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その温もり  作者: 夢都
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噂話

白銀さまがいなくなって、暫く何を考えることもなく、ただ突っ立っていると、


「凛城さま!」


と、誰かに肩を触れられて、意識が急浮上する。


「あ...水野さま。どうかされましたか?」


心配そうな眼差しで目の前に立つ水野さまを見る。


「いえ。私のことではなくて...。先程の...大丈夫でしたか?」


ああ、瀬尾との事を心配をしてくれていたのか。なんというか。だいぶお人好しよね。この子。


「ええ。何も心配は入りませんわ。それより、あなたの方こそ、ちゃんとここで交流できたかしら?」


このパーティーに参加している方々は楸瑛学園の生徒であり、なおかつ優秀な方々ばかり。つまり、将来有望な人材しかおらず、このパーティーで得られる人脈はとても貴重なわけで、みんな将来に繋げようと必死だった。勿論、私の付き添いとは言え、水野さまだって例外ではない。表向きは。彼女には、彼女にしかできない事をしてもらわなければならない。これは、私と彼女の契約であり取引だ。

水野さまは、少しだけ目を泳がせながら、最後には私の目をまっすぐ見つめて小さくうなづいた。


「そう。それなら良かったわ。あなたが望んだ物、得られるといいわね」


もう、あなたは後戻りはできないわ。優しいあなたが、これから一生罪悪感に苛まれように祈ってあげる。これで、どうなるというわけでもないけれど、少なくともあなたは幼い頃からのお友達を裏切った事実は変わらないのだから。


「お話中、失礼します」


ほら、さっそく釣れた。声をかけられた方にゆっくり目をやれば、少しだけ怯えたようにした3人のお嬢さまたちがいた。それぞれ挨拶をして名を名乗ると、自分の正しさを一度も疑ったことなどないのだろうまっすぐな瞳で話し出した。


「あの、その方から事情を聞きましたわ。私、正直言いますと、今まで凛城さまのこと誤解してました。申し訳ありません。この通り誤ります」


あまりにも正直すぎて、少し驚く。横目で、隣に立っている水野さまを見てふと思う。優しい人の周りには、良い人が集まる、と。類は友を呼ぶとは、よく言ったものだわ。


「まぁ、何を誤解していたのか分かりませんが、あなた方が私に謝る必要なんてありませんわ。私は、あなた方から何かをされた記憶なんてありませんもの」


そう言って、「ね?」と優しく微笑んでやれば、彼女たちは明らかにホッとした顔になり、一人ポツリと、


「本当に...水野さまの言った通りの方だったわ」


と、小さく放った言葉を放った。反射的に彼女に目をやれば、ハッとしたように気まずげに私から目を離した。私は、何も気づかなかったフリをして、そのまま彼女たちと談笑を続けることにした。。水野さまは少し落ち着かない様子だったが、それでも興奮はしてるらしく、頬に朱が差していた。しばらく様子を見て、さりげなくその輪から外れる。彼女たちの話は専ら東堂さまと奈月さまが主だった。どの話も噂の域を出ないもので、野々宮さまを通じて多少は交流のある水野さまでさえ、お二人のことはあまり知らない様子だった。あの程度、美百合の方が、特に情報という点においては、お二人のことをよくご存知だわ。ふと、まだ何も食べていなかったことを思い出す。食べ物を取りに、中央のテーブルへと向かう。その間に、さりげなく周囲に目をやると、一段と人が集まっている場所があった。人混みの間から少しだけ見えた野々宮さまは、とても楽しそうにはしゃいでいるようだった。その周りにある数カ所の集まりから、噂話が耳に入ってくる。


「ねぇ、聞いた?野々宮さまって、あんなに純粋そうなお顔をしていて、裏ではお友達を散々利用して捨てたらしいわ」「なにそれ?初めて聞いたわ。そんな方には思えないけれど」「私もその話聞いたわ!」「一体誰がそんな事を?」「何でも、その捨てられたというお友達が証言してるらしいの」「本当に?そのお友達がいい加減な事を言ってるだけではなくて?だって、信じられないわ」「私だって最初は信じなかったわ!でも、どうやら...」「まぁ!なんてこと!そんな方だったなんて...」


みんな、最初は信じられない様子で驚いているようだった。これだけでも、野々宮さまの人気の高さが窺える。けれど、噂を流した張本人である水野さまも、幼い頃から野々宮さまと親しい人であることは周知の人物であり、彼女と少しでも話したことのある人は、彼女がいかにお人好しでお優しい方であるかが分かる筈だ。そんな彼女が話すのだから、それだけ信憑性は高く、それでも野々宮さまを信じる人はいるだろうけれど、確実にその人数は減るだろう。


本当に上手くやってくれたみたい。ふふ。後でご褒美をあげないとね。何が良いかしら。私はご機嫌で、色とりどりに並べられている料理を見ながら、何を食べるか選んでいった。

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