表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/201

料理長一同は守られた


 朝食後、ポッコロとゆーららんと別れ、転移屋を利用してサードタウンウラヌスへ戻ってきた。

 イクトところころ丸が別れを惜しんでいたから、凄く別れ辛かったよ。


「んじゃ、僕らはちょっとばかり戦ってくるね」

「分かった。飯は用意しておくから行ってこい」

「「「「よろしく! いってきます!」」」」


 颯爽と戦いに向かう四人を見送り、俺達は俺達で作業館へ向かう。

 いつも通り、右手はイクトと繋がれ左手はミコトと繋がれて。


「料理長は今日も保護者だな」

「引率者じゃなくて?」

「楽しそうなイクトきゅん、きゃわいい」

「分かる、分かるぞミコトちゃん。無表情でも内心嬉しいんだろう」


 一見すれば親子が弟妹と手を繋ぐ兄だから、周囲から微笑ましいものを見る視線が集まっている。

 一人っ子だから昔はこういうのに憧れていたものの、いざやってこうして視線が集まると少し恥ずかしい。

 それをゲーム内で経験するとは思わなかったよ。


「ますたぁ、おかいものはいいの?」

「材料は十分にあるから大丈夫だ」


 イクトにやらかした三人の主から貰ったお詫びの食材と、ポッコロとゆーららんから購入した変異種の野菜。

 これがあれば、後は手持ちで今日の昼と夜はどうにかなる。


「依頼も受けないんだよ?」

「時間のかかるものを作るから、今日は無し」


 主に貰った骨を煮込んで出汁を取ったり、すね肉を煮込んだりで。

 煮込み系は味をしみ込ませたり、逆に抽出したりするので時間が掛かるからな。

 とはいえ、美味い飯のためならその程度の手間は惜しまない。

 時短テクニックや便利グッズを使うのは否定しない。

 だけど手間を惜しむのは断固拒否だ。

 どんな時短テクニックや便利グッズを使っても、少なからず手間が発生する。

 その手間すら惜しんだら、どう美味い物を作れっていうんだ。


「あまいのもつくる?」


 甘い物か。

 そうだ、せっかく飴のレシピを貰ったんだし、作り方も簡単だったから作ってみるかな。


「そうだな、作るか」

「わーい!」

「楽しみなんだよ」


 そうかそうか、楽しみにしておけよ。


「なんだ、久々に見たと思ったらテイムモンスターのガキ共とおままごとか?」


 うわっ、この声と口調は。


「その様子だと、相変わらず調子に乗っているようだな」


 やっぱりブレイザーか。

 面倒なのに絡まれたもんだ。


「ますたぁ、だれ?」

「この人もお友達なんだよ?」

「ハッ! 誰が友達か。そもそも、そんな奴なんか眼中に無いっての」


 前回、その眼中に無い相手にやり込められたのは、どこのどいつだよ。


「おともだちじゃないなら、ほうっておいていいね」

「お姉ちゃん達のご飯作るから、早く行くんだよ」


 それもそうだな。

 こんな面倒なのに構っている暇があったら、さっさと作業館へ行って飯を作るか。

 というわけでブレイザーに背を向け、作業館を目指して歩き出す。

 ああいうのは相手にしない方がいいからな。


「おい待てコラッ! この俺を無視するな!」


 いや無視するって。

 誰が好んでお前みたいなのと絡むかっての。


「前にちょっと俺の揚げ足を取ったからといって、調子に乗るなよ!」


 なあ、ちゃんと意味を分かって使っているのか?

 揚げ足を取るっていうのは、人の言い間違いや言葉じりをとらえて非難したり、からかったりすることだぞ。

 前のやり取りのどこに、そんなことが起きていたんだよ。

 かといって指摘したら厄介なことになりそうだし、無視して作業館を目指そう。


「無視するんじゃない! 何様のつもりだ、お前!」


 前も思ったけど、そっちこそ何様のつもりだ。

 あと、付いて来るんじゃない。


「ますたぁ、あのひとなんなの?」

「さっきから無駄にうるさいんだよ」

「気にしなくていいぞ」


 ああいうのは構ったり反応したりすると面倒だから、何もせず放置するに限る。

 逆上したからって、現実と違って襲えるわけじゃないから、その点は安心だ。


「テイムモンスターにまでこの俺を無視させるつもりか。今回は前回のようにはいかんぞ、今度こそ俺の腕前を思い知らせてやる!」


 お前は現実を思い知れ。


「俺とお前、どっちの腕が優れているかハッキリさせてやる。さあ勝負だ!」


 無視無視。

 料理勝負にはこれっぽっちも興味が無い。

 料理は優劣を比べるためにあるんじゃなくて、美味い飯を食べたい人のためにあるんだ。

 バイ、祖父ちゃんアンド父さん。


「おい、無視して歩いてないで、なんとか言ったらどうだ! お前にはプライドが無いのか!」


 プライドはあるよ。

 ただし、自尊心とか名誉とか地位のような自分のためじゃなくて、もっと料理を上手になってもっと美味いものを作りたいっていうプライドがな。

 料理人のプライドは、自分を守るためじゃなくて料理の向上のためにある。

 バイ、祖父ちゃんアンド父さんアンド暮本さん。


「ハッ! そうやって黙って逃げるとは、所詮その程度だったか。前は上手くやったつもりだろうが、あんなのはもう通用しないぞ!」


 通用しないって、ああいうのは少し練習したくらいでどうにかなるものじゃないぞ。 

 それに同じ料理を作って全部がほとんど同じ味にできても、間に別の料理を挟んだら駄目じゃ意味が無いぞ。

 それだと、料理を一品しか出さない形式か、複数人で調理する中で一品しか担当していない時でないと通用しない。

 なにがどうなって通用しないと言い切るのか分からないけど、シェフを目指すのならそれを理解しているんだろうか。


「む~。ますたぁ、あのひとうるさい。すぱってしていい?」

「本当に無駄にうるさくてうんざりするんだよ」


 おっと、俺はともかくイクトとミコトはまだ煽り耐性が低かったか。


「ふん! 所詮は実在しないデータのくせに、生意気なことを言うな! プログラムの通りにしか動けない、木偶人形が!」


 事実だとしても、そういうのは言わない方がいいんじゃないかな。

 実在しないデータの存在だとしても、こいつらは俺の大事な仲間だ。

 さらにくみみのように、テイムモンスターを大事にしているプレイヤーだっているんだから。


「なんだとコラァッ!」

「料理長が反論も何もしないから黙って聞いてりゃ、偉そうな口叩いてんじゃねぇぞテメェッ!」

「な、なんだお前達は!?」


 急に騒がしくなったから思わず振り返ると、ブレイザーが他のプレイヤー達に囲まれていた。


「私達のイクトきゅんを侮辱……。許さない、許さない……」

「ミコトちゃんが木偶人形とはどういう了見だ!」


 しかも結構な人数がいるし、わらわらと出てきた!

 急な出来事に、手を繋ぐイクトとミコトもポカンとしている。


「安心してくれ、トーマ。あいつらは悪い奴らじゃない」

「おぉっ、赤巻布青巻布黄巻布」


 お前もこの町にいたのか。


「ふふっ、あいつは怒らせちゃいけない奴らを怒らせた」

「あいつらを知っているのか、赤巻布青巻布黄巻布」

「そんな大したものじゃないさ。態度の悪い奴を許せない、ARFGっていう自警団みたいな奴らの集まりだ」


 自警団って、そういう集まりもあるのか。

 というかARFGって何の略だ。


「といってもプレイヤーの集まりだから限度は守っているし、運営に迷惑を掛けているつもりはない。俺もあいつらも、このゲームが好きだからな」


 好きだからこそ、自分達の手で守りたいってことか。

 やり過ぎなければ、そういうのも有りなんだな。

 だけど正式名称は本当に何だろう。


「まあ正確には、料理長とイクト君とミコトちゃんを侮辱していたからなんだけだけどな。なにせ赤の料理長ファミリーガーディアンズ、だからな」


 うん? 今なんか小声で呟いたけど、よく聞き取れなかった。

 なんて言ったんだ?


「えぇい邪魔だ! この俺を誰だと思っているんだ!」

『マナーのなっていない奴が、偉そうなこと言うな!』

「ひぐっ!?」


 さすがにあの圧力にはブレイザーも腰が引けている。


「さあ、後は俺達に任せて先に行きな」

「赤巻布青巻布黄巻布、まさかお前も」

「公式イベントであんなことがあったからな、あんなのは二度とごめんだから参加しているのさ」


 ああ、一部の考え無し達が腹いせに食材を駄目にしたあの件か。

 確かにあんなのは二度とごめんだ。


「ということにしておこう」


 うん? また小声でボソッと呟いたから、ちゃんと聞き取れなかった。

 一体何を言ったんだろうか。


「ねえますたぁ、いこう?」

「あの人達に任せて、ご飯作るんだよ」


 それもそうだな。


「じゃあ、俺達は行くな」

「気をつけてな。あいつのことは任せておけ」


 サムズアップする赤巻さんに、俺達も繋いでいた手を放してサムズアップで返し、作業館へ向かう。

 後ろでブレイザーがギャーギャー言っている声が聞こえるけど、無視だ無視。


「あれが見守り隊か……」

「あいつ、終わったな」

「でもあれって、インプの坊ちゃんでしょ? 態度悪いから、ああなって当然よ」


 周りの呟きに同感する。

 それにしても、見守り隊ってなんのことだ。

 赤巻さんが言っていた自警団を指しているんだとしたら、ゲーム内の治安を見守るから、そう呼称されているんだろう。

 そんなことがありながらも作業館へ到着。

 いつも通り、無料の作業場で作業台を借り、イクトとミコトが踏み台を持ってくる間にバンダナと前掛けを表示させ、材料と道具を準備する。


「料理長が来たわ。作業中止、作業中止よ」

「無理です、今の手順で作業中止できません」

「うおぉぉっ! もう少しなんだ、調理開始前に完成しろ、新しい剣!」


 周囲が賑やかな中で準備は整い、イクトとミコトはいつも通り正面に陣取ったから調理開始。

 まずは手持ちで一番大きい鍋と普通の鍋に水を張って火にかけ、お詫びに貰った骨を洗って汚れを落としたら大きい鍋の中へ。

 使ったことがあるスケルトンボア以外にも色々ある中から、今回は見た目が豚骨と似ているスカルオークの骨っていうのを煮込む。

 スケルトンボアで作ったボーンスープは真っ黒になったけど、これはどうなんだろうか。

 見た目は豚骨と似ているし、豚骨スープみたいに白濁になるのかな。

 まあ豚骨じゃなくて鶏ガラでも、長時間煮込めば白濁になるんだけど。


「で、一緒に煮込む野菜は……と」


 ニンジンとネギとニンニク、それと普通のタマネギじゃなくてシマシマタマネギを使う。

 辛い縦縞と甘い横縞のどっちを使おうか迷い、辛い縦縞の方を選んで皮を剥き大きい鍋へ投入。

 スープの仕込みはこれで良し。

 次は横縞のシマシマタマネギの皮を剥き、前に取っておいたネギの白い部分と一緒にみじん切りにして、別々のボウルへ入れておく。

 続いて下処理したトライホーンブルのすね肉を出し、一口大に切り分ける。

 切り終えたらエバーグリーントマトを出し、ヘタを取って普通の鍋の方へ入れ、ボウルに水を張っておく。

 エバーグリーントマトは軽く茹でる程度にとどめ、ボウルに張った水に入れて冷却スキルを使って冷やし、鍋を片付けた後で熱くなくなったエバーグリーントマトの皮を剥く。

 これを魔力ミキサーでペースト状にしたらフライパンを火に掛け、オリーブオイルを垂らして温まったら、刻んだシマシマタマネギを軽く炒める。

 続けてペースト状にしたエバーグリーントマトを圧力鍋に入れ、炒めたシマシマタマネギ、ブルットワイン、ハーブ、刻んだネギの白い部分、トライホーンブルのすね肉を加えて蓋をしたら、さっきまでシマシマタマネギを炒めていたコンロで火にかける。


「トマトソース煮込みか」

「さっき加えていたのは、噂のワインか?」

「あの肉は何の肉かしら」


 トライホーンブルのすね肉はワイン煮込みにしようかと思ったけど、せっかくエバーグリーントマトを入手したから、ワインを加えたトマトベースのソースで煮込むことにした。

 おっと、スープの方に灰汁が浮いてきたから取らないと。

 使ったフライパンをパパっと洗い、浮いた灰汁をお玉で取る。


「どんな料理になるか、楽しみなんだよ」

「わくわく」


 二人の視線が早くもすね肉の煮込みに注がれている。

 圧力鍋を使っているとはいえ、煮込むのには時間がかかるからまだ食べられないぞ。

 さて、灰汁は取ったから次だ次。

 貰ったオークのもも肉を薄切りで切り分け、さらにドクモドキナスのヘタを取り、皮付きのまま一口大に切り分ける。

 これらはコンロが空くまでアイテムボックスに保管し、残っている果物類も皮を剥いて小さめに切り分け、アイテムボックスへ。

 さてさて、良い香りがしてきたスープの方はどうかな。


「おっ、これは……」


 前に作ったボーンスープ同様、色が黒くなってきている。

 だけどボーンスープほど濃くはなく、茶色が交じっていて醬油ラーメンっぽい。

 この様子だと、モンスターがドロップした骨を煮込んだスープは黒くなるのかな。

 いや、スカルオークは名前からしてアンデッドだから、それが関係しているのか?

 まあその辺はどうでもいいや、美味ければな。

 圧力鍋から発せられる音を聞きつつ灰汁を取り終えたら、作業台の上に布巾を敷いて、圧力鍋の方の火を消してコンロの上から布巾の上に移して内圧が下がるのを待つ。

 勿論ただ待つんじゃなくて、次の料理のためにジンジャーを皮付きのまますりおろす。


「それはどうするの?」

「さっき切った、オークのもも肉とドクモドキナスの炒め物に使う」


 イメージとしては、オーク肉とドクモドキナスの炒め物生姜風味、ていうところかな。

 肉と生姜は相性が良いし、ナスも焼きナスにおろし生姜を添えるから相性は良い。

 残念なのは醤油が無いことだけど、無いものは無いんだから仕方ない。

 というわけで、アイテムボックスから切り分けたオークのもも肉とドクモドキナスを出し、空いたコンロにフライパンを置いて熱し、固形ラードを落とす。

 オークのもも肉から出る脂を考慮し、ラードの量は少なめで。

 ラードが溶けたらオーク肉を炒め、火が通ってきたらドクモドキナスを加える。

 ナスにも火が通ってきたらおろしジンジャーを入れ、香りが立ってきたら塩と胡椒を加え、全体を混ぜ合わせたら完成。




 オーク肉とドクモドキナスのジンジャー風味炒め 調理者:プレイヤー・トーマ

 レア度:5 品質:8 完成度:93

 効果:満腹度回復20%

    毒耐性付与【中・3時間】 俊敏50%上昇【3時間】

 ジンジャーの香りが食欲をそそる炒め物

 それによりオーク肉とドクモドキナスの味を引き立てる

 熱いうちに召し上がれ




 説明にある通り、熱いうちに味見する。

 ジンジャーの香りがしっかりと立ち、もも肉とはいえ脂が多いオーク肉と、サクッとする皮ととろりとする果肉が美味い。


「「あー」」


 餌をねだるヒナのようなイクトとミコトの口にも、息を吹きかけて冷ました肉とナスを入れてやる。


「おいしー!」

「ジンジャーのピリッとした辛さと香りが、お肉とナスの味を引き立てているんだよ。しかも双方が喧嘩せずにいるから、個々じゃなくて全体が美味しいんだよ」


 イクトは満面の笑みを、ミコトは無表情ながら味のコメントありがとうな。

 さて、全員分を炒める前にスープと圧力鍋を確認しよう。

 漂う香りは大人しい豚骨スープってところか。

 だけど色は黒い。

 とはいえさっきと変わらず茶色交じりで醬油ラーメンっぽく、富山ブラックくらい真っ黒だったボーンスープほどじゃない。

 ひとまず浮いた灰汁を取り、小皿に取って味見する。


「おぉっ?」


 例えるのなら、香りを大人しくさせた豚骨スープだ。

 煮込みが足りないのかコクが弱いけど、そんな感じの味わいがする。


「ますたぁ、おいしい? それおいしい?」

「気になるんだよ」

「まだ完成していないから、もう少し待ってくれ」

「はーい」


 とりあえずこっちはもう少し煮込もう。

 でもって圧力鍋は……よし、ピンは下がっているな。

 圧力が下がっているのを確認して蓋を開けると、封じ込められていたトマトの香りがぶわっと立ち上り、その中にハーブや肉の香りもする。

 そして圧力鍋の中は緑、圧倒的なまでに緑色をしている。

 完熟しても緑のままのエバーグリーントマト、青みのある緑色をしたブルットワイン。

 この二種類の緑系を使ったから緑色のソースが完成している。

 加えたハーブも緑だし、それ以外の色は炒めたタマネギの飴色とネギの白と肉の茶色だけ。

 正直言って、なにか赤系を加えたいけどまずは味見だ。

 浮いている灰汁を取り、全体を軽く混ぜる。




 トライホーンブルのすね肉のトマトソース煮込み 調理者:プレイヤー・トーマ

 レア度:5 品質:6 完成度:82

 効果:満腹度回復25%

    物理ダメージ軽減【中・1時間】

 トライホーンブルのすね肉を下処理含め、じっくり煮込んだ料理

 トマトベースのソースに入れられたワインがいい仕事をしています

 ソースの材料が緑系ばかりなので、爽やかな緑に染まっている

 ソースと肉の味わいをご堪能あれ




 小皿にソースとすね肉三つを取り、一つを味見。

 おぉうっ、思った以上に美味い。

 歯応えがあって噛むと旨味が染み出す肉。

 煮込んだ際にその肉から出た旨味を得たソースは、エバーグリーントマトとブルットワインの香りと味わいが効いているし、それが肉にもしみ込んでいるから、別々で美味いんじゃなくて一緒になって美味い。

 さらに炒めたシマシマタマネギの甘味、ネギとハーブの風味もソースを支えてくれて、全体が一つの料理として美味い。


「ますたぁ、はやく、はやくちょうだい」

「あ、じ、み! あ、じ、み!」

『レエェェェイッ!』

『レッサーァッ、パンダアァァァァッ!』

「こら二人とも、行儀悪いぞ」


 いくら楽しみとはいえ、バンバン作業台を叩くな。

 それとミコト、お前が手で作業台を叩くとレッサーパンダグローブの鳴き声が鳴るからな。

 お陰で周りの人達、驚いてこっち見てるぞ。

 あとミコトはもう一つ、誰からその味見コールを教わった。


「あう、ごめんなさい」

「悪かったんだよ」

「分かればよろしい。あとミコトは、むやみやたらにそのグローブ鳴らすなよ」


 いい加減周りの迷惑になりそうだからな。


「はーい」

「よし、じゃあこれの味見を頼む」


 口を開ける二人へ、順番にソースと肉を入れてやる。

 なんか本当に雛鳥へ餌をやる、親鳥みたいだ。


「んんっ! おにくもそーすもおいしっ!」

「お肉がソースを、ソースがお肉を美味しくしているんだよ。どっちか一方が欠けたらこの味は成立しない、両方が揃ってこその美味しさなんだよ」


 そうかそうか、それは良かった。

 さて、完成した煮込みが冷めないよう鍋ごとアイテムボックスへ入れて、全員分の炒め物を作るか。

 その後はイクトの希望通り、飴を作ってやるからな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
A:イージス R:ルージュ F:フォース G:ガイア 20年程前のとあるゲームの用語 まさかここで見るとは
[一言] 毎度ミコトの食レポはうまいなぁ
[良い点] 更新お疲れ様です。 ジンジャー風味炒め…生姜焼きと聞くとやはり自分は白飯派ですね。テレビでパン(フランスパン?バゲット?)と一緒に食べてた方も居ましたが、やはりご飯がベストパートナーな気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ