用だい?」
このギルド定番のおばさん職員のNPCも漢服姿か。
「食材と調理道具を見せてください。あと、食材や調理道具を扱っている店を教えてください」
町中を散策しながら探しても良いけど、何があるのか気になるから早く見つけたい。
料理ギルドなら、それぐらい分かるだろうと、料理ギルド認定証を見せて尋ねる。
「はいよ。じゃあまずは、今のアンタが買える食材と調理道具を見せてあげるよ」
おばさん職員の返事の直後、買える物が表示される。
スクロールしてそれを確認していくが、これといって目新しい物は――あった。
さすがはシクスタウンチャイナだけのことはある、中華包丁と中国風のまな板だ。
だけどこれは買わない。
うちの店ではこういった物は使わず、普通の包丁とまな板を使っている。
憧れてはいるが、使い慣れていない物は使うべきじゃない。
でも、これは使っているから購入しておこう。
「はいよ、中華鍋を二つずつとジャーレンだね」
遂にUPOでも中華鍋を購入できた。
持ち手が一つで深い北京鍋と、両端にコ型の持ち手があって浅く広い広東鍋の両方があったから、つい両方とも予備を含めて二つずつ購入。
すぐにそれらを出して順番に握ると、ずっしりとした重みを感じる。
これこれ、昨今は腕や手首への負担軽減や加熱具合を考慮して重さや素材を変えた中華鍋があるけど、ゲーム内なら手首や腕を痛めることはないから重くとも問題無い。
これらを使うために一定以上の腕力が必要ってあるが、そこはしっかり越えているから大丈夫だ。
ついでに油切りに使う調理器具のジャーレンも購入したから、炒め物を作る時に油通しができるようになった。
次に食材を確認すると、こっちには特に変わったものは無かったが、おばさん職員に教えてもらって向かった店は天国としか表現しようがなかった。
だって、欲しい調味料や香辛料がたくさんあるんだから。
「こっちのトーバージャンとテーメージャン! あとトーチー、パーサイ、ザサーイ、ハカク、チーピもください!」
表示された情報通りなら、豆板醬、甜麵醬、豆鼓、泡菜、搾菜、八角、陳皮に当たる調味料や香辛料。
金があるから興味本位の勢い購入したのもあるけど、どれも欲しかった物ばかりだ。
特に豆鼓と泡菜は、一度使ってみたかったんだ。
あとは唐辛子やビリン粉といった物も安いから買おう。
シクスタウンチャイナ・ショクは地図的に言えば四川の位置だからか、香辛料やそれを使った調味料が安い。
お陰で大量に買ってしまった。
「ますたぁ、うれしそう」
「あれ、おーしーのかな?」
「それぞれは美味しくなくとも、マスターが美味しくしてくれるんだよ」
期待に応えられるかはともかく、次は隣の乾物店だ。
おっし、やっぱりあった!
「そこの干しハイスピンホタテ、干しブロッサムシュリンプ、干しロックオイスター、あとは……あっ、ローウラも買います!」
現実で言うところの干し貝柱、干しエビ、干し牡蠣、ラーロウに当たる乾物も購入。
うちの店では干し貝柱と干しエビくらいしか使わないが、干し牡蠣とラーロウの扱い方は知っているから使ってみたかったんだ。
あとはフカヒレや干しアワビに当たる食材もあるけど、上手に調理できる自信が無いからやめておく。
調理できるようにするまでが意外と難しいんだぞ、水で戻すだけでなく臭み取りをしたり、途中で汚れを取り除きながら何度も加熱と冷却を繰り返したり。
下手な戻し方をしたら、戻す過程で旨味やゼラチン質が失われちゃうし。
今の俺には、この四つがいいところだろう。
さあ、早速これらを使って晩飯作りだ。
メフィストから貰った骨もあるし、何を作ろうか。
ああ勿論、ダルクは茹でもやしに塩を振ったものだけだがな。