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その温もり  作者: 夢都
23/28

無知

「...凛城」


決して声をはってるわけでもないのに、真っ直ぐと耳に届く凛とした声に、驚いて振り返れば、東堂さまと奈月さまが並んで私を見つめていた。お二人に気づいた周りも一瞬で私たちから遠ざかり、一定の距離をあけて様子を伺っている。


「ちょっといいか」


そう言いながら、東堂さまが近くにあったテーブルに目線を送り、返事も聞かずにスタスタと先に歩いて行く。奈月さまは、呆れたように笑いながらも慣れた様子で彼の後に続いた。なんとなく周りに目をやれば、一斉に目を逸らされ、その様子に思わず笑みが溢れる。視線を戻せば、先にテーブルで待つ2人がこちらを静かに見ていた。私は、別段急くこともなく、ゆっくりと2人へ近づいた。


「...お二人から誘われるなんて、珍しいこともありますわ。今日はとても良い日になりそうです」


眉間に皺を寄せ、渋面をつくっている東堂さまに気づかないふりをして、頬に右手を当て微笑む。


「いや、それがね、先程、女の子たちが楽しそうなお話をしているのが、たまたま耳に入ってきてね。また、その話の内容がとても興味深いものだから、君ならそれについて何か知っているんじゃないかって思ってね?」


一向に口を開きそうにない東堂さまに、見かねた奈月さまがにこやかに話し出す。早速、野々宮さまと水野さまの噂を耳に入れたらしい。


「...私が知っているかは分かりませんが、東堂さまたちが興味を示すなんて、一体どんなお話なんですか?とても気になりますわ」


何も知らないふりをして、2人の様子を窺う。


「...女子の間で、雪音が友人を使い捨てたという噂が立っている。女子の管轄はお前だろ。何か知らないか」


珍しく東堂さまが私を真っ直ぐ見つめて静かに問うてきた。とても嬉しいことなのに、なぜ、彼女の話なのか。自分が招いた結果とはいえ複雑だわ。


「まず、何か勘違いをしていますわ。私は誰も管理しておりませんし、寧ろ女子生徒をまとめているのは、噂の渦中にいる野々宮さまなのではないのでしょうか。あぁ、でも確かにその噂については、東堂さまたちよりは詳しいかもしれません。だって、まさにその噂のご友人である水野さまと最近親しくしていますから」


別に、噂について何か知っていることを隠すつもりもなかった。隠す気であるなら、わざわざ水野さまとこのパーティに出席して、噂の火種をばら撒くように指示なんてしないわ。


「...そうか」


東堂さまはそれだけ言うと、また眉間に皺を寄せて何かを考え込む。相変わらず、何を考えているのかよく分からない人。それがまた魅力の一つではあるけれど。


「昔から眞人は凛城さんには甘いよね〜。今までは何でかよく分からなかったけれど、最近はなんか分かる気がするなぁ〜」


そんな東堂さまを見ながら、楽しそうに笑う奈月さまは、そう言って「ね?」と首を傾げてきた。その辺の男がやれば鬱陶しいその仕草も、彼がやるとなんだか許せてしまうから不思議だわ。


「...ぜひ、これからも存分に甘やかしてくれて構いませんのよ?」


何だか負けた気がして、私も奈月さまの仕草を真似して首をコテンと傾げて見せる。


「う〜〜ん。そうしたいのは山々なんだけどねぇ。そればっかりは眞人しだいだから、凛城さんも甘えすぎないようにね?」


そう言って、遠回しに釘を刺してくるのは、昔から本当に変わらない。野々宮さまのことも大して好きではないくせに、よっぽど東堂さまが大切なのだろう。


「さっきから2人で何を勝手に言っている。俺は誰も甘やかすつもりはない。それにまぁ、噂もあながち間違ってないからな。雪音は、もう少し自分の言動に責任を持つことを覚えた方がいい」


奈月さまと静かに火花を散らしていれば、いつの間にか、自分の世界から帰ってきた東堂さまに止められ、お一人で結論を出してしまわれた。


「俺たちはそろそろ帰る。じゃあな、凛城。行くぞ、葵」


と言い残し、奈月さまを連れて颯爽と会場を後にした。

その後、私は水野さまと合流して、様々な人と談笑しながら、一通りパーティを楽しんだ。水野さまは、たまに何かを考え込んでいたようだけど、この日、決して野々宮さまの元へは行かなかった。野々宮さまといえば、最初の方に水野さまを気にかける様子を見せただけで、以降はパーティに夢中になり、いつもの明るい笑顔を周囲にばら撒いていた。そんな二人の様子を見た周囲により、さらに噂は広がりをみせたのだった。

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