大集合
日曜日の朝、昼営業の仕込みを済ませた俺はいつも通り、UPOへログインする。
「ますたぁ!」
「マスター」
広場に降り立つと、進化したイクトとミコトが進化前と変わらず引っ付いてきて、その頭を撫でてやる。
何度経験しても実に良い。
就寝前に必ず見ている激カワアニマル動画と同じくらい癒されて、やる気が湧いてくる。
「やっほー、トーマ。今日も保護者やっているね」
どうやらダルク達は先にログインしていたようで、四人揃ってやってきた。
「お兄さん、おはようございます」
「農作業を済ませてから来たんですけど、待たせちゃいましたか?」
さらに、タイミング良くポッコロとゆーららんも来た。
今日はころころ丸も一緒にいて、腕を上げてモルッと鳴くとイクトとハイタッチを交わす。
ギルドを組んだ以上は出来る限りに一緒に行動しようということで、今日は行動を共にする。
というのも、今日の予定というのが―ー。
「今日はいよいよ、船に乗って海に出るよ」
ビシッとこっちを指差すダルクの言う通り、遂に海へ出る時が来たんだ。
そこから中継点的な島へ向かい、そこから別大陸行きの船に乗り換えるっていう、割と長めの旅路だ。
「事前に情報は確認したから、準備はバッチリ」
「船内にはプレイヤーが使える生産室があるから、ご飯もそこで作れるしね」
「しばらくは島に滞在する予定だし、少し観光もしましょう」
セイリュウ、カグラ、メェナの順で準備が整ったことを告げる。
船で飯を作れるのなら、事前に作っておかなくて済むから俺も助かるよ。
「野菜はアイテムボックスへ、たっぷり入れておきました!」
早速ギルドの栽培担当としての役割を果たしたとばかりに、ゆーららんが薄い胸を張った。
「ポーション類も準備しておいたので、戦闘になっても大丈夫ですよ」
そっちの準備も抜かりが無いことをポッコロが告げる。
戦闘では役に立てない分、こっちでダルク達をアシストをできるようにと、水出しのミドルポーション類をたっぷり用意してくれていた。
なお、畑の方は農業ギルドに頼んでNPCに管理を頼んだそうだ。
常に管理してもらうのは無理だけど、ログイン中の日数で十日までなら問題無いとのこと。
「よし、なら後はトーマが食材を買うだけだね」
その通り。
特に市場の魚は日毎に並ぶ品が変わるから、当日に確認しておきたいんだ。
というわけで、全員から今回の食費を受け取って予算を確保したら、乗船予定の時間もあるため早足で移動を開始。
まずは料理ギルドへ寄って、例の転送配達のサービスを利用して肉類と香辛料、それと卵や牛乳や乳製品、その他諸々を購入。
普通は職員が取りに行ってそれを送ってくる流れなんだろうけど、そこはゲーム的な都合で省略してあるからすぐに購入できる。
さらにスキマガイのスープがオリジナルレシピ扱いだったから、これを提供しておいた。
次に向かうのは以前に依頼で立ち寄り、魚醤を購入した店。
思ったより減るペースが早いのと、仕込んだやつがまだ完成していないのと、ポッコロとゆーららんところころ丸が加わったこともあり、魚醤を追加購入。
それと、ギルドへ寄った時に受け取っておいた契約証を見せ、転送配達サービスの契約を結ぶ。
前は自分で作れるならいいかなんて、見通しの甘いことを思ったけど、また同じような事態になった時に購入できるように備えておく。
それから再度ギルドへ行って手続きを済ませたら、最後は市場へ。
時間帯が早朝ということもあり賑わっていて、呼び込みの声があっちこっちで響き渡る。
できれば全部の店を見に行きたいけど、時間があまりないから食材目利きでパッと調べ、気になった品と欲しい品だけ購入していく。
「レインボーサバとハイスピンホタテ、それとそこのアツペラワカメとノコギリイカをください」
「はいよ! こいつらはどっちも美味しいよ!」
威勢の良いNPCのおばちゃんが返事して、五センチぐらいの厚みがある短めのワカメと、エンペラの部分が尖っていなくて胴体に鋸のようなギザギザがあるイカを取って見せてくれた。
アツペラワカメ
レア度:4 品質:6 鮮度:92
効果:満腹度回復2%
成長すると長さはあまり伸びず、厚くなっていくワカメ
厚ければ厚いほど旨味があるが、加熱しないと旨味が出ない上に外へ流れ出やすい
そのため出汁を取るために使われるものの、出汁が出るとペラペラに薄くなる
薄くなった状態でも適度な旨味が残っているので、出汁を取った後に食べましょう
ノコギリイカ
レア度:4 品質:7 鮮度:89
効果:満腹度回復5%
剣先や槍があるのなら、鋸があってもいいじゃないか
一見すると胴の部分がギザギザで痛そうだが、外敵対策の見せかけです
生だとねっとり食感、加熱するとコリコリとした食感になるのが特徴
出汁に使えるワカメと、見せかけだけと知っていなければ木材を切れそうなイカ。
どっちも初見だから、使うのが楽しみだ。
「トーマ、そろそろ向かわないと危ないわよ」
おっと、もうそんな時間か。
メェナから指摘され、必要な数を購入して代金を支払ったら急ぎ足で船着き場へ向かう。
到着した時には既に乗船の受付が始まっていたけど、まだ少し時間に余裕があってホッとした。
「ふう、間に合ってよかった」
「船旅なんて初めてだから、楽しみです!」
胸を撫で下ろすポッコロに続いて、テンションが上がっているゆーららんが目を輝かせる。
そうだな、船旅なんてそうそう経験できるものじゃないからな。
時間が掛かるっていうだけで、今日中には中継点の島には到着するとはいえ、少し楽しみだ。
肝心の船はかなり大きいものの、西部劇風の時代に合わせたのか木造の帆船。
だけど魔法的な力によるエンジンみたいなのがあるから、無風や嵐の時でも大丈夫らしい。
代金を払って乗船すると、内部はテレビで見たフェリーや大型客船みたいになっている。
するとポッコロとゆーららんが、せっかくの船旅なのにこの恰好はということで、装備を以前の私立小学生みたいなものに変更した。
「あら、そっちにするの?」
「見た目を変更しただけだから、大丈夫です」
「初めての船旅なのに、ツナギやオーバーオールなのはなんですからね」
カグラからの問いかけに二人はそう答えた。
そうだった、性能はそのまま見た目だけを手持ちの別装備のものに変えることができるんだったな。
しかし最近はポッコロがツナギ、ゆーららんがオーバーオールだったから、あの恰好が少し懐かしい。
「ねえトーマ君」
ちょっと懐かしい二人の姿に頷いていると、横からセイリュウに声を掛けられた。
「どうした?」
「ダルクちゃんとイクト君ところころ丸君が、甲板まで競争だって言って行っちゃった」
早速団体行動を乱してくれたよ、あいつは。
しかもイクトところころ丸まで巻き込んで。
「やれやれなんだよ」
まったくその通りだな、ミコト。
すぐにダルク達を追って甲板へ出ると、目の前には海と空と地平線だけの光景が広がっていて、微かに吹いている風に乗って潮の香りがする。
一緒に追いかけてきた皆と、思わず見とれていると舳先の方で騒いでいるダルク達を発見。
身を乗り出しているから危なっかしいと思っていたら、案の定ダルクが落ちそうになり、ころころ丸に脚を掴んでもらい、咄嗟にふらいも~どと言って羽を生やしたイクトに支えてもらって事なきを得た。
慌てて駆け寄ろうとしていた俺達は、ホッと胸を撫で下ろして近づく。
「何やっているのよ。危ないじゃない」
「いやー、ごめんごめん。つい調子に乗っちゃって」
悪びれた様子も無く笑ってそう言ったダルクに、誰もが苦笑する。
「もー、きをつけなきゃだめだよ」
「あははっ。助けてくれてありがとうね、イクト君」
本当だよまったく。
というか、イクトにまで注意されるんじゃない。
心の中でそう思っていると、フレンドコールの呼び出し音が鳴った。
「ん? ミミミからか」
なんだろうと思いつつ、着信を押す。
「ミミミ、何か用――」
『聞きたいことがあるの! 今、大丈夫!?』
こっちが喋り終わる前に、いかにも慌てているミミミの声がした。
「あっ、これのお姉ちゃんだ」
「「ぶふぅっ!?」」
ミミミの声を聴いたイクトがヘドバンをするから、ポッコロとゆーららんが吹いた。
おっと、何かの遊びと判断したのかころころ丸も一緒にヘドバンしている。
その光景にダルク達も笑っている。
「今は船の上だから、大丈夫だぞ」
『ならちょうどいいわ! ミコトちゃんについて教えて!』
何事かと思ったら、それを知りたくて連絡してきたのか。
直後にまくしたてるように述べられるミミミの説明によると、ミコトの進化について何か知らないかと、バンシーをテイムしたプレイヤーやミコトのファンからの圧が凄いらしい。
というか、バンシー見つかったんだな。
しかも一体だけとはいえ、ミコトよりも先に進化していたなんて。
そういうわけでバンシーの進化先についての情報は掴んでいたのに、その中に無い姿へミコトが進化したという話を聞き、調べるために俺達がログインするのを待っていたそうだ。
『そういうわけで、ちゃんとお代は送るから至急情報プリーズ!』
凄く必死に情報を求めてくる声の感じに対し、冗談でも断るなんて言える雰囲気じゃない。
言えるとしたら、よほど空気を読めないか考え無しぐらいだろう。
ダルク、間違っても言うんじゃないぞ。
「だ――もがもが!」
本当に言うかと思いきや、咄嗟にカグラが口を封じてくれた。
ナイスとサムズアップすると、カグラもサムズアップで返してくれる。
「分かった。実はだな」
他のプレイヤー達の邪魔にならないよう端に寄り、以前タウンクエストで入手した死術の石板を使い、ナイトメアバンシーへ特殊進化したことと能力を伝える。
途中、セイリュウがスクショで撮影しておいてくれた画像をミミミへ送ってくれたから、説明はスムーズに進む。
こちらもナイスだ、セイリュウ。
「以上だ。何か質問は――」
『あぁぁぁぁぁぁっ!』
ないかと続ける前に、ミミミの悲鳴が聞こえてきた。
『アイテム必須の特殊進化ですって! なんでそうなるのよー!』
これは黙って落ち着くのを待つしかない。
誰もが同じ考えに至ったようで、目を向けるとダルク達もポッコロとゆーららんも無言で頷いた。
『しかもそれ、どこで手に入るのよ! タウンクエスト限定ってことはないでしょうから、どっかにあるんでしょうけど、どこにあるのよ!』
さあな。欲しければ頑張って探してくれ。
『ど、う、やっ、て、手、に、入、れ、る、の、よー!』
途切れ途切れになる発言と向こう側から聞こえる音からして、今のミミミは確実にヘドバンしている。
それを察したのかイクトもヘドバンしだして、ころころ丸も一緒になってヘドバンしだした。
ミミミの大声もあって注目されたところへそれだから、周りにいるプレイヤー達から不可解な表情や生温かい表情を向けられたり、イクトところころ丸を指差して笑われたりしている。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ。急に騒いで悪かったわね』
ようやく落ち着いたのか、全力疾走した後のように息切れしながらミミミが謝罪してきた。
どれだけ激しくヘドバンしていたんだか。
「いいって。それよりも代金、しっかり払ってくれよ」
『勿論よ。ついでに個人的な好奇心からなんだけど、ギルドを作った理由を教えてくれる?』
別に隠すようなことじゃないけど、教えてもいいのかな。
一応確認を取って許可を得たら、昨日のことを説明。
食事のために、ていう点があなた達らしいと言われてダルクがそれほどでもって感じで照れていたけど、褒められていないぞ。
『了解、ありがとね。さっきの情報の代金は後で送るから、少し待っていてね。じゃ、失礼するわ』
そう言い残して通話は終了。
慌ただしいなと思いながら画面を閉じる。
『時間になりました。フォースタウンハーフムーン発、フィフスアイランド・ノースパシフィック行、出航します』
おっ、いよいよ出航か。
魔法的なものでの船内アナウンスの直後、汽笛じゃなくて銅鑼が鳴り響くと、ポッコロとセイリュウが驚いて小さく体が跳ねた。
「あれ? 出航する時に鳴らすのって、汽笛じゃなかったっけ?」
「出航する時の合図には、汽笛じゃなくて銅鑼を鳴らすこともあるのよ」
汽笛じゃないことにダルクが首を傾げると、メェナが指を立てて教えてくれた。
なんでそんなことを知っているんだろう。
調べたのか?
そうこうしているうちに船が動きだし、甲板に多くのプレイヤーがやって来て離れていく陸地や周囲の光景を眺めている。
よく見れば舳先の方で、某有名な船の映画の真似をしている男女のプレイヤーがいて、それと同じで沈没したらどうしてくれるんだって仲間らしきプレイヤー達にからかわれている。
「そういえば目的地の中継点の島って、フィフスアイランド・ノースパシフィックっていうんだな」
町じゃなくて島だから、これまでと違うのはいいとして名前が長い。
「そうよ。ノースパシフィック、つまりは北太平洋ね」
俺の疑問を肯定したメェナによると、フィフスアイランドの名前にはアメリカ大陸周辺の海の名称が使われている。
これから俺達が向かう北太平洋のノースパシフィック。
北極側にある北極海、アークティック。
南極側にある南極海、アンタークティック。
俺達が進む航路の南側にある南太平洋、サウスパシフィック。
西側の北寄りにある北大西洋、ノースアトランティック。
そして西側の南寄りにある南大西洋、サウスアトランティック。
地理的に通らないインド洋を除く、この六つがフィフスアイランドの名称に使われていると、メェナは得意気に語った。
「ということは、到着する別大陸の町でシックスタウンになるわけか」
「その通りよ」
ちなみに現状、探索が一番進んでいるのは野郎塾が重点的に進んでいる北方面。
俺達が進んでいる西方面の探索は、やや遅れ気味とのこと。
そのため西方面にいる攻略組が後れを取り戻そうと探索しているものの、焦りから思うように進んでいないそうだ。
「焦る、というより競うようなことなのか?」
「エンジョイ勢の私達には分からないけど、ガチ勢の攻略組にとってはそうなんでしょう」
だったらなおさら、焦らずしっかり準備してじっくり進めばいいのに。
料理も同じ、あれもこれも一度に習得できない
『フォースタウンニュームーンにてタウンクエストの条件が満たされました。ただいまよりゲーム内で2時間後、タウンクエスト【暗躍の狙撃手】がフォースタウンニュームーンにて行われます。詳細は全てのプレイヤーへメッセージにてお送りしますので、参加希望者はご確認の上でご参加ください』
おっ、ワールドアナウンスか。
しかも久々にタウンクエストの開始だ。
「ちょっ、マジかよ!」
「出航前に発生してくれよ!」
「逆恨みと分かっていても、恨むぞ条件を満たした奴!」
船が出航した以上は参加できないとあって、プレイヤー達が大騒ぎしている。
うちでもダルクが大騒ぎして、泳いででも町へ戻ると言いだして海へ飛び込もうとしているのを、カグラとセイリュウとポッコロとゆーららんに止められている。
というかそもそも、フォースタウンニュームーンへ行ったことが無いから、町へ戻れたとしてもその後は普通に移動だぞ。
前も似たようなことがあって参加できず、苦労しただけに終わったのを忘れたのか。
「タイミングが悪いわね。まあ、どうせ私達は転移で行けないから、間に合わないでしょうけどね」
さすがはメェナ、戦うのが好きでも冷静に状況を理解している。
「とはいえ悔しいわね。どうせならもっと早く、もっと近くか私達が行ったことのある場所で発生しなさいよ」
あー、うん。
やっぱり悔しいことは悔しいんだな。
表情にも悔しさが出ているメェナを見つつ、届いたタウンクエストの詳細を確認する。
************************
≪タウンクエスト・暗躍の狙撃手についての詳細≫
フォースタウンニュームーンに潜伏する闇組織の壊滅に成功。
ところがその組織は、町に滞在している要人の暗殺計画を立てていた。
既に暗殺の役目を担った狙撃手は動き出しており、ターゲットを狙っている。
狙撃手の情報は魔法銃を使うこと以外一切無く、どこにいるのか分からない。
参加者はタウンクエスト開始から2時間以内に、狙撃を阻止して要人を守れ
開始時刻:ゲーム内時間で1時間57分後
場所:フォースタウンニュームーン
クエスト成功時:隠しスキル【魔銃】と隠し職業【銃使い】と魔法銃の製造レシピ解放
参加時間とクエストへの貢献度に応じた賞金を授与
クエスト失敗時:フォースタウンニュームーンの評判低下
ゲーム内で三年間、全ての町の機能と商品の品質が低下
狙撃手は別の町へ移り、新たなターゲットを狙う
*途中参加可能
*タウンクエストは一つの町につき一度きりです
*町の崩壊による影響は全てのプレイヤーへ適応されます
************************
へえ、この世界にも銃があるのか。
今回のタウンクエストをクリアすれば、それが解放されるんだな。
「この阻止って部分が肝ね。狙撃を失敗させればいいのか、狙撃手を摑まえるか倒すのか、要人を逃がせばいいのか。考えられる方法が色々あるだけに、どれを選んだかで分岐が発生するのかも」
隣で同じく詳細を見ているメェナが、腕を組んで内容を分析している。
確かに、この阻止っていう部分の解釈が攻略への鍵かもな。
そこについて、参加するプレイヤー達の意思を統一するのも重要そうだ。
「トーマー! タウンクエストに参加できない憤りを晴らしたいから、揚げ物作って!」
幾分か落ち着いたダルクが、よく分からない要求をしてきた。
とはいえ、もうすぐ飯の時間だしちょうどいいか。
「分かった。レインボーサバのカツと竜田揚げ、どっちがいい?」
「竜田揚げ!」
「了解。下味を付けるから少し時間が掛かるのと、片栗粉が無いから小麦粉で代用する。この二点については勘弁してくれ」
「揚げ物が食べられるのなら、別に構わないよ!」
揚げ物狂いらしい堂々たる宣言に、仲間達は揃って笑っている。
さて、メインはそれでいいとして他は何にしよう。
アツペラワカメで出汁を取って、そのまま具にしたワカメスープは予定通り作るとして、メインが竜田揚げならパンを添えるか?
そうすれば、やりたい人は切れ目を入れて竜田揚げバーガーにできるしな。
生鮮なる包丁で切った千切りキャベツを竜田揚げに添えれば、バーガーにするにしてもいけるだろう。
「おやおや、奇遇だね。これから食事を作るのなら、一緒にどうかね?」
うん? この声は。
「やあトーマ君、一別以来だね」
「やっほー、トーマ兄ちゃん!」
振り返った先にいたのは、前に会った時と同じ亀の甲羅を背負った作務衣姿の暮本流輔さんと、前とは少し違うボーイスカウト風の恰好をしたコン丸だった。
飛びついてくるコン丸を受け止め、小さく手を上げる暮本さんへ会釈する。
「あら、聞き覚えのある声がすると思ったら、トーマさんに暮本さんではありませんか」
おぉっ?
今度はエリザべリーチェか。
相変わらずの白髪縦ロールに、以前とは違うドレス風の服装で少し驚いた表情をしている。
「おいおい、なんだよこれ。楽しいことになりそうじゃねえか」
マジかよ、今度はセツナかよ。
こっちも変わらず金髪スカジャン姿で、鉄パイプや金属バットが似合いそうだ。
「わー、有名な料理プレイヤーが同じ船に乗り合わせるなんて」
「すごい偶然ね」
ダルクとカグラの言う通り、どうしてこのメンバーが同じ船に乗り合わせているんだよ。
あっ、ブレイザーはいないよな?
あいつはうるさいし悪い意味で絡んでくるから、別にいなくてもいい。
辺りを確認……よし、いないか。
だったら問題無し。
しかしこの三人と居合わせるなんて、面白い料理談義ができそうだ。




