食欲があるなら大丈夫
海賊イベントで入手した拠点で一晩を過ごした。
お世辞にも寝心地が良いとは言えないベッドで一瞬の睡眠を終えると、なんとなく体が重い気がする。
気持ちが沈んでいるならともかく、ゲーム内だから体調不良は無い。
だったらこれはなんだ?
「ん~? なんかだるい」
「体が重い気がするんだよ」
「う~。かーだ、へんなかんじ」
同じベッドで一緒に寝ていたイクトも、もう一つのベッドで一緒に寝ていたミコトとネレアも調子が悪いのか?
これはちょっと確認が必要だと判断して、ステータス画面を開いて三人の状態と、ついでに俺の状態も確認する。
すると状態が睡眠不足と出ていた。
どういうものか確認してみると、質の低い寝具で睡眠を取ったことによる状態で、ステータスの数値が二割減して次の睡眠での睡眠時間が二時間増えるというものだった。
「体が重い原因はこれか」
そりゃあこんな寝心地が悪いベッドじゃな。
というかこのゲーム、こういう状態もあるのか。
これが料理に影響しなければいいなと思いつつステータス画面を閉じ、不調なのはベッドのせいだとイクト達へ説明し、朝飯作りのために食堂へ向かう。
昨夜は朝飯を作るため、打ち合わせ中のダルク達と玄十郎よりも先に上がって寝たから、食堂には誰もいない。
ミミミはもうフィフスアイランドノースパシフィックへ行ったのかな?
「ますたぁ、あさごはんなに?」
「昨日仕込んでいたスープ以外、何を作るんだよ?」
「まーたー、おさーなつかう?」
厨房に入るとカウンターの向こう側にイクト達が並び、いつものように見学する気ではいるものの、寝不足のせいか普段よりもテンションが低い。
回復はできずとも、せめてテンションが少しでも上がるよう、頑張って美味い朝飯を作るか。
「じゃ、やりますか」
前掛けとバンダナを表示させ、準備を整えたら調理開始。
スープ用の出汁は昨日仕込んだから後でいいとして、やるべきはアシュラエビを使ったチャーハン作り。
昨日殻を剥いたアシュラエビの身をボウルへ出し、臭み抜きのため塩を振って揉み込む。
次にポッコロとゆーららんが新たに提供してくれた変異野菜、ピリピリネギをみじん切りにする。
ピリピリネギ
レア度:3 品質:6 鮮度:91
効果:満腹度回復1%
通常のネギの変異種
先端の緑の部分が赤くなっているが辛くはない
舌にピリピリと適度な刺激があなたの味覚を良い感じに開花させる
味見のために一切れをそのまま食べてみると、味は普通のネギよりも濃くて、説明にある通り舌にピリピリとした適度な刺激が走る。
それのお陰か、途中からネギの味をより強く深く感じた。
スープにも使うからいくらか輪切りも用意して、次は縦縞と横縞のシマシマタマネギを両方ともみじん切り、ジンジャーをすりおろす。
ボウルで砂糖を少し加えた卵を溶き、醤油と日本酒とすりおろしジンジャーの汁を混ぜて調味液を作り、風味を加えるために黒ゴマも準備し、昨日用意した人肌ぐらいに冷ましたごはんを用意する。
最後に塩で揉み込んだアシュラエビの身に浮いた水分を洗って流し、乾燥スキルで表面の水分だけを乾かして準備完了。
「さて、ここからはスピード勝負だ」
深型フライパンに油を敷いて火に掛け、温まったところでおろしジンジャーを入れて熱する。
香りが立ってきたらアシュラエビ、シマシマタマネギ、ネギ、ごはん、溶き卵を順番に加えながら強火で炒めていく。
最後に調味液を回し掛けて手早く炒め、お玉で半球状皿へ載せて黒ゴマを少し振って完成。
アシュラエビチャーハン 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:5 品質:8 完成度:95
効果:満腹度回復16%
HP自然回復量50%上昇【3時間】 体力50%上昇【3時間】
物理攻撃時与ダメージ量増【高・3時間】
アシュラエビの身をふんだんに使ったしっとり系チャーハン
それぞれの食材が調和し、チャーハンという一つの料理として成り立っている
スプーンでもレンゲでもいいので、思いっきりかっこんでください
ジンジャーとゴマとネギによる香りは良し。
肝心の味の方は……こちらも良し。
名称にアシュラと付いているだけあり、暴力的な強さの旨味があるアシュラエビ。
二種類のシマシマタマネギの甘さと辛さ、少し砂糖を加えた卵の甘さ、ピリピリネギの程よい刺激と油の風味。
これらがごはんの下に一つにまとまり、エビチャーハンっていう一つの料理になっている。
食感も水分でベシャベシャせず、油でベトベトにもなっていない、しっとり系のチャーハンだ。
さて、後はこれをできるだけ同じ味になるよう人数分作るだけだ。
「ますたぁ」
「マスター」
「まーたー」
イクト達がとても食べたそうにこっちを見ている。
はいはい、すぐに作るから待っていてくれよ。
試食したのは自分用にアイテムボックスへ入れ、全員分のチャーハン作りに取り掛かる。
寝不足状態のせいで体は重いけど、集中して腕を動かす。
手首に頼るな、肘や肩の関節も利用して腕全体で振るんだ。
ゲーム内なら疲れないから筋肉の酷使で鍋振りが落ちることはないんだ、練習も兼ねてここでしっかり鍋を振れ。
自分にそう言い聞かせながらアシュラエビチャーハンを作り、全員分のチャーハンが完成。
全部熱いうちにアイテムボックスへ入れたから、冷めることは無い。
完成度に大きなブレは無く、香りも少しだけした味見も問題無かったから一安心だ。
「あとはスープか」
アシュラエビの殻を煮込んだ出汁入りの鍋をアイテムボックスから出し、昨日仕込んでおいた醤油ダレ少量を注ぎ、お玉で出汁を注いで輪切りのネギと黒ゴマと油少々を浮かべてスープの完成。
アシュラエビ出汁の中華風スープ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:5 品質:7 完成度:91
効果:満腹度回復1% 給水度回復11%
腕力+5【2時間】 水属性耐性付与【大・2時間】
アシュラエビの殻を煮込んだ出汁で作ったスープ
中華風の醤油ダレで味付けした、旨味のある一品
ゴマと共にエビの香りが漂います
息を吹き掛けて冷まし、エビとゴマの香りを嗅ぎながらひとすすり。
うん、しっかり出汁が出ていて美味い。
暴力的な強さの身と違い、殻で取った出汁は太くて頑丈な一本の芯が通ったような強さがある旨味だ。
それが醤油ダレと合わさって、しっかりとしたスープになり、ピリピリネギの刺激が良いアクセントになっている。
「まーたー、いーにおい! えびのいーにおいすーの!」
「できたの? できたの?」
「イクトもネレアも落ち着くんだよ」
カウンターから身を乗り出すイクトとネレアをミコトが宥めるが、その視線は俺の手にあるお椀、正確にはその中のスープへ向けられている。
表情には出ずとも態度には出るから、無表情でもミコトの考えは分かりやすい。
あくまで飯に関しては、だけどな。
「おはよう」
おっと、ダルク達も来たか。
いつもより暗い感じのセイリュウの挨拶で振り向くと、一様に浮かない表情のダルク達がゾロゾロとやって来た。
「はぁ、寝不足状態って思ったよりも体が動かないのね」
「この調子で今日の探索は大丈夫かしら」
「それよりも、今後ここで寝泊まりするなら寝具をなんとかしないと」
カグラは気怠そうに椅子へ座り、メェナは寝起きなのに疲れた様子を見せ、ダルクでさえ普段よりテンションが低くて何度も肩を回している。
無言で着席したポッコロとゆーららんは、椅子の背もたれに寄りかかって大きく溜め息を吐き、ころころ丸も怠そうな表情を浮かべる。
「同感。これならお金を払ってでもNPCの宿に泊まった方がマシ」
着席した途端、ぐだーってテーブルにもたれかかったセイリュウの言葉に揃って頷き、俺も心の中で頷く。
そんな沈んだ気分が少しでも上がるよう、飯にするか。
熟成瓶へ入れておいたカクテキを人数分の小皿へよそい、メェナの分には唐辛子を追加しておく。
大根のカクテキ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:6 完成度:81
効果:満腹度回復4%
知力+3【2時間】 火属性耐性付与【中・2時間】
角切りにした大根を辛い味付けで漬け込んだ漬物
歯応え良く、辛さも効いている
一晩熟成させたので幾分か辛さが丸くなっています
一つ味見するけど、やっぱり一晩じゃさほど熟成していないか。
出来立てより幾分かは味がこなれた感があって、これはこれで美味い。
でも個人的には、もう少し熟成させた方が好きかな。
まあそんな個人的な好みは気にせず、早く皆の飯を並べよう。
ああそうだ、ダルクの分のカクテキにあれを加えておかないと。
それを終えてイクト達も着席させたら、全員の前にチャーハンとスープとカクテキを並べる。
すると全員が一瞬で姿勢を正し、明るい表情になった。
さすがは腹ペコ軍団、飯を前にすれば寝不足で落ちたテンションも復活するのか。
「待ってました! ちゃんとしたお米のチャーハン! いただきます!」
『いただきます!』
いつものようにダルクの号令で食事開始。
米代わりの刻み麺を使った時とは違い、ちゃんと米を使ったチャーハンだから食べる勢いが違う。
せわしなくスプーンを動かしたり、皿を持ち上げて掻っ込んだり、直接口に付けて流し込むように食べている。
「うふふ。刻み麺も悪くなかったけど、やっぱりお米の方がいいわね」
カグラの意見に口いっぱいにチャーハンを頬張ったセイリュウがコクコク頷き、続けてスープを飲む。
「このスープも美味しい。エビの味がしっかり効いて、同じエビを使ったチャーハンとの相性も良い」
麺類じゃないのに勢いよく食べるセイリュウが、スープを飲んで感想を述べる。
「ますたぁ、ごはんっていためてもおいしいね!」
「このえびもおーしーの! ごはんといためーと、とてもおーしーの!」
「炊いたお米を炒めたことで、ごはんの新たな一面を知ることが出来たんだよ。さらにごはん自体にあらゆるおかずを受け止める力があるから、一緒に炒めた野菜とエビの味にも負けず、ちゃんとごはんが主役になっているんだよ」
イクト達もご満悦のようでスプーンが止まらず、イクトとネレアは口の周りがごはん粒だらけで、ミコトは食レポが止まらない。
「エビチャーハンもスープも、どっちも美味しいです!」
「お兄さんの料理を食べていると、お母さんの料理が物足りなくなっちゃいますよ」
満面の笑みを浮かべるポッコロとモルモル鳴くころころ丸はともかく、ゆーららんはそれを母親の前で言うなよ。
それ言ったらきっと、怒るか悲しむか落ち込むかするだろうから。
「あーっ! カクテキもいい辛さね! お陰でチャーハンの美味しさが引き立つわ!」
唐辛子を追加したカクテキを食べたメェナが喜び、食べかけのチャーハンを再度勢いよく食べる。
そんな中で、皿を口に付けて流し込むようにチャーハンを食べ、スープをすすったダルクがカクテキを口にした。
「ぎゃああぁぁぁぁぁっ!? がらいー! じぬー!」
スプーンを落とし、だみ声で叫びながら悶絶するダルクに皆の食べる手が止まる。
「えっ? そんなに辛いかしら?」
「辛いことは辛いですけど、僕達も食べられる辛さですよ?」
ジタバタするダルクにカグラが首を傾げ、ポッコロがカクテキを食べて感想を口にする。
他の皆も不思議そうにしているから、理由を教えよう。
「忘れたのかダルク。次に辛い料理を作る機会があった時、お前の分はメェナが喜ぶくらいの辛さにしておくって言ったじゃないか」
海賊イベントの終盤、海賊船でシクスタウンジャパンへ向かう途中で言っただろう。
「そういえば言っていたわね。忘れていたわ」
「ぼんどうにじっごうずるなー!」
その時のことを思い出したメェナが頷く横で、涙目のダルクが叫ぶ。
辛さでだみ声とはいえ、元気じゃないか。
さっきのことを伝えた時は、HPは尽きずとも僕の魂が力尽きるなんて言っていたくせに。
こうして今朝も賑やかな朝飯の時間は過ぎ、後片付けを始めた頃に玄十郎が姿を現した。
「おはよー、玄十郎。遅かったね」
「お前達との打ち合わせの後、今日の探索のためにあっちこっちへ連絡を取っていたからな。その分、寝る時間が遅れた」
激辛カクテキでテンション低めのダルクに答える玄十郎も寝不足状態のようで、気怠そうに首や肩を動かしながら着席する。
「玄十郎は朝飯どうするんだ?」
「えっ? 俺の分は無いのか?」
「無いぞ」
「なんでだっ!?」
いや、なんでだと言われても。
「探索はそっちの要望だし、昨日の情報のやり取りは互いに過不足無しに終わったから、飯をご馳走する理由が無い」
「確かにその通りだが、期待していた俺の気持ちを返してくれ!」
無茶を言うな。そもそも、用意した朝飯は全部腹ペコ軍団がたいらげちゃったよ。
つまり、ご馳走したくとも飯自体が無い。
それを伝えると玄十郎はがっくりと項垂れ、仕方ないと呟いて知り合いの料理プレイヤーから購入したっていう、ナポリタンドッグを食べだした。
「あっ、でも昼飯は協力者の分を含めて用意しておくよ。島の探索は俺達のためにもなるから、そのお礼にな」
連れてくる人数が五人ということは、昨日の打ち合わせが耳に届いていたから把握済みだ。
「頼んだぞ!」
期待の籠った目で言われた以上は、それに応えられるように頑張ろう。
そういうわけで、朝飯の後片付けを済ませ、探索を手伝ってくれるメンバーを迎えに行くダルク達と玄十郎を見送り、昼飯の準備を開始。
味噌をボウルに出してみりんを加えて少し緩め、チャーハンに使わず残しておいたごはんを三つのボウルに出す。
一つ目のボウルには塩と黒ゴマを。
二つ目のボウルには塩とビリン粉少々。
三つ目にはみりんで緩めた味噌と、チャーハンに使わず残しておいた刻んだピリピリネギを。
それぞれ加えてよく混ぜ合わせ、念のため味加減を確認。
……うん、どれも良い感じだ。
「お昼は三種類の混ぜご飯ですか?」
「いいや、少し違う」
イクト達とゆーららんと一緒にカウンター越しに見学する、ころころ丸を抱えたポッコロの質問に答えて次に移る。
味噌を緩めたボウルを洗ってから水を張り、それで軽く手を濡らし、まずはゴマ塩を混ぜたごはんを手に取って三角形に握ってバットへ並べていく。
「おにぎりですね!」
ゆーららんの言う通り、昼は三種のおにぎりだ。
このために、昨夜は米を炊飯器いっぱいに炊いておいた。
「ますたぁ、すごい」
「どれも綺麗に三角になっているんだよ」
「まーたー、じょーず」
そりゃね、元おにぎり屋の暮本さん直伝だからな。
教わった通り、ごはん粒が潰れないよう力は強すぎず、かといって崩れないように弱すぎず、それで形はしっかり整える。
ゴマ塩おにぎりを作り終え、次は山椒ならぬビリン粉おにぎりへ取り掛かる。
本当は塩山椒みたいに塩に漬け込みたかったけど、時間が無いからこれで勘弁。
ビリン粉おにぎりを作り終えたら、最後はネギ味噌おにぎり。
ネギ味噌もしっかり作りたかったけど、これで勘弁してもらおう。
「ふう、できた」
ゴマ塩おにぎり 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:5 完成度:77
効果:満腹度回復8%
HP自然回復量+3%【1時間】
ゴマの風味が利いたおにぎり
適度な塩気がごはんの美味しさを引き立てる
形を整えつつも固くなく、柔らかな食べ応え
ビリン粉おにぎり 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:5 完成度:76
効果:満腹度回復8%
腕力+3【1時間】
ビリン粉がピリリと利いたおにぎり
適度な塩気とビリン粉の刺激がごはんの美味しさを引き立てる
形を整えつつも固くなく、柔らかな食べ応え
ネギ味噌おにぎり 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:3 品質:5 完成度:77
効果:満腹度回復8%
HP自然回復量+3%【1時間】 腕力+3【1時間】
ピリピリネギと味噌を混ぜ込んだごはんで作ったおにぎり
味噌に加えたみりんがほどよい甘さを演出
形を整えつつも固くなく、柔らかな食べ応え
一つずつ試食すると、固くなく食べている最中で崩れることも無く美味い。
とはいえ、これを何十年もやってきた暮本さんには、米の炊き方も味加減も握り方も遠く及ばない。
これが今の俺の実力ってことか。
食べたそうなイクト達とポッコロとゆーららんところころ丸の視線は気にせず、おにぎりをアイテムボックスへ入れて後片付け開始。
「お兄さん、それは僕達の分もあるんですか?」
「勿論だ」
「「やった!」」
嬉しそうにハイタッチを交わすポッコロとゆーららん。
その様子に微笑んでいると、ふとあることが浮かんだ。
「そういえば二人って、裁縫士の知り合いがいたよな? ほら、公式イベントでパーティーを組んでいた」
「ああ、ミーカさんですね。それがどうしました?」
「いやな、その人に協力してもらえれば、寝具の改善ができないかなと思って」
専門は服飾だったと思うけど、布を扱うならできるんじゃないかな。
無理なら無理で、他の知り合いを紹介してもらいたい。
「ちょっと待ってくださいね。ログインは……しているので連絡を取ってみます!」
「あっ、お礼に金と昼飯を出すことも伝えてくれ」
「分かりました!」
ステータス画面を開いたゆーららんが連絡を取る間、ポッコロからベッドそのものを改善するため、鍛冶師か木工職人にも協力を求めたらどうかと提案された。
その意見を採用し、ポッコロは知り合いの鍛冶師のレイモンドへ、俺は知り合いの木工職人の赤巻布青巻布黄巻布へそれぞれ連絡を取る。
結果、三人ともこちらの頼みを承諾してくれた。
素材も向こうが用意してくれるとのことなので、三十分後に迎えに行くことになった。
赤巻布青巻布黄巻布はやたらやる気満々で、絶対に良いベッドを作ってやると張り切っていたけど、くれぐれも空回りしないでくれよ。
問題は合流場所だけど、全員シクスタウンジャパンへ行くためにフィフスアイランドノースパシフィックにいるようだから、合流場所はフィフスアイランドノースパシフィックで決まった。
「トーマ、全員揃ったから探索に行ってくるね」
合流する時間と場所を決めて少しして、協力者を連れて来たダルク達が食堂へやってきた。
連れて来た五人は全員が初対面で、玄十郎曰く攻略組に匹敵する腕利きの戦闘職プレイヤー達だから、よほどのことがないかぎり大丈夫とのこと。
「そうか。でも気をつけてな。あっ、それと昼飯を用意したから持って行ってくれ」
おにぎりを並べたバットを出し、三種類を一個ずつ取ってもらう。
「やった、赤の料理長の飯が食える!」
「しかも米だぞ、米!」
「これを食べられるのなら、シクスタウンジャパン行きの船に乗れなくとも気にならないわ」
「遂に、遂にUPOでお米を食べられるのね。しかも赤の料理長の手料理で!」
「神様、仏様、赤の料理長様」
拝むな拝むな。ダルクはこっそり四つ目を取ろうとするな。
四つ目を取ろうとするダルクの手を防ぎつつ、さっき決まった寝具の改善についても報告すると、よろしくお願いとダルク達だけでなく玄十郎からも頼まれた。
よほど改善したいんだな、あの寝具を。
だけどまあ気持ちは分かるし、呼んだ三人には頑張ってもらおう。
えっ、ネレアもやりたいって?
そういえばネレアは、生産系のスキルをいくつか持っていたな。
「じゃあ、お願いできるか?」
「わーた!」
余った袖を揺らしながら両腕を掲げたネレアに、協力者達の中の女性プレイヤー二人が黄色い悲鳴を上げた。
あとそこの、幼女ハァハァとか言っている協力者の男性プレイヤー。
ネレアを変な目で見ているようなら、飯を取り上げるぞ。




