種族進化
朝食と後片付けを済ませ、畑へ向かうポッコロとゆーららんところころ丸を見送り、シクスタウンジャパンへ転移。
結構な人数のプレイヤーが来ているようで、町中は以前よりずっと賑わっている。
「あらまあ、随分な数のプレイヤーがいるわね」
「主にお米を求めて来たんだと思うわ」
人数の多さに軽く驚くカグラに、冷静なメェナが人数が多い理由を推測する。
おそらくはそれで間違っていないだろう。
だって料理人らしきプレイヤーがやっている屋台でおにぎりを買ったプレイヤー達が、歓喜の雄叫びを上げているんだから。
「うおぉぉぉっ! もっと、もっと俺に米を!」
「ここならダイエットも糖質オフも関係あるか! いやってほど米を食ってやる!」
「おい、向こうに丼物を出している屋台があるらしいぞ!」
あそこで一心不乱に米を食っているプレイヤー達は、最近来たばかりなのかな。
対する周囲にいる他のプレイヤー達は、比較的落ち着いている。
「おっ、トーマじゃないか!」
声を掛けられて振り向くと雷小僧がこっちへ手を振りながら近づいてきて、その後ろからエクステリオも歩いてくる。
「えっ? トーマって、あの赤の料理長?」
「うわっ、本当だ。赤の料理長御一行だ」
「あの袖余り片目隠れの幼女が噂のネレイスちゃんね。うん? でも聞いた話と少し服装が違うような?」
雷小僧が考え無しに声を上げて呼ぶものだから、周囲から注目が集まった。
幸いにも遠巻きに見ているだけだけど、なんとなく居心地が悪い。
悪気は無いとはいえ、雷小僧にはもう少し気配りをしてもらいたい。
「久しぶりだな。元気にしていたか?」
「まあな。お前達もこっちへ来たのか」
「当たり前だ。ようやく米が見つかったのなら、料理プレイヤーとして一度は来ておかないとな」
「俺は料理だけじゃなくて自分の畑で米を作るため、こっちへ来たんだ」
そういえば雷小僧は料理に手を出しているだけで、職業は農家だったな。
「にしてもよくやってくれたよ。海賊イベントだっけ? それをクリアしてくれたお陰で、米が食えるようになったぜ」
「本当に感謝する。冷凍蜜柑達も、米発見の一報には大喜びだったぞ」
喜んでくれたのなら、頑張った甲斐があるってものだ。
「そうだ、まーふぃんからメッセージを受け取ったんだけど、例の披露会の話はどうなっているんだ?」
「ああ、あれか。上手く予定が合わなくて日時の調整に難航している」
「記念すべき最初の披露会は、ごはんのお供でやることは決まっているんだけどな」
テーマは決まっても、開催日は未定か。
これに関しては決まったら連絡すると言うから、気長に待つことにしよう。
それから少し互いの話をして、新たに加わったネレアを紹介。
自己紹介をさせた時に男性プレイヤーを中心に声が上がったけど、早くもファンが付いたのか?
誰のファンになろうが自由だけど、迷惑は掛けないでくれよ。
一方で二人の方はというと、冷凍蜜柑をギルドマスターとした料理人や農家による「クッキングファーム」というギルドを立ち上げたこと、エクステリオがその料理人部門代表として副ギルドマスターになったことを聞いた。
前に会ったことがある面々は全員そこに所属していて、主な活動内容はゲーム特有の食材を使った料理の研究。
だけど堅苦しいものではなく、失敗しても和気あいあいとやっているとのことだ。
「それでなトーマ、海賊イベントで無人島に行ったんだろう? 何か変わった食材はなかったか?」
「可能であれば食材のトレードに応じるぞ」
おっ、いいなそれ。
一応カグラ達に確認しようと振り向くと、揃って頷いてくれたから邪魔にならないよう端に寄り、手持ちの食材の情報を交換。
どうせだったら研究してもらおうと、ミループの実とナグルの実とパイプルとストロンを渡し、実食した際の感想を伝えた。
交換で貰ったのは、以前に公式イベントのお疲れ様会でバーテンダーっていう料理プレイヤーから聞いた、モモとよく似ているピチーの実、マンゴーに似ているマゴンの実、そして細長いカボチャのようなパプンの実の三種。
足りない一種類分は、それらを料理した時の情報を受け取った。
それからギガントワイルドフロッグの肉の一部と、シクスタウンジャパンへの船旅の道中で遭遇したっていう、ワタリワイバーンの骨付き肉を交換した。
「ワタリワイバーンっていうと、渡り鳥のワイバーン版みたいなモンスターよね」
「そうそう。同じ船にいた戦闘職の連中、水棲モンスターとの戦闘しか想定していなかったから焦っていて大変だったぜ」
カグラの問いかけに雷小僧が答える。
確かに海の方ばかり警戒しているところへ、空から攻撃されれば焦るよな。
しかも備えが海対策しかしていなかったなら、なおさらだ。
「で、二人とも。米には満足しているか?」
「大満足だ」
「俺なんかあまりに嬉しくて、ご機嫌な朝食を再現しちまったよ」
ご機嫌な朝食ってなんだ?
なになに、とある漫画の一シーンで登場人物が食べていた朝飯のこと?
材料不足で完全再現は無理だったけど、内容はほぼ同じようにしたらしい。
「ちなみにその内容は?」
「焼いたスラッシュサンマ、ベーコンエッグならぬ焼肉エッグ、山盛りの刻みキャベツ、そしてごはんに豆腐のみそ汁だ」
どこがご機嫌なのか分からないけど、作る側としては野菜の種類が足りない気がする。
小鉢で良いから何か欲しい。
ほうれん草のおひたしとか、細切りにした大根とニンジンの甘酢漬けとか、刻んだ茹でオクラとかそういうの。
なんなら納豆か豆腐でもいい。
まあでもゲーム内だし、深くは考えなくていいか。
「美味かったか? そのご機嫌な朝食っていうのは」
「おう。俺なりに満足はしたぜ」
ならいいさ。
お互いに予定があるから二人とはここで別れ、レベルを上げに行く前にギルドへ寄る。
どうせ町の外へ出るならと、カグラ達は冒険者ギルドで討伐依頼を受け、俺は料理ギルドで食材の買い足しついでにオリジナルレシピを提出。
今回はジャンキー天津飯、ジャンキーガニの出汁スープ、謎骨スープの三種類で、提供したオリジナルレシピは合計四十六種類。
これによる貢献度の上昇で新しくゴマ油が買えるようになったから、即座に購入した。
手持ちのサラダ油を全て売却し、その金でさらに買えるだけ買った。
いやだって、本当に欲しかったんだもの。
「マスター、その油そんなに欲しかったんだよ?」
「まあな。同じ料理でも油一つで変わるからな」
他の油も使えるけど、やっぱり使い慣れたこれが一番欲しかった。
そんな俺に苦笑するカグラ達と共に、レベル上げをするために町の外へ出る。
「この辺りはどんなモンスターが出るんだ?」
イクトとネレアに手を繋がれて草原を歩きながら、ふと気になったことを尋ねる。
「今ある情報だと、動物系が多いらしいわ。狼系や猪系とか鳥系とか」
動物系の中で出てきたのが食材になりそうな系統なのが俺達らしいよ、カグラ。
「夜になると傘とか提灯とかのアンデッドも出るんだって」
それはアンデッドというよりも、妖怪やお化けの類じゃないのか、メェナ。
日本らしいとは思うけどさ。
「刀を使うサムライオーガとか、槍を使うアシガルゴブリンとか、豚じゃなくて猪のボアオークっていうのもいるよ」
まともな情報をありがとう、セイリュウ。
しかしモンスターが使う武器まで日本仕様なのか。
「おっと、早速出たみたいね。少し先からモンスターが四体接近! 戦闘準備!」
先頭を歩いていたメェナの掛け声でイクトとネレアは前に出て、俺はカグラとセイリュウとミコトの後ろへ避難し、ミコトは死霊魔法でスケルトンガードナーを二体召喚して戦闘態勢に移る。
現れたのは刀を持ったサムライゴブリン三体と、弓矢を引くキュウヘイゴブリン一体。
軽装だけど鎧を着ていて、連携しながら襲い掛かってきた。
こっちはレベル的には劣るイクト達がいるものの、数の差もあって危なげなく勝利。
その後も草原地帯を歩き回り、モンスターとの戦闘を重ねる。
銀色の毛を持つ狼、ジャパンウルフ六体。
雷撃を放つ大きなカラス、スパーククロウ四体。
斧と木製の丸盾を持つ猪の顔をしたオーク、ボアオーク五体。
楽勝とまではいかないものの、数の有利を活かして勝利を重ねてレベルが上昇。
おまけにボアオークからはロースとモモとバラの肉が手に入った。
「お肉が増えたわ!」
「どんな味なのか楽しみ」
「トーマ! これもよろしくね!」
はいはい、分かったよ。
情報と味を確認した上で、やれるだけやってみるよ。
肉を全部受け取り、次の戦闘が終わったら付近のセーフティーゾーンで昼飯にすることに決め、次のモンスターと遭遇を待つ。
そうして遭遇したモンスターは――。
「―――ー!?」
声にならない悲鳴を上げたセイリュウが、遭遇したモンスターを見るや敵に背を向けて俺の下へ駆け寄り、正面から引っ付いてきた。
無理もない。だって遭遇したのは地中から出てきた巨大な蜘蛛、アーススパイダーなんだから。
それが五体もゾロゾロと出てきた以上、虫嫌いのセイリュウが戦意喪失するのも仕方がない。
「早く! 早く倒して!」
「分かっているって。トーマ、しばらくセイリュウお願いね」
お願いと言われても、どうしたものか。
アーススパイダーを倒すまでは落ち着かないだろうし、正直言うと俺も落ち着かない。
前だったら虫嫌いだったら仕方ないで終わっていた。
でもセイリュウの気持ちに気づいた今は、泣き顔で引っ付かれて落ち着かない。
何度も注意してきたハラスメント警告は何も言わずにノーを押して、どうしたものかと悩む。
もしもこれが現実だったら、間違いなく心臓の鼓動が強くなって顔も少し赤くなっていただろう。
UPOにはそういったのが無くて良かったと思いつつ、背中を擦ってやることにした。
いやだって、これくらいしか浮かばないし。
そうこうしているうちに戦闘は終わり、無事に勝利。
セイリュウが抜けて後衛が火力不足になったけど、ネレアが鎖分銅でアーススパイダーの脚を砕き、機動力を削いでくれたお陰だ。
「あ、あの、ごめんなさい……ハラスメント警告も……」
「いや、いい、気にするな」
なんとなく気まずい空気だ。
「ますたぁ、かったよ」
「まーたー、ほめて」
「二人とも、マスターの迷惑にならないようにするんだよ」
ありがとうイクト達。
お前達のお陰で気まずい空気が消えて、和やかな空気に変わったよ。
ただ、よくやったなとイクト達を順番に褒めている間、意味深な笑みでコソコソ喋っていたカグラとメェナにはちょっとイラッとした。
ともあれ戦闘は済んだから、近くのセーフティーゾーンへ移動。
先にそこにいた六人組のプレイヤーと会釈を交わし、適当に空いているスペースへ座る。
続けて五人組のプレイヤーが来て、彼らにも会釈をすると向こうは全員がペコペコ頭を下げ、そそくさと隅の方へ移動して顔を寄せ合って密談しだした。
「ラッキー。料理長に会釈されたぞ」
「料理長さんの真似をするイクトきゅんが愛おしすぎる」
「直に見るネレアちゃんが可愛くて困るわ」
「ミコトたん、何かあったら僕らが守ってあげるからね」
「外にいてモンスターが襲われて、万が一にも見守りに支障が出たら大変だから思い切って中へ入ったが、大丈夫そうだな」
なんだ、あの五人組は。
念のため少し警戒しながら、昼飯をねだる腹ペコ軍団へいなり寿司と卵焼き、それと朝と同じスープを渡す。
全員へ行き渡るとイクトの音頭でいただきますをして、食事開始。
「んー。このいなり寿司、油揚げに味が染みていて美味しいわ」
「中の酢飯との相性も良いわね。生姜とゴマが合うじゃない」
「しょっぱいのと甘いのがちょうどいいね」
最初にいなり寿司を食べたカグラ達の口から好評価が出た。
褒めて貰えて嬉しいけど、暮本さんが作ったのを食べたらこの味なんて吹っ飛ぶだろうな。
「ますたぁ、このくるくるまいたたまご、あまくておいしい!」
「もーとあまーてあつーして、またつーってほしーの!」
満面の笑みを浮かべ、夢中で卵焼きを食べるイクトとネレアはいつも通り。
でもこれ以上、甘くして厚くするのはなぁ……。
「駄目なんだよ、ネレア。これ以上甘くしたら甘さだけが勝って、卵の風味が感じられなくなっちゃうんだよ。大きさだって、これ以上の厚さにしたら柔らかめの食感が失われるし、調理時の熱の通し具合に影響が出て余計に風味が落ちかねないんだよ。それらを考慮すれば、この甘さと厚さがちょうどいい美味しさなんだよ」
おぉっと、言いたいことを全てミコトに言われてしまった。
本当って表情を向けるイクトとネレアへ頷いて答えると、「おぉー」と言いながらミコトへ拍手を送り、いつもの無表情ながらミコトは少し誇らしげに胸を張った。
「なんだかミコトちゃん、料理大会の審査員とか料理評論家みたいになってきたわね」
カグラの言葉にメェナとセイリュウだけでなく、俺も頷いて同意する。
「やった、ミコトたんの食レポを直に聞けた」
「凄く詳しいのね」
「やっぱり料理長の飯をいつも食っているからか?」
「表情には出さないけど、料理長さんの料理が美味しいのは伝わってくるわ」
「ていうか、いなり寿司に卵焼きって遠足か運動会の弁当みたいだな」
休憩している、他のプレイヤー達から視線が向けられている。
食べたいんだろうけど、これはこいつらのために作った飯だから渡すつもりは無い。
「ますたぁ、いなりずしおかわり!」
「ねーあはたーごやきおかーり!」
「はいよ」
少しとはいえ、余分に作っておいて良かった。
ミコトやカグラからもおかわりを求められ、朝と同じスープで口直しをするとまた美味そうに食べだす。
そんな和やかな飯が済んだら、またレベル上げへ向かう。
槍を持ったゴブリン、アシガルゴブリン十体。
高く跳ね上がって踏みつけてくる馬、フォールホース三体。
そして胸と額に三日月模様がある熊、クレッセントベア四体を倒したところで、その時が訪れた。
目の前に種族進化可能なレベル達したと表示され、皆へそのことを伝える。
「ようやくね」
「何に進化できるの?」
「えっと……」
寄って来たカグラ達へ、表示されている進化先を伝える。
表示されている進化先はハイサラマンダー、フレアサラマンダー、シン・サラマンダーの三つだ。
「ふむふむ、どれも掲示板で見た進化先だわ」
「覚えているスキル次第では、グレンサラマンダーやボルトサラマンダーが出るんだよね」
「あとはマグマサラマンダーとか、ボーテックスサラマンダーね」
頷くメェナに続き、セイリュウとカグラがなんか凄い名称を口にした。
聞けば剣術や拳術のような近接戦用のスキルを所持していれば、物理戦闘に長けたグレンサラマンダー、雷魔法のスキルを所持していればボルトサラマンダーで、土魔法ならマグマサラマンダー、風魔法ならボーテックスサラマンダーが表示されるらしい。
「じゃあ、この三つは?」
「そういうのとは関係の無い、普通の進化先だね」
質問に返してくれたセイリュウが、表示されている進化先について教えてくれる。
ハイサラマンダーは全体的に強くなるバランス型。
フレアサラマンダーは火属性で与えるダメージ量が大きく増える代わりに、水属性から受けるダメージ量も大きく増える火属性特化型。
そしてシン・サラマンダーは火の蜥蜴から火の精霊へ変化して、魔法寄りの能力が強くなる。
さらに精霊への変化に伴い、鱗や尻尾が消えるそうだ。
「でもトーマ君には、あれがあるのよね。勿論、使うでしょ?」
「まあな」
微笑むカグラの問いかけに肯定で返し、公式イベントで入手した種族進化時全開放チケットを使うかどうか尋ねる表示にイエスを押す。
すると進化先が増え、さっき聞いた進化先も表示された。
それ以外にも色々ある中、どうせならと未発見の進化先を探す。
カグラ達に確認してもらった結果、未発見の進化先は三つあった。
名称はサラマンデス、サラマンドラ、ボスサラマンダー。
「進化条件を表示させて。スクショを撮って、後で情報屋に高く売りつけてやるわ」
商魂逞しいメェナの指示に従い、一旦パーティーに加えてそれぞれの進化条件を表示させる。
ボスサラマンダーは、モンスターを二十体以上テイムしていると選べる進化先。
次のサラマンデスは即死か死霊魔法のスキルを所持しているか、職業がネクロマンサーの際に選べる進化先。
これを知ったメェナが掲示板で調べてみると、別の種族では似たような進化が確認されているようだ。
今回はそれのサラマンダー版、といったところらしい。
「つまりサラマンダーとしては未発見だけど、種族全体で言えば発見済みってことか」
「そういうことね」
高くは売れないと分かったメェナが、溜め息交じりに肯定する。
こうなるとサラマンドラも似たようなものかと思いきや、ドラゴン系の土地神からの祝福を授かっていると選べる進化先のようだ。
つまりドラの部分はドラゴンを指すのかと頷いていると、これを知ったカグラ達が騒ぎだす。
「ちょっと待って、土地神からの祝福次第で選べる進化先があるってこと!?」
期待外れ感が漂っていたのが一転、メェナがスクショで表示内容を撮影する。
「でも、公式イベントで結構な数のプレイヤーが、土地神の祝福を入手したよね? それの影響で選べる進化先があるなんて、聞いたことないよ?」
ああ言われてみれば。
セイリュウの言う通り、公式イベントでは俺達がいた場所以外でも試練をクリアしたんだから、それなりの人数が土地神のスタッグガードナーから祝福を授かったはず。
だったらそれによって、サラマンドラのような進化をしたプレイヤーがいてもおかしくない。
「それはプレイヤーが選べる種族に、虫系統のものが無いからじゃないかしら。自分の種族に近い存在の土地神からの祝福が必要なら、それで話は通るわ。だから公式イベントに登場したのは、虫の土地神だったのかも」
確かにカグラの言うように、選べる種族に虫系は無かった。
そもそも虫系の種族になりたい人は少数だろうし、セイリュウみたいな虫嫌いは絶対に選ばないだろう。
外見のデザインを頑張ればなんとかなると思うけど、人気が出るかと言われると予測不能と言わざるを得ない。
「でも種族進化時全開放チケットを入手したプレイヤーは、他にもいるよね? だったら掲示板に上がってないだけで、情報屋にはあるんじゃないかな?」
「「あっ」」
セイリュウから指摘され、カグラとメェナが気づいた。
そうだよな、他にもいるんだから公開されていないだけで、ミミミや玄十郎は知っているかもしれないよな。
そうと分かると二人も落ち着き、思ったより高く売れないかもと呟いた。
「ねえトーマ、進化先の外見を見せて。確認できるんでしょう?」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
スクショを撮る気満々のメェナだけでなく、カグラとセイリュウからも圧を向けられて外見のプレビューを表示させる。
なお、圧を掛けるセイリュウから威圧を全く感じず、それどころか可愛らしく思えたのは秘密にしておく。
ボスサラマンダーは髪と瞳と鱗と尻尾の赤みが濃くなるだけで、サラマンデスは髪の右半分と右の瞳が黒くなる。
そしてサラマンドラは、頭に角が生えるみたいだ。
「あらまあ、頭に角が生えるのね」
「左右の側頭部から先端が尖った黒いT字型の角が一本ずつで、背中側に伸びている方が少し長めかしら」
「髪と瞳と体表の鱗と尻尾が赤いのは、そのままなんだね」
ドラゴンとしての要素は角が生えたことか。
手足に爪とか、背中に翼とかは無いんだな。
だけど手に爪なんてあったら調理の邪魔だし、足に生えたら靴とかはどうなるのかって疑問もある。
翼も翼で少し邪魔になりそうだし、これくらいがちょうどいいかな。
「スクショで記録は取ったわ。それでトーマ、どれに進化するの?」
やれやれ、ようやく本題に戻ったか。
退屈しているイクト達なんて、その辺で追いかけっこしているぞ。
まあそうだな、種族進化ならどれを選んでも料理に影響が出るわけじゃなさそうだし、ここは一つサラマンドラを選ぶかな。
念のためカグラ達にも確認を取り、了承を得てサラマンドラを選択。
一瞬体が輝いた後、頭に角が生えたサラマンドラへと進化した。
「わー、ますたぁにつのはえた!」
「触らせてほしいんだよ」
「ねーあもさーりたい!」
追いかけっこを止めて群がるイクト達に角を触らせてやる。
おおぅ、不快ではないけど変な感じがする。
「ふふふっ。これで進化条件で稼げなくとも、サラマンドラ関係で情報料を稼げるわ」
「今後の食費のためにも、お金は大事だからね」
「ミミミ達には苦労を掛けるだろうけど、これも私達の快適な食事のためだもの。頑張ってもらいましょう」
どうやらカグラ達は、なにがなんでもミミミにヘドバンさせたいようだ。
ネレアの件も含めてまた苦労を掛けそうだけど、これもうちの食事のためだから頑張れよ。




