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3.「四重螺旋」ii

 突然服を脱ぎだした純真に慌てて顔を逸らし木陰に退散。反対向いて体育座りで待っていると、ぴちゃぴちゃと足音が近づいてくる。


「終わりましたー?」


 目の端にちらりと見えた白い肌、慌てて目を瞑る。


「どうした?」

「い、いえ、その……はだか」


 どうしたじゃないんですけどこっち思春期なんですけど!


「裸を見られるくらい、私は気にしないが」

「そ……」


 そうなの? ほな見てええかーそんな訳あるか。


「見たいなら見ていいぞ。この体は出来が良くてな」



 と、ぴちゃぴちゃと駆ける足音がする。その声は雫の声だ。


「ぜ、絶対目開けちゃダメだからね! ほらおねーさん! ふーくんにそんなかっこで近づいちゃダメだよ!」

「どうしてだ」

「どうしてでも!」

「何してるの?」


 集まってくんなばか。


「じゅ、純真まで! ふーくんから離れて!」

「どうして?」

「襲われるの!」

「襲う……? 敵意は、見えないけれど」

「敵意じゃなくても襲われることがあるの!」

「そうなの?」

「そうだよ」

「ふーくんは肯定すんな!」


 はい。


「可愛い女の子が裸で歩いてたらふーくんは襲っちゃうの! 今にも理性が爆発しそうで、だからそうして目を塞いでうずくまってるの! それを刺激しちゃダメ!」

「そんな事無いよ」

「嘘つくな!」



 お前も体を洗えという割に全然どかないお姉さまを純真に頼んで追い払い、どうにか自分の体を流し終え。


「どうして服まで洗っちゃったんですか?」

「体を洗ったなら、服も洗わねばなるまい」

「替えの服は?」

「有ると思うか?」


 見た所その身一つ。

 そんな訳でお姉さまが乾くまで天日干し。柔らかい布が豊満な肢体に張り付き、見た目がやばい事になっているが、ずっと背中に密着しているのでもう慣れたかと思えばそんな事は無く、隣に座ってはいるものの、ずっと視線は純白から外したまま。


「あの少女は何をしているんだ?」

「そのうち自慢しに来ますよ、ほら」


 雫が、何を見つけたのか川原から戻って来る。


「ふーくん見てみてー!」

「どした」


 彼女が差し出す手のひらには透明な石。水に濡れ、ひどく透き通り、太陽の光を宿して柔らかく光る。


「触ってみてー、面白いよー」

「触る?」


 石を取る時に一瞬、彼女の柔らかい手のひらに触れた。石はというと、硬質、透明、温度は無く、鉱物とは思えないほど異様に軽い……これは。


「魔石だこれ」

「ませきー?」

「竜石じゃないのか?」

「同じですよ、下界では魔石と呼ぶんです」


 へー、こんなとこでも取れるのか。


「ませきってー?」

「不思議な力の塊……スペシャルな石?」

「すぺしゃるな石!」


 彼女はうへへと太陽に透かしている、嬉しそう。


「おいしそう」

「食べるなよ」

「食べちゃダメだよ絶対」

「何してるの?」


 と、純真も戻ってきた。


「しずくが、綺麗な石を拾ってて」

「そう、こどもなのね」

「君は何してたの?」


 純真がぽっけに手を入れ、取り出したそこに乗っていたのは、


「どんぐり」


 人の事言えないね君もね。


「おやおや、随分と可愛らしい遊びをしていたんだな」

「あら、そう言うあなたは子どもの見学? 随分とお疲れのようね、年のせいかしら」

「私は大人なのでな、こうして落ち着いて皆を見守っている余裕があるのだ。君と違って」

「えぇ、無理はしなくていいわ、お婆ちゃんはそこでゆっくり休んでいらして? 年甲斐も無くはしゃいでずぶ濡れで、お疲れでしょう?」

「無垢というのは良いものだな。自分の少ない知識で物事を解釈し、自分の狭い了見を世界に当てはめる。君の見える世界というのは随分と単純なのだろうな、羨ましい限りだ」

「有り難いお言葉をどうもありがとう、きっと長年の経験の為せる知識よね、分からないけれど。でも少し考え方が古いのではなくて? かび臭いわ、新しい風を入れないからよ」

「お前胸が子どもだよな」

「ぶっ殺してやる」



「どんぐり好きなの?」

「便利だから」


 便利?


「どう便利なの?」


 純真はどんぐりを一つポケットから取り出た。それから、尻尾の先に付いた、肉の蕾がこくんと呑み込ませる。ぶわぁと背中に翼が生えた。……いや、茶色い木の枝だ、見慣れた、この辺に生えている木々と同じ種類の枝が、背中から生えている。


「再生できる」


 すげー。と、ぼとり背中から木の枝が外れて落ちた。

 ぺしぺしとせがまれ、しゃがむとお姉さまがそれを拾う。


「……本物だな」

「偽物よ。命は無いもの」

「種子や卵があれば、体のどこでも造れるわけか」

「そう……だけど。だから何?」


 お姉さまが言う。


「私は牛乳が好きでな」



 二人の少女が川原にしゃがみこみ、何やら見ている。


「随分と熱心に探しているな」

「ああいうのが好きなんですよ」


 無機物フェチ、とでもいうのだろうか。

 二人をぼんやり眺めていれば、何となく時間は過ぎていく。


「君は、何か好きなものは無いのか?」

「お姉さまが好きですよー」

「他には?」

「つれないなー」


 何とはなしに彼女たちを見る。


「……君は君で分かりやすいな」

「何がですかー?」


 ……あっそうだ!


「師匠の話します? しますね!」

「師匠?」

「師匠って言うとまぁもちろん俺の師匠の話なんですけど俺が師匠と呼ぶにはまぁちっこいんですね見た目はまだあんまりいってない女の子ででもそれなのに俺より知識もあって才能もあって技術もあって経験もあってとにかく凄いんですよでも見た目は可愛い女の子でそのギャップが可愛いっていうかあっ可愛いって言うと怒るんですよバカにするなって——」



「どしたのー? おねーさん、心なしかぐったりしてるけど」

「俺の師匠の話をしてあげてたんだよ!」

「あっ」

「二人も聞く?」

「いえ。結構です」

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