海といえば市場で買い物
今日は土曜日の朝だから、普段より比較的にゆっくり過ごす……。
なんてことはなく、いつも通りの時間に起きて昼営業のために仕込みを手伝う。
「斗真、お前上手くなったな」
「えっ?」
さっき俺が仕込んだ海老を確認した祖父ちゃんが、急にそんなことを言うからつい声に出して驚く。
「好文、お前はどう思う?」
「……確かに、上手くなったな」
祖父ちゃんに呼びかけられた父さんも海老を見て、頷きながら同意した。
父さんにまで褒められた!?
「ほ、本当に?」
「嘘言ってどうするんだよ」
「ああ。本当に上手くなっているぞ」
おぉ……マジか。
本気で料理人を目指すのなら、身内とはいえ容赦はしない。
そんな教育方針と、昔気質な祖父ちゃんと口数が少ない職人肌の父さんだから、料理のことで二人に褒められた経験はほとんど無い。
だから、つい褒められたことを疑ってしまった。
「あはは、あ、ありがとう」
早紀達やゲーム内でイクト達に褒められるのとは違って、祖父ちゃんと父さんから褒められるのには慣れていないせいか、自覚できるくらい反応が変なことになっている。
それを誤魔化すように、切り分けた肉をボウルへ移して父さんが調合した調味液を掛け、下味を付けるため揉みこんでいく。
「なんだよ、変な反応しやがって」
「料理のことは滅多に褒めない俺達が、二人で褒めたからだろ」
海老を冷蔵庫へ入れた祖父ちゃんへ、父さんが言った通りだよ。
だからこそとても嬉しい反面、少し戸惑っている。
「そういうことか。だがよ、なんで上手くなったと思う?」
「日々の積み重ね」
正直、これしか思い浮かばない。
他に何かあるっていうのなら、それが何か教えてもらいたい。
「それもあるだろうが、気持ちとか心構えとか内面的なのもあるだろうな」
「内面的なもの?」
父さんの言ったことの真意が分からず、首を傾げる。
「気づいていなかったか。ここのところの斗真は、仕込みや調理をしている時の表情や動きから、固さが抜けていたぞ」
そうなのか? 全然気づかなかった。
「なんつうかよ、少し前まではもっと上手くとかもっと早く正確にとか、そういうこと考えていただろう」
確かにそんなことを考えながらやっていたけど、なんで分かるの。
僅かずつでも上達したくて、常に気を張って集中していた。
でも、悪いことじゃないはず。
「別にそれはそれでいい。だが、余裕が無くて力みがあった」
「好文の言う通りだ。でもここんところは余計な力が抜けた分、手際が良くなっていたぞ」
余計な力が抜けていたと言われても、いつも通りにやっているつもりだから実感が無い。
「ここのところは仕込みや料理をする時、何を考えていた?」
「えっと……」
考えていたというよりも、ここ最近はついゲーム内で調理している時の光景が浮かぶんだよな。
正面から見ているイクトとかミコトの様子とか、かぶりつきで見ているポッコロとかゆーららんの様子とか、後は食べて美味いって言ってくれているダルク達の様子とか。
それを伝えたら、祖父ちゃんと父さんは納得した様子で頷いた。
「なるほど、理由はそれか」
「だな。それを思い浮かべて体が良い感じに緩んで適度に力みが抜けたから、前より良くなっていたんだ」
同じ実力でも、力んでいるのと適度に力みが抜けているので違うのは知っている。
今回の俺は、それと同じような話ってことか。
つまり力みが抜けていれば、前々からもっと上手くできていたんだな。
それが分かったら、なんか悔しくなってきた。
「じゃあ、前の俺はダメだったわけか?」
「いや、あれはあれで緊張感を持って仕事をやっていたから、悪いわけじゃねえ」
「しいて言うのなら、上達への気持ちが強すぎだったな」
それが力みに繋がって、問題は無いけど褒めるほどではなかった。
祖父ちゃんと父さんが言いたいのは、そういうことらしい。
「緊張感と向上心と心構えは気持ちにだけ持て。体にそれを持つと、力みに繋がるぞ」
「コツは適度な心の余裕だ。余裕が無いからこそ、強い気持ちから体に力みが出るんだ」
つまりは上達したい気持ちをしっかり持ちつつ、適度に体の力抜く余裕も持てってことか。
難しいけど、これは一つ上の段階へ進んだってことかな。
これが悪い事じゃないなら、さっきのようなことを思い出して、適度な余裕を持つことを覚えよう。
「しっかしよう、やっぱり斗真はもう少し遊ぶべきだな。真面目で料理にばかり打ち込むから、余裕を持つのが下手だ」
「ああ。気持ちに余裕を持っていれば、もっと早くこれくらい出来ていたぞ」
うぐぅ、そうなのか。
理屈は分からなくもないけど、そういうのはもっと早く言ってくれよ。
いや、今の話に出た真意を言わなかっただけで、前々から遊べとか遊びを覚えろとは言っていたか。
でも俺の性格上、こうして実感しないと信じなかったかも。
「どうでもいいけど、お義父さんもあんたも斗真も、よくそんなに喋りながら仕込みできるわね」
「「「いつものことだから」」」
祖母ちゃんと一緒に卓上調味料の容器を拭いている母さんの呟きに返事をすると、祖父ちゃんと父さんと声がかぶってしまった。
そう、今の会話の間も俺達はいつも通り仕込みを続けていた。
喋っている間に手が止まっていたんじゃ、話にならないからな。
「ああ斗真。遊ぶのは構わないけど、祖父さんや好文のように遊びすぎるんじゃないよ」
祖母ちゃんからの補足に、若い頃は馬や自転車や船での競争に熱中して極貧生活を送っていた祖父ちゃんと、二つ名が付くほどのゲーセン通いの格ゲーマニアだった父さんは、気まずそうな表情になった。
この二人を祖母ちゃんが説教して更正させたから、どうしても頭が上がらないんだろう。
「分かってるよ、気をつける」
「まあ斗真なら言わなくても大丈夫だろうね。不安要素があるとすれば、早紀ちゃんや健君から余計な遊びに付き合わされないかどうかだよ。遊びに誘ってくれること自体は、悪くないんだけどね」
そんな光景が容易に浮かぶのは、早紀と健の日頃の行いが原因だろう。
「どっちも元気で明るくて良い子ではあるんだけど、なんか不安を抱く性格というか」
分かる、二人と長く付き合ってきた身として、祖母ちゃんの言うことはすごくよく分かる。
むしろその経験があるお陰で、余計なことをしでかさないか警戒するようになった。
そしてそれは俺だけでなく、晋太郎や桐生達といった、余計な騒ぎに巻き込まれたことがある友人達も同じだ。
「遊びを覚えた方がいいのは賛成だけど、ほどほどにするんだよ」
「適度な遊びを覚えて余裕を持つのは、悪いことじゃないんだからね」
「はーい」
祖母ちゃんと母さんに返事をして、日替わり用に仕込んでいた鮭を冷蔵庫へ入れる。
今日はこれを焼いて中華風の味噌ダレで味付けした、ちゃんちゃん焼き風の定食が日替わりとのこと。
しかし、ゲームに参加したお陰で新しい事を学ぶとはな。
技術や発想だけでなく、精神面でも少なからず影響が出ていたか。
だからといって、祖母ちゃんの言う通り遊びすぎないようには気をつけよう。
そう心に誓った仕込みの後、朝飯を挟んでUPOへログインし、フォースタウンハーフムーンの広場に降り立つ。
昼営業前にはログアウトするから、今回のログインは二日を予定している。
まあ昼営業後にもう一度ログインするんだけどさ。
「ますたぁ!」
「マスター」
おおイクトにミコト、今日も元気そうでなによりだ。
所詮はプログラムだから、常に元気なのは当然とか考えることはしない。
だってこんなに弟妹可愛いから。
「あっ、トーマ君おはよう」
「おうセイリュウ、おはよう」
おはようで間違っていないよな。
うん、ゲーム内の時間は早朝だから大丈夫だ。
「ダルク達は来ていないのか?」
「ううん、玄十郎さんと会ったから、あそこで情報提供中だよ。私はトーマ君が来た時のため、待機していたの」
セイリュウが指差した先では、得意気な表情のダルク達と頭が痛そうな表情の玄十郎がいた。
昨日のガーディアンバットの件を伝えているのかな。
だとしたら残念だったなイクト、今回はミミミのヘドバン無しだ。
さて、邪魔したら悪いし少し待とう。
だけどここだと邪魔になるから、近くにあるベンチにセイリュウと並んで座る。
イクトとミコトが座ることを考慮して、セイリュウとの間を空けておいたのに、イクトは右膝へ座ってミコトは左膝に座った。
「ますたぁ、きょうはなにつくるの?」
「どんな美味しい物を作るんだよ?」
『レエェェェイッ』
なんで膝の上に座ったのか聞きたかったけど、二人が弟妹可愛いからもうどうでもいい。
確かにこれは余計な力が抜けるな、うん。
ただミコトよ、レッサーパンダグローブの鳴き声は余計だ。
「おー、トーマ来ていたんだね。あれ、ひょっとして家族で団欒中? 邪魔しちゃった?」
何が家族団欒か。
ニヤニヤしながら変なことを言うから、隣のセイリュウが照れているじゃないか。
「それで、情報の方はどうだったんだ?」
「当然、驚かれたわ」
メェナ曰く、ああいう場所で何かないか探索するならともかく、遊ぶなんて普通するかと言われたそうだ。
無理もないか、あそこで遊べば土地神が出るなんて誰も思わないって。
まあ土地神が出る出ない以前に、ああいう場所で休憩するならともかく、遊ぶなんて行為はそうそうしないだろう。
なにせモンスターが出ない場所とはいえ、町中でもセーフティーゾーンでもないんだから。
「お陰で情報料がたっぷりよ。今回の食費とご飯を作ってくれることへの報酬として、トーマ君に貢ぐわね」
なんでカグラは金を渡す時、毎回貢ぐって言うんだろうか。
そんなことを思いながら金を受け取ると、土地神関連だからか結構な額だ。
絶対に無駄遣いはしないようにしようと決め、ダルク達とこれからの行動を決める。
「ひとまずは町を見て回ろうよ。それと定期船が来る日時と、乗せてもらえそうな商船についても調べようか」
だな、どこに料理ギルドや商店があるのか気になるし、それに海辺なら市場もあるかもしれない。
反対意見が出なかったため、早速移動を開始。
右手をイクトと、左手をミコトと繋いで歩いているせいか、周囲のプレイヤー達から見られている気がする。
「はぁ……今日もイクトきゅんが可愛い」
「ミコトちゃんも可愛い」
「その二人と手を繋ぐ料理長は、今日もお兄ちゃんしてるな」
見られているだけなら気にしないけど、何かしてきたら即効でGMコールをしよう。
だけど、できればそんなことは起きてほしくない。
そんなことを考えつつ町中を歩き、この町の様子を確認していく。
ダルク達が良く利用する類の施設や商店の他、料理ギルドや作業館や製薬ギルドや商店の位置も把握し、マップにはその情報が埋められていく。
「うん? ますたぁ、なんかへんなにおいする」
「嗅いだことが無い匂いなんだよ」
イクトとミコトが言う匂いは、俺の鼻にも届いている。
おそらくはダルク達もそうだろう。
そしてこれが何の匂いか、俺達は知っている。
「ああそれはな、あれの匂いだよ」
匂いの元は、俺達が歩いている通りを抜けた先に広がっていた。
太陽が反射してキラキラと輝く、地平線の先まで見えるほど広大な海。
二人の言う匂いは海から漂う潮の香りのことだ。
それを見たイクトは手を放して駆け出し、道路から下にある砂浜への落下防止用と思われる、木製のガードパイプ型の柵にしがみついて海を眺める。
「うわーっ! みずがいっぱいでおっきー! ますたぁ、すごくすごいよ!」
初めて見る海に興奮を隠せず、触覚とレッサーパンダ耳をグイングイン動かしながら騒ぐ。
「ひょっとして、これが昔ハルトから聞いていた海っていうのなんだよ? 想像以上に凄いんだよ」
ミコトは海のことは知っていたけど、想像以上と言うだけあってポカンと立ち尽くす。
二人の様子に、俺達だけでなく居合わせたプレイヤー達も笑みを浮かべ、温かい眼差しを向けている。
しかし、潮の香りまで再現しているとはな。
少し下の方を見れば、砂浜や海で遊ぶ水着姿のプレイヤー達の姿がある。
「ますたぁ、いくともあのおっきーおみずのところ、いきたい!」
「ちょっと待ってくれ。なあ、海ってこのまま行けるのか?」
今にも駆け出しそうなイクトに待ったをかけ、ダルク達へ確認を取る。
「さっき情報提供のついでに、玄十郎さんから海に関する情報を買ったんだけどね」
そう前置きしたカグラによると、海で遊ぶには水着を買わなければならないとのこと。
水着が無くとも砂浜へは降りれるが、水着を所持していないと海には近づけず、水着に着替えないと手足だけだとしても海へ入れないそうだ。
「砂浜で釣りはできないのか?」
「水着を着ていてもできないわ。釣りをしたい人は、堤防なり向こうの方にある足下が石だらけの場所へ行かなくちゃならないの」
そういう風に住み分けをしているんだな。
なお、肝心の水着はプレイヤーに作ってもらうか、海の傍にある店で買えるらしい。
「というわけで、海で遊ぶなら水着を買ってからだね」
「そうか。イクト、悪いけど今はそっちへ行けないんだ、後で行こう」
「……はぁい」
「元気出すんだよ、海は逃げないんだよ」
不服そうに戻ってきてミコトに慰められるイクトには悪いけど、ゲームの仕様には逆らえないんだ。
申し訳なく思いつつ、定期船乗り場へ向かいながら水着を売っている店を探そうとしたところで、ある光景が目に入った。
「悪い、定期船乗り場と店を探す前に、あそこへ行かせてくれ!」
思わず声を上げて指差した先を見て、ダルク達は納得の表情を浮かべた。
なぜならそこにあるのは、誰がどう見ても市場だからだ。
「確かにあそこは行くべきだね」
「うふふ、何があるのか楽しみね」
「美味しいお魚、貝、エビ、イカ、カニ!」
「クラーケンとかシーサーペントとか、そういうのもいるかしら」
ダルク達もどんな海産物があるか興味を示し、早くも食べたいオーラを放っている。
「ますたぁ、あそこになにあるの?」
「何があるかは分からないが、きっと美味い物がたくさんあるぞ」
「おいしいのたくさん! いく!」
「もう元気になったんだよ」
美味い物があるかもしれないと分かり、元気になったイクトに呆れるミコトだけど、本人も興味深そうにソワソワしている。
土地神の情報を売って金はあるから、気になったものはできるだけ買おう。
買ったはいいものの、使うのを忘れていた物もあるし、今日の飯はあれにしよう。
というわけで市場へ向かうと、そこはまさしく早朝の魚市場。
威勢の良い声で呼び込みをするNPC達の店先には、新鮮そうな魚介類が並ぶ。
魚に貝にと見覚えのあるものから、明らかにゲーム用の見たことがないものまで多種多様で、こうして見て回るだけでも楽しい。
「トーマ! あれ、あのでっかい魚買おうよ!」
「あらまあ、このエビ銀色だわ。どんな味がするのかしら」
「なにこの太くて長い魚。太刀魚ともウツボとも違う」
「このスマホみたいな形をしているのって、貝なのね。中身はどうなっているの?」
「ますたぁ、あれなに、あれなに?」
「大きな魚がたくさんあるんだよ。こんなの、見たこと無いんだよ」
ダルク達もやや興奮気味で、気になる物が目に入ったらグイグイと店へ引っ張られる。
そこで店先に並ぶ魚介類を食材目利きで鑑定し、せっかくだからゲーム内だからこその品だけに絞って、これはという物を購入していく。
ドリルサーディン
レア度:3 品質:6 鮮度:84
効果:満腹度回復2%
自身の体を回転させ、尖った口先で穿つイワシ
海中で大型生物に食われた時、体を内側から突き破って脱出した逸話がある
少々臭みはあるものの脂が豊富で、下手な高級魚より美味いと言う人もいる
調理しても美味しいですが、生でも美味しくいただけます
レインボーサバ
レア度:4 品質:5 鮮度:81
効果:満腹度回復2%
光が当たると虹色に輝く鱗をしている
その鱗は縁起物として、装飾品の加工に使われることも
脂が乗った身はとても美味しく、値段も安価なので人気が高い
注意:生食可能ですが、鮮度が70を切ったのを生食すると病気状態付与
キラーサーモン
レア度:5 品質:5 鮮度:88
効果:満腹度回復3%
鋭い牙があって好戦的かつ凶暴な大型の鮭
しかし味は意外とあっさりめで、甘くてサラリとした脂が特徴的
皮も美味しいので、捨てるなんてもったいない事はしないでください
皮は加熱が必要ですが、身は生でも食べられます
フルアーマーフィッシュ
レア度:4 品質:4 鮮度:91
効果:満腹度回復3%
大昔から姿を変えずに生きているという、固い鱗に覆われた魚
鱗を取るのは一苦労だが、それに見合うだけの味をしている
固い鱗に覆われていることから、フルアーマーと名付けられたらしい
煮ても焼いても揚げても生でも美味しいです
コバンオイスター
レア度:4 品質:5 鮮度:87
効果:満腹度回復3%
コバンザメのように、他の魚にくっ付いて守ってもらうカキ
大きくて食いでがあり、味は勿論美味
通常のカキと違い、生食してもお腹を壊すことはありません
ストーンクラム
レア度:3 品質:6 鮮度:83
効果:満腹度回復3% 病気状態付与
殻が石のような見た目をしている大アサリ
自衛のために見た目がそうなっているだけで、味は絶品
生で食べると病気状態になるので注意してください
砂抜きは済んでいるので、このまま使えます
ハイスピンホタテ
レア度:3 品質:5 鮮度:89
効果:満腹度回復2%
普段は砂の中にいるが、外敵に襲われると高速回転して逃れる
獲る時は周囲の砂ごと回収し、襲われていると思わせないようにする
肉厚な身は噛み応えと旨味が抜群で、生でも美味しく食べられる
エルダーシュリンプ
レア度:3 品質:5 鮮度:85
効果:満腹度回復1%
髭が長いことから長生きしていると思われ、エルダーの名が付いたエビ
生だとムチムチプリプリとした食感と甘い味わい
加熱するとプチプチと小気味いい食感になり、生とは違う旨味の汁が溢れる
ひとまず買ってみたのはこの八種類。
いくら金があるとはいえ、うちは七人の大所帯。
おまけに皆が皆、バクバク食べるから量を買うためこの八種類に絞った。
しかし魚やエビやホタテは生鮮なる包丁を使えばいいとして、カキはどうやったら生食でも満腹度が回復したりバフ効果が付いたりするんだ?
生の状態でも食べられるものは、先日のアップデートで満腹度や給水度が回復せず、バフ効果も付かない代わりに味が分かるようになった。
だからカキも生で味が分かるものの、当然なんの効果も無いだろう。
生鮮なる包丁で切れば満腹度の回復やバフ効果も出るんだろうけど、身を丸ごと食べるイメージだから包丁で身を切るイメージが湧かない。
殻を剥くのが調理工程と判定されれば問題無いか?
それとも、生鮮なる包丁を使う以外に、生食でも満腹度が回復したりバフ効果が付いたりする方法があるんだろうか。
「それでトーマ、これをどうするの?」
おっと、考えるのはここまでだ。
皆が期待のこもった目を向けてくるから、何を作るか伝えよう。
「全部焼く」
「焼くって、それだけ?」
拍子抜けな感じのダルク達だけど、ただ焼くだけじゃないぞ。
以前、星座チェーンでフィシーさんの所へ行った時に購入してそれっきりだった、ある物を使って焼くんだ。
「そうだ。ただし、魔力ホットプレートで海鮮バーベキューだ」
「「「「おぉーっ!」」」」
バーベキューと聞いたらダルク達が騒ぎ、バーベキューを知らないイクトとミコトは顔を見合わせ、首を傾げた。
さあて、早く作業館へ移動して飯にしようじゃないか。
だけど待てよ、定期船とかの確認は?
そっちよりも海鮮バーベキューの方が優先?
分かった、先に飯にしよう。