チャイナへ向けて
金曜日の夜。
約束の時間近くに店の手伝いから抜けさせてもらい、大型アップデートを終えたUPOへログインし、ダルク達と合流。
今日はシクスタウンチャイナへ移動する予定になっており、その道中で食べる飯を作るために、まずはカイゴー島の拠点へ移動して飯作りをする。
何故わざわざここへ移動したのかと思いきや、ダルクによってポッコロとゆーららんへ、俺とセイリュウが付き合うことになったと伝えるためだったようだ。
これによってイクト達にも伝わったものの、イクトとネレアはイマイチよく分かっていないようで首を傾げた。
「ますたぁとせいりゅうおねえちゃん、どうなったの? こいびとってなに?」
「リュウやエリスみたいな関係なんだよ」
「ねーあ、そーひとたちしらない」
イクトとネレアは分かっておらず、同じく分かっていないころころ丸も首を傾げ、ミコトは理解しているようで違う。
お前と出会ったイベントに出てきたあのNPC達は夫婦で、俺とセイリュウよりも先に行っているからな。
だけど問題はそっちよりも、向こうの方だな。
「それでそれで、セイリュウお姉さん、どっちがどう告白したんですか!?」
「え、えと、えっと」
「シチュエーションは? 初デートの予定は? 今のところどこらへんまで進んでいるんですか!?」
「はうぅぅ……」
ダルクから俺とセイリュウのことを聞かされて以降、ゆーららんがセイリュウを質問攻めにしている。
できれば助けてやりたいけど、移動中の飯を作っている最中だから難しいし、暴走しているかのような勢いのゆーららんが声掛けだけで止まるとは思えない。
お陰でセイリュウは真っ赤になって伏せており、質問に全く答えられていない。
なるほど、こんな風に騒ぐのが分かっていたから、ここへ移動したのか。
個室だと金が掛かるけど、こっちならタダだもんな。
「ダルクにしては、気が利くじゃない」
「仲間内でのことだから二人には伝えたかったけど、周りにバレるのは気まずいと思ってさ」
その気遣いを普段からしていれば、揚げ物禁止にはならずに済むのに。
ジト目を向けてそんなことを考えつつ、完成した生地をパスタマシンで麺にする。
「ごめんなさい、お兄さん。ゆーららんがセイリュウお姉さんに迷惑を掛けて」
「そう思うのなら、なんとかしてくれ」
「できるのなら、とっくにやっていますよ」
ポッコロの言い分に、それもそうだなと思い麺づくりを続ける。
これはストック用だから、一玉ずつに分けて大量に仕込んだらアイテムボックスへ入れ、予めストックしていた麺を出して飯作り開始。
寸胴鍋と普通の鍋にそれぞれ水を溜めて火に掛け、お湯を沸かす間に一品目に使うタレを仕込む。
唐辛子を刻んで魔力ミキサーで粉状して、三つのボウルへ量を分けて入れる。
辛いのが苦手な奴用に少量、辛いのがそれなりに大丈夫な奴用にそこそこ、そしてメェナ用として大量に残った分を全部。
いや、次の料理に使うから少しだけ残しておこう。
これらに味噌と醤油と砂糖を加えてよく混ぜ、即席の辛味噌が完成。
本当はコチュジャンを使いたいけど、これで代用する。
「辛い料理を作るの!? 何? 何を作るの!?」
落ち着けメェナ、そんなに迫られたら調理が進まない。
イクトとネレアに頼んで引っぺがしてもらい、調理を再開。
ニンニクをすりおろし、それぞれの辛味噌に酢と一緒に加える。
これで韓国のニンニクを利かせた辛口酢味噌ダレ、チョジャン風のタレが完成。
辛さ控えめと中辛は俺が味見し、メェナ用のは本人に味見してもらう。
「くっはー! いい辛さね!」
ならばよし。
こいつらは一旦邪魔にならない場所へ置いておき、お湯が沸いた鍋でシャドースピニッチを、寸胴鍋でテボに入れたストックの細麺を茹でる。
加熱しすぎると風味が損なわれるシャドースピニッチと、火が通りやすい細麺だから鍋の前を離れない。
茹で上がったらシャドースピニッチはザルに上げてお湯を切り、冷却スキルで冷やして余計な熱が入らないようにする。
麺もテボで湯切りし、ボウルへ溜めて冷却スキルで冷やした無限水瓶の水で締める。
水をよく切ったら、麺は網をセットしたバットへ一玉ずつ置き、シャドースピニッチを一口大に切り分けて別のバットへ置いておく。
続けて先日の披露会にて、他の料理プレイヤーとの交換で入手した変異野菜、爽快な気分になるほど瑞々しい水色のキュウリ、ソーカイキュウリを千切りに。
続いてピリピリネギの白い部分を白髪ネギに、青い部分はみじん切りにする。
空いているボウルを用意して、一旦アイテムボックスへ入れた麺を一玉入れて、これに中辛のチョジャン風タレと油を加えてよく混ぜる。
「辛口の和え麺かしら」
「そんなところだ」
麺に油とタレをよく絡めたら皿へ移し、脇に千切りのソーカイキュウリ、一口大に切った茹でシャドースピニッチを添え、ピリピリネギの青い部分のみじん切りを麺の上に載せ、その上に白髪ネギを添えて黒ゴマを散らして完成。
辛口和え麺 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:5 品質:9 完成度:97
効果:満腹度回復17%
火属性耐性付与【中・3時間】 火傷耐性付与【中・3時間】
俊敏+5【3時間】
辛口のタレをしっかり麺に絡めた和え麺
油も絡めてあるので、麺同士がくっつくこともありません
添えてある野菜は口直しにしても、混ぜてもいいです
味見をすると、細麺だから辛みが強いかと思いきやそれほどでもない……と思ったら後から少しきた。
だけど騒ぐほどじゃないし、タレには適度な酸味があって、白髪ネギと薄い輪切りの青ネギで適度に中和されて食べやすい。
添えた野菜類、濃い風味が特徴的なシャドースピニッチと爽快なほど瑞々しいソーカイキュウリも、辛いこの料理によく合っている。
「ますたぁ、どう?」
「おーしーの? かーくない?」
「肉や魚や卵といったものが無いけど、だからこそ麺や野菜の美味しさが分かりそうな料理なんだよ」
いつものように向こう側で味を尋ねるイクトとネレアはともかく、遂にミコトは食べずとも見た目で分析するようになったか。
辛い物好きなメェナもこっちを注目しているし、早く皆の分を作ろう。
ただしメェナのは最後に作って、仕上げにゴマだけでなくビリン粉もたっぷり掛けておこう。
あれ、そういえば麺類好きなセイリュウは……まだゆーららんの質問攻めに遭っていた。
止まるかどうかはさておき、さすがにそろそろ口くらいは挟もう。
「おーい、ゆーららん、ほどほどにしてやってくれよ」
「料理が全部出来るまで! 料理が全部出来るまでですから!」
何をそこまで聞き出したいんだ。
誰か処理落ちしそうなセイリュウを助けてやってくれ。
ダルクとカグラは楽しそうに見ているだけ、イクト達ところころ丸は調理中の料理に目が釘付け、ポッコロは諦めた表情で首を横に振っている。
そうなるともう頼りはメェナだけなのに、ちょうど激辛和え麺をつくっているところだから、目がこっちに釘付けだ。
仕方ない、年下相手にこれは大人げないからやりたくなかったけど、セイリュウを助けるためだ。
「いい加減にしないと、飯抜きな」
「ごめんなさーい!」
料理担当という立場を利用した伝家の宝刀、人質ならぬ飯質による強制力を発動。
さすがにこれは効いて、ゆーららんは腰を九十度曲げるほどの勢いで謝り、ようやくセイリュウは解放された。
「うぅぅ……ありがとう」
真っ赤な顔で涙目のセイリュウへ、「気にするな」とだけ返して調理を続行。
全員分の和え麺が完成してアイテムボックスへ入れたら、二品目の調理へ取り掛かる。
再度鍋に水を溜めて火に掛け、お湯を沸かしている間にさっきのとは別のタレを仕込む。
ニンニクとジンジャーをすりおろし、酢、砂糖、醤油、さっき残しておいた粉状の唐辛子とビリン粉を少々、油を加えて混ぜてタレは完成。
別にジンジャーを輪切りにして、この前のタウンクエスト後に確保した食材、ベアブルボアタイガーの肉を大きめの塊に切り分け、鍋に沸いたお湯で臭み消し用に準備した輪切りジンジャーと一緒に茹でる。
この間にソーカイキュウリを半分に切り、縦にして薄切りにする。
ピーラーがあれば、それでも良し。
肉が茹で上がったらお湯から出して、乾燥スキルで余計な水分だけを取って薄切りに。
これを皿へ並べ、薄切りにしたソーカイキュウリ数枚を中心に置き、タレを掛けて残しておいた白髪ネギを散らす。
茹でた薄切り肉を雲のように例えた四川料理、雲白肉の完成だ。
豚のバラ肉を使うのが多いけど、白肉は茹でた肉を指すから問題無い。
雲白肉 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:6 品質:9 完成度:96
効果:満腹度回復25%
被物理ダメージ軽減【中・3時間】 HP最大量+60【中・3時間】
体力+5【3時間】
茹でた肉を辛めのタレで食べる料理
茹でても旨味の強いベアブルボアタイガーの味が、辛めのタレで引き立つ
薄切りのソーカイキュウリとピリピリネギの白髪ネギも、良い味しています
味の方は……美味い。
茹でたのにベアブルボアタイガーの肉は相当濃くて強い旨味がして、それがニンニクとジンジャーを利かせた辛めのタレと、ピリピリネギの白髪ネギの刺激で引き立つ。
この強さで疲れそうな舌は、薄切りのソーカイキュウリが気分と共にさっぱり爽快にしてくれるから、肉を大量に食うこともできる。
「お兄さん、それは冷しゃぶですか?」
「それに近い中華料理だ。四川料理の雲白肉っていうんだよ」
「四川料理!? ということは辛いのね!」
「メェナ、四川料理は全部が全部辛いわけじゃないぞ。まあタレは辛めだけどさ」
これは前菜だから、そこまで辛くない料理なんだ。
だけどメェナから期待の眼差しが向けられているし、和え麺同様にメェナの分は最後に作って、唐辛子とビリン粉をたっぷり掛けておこう。
「ぶーぶー、今日は辛い物ばっかりじゃないかー。揚げ物も禁止中なのにー」
「ちゃんと辛さの調整はしているんだから、いいだろう。それともメェナ仕様の食うか?」
「あー、今日も美味しいご飯楽しみだなー!」
この揚げ物狂いは幼馴染だし同い年だから、年下のゆーららんのように気遣うことなく飯質を取れるから対処が楽だ。
さて、さっさと人数分の雲白肉を作って、茹で汁は前にもやったスープ仕立てにするか。
移動もあるし手早く、だけど稚拙になることなく、食べてくれる皆の様子を見ながら調理する。
そんなに目をキラキラさせていたり、楽しみみたいな顔をされたりしていたら、張り切らないわけにはいかないな。
特にセイリュウからあんな愛おしそうな表情を向けているんだ、張り切らないはずがない。
かといって乱雑にならないよう注意して、飯は全て完成。
後片づけをしたらシクスタウンジャパン・キョウトへ戻り、シクスタウンチャイナへ向けて北上し、雑木林の中にある道を行く。
「この先に大きな河川があるんだっけ?」
「そうよ。そこで渡し舟に乗って向こう側へ渡れば、もうシクスタウンチャイナの領内よ」
前を行くダルクとメェナの話を聞きつつ、ミコトとネレアに手を繋がれて歩く。
今回外れたイクトはというと、セイリュウと手を繋いでいる。
普段はミコトかネレアの空いている手と繋いでいるはずが、ダルク達から俺とセイリュウの関係をあれこれ言われた影響か、何故か俺と手を繋がない間はセイリュウと手を繋ぐことになったそうだ。
「悪いな」
「大丈夫だよ、これくらい」
そう言ってもらえてなによりだ。
「カグラお姉さん、あの二人って早くも夫婦感出ていますよね」
「ふふふっ、そうね。現実でのことだから詳しくは言えないけど、普段もあんな感じになっているのよ」
「そこのところ、可能な範囲で詳しくきかせてください!」
「ゆーららん……」
後ろで騒いでいるカグラとゆーららんに、声からしてころころ丸を連れたポッコロが呆れていそうだな。
頑張れポッコロ、こういうことになったら男っていうのは弱いものだ。
実際俺とセイリュウも、教室でダルク達が騒いだせいで女子達に詰め寄られて根掘り葉掘り聞かれたし。
男子達? 全員女子達に押しのけられていたよ。
「あっ、モンスターの気配よ。戦闘準備」
メェナの一言でお喋りは中断され、イクト達は繋いでいた手を放して前に出て、最後尾にいたカグラもセイリュウと共に前へ出すぎない程度に進み出た。
俺は邪魔にならないよう後ろに下がって、ポッコロとゆーららんところころ丸と合流する。
「かーがんいくよー」
余った袖を揺らしながら両手を挙げたネレアがそう言うと、右目の上に浮かんでいる赤い星が輝く。
さあ、今回は誰が対象でどんなスキルを一時的に習得させるんだ?
「あら、今回は私みたいね」
対象に選ばれたカグラの体が赤い光に数秒包まれた。
「一時的に習得したスキルは……合気道? どうしてかしら?」
「扇術があるからじゃないの? 合気道にそういうのがあるって、聞いたことがあるわ」
首を傾げるカグラに、メェナが推測を伝えている。
だけどこれを試すためには、普段は後衛にいるカグラが前衛に出なくちゃならない。
本人は楽しそうだと乗り気だが、そうなると後衛の守り手が減るからとメェナによって却下。
ゴブリンとかのように複数で襲ってくるなら、わざと一体後ろへ通すこともできたけど、今回メェナが察知したモンスターは一体だけ。
よって、合気道は試さずにいくようだ。
「むー。敵をぶんって投げ飛ばしたかったのに」
確かに合気道ってそんなイメージがあるよな。
「はいはい、もう気配が近くまで来ているから無駄話は止めてね」
適当にあしらうかのようなメェナの言い方でも、戦闘が近いということで全員が気を引き締めた。
「何が出るのかな?」
「クモでなければ、なんでもいいわ」
そういえばゆーららんはクモが苦手だったな。
で、ポッコロはハチが苦手だったっけ。
これらが出たら虫嫌いのセイリュウは戦意喪失して逃げてくるだろうから、その時は温かく迎えてやろう。
だけどそんな心配は杞憂だった。
なにせ雑木林の中から現れたのは、茶色というより銅みたいな体色をしている、四人ぐらい乗っても大丈夫そうな大柄でゴツイ馬だったからだ。
やたら気が立っているようで、鼻息荒く足元を均している。
「あれはなんだ?」
「ボウソウバね。物理極振りで攻撃一辺倒のモンスターだけど、シンプルだからこそ強くて厄介だって、掲示板でみたわ」
ボウソウバ、漢字にすると暴走馬かな。
物凄い勢いで突進してくるそれを、ダルクとガードモードを使ったイクトとミコトが死霊魔法で召喚したスケルトンガードナーが三人がかりで押さえる。
「よし! 加速する前に出足を止めたよ!」
「ナイスダルク! はぁっ!」
「とー」
突進を止められたボウソウバへ左側面からメェナが数発の連打を放ち、ネレアが袖から出した鎖分銅を頭部へ落とし、右側面からはミコトが死霊魔法で召喚したスケルトンウォーリアーが剣で斬りつける。
攻撃を受けてヘイトっていうのがメェナ達へ向きかけたところで、ダルクが叫ぶ。
「よそ見している場合じゃないよ、この駄馬!」
挑発スキルを使ったのか、ボウソウバの意識がダルク達の方へ戻った。
すかさずネレアとスケルトンウォーリアーが追撃し、少し間を置いてメェナが「打術」の張り手でボウソウバを少し後方へ吹き飛ばした。
「魔法いくよ!」
「準備完了なんだよ」
「強めのいくから、離れてね」
セイリュウとミコトとカグラの掛け声で全員が離れる。
「ウッドアッパー」
先にカグラが魔法を叫ぶと、ボウソウバの真下から切株が飛び出して空中へ打ち上げる。
「ダークネスグラップ」
続けてミコトの魔法で巨大な黒い手が出現し、ボウソウバを掴んで握り潰そうとする。
あれは深淵魔法かな。
「魔力過乗で威力向上完了。ブラストスパーク!」
最後にセイリュウが杖をボウソウバへ向けると、極太の電撃が放たれて命中。
確か魔力過乗は魔力を上乗せして、威力を向上させる職業スキルだったな。
魔法の三連撃を受けて地面に落ちたボウソウバは、麻痺しているのか体表に小さな電気がビリビリ出ていて、起き上がる動きが鈍っている。
「よし、一気に畳みかけるわよ!」
メェナの号令と共に一斉攻撃。
そのままボコボコにやられたボウソウバは消え、経験値とドロップ品が表示された。
あっ、ボウソウバの肉がある。
ということは馬肉か。生でいけそうなら、ユッケでも作ってみるかな。
「ますたぁ、かったよ」
「しょーり」
「問題無かったんだよ」
駆け寄ってきたイクト達を受け止め、褒めてオーラを出しているから「よくやったな」と褒めてやったら喜んだ。
「どう? 何か良いの手に入った?」
「肉が手に入ったぞ」
歩み寄るセイリュウの質問に答えると、全員の目がギランって輝いた気がした。
「渡し舟の時間までは、まだあるのよね?」
「ええ、お昼ご飯は用意してもらっているし、午後の船でも余裕で次の町へ着けるわ」
「ポーション類も十分な数を用意できているから、しばらく戦闘しても大丈夫だよ」
「なら、しばしこの雑木林でボウソウバ狩りよ。馬肉という馬肉を狩って狩って、狩り尽くすのよ」
『おー!』
メェナの掛け声に、ダルクとカグラとセイリュウだけでなく、イクト達とポッコロとゆーららんところころ丸も返事をした。
腹ペコ軍団め、そうまで馬肉を食べたいのか。
となると入手できた肉の量次第では、ユッケだけじゃなくて焼肉や馬刺しも作ってやるかな。
調理の計画を立てつつ、移動しながらの戦闘の様子を見守り、最終的に結構な量の馬肉が手に入った。
ただ、関係の無いモンスターと遭遇した時、「お前に用は無い」と叫んでボコ殴りにしていたのは、モンスターが少しかわいそうだった。
そうして到着した大きな河川は、もはや向こう側に岸が見える湾口のようで、渡し舟の乗り場には数人のプレイヤー達がいる。
「あれー、トーマさん達じゃないですかー。どうもー」
乗り場へ近づくと、知り合いのくみみがいて声を掛けられる。
周囲にはくみみのテイムモンスター達の他、テイマー仲間らしきモンスターを連れたプレイヤーが複数人いて、インセクトヒューマンを連れたプレイヤーの集まりで知り合ったルーイとボルボリアもいた。
でも特に目についたのは、細身で長身の銀髪で眼鏡を掛け、白衣を羽織った男性プレイヤーだった。
なにせその人、アンデッドモンスターばかり引き連れているんだから。
「ふひひっ。会いたかったよ、トーマ君。私はアンデッドをこよなく愛するネクロマンサーのメフィスト、よろしくね」
不気味な笑い方で不気味な笑みを浮かべているのは、そういうキャラなのか素なのか。
どっちにしても、濃そうな人が出たなぁ……。