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その温もり  作者: 夢都
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穏やか

パーティから夏休みまでの間、学校は野々宮さまと水野さまの噂で持ちきりだった。野々宮さま本人にも噂は耳に入ったらしく、あのパーティに一緒に来ていた園田はな以下取り巻きたちと共に、必死に噂の火消しをしようと頑張っていた。その様子を見ていた舞衣は、


「本人が必死に否定すればするほど、噂って信憑性が増すんですよね...不思議なことに」


と、とても面白そうに笑っていた。美百合は、さほど興味がないようで、ただ一言、


「東堂さまと奈月さまにご迷惑が掛からなければいいんですけど...」


と、終始一貫して彼らの事しか頭にないようだった。その東堂さまと奈月さまと言えば、その噂に対して特に何か行動を起こすこともなく、沈黙をしていて、それが更に彼女たちの噂を加熱させていた。

一方の水野さまは、あのパーティーで気の合う子たちがいたようで、その子たちと連むようになり、その様子を遠くから悲しそうに見る野々宮さまを見かけた時は、とても気分が良かった。


「最近とても機嫌が良さそうだね」


ピアノを弾いていると、後ろから肩をポンと軽く叩かれる。振り向けば、優しく微笑むお兄さまがいて、私は何も言わずただコクンとうなづいた。その様子に、お兄さまは苦笑しながら、


「珍しく音が弾んでいたから。何か良いことがあったみたいだね」


と、優しく問いかける。また私は、黙ってコクンとうなづいた。お兄さまはそっと、下から手を出して私の頭を撫でた。しばらくお互い無言でそのまま過ごす。お兄さまに頭を撫でられるのは嫌いじゃない。とても気持ちいい。そっとお兄さまの手をとれば、お兄さまが撫でていた手を止めて、私を優しく見つめる。


『待っててね』


とったお兄様の手のひらに、指でそう書けば、ちゃんと伝わったのか、お兄さまの止まっていた手がまた、私の頭を優しく撫でた。


「...分かってるよ。でも、希夜華が僕に怒っているのと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に、僕はあの人たちを許せない...」


私は、分かってると返事をする代わりに、持っていたお兄さまの手を両手でギュッと握り締めた。


「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。これ以上、希夜華の邪魔をしたくないからね」


そう言って、お兄さまは、私の頭を撫でていた手で、私が捕まえているお兄さまの手をそっと外すと、静かに部屋から出ていった。お兄さまが消えた扉を暫く眺めて、一つだけ息をゆっくりと吐くと、私はまたピアノを弾く。今度は、ゆったりと優しく弾く。お兄さまが私の頭を撫でてくれたように。


その日の夜、水野さまから東堂家が支援する画家の個展へのお誘いがきた。東堂さまも気に入っている画家で、必ず来るだろうから、一緒に来ないかという事だった。何でも、水野さま宛に来た招待状には、同伴1人までは入場料無料らしい。別にそれくらい払っても構わないが、特に断る理由もなかった。私は、誘ってくれたお礼と行きたい旨を伝え、そのままゆっくりと眠りについた。

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