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27.「後処理」

 気が付くと外だった。真っ白な雲に拡散された太陽の光は、空の下をあまねく照らす。体を起こすと……島の上だ。ニコニコと、女が俺を見下ろしている。


「おはようございますー」

「……」

「そんなにらまないでくださいよー」

「睨んでないけど……何かあったっけ」


 見渡せば、辺りには何人も倒れている。カレン、テス、ヨウ先生。純白に純真、しずく、それから……きらり。離れた所には騎士王隊の二人が座り、休んでいる。


「お前……今回の一件、全てお前の仕業か?」

「千鳥を呼び出したのはまぁ、私ですかね」

「……何のためにだ」


 彼女が空を見上げる、その先には、くるくると回る奇妙な立方体が浮かんでいた。幾何学的な模様を浮かべた、この世界には不釣り合いな。


「あれを、見つけなきゃいけなかったので」

「あの、回るキューブか? あれは一体何だ?」

「あぁいえ、キューブは私のですよ。あそこに怒りの集積があったんです。ドーナッツの穴を取り除くことは出来ませんが、埋めてしまえば同じ事なので」

「……怒りの集積?」

「災禍の渦と言った方が分かりますか?」


 災禍の渦……? ……戦国世界に度々現れていた、禍津鬼を生み出すと言われる渦、だったか。それを、あのキューブで封印した?


「あれは禍津鬼の力の源流、その塊。私には見えないので、千鳥や、きらりさんやアルトさんに見つけてもらう必要がありました」

「あれがここにあったら、どうなるんだ?」

「見ての通りです。ここに居る禍津鬼は際限なく力を得て、抑えきれない衝動に我を失う」


 ……ならば、不自然なまでの千鳥の強化も、きらりやアルトさんの暴走も、全てその“災禍の渦”とやらが、この島にあったせい……なのか? ……もしかすると、かつての魔王の暴走すらも……。


「それを見つけるのが、お前の目的だったってわけか」

「私の目的は一貫してきらりさんの抑制、そう言ってるじゃないですか。あれを見つけたのはたまたまです」

「あの渦の存在を知っていながら、きらりの暴走を放置していたのにか?」

「強力な禍津鬼による触発が無ければ、あの渦は非活性状態にありました。正確な位置を見つけるにはお二人に暴れてもらうしか無かったんです」


 “独善”が少女らを見下ろす。雫ときらりは、一緒になって寝ている。相変わらず、仲の良い。

 話すべきは終わったと思ったのか、彼女は岩に寄りかかり、ほうと息を吐く。


「それにしても……大変な任務でした。ただ見ているだけと聞いていたのに」

「多分だけど、その通りだったんじゃないか? お前から、動きさえしなければな」


 彼女は苦い顔をする。


「お前の仕事は終わったのか」

「見ての通り。彼女の心に押し入ったしずくさんも無事に帰って来ました。これで、今度こそ本当に終わり」


 うん。なんか寝てる間にまたなんかあったみたいだけど無事に終わったならいいや。


「それでははやてさん。またいつか、どこかで」

「もう行くのか?」


 “独善”は歩いていく、ちらりと振り返り、


「ほら、お姫様がお目覚めですよ」

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