第2話 約束
少女を抱えている青年は少し高い家の屋根の上に飛び移り、戦火の広がる広場に大声で呼びかけた。
「クォーツ家のご令嬢の身は、我々、月下の盗賊団が頂いた!このご令嬢の身が欲しいなら、我々と全面抗争をするという事と見なす!それではこれにて…」
そう言って、彼はまた屋根の上をつたい走り出した。
「ここまでくれば追っ手は来ねえよな?多分…」
ルカは少し不安そうではあるが、腰を下ろしていた。しかし、ハルの方は違った。
「約束、守ってくれたの?」
ルカにこう質問していた。この2人は以前同じ学園で育った幼馴染なのだ。以前ルカが、
「18の誕生日に迎えに行ってやる。」
と別れの際に約束していた。そして、今日はハルの18歳の誕生日である。
「本当に守れるとは思ってなかったけどな。ほんとは明後日に攫うことにしといたんだからな。約束を守ったのはたまたまだ。」
「でも、約束を覚えててくれたし、守ってくれた。十分だよ。ありがとう、ルカ。」
ルカは顔を逸らしてはいるものの、少し嬉しそうだった。
そんな時、ルカの耳につけているイヤホンに通信が入った。
「ルカ。もう上にいるから、帰ってこれるぞ。早めにな。」
と。
ルカは素早く立ち上がり、ハルに
「手、出せ。」
と短く伝えた。
ハルは少し疑問に思ったようだが、すぐ手を出した。
ルカはすぐに手を取って、左手で転移結晶を取り出し、テレポート。と呟いた。