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三題噺

湿気と漆器、靴磨き

作者: 鈴木寛太

冬になると、実家ではよく漆を塗っていた。いわゆる内職というやつだ。漆は湿気を吸って固まる。日本海側では、雪が降ってろくに畑が耕せない冬が、ちょうど仕事の時期だ。もっとも子供だった私に塗りが任せられることはなく、雑用をやらされるのが常だった。じいちゃん、ばあちゃん、母さんしかあない家はどこか重苦しく、私はよく、「父ちゃんとこにいく」とごねたものだった。

それから30年が経って、つい先日最後まで生きていた母が死んだ。私はかつて憧れた都会で、明日会社に行くために靴にワックスを塗り込んでいる。やっていることはかわらない。違うことといえば、かつて母たちが塗り込んでいた漆は積み重なっていい味を出していたが、革靴にワックスをいくら塗り込んでも、履き潰された痛々しさしか感じないことくらいである。

私は引き留める母達の言葉に耳を傾けず、先祖代々の畑を放り出して町に出た。あのまま田舎にいれば私も漆を塗り重ねることができたのだろうか?

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