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恋は盲目

作者: はんぺん小僧

 つい最近、私の友人が結婚した。

 それから毎日、私は友人ののろけ話に付き合わされる日々を送っている。そして今日も、携帯電話が一人の部屋に鳴り響く。私はのっそりと腕を伸ばし、電話を取った。

「はい。」

わざと気だるそうに、答えたが。友人は気にも止めず話し出した。

「よお、元気してるか?」

「ああ、まあ…。ところで、何の用だ?」

「いやー、まあ…俺の妻の話になるんだけどさー。」

この時点で、長くなることは十分に予想出来た。それにしても一体何故、人のそういう自慢話は聞きたくなくなる物なのか。いっそのこと、人の自慢話を聞くことが楽しいことだと思えたら、どれ程楽だろう。それを思うだけ無駄だとは思うがそれでも…。

「…おーい、聞いてる?少しは反応しろよな。」

私の悪い癖だった。いつも、どうでもいいことは無視し、自分の思想に入り込んでしまう。上司の説教でも同じだ。私は適当にかえそうとも思ったが、ここはあえて嫌味を言って、こののろけ話に終わりを告げようとし、こう言った。

「あー…、まあ。恋は盲目なんて言葉もあるんだ、知ってたか?誰かを愛すると回りが見えなくなるんだとさ、今のお前にそっくりだ……ともかく、何が言いたいかって言うと、そののろけ話はよしてくれ、明日も仕事なんだ。」

「…ああ!分かったよ。疲れているんだな、また明日掛け直すよ。じゃあな。」

私は肩を深く落とし、溜め息をついた。

 そこから数ヶ月、時が流れた。勿論、その間友人ののろけ話は続いた。しかし、ここ数週間珍しく連絡がこなかった。心配に思い、連絡しようと思ったが、こっちから掛けるのも癪なので、気にせず自由な時間を過ごした。

 

 つい最近、友人が離婚した。

 その情報を得たのは、一週間ぶりの友人の電話からだった。なんとも、友人の妻が友人の適当さに我慢が出来なかったらしく、投げつけ会い、殴り会いの大喧嘩だったらしい。これで、のろけ話は当分聞かなくなるだろう。さらに、幸い人の愚痴話は楽しめる耳を持っている。楽しい時間を過ごせそうだ。

 早速友人から電話が掛かってきた。ついこの前までは、嫌だったこれも、今では気分がとても良い。私は電話を取った。

「やあ!何か用かな?」

私の嫌味ったらしいほどまでの声に反応する気力もないらしく、ただぼそぼそと友人は愚痴をこぼした。

「…いや…あいつがさ、悪いと思うんだよ…。自分が勝手にムカついて、勝手に切れて、大事にしてた食器も壊して、出ていって…。許せないわ…。」

面白い様に後悔している。どうやら喧嘩は最初は暴言の吐合だったようだ。律儀にも一つ一つ言われた悪口に丁寧に反論している。これは余程傷ついているな。

「それで?離婚届けは出したのかい?」

「…ああ、まあ。」

「じゃあ、もう良いじゃないか。縁は切ったんだろ?」

「…いや…でも。」

また同じような内容の愚痴が繰り広げられる。滑稽とは正にこの事を言うのだろう。そろそろ眠いし切ろう。そう思っていると、友人は最後にこう言った。

「…お前、いつか忘れたけど『恋は盲目』って言ったよな…。あれ、間違ってたぜ。恋すると目が良くなるらしい、悪いとこばっかり見つけれるんだからさ…。じゃあな。」

私は肩をすくめ、やれやれと溜め息をついた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 長く一緒にいると、嫌なところも自然と見えてきますよね。『目が良くなる』って、面白い表現だなと思いました。
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