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3話 翌日

久々の更新です。前回までの話の一部を改稿しました。

蓮也の口調、表情が主な変更点です。

また、主人公のパパである修平の名前を修司に変更しました。

ころころ変えてすいませんm(__)m

『先週の土曜日、繁華街を襲った一連の魔獣騒動に関して警視庁は"魔神教"によるテロ行為として──』


 時は激動の同居騒動があった翌日の朝。蓮也は自室で何をするでもなくベッドに横たわっていた。


『防衛省は魔獣の確認を受けて特殊部隊を派遣し──』


 なんとなく点けておいたテレビから、滑舌のよい女性の声が流れている。


『その後の特殊部隊からの戦況報告により、朝廷直轄部隊"大罪衆"が増援として派遣され──』


 どうやら先週起こった魔獣騒動についての報道のようだ。


 先週──つまり6月1日に、多くの人が賑わっていた商店街に突如として魔獣が現れた事件は、世間に大きな衝撃と恐怖を与えた。


 魔獣。

 今から遡ること数千年前に"魔大陸"─かつてユーラシア大陸と呼ばれていたとかなんとか─に出現したとされる生物学的に不自然な形態、または科学的に説明のつかない現象を起こす動物の総称である。


その起源は一切不明。


 一説によると、遥か大昔、魔獣がこの世界を闊歩するようになる前の時代の人類による遺伝子操作の実験の成れ果てであるとか。


 あるいはその頃に創作物として出回っていた空想上の生き物が具現化したとか。

 これまで様々な仮説が囁かれてきたが、未だに憶測や噂話の域を出ない。



「おーい。今からご飯たべるよ。起きてるなら降りておいで。」


 ぼんやりと天井を眺めていた蓮也に、部屋の外から聞き慣れた声がかけられる。


「やれやれ。」


 おそらくこのタイミングで降りていけば、あの突然現れた同居人──如月一行と席を共にすることになりそうなので正直行きたくないというのが蓮也の心情なのだが。


「ここは元々俺の家だ。」


 謎の意地のようなもので、体を起こす。


『今回の"大罪衆"派遣が適切だったか──』


 そしてのっそりと立ち上がり、依然として情報を発信し続けているテレビの電源を切った。


△▼△▼


 蓮也がリビングに入ると、そこにはすでに蓮也以外のこの家の住人が揃っていた。


「おはよう蓮也。ほら、挨拶は?」


 無造作にリビングへと入ってきた蓮也に、最初に声をかけてきたのはやはり父、修司だ。

 気だるげに入ってきた蓮也に、新しい同居人へ挨拶をするよう促す。


「ども。」


 昨日の華乃とのやりとりを丸々忘れたかのような適当極まる態度の蓮也に、一瞬顔がひきつる華乃だったが、


「おはようございます。」


 次の一瞬には普段通りの笑みをうかべる。

明らかに表情通りではない雰囲気が漂っているが、蓮也はあえて取り合わない。


「れんちゃん、おはよう!」


「おはようさん。」


 続く声色は、この日一番溌剌(はつらつ)としたものだった。

 まさに輝かんばかりの満面の笑みを向けてくる穂花に、蓮也の気持ちも自然と明るくなる。


 そして、蓮也が起きてくるまで描いていたのだろうか。机の上に置いてあった絵を持って全速力で蓮也に駆け寄る。


「見て!これねー、れんちゃん!」


 屈託のない笑顔で、手に持った紙に人差し指を向けながら差し出してくる。どうやらここに描かれている人間が、蓮也らしい。


 そして一体どの時点から"れんちゃん"呼びになったのだろうか。

 喉まで出かかった疑問の声を飲み込む蓮也。


「おっ、中々上手いな。」


 差し出された絵には、一人の人間らしきものが描かれていた。


(小さい頃に描く人間の絵は、誰でも似たようなもんだな。)


 一人っ子で、比較対象のいない蓮也は穂花の絵を見て内心で笑みをうかべる。


 小さい頃に修司が、蓮也が描いた拙い父の絵を、大事そうに飾るのを見て『あんなもの飾って嬉しいのだろうか』と不思議に思っていたものだが、こうして貰ってみると、なるほど確かに悪くない。


 そんな事を考える蓮也の前で、褒められたのが嬉しいのか穂花は「えへへ」と顔を緩ませてご満悦の様子。


「穂花、もうご飯にするから机の上片付けて」


 とても穏やかな穂花の様子に、打ち解けるチャンスだとばかりに会話を続けようと何か話題を探していた蓮也だったが、良い話題が浮かぶ前に華乃の声がかかった。


「はーい!」


 水を差されたような気がして内心ムッとした蓮也だったが、穂花の方は気にしていないらしい。元気よく返事をして片付けを始める。


『─つまり、今回の騒動で出動した"大罪衆"のメンバーは"暴食"ということになるのでしょうか』


 穂花がそばから離れ、手持ち無沙汰になった蓮也の耳に、中年男性の声が届いた。


 そしてそれは華乃も同様だったらしく、素早い動きで声の発生源へと顔を向けた。


 その尋常でない食い付きぶりに眼を丸くする蓮也だったが、華乃は気がついた様子はない。


『関係者への取材や、現地の記者からの報告を照らし合わせるとその可能性が極めて高いようですね。』


 どうやらテレビが点いていたらしい。

話題は先程まで蓮也の自室で流れていた魔獣騒動についてだ。


 先程まで蓮也の部屋で流れていたのはお堅いニュース番組だったが、今現在蓮也達の前のそれはワイドショーのようだ。しかし、取り上げられている話題は同じのようだ。


『朝廷機関や政府からの公式発表というものは予定されているのでしょうかね?』


 画面にはワイドショー番組でよく見かける司会者と、高そうなスーツを着込んだ知識人然とした男達が映し出されている。

 番組自体は連日話題を独占している例の事件を取り扱っており、その内容も特段目新しいものが発表されていたりするわけではないのだが──


「華乃ちゃんは"大罪衆"に興味があるのかな?」


 先程から食い入るように画面を見ている華乃。

 その必死な形相に、どう対応したものかと頭を悩ませていた蓮也だったが、彼が声をかけたりするまでもなく、父親の修司が優しく問いかけた。


「い、いえ。すみません。ほんの少し気になっただけです。」


 どう見ても"ほんの少しだけ"といった雰囲気ではないが、朱雀親子は突っ込まない。


「たいざいしゅーってー?」


 そこへ片付けを終えた穂花の声が響いた。

そのよく通るエネルギッシュな声はその場を明るくする力のようなものを感じさせる。


 好奇心旺盛な性格なのか、はたまた何でも気になる年頃なのか、無邪気に尋ねる穂花。


「とっても強い人達のことだよ。」


「強い?どんくらい?」


「そうだね、怪獣を一人でやっつけられるくらいかな。」


 穂花の質問に、丁寧に答える修司。しばらくの間、穂花からあれやこれやと質問が続くが、修司はその一つ一つに淀無く答えていく。

 決して難しい言葉を用いず、柔らかな口調で対応するその様はさながらベテランの保育士だ。


「大罪衆、今回出てきたのは"暴食"らしいな。」


 穂花と修司の会話を横目に、蓮也は未だにテレビへと意識を向けている華乃へと言葉を投げかけた。


「そうね」


 しかし彼への返答はそっけない。仲良く会話に花を咲かせる修司と穂花とはまるで対照的な空気が流れる。


「うちの学園にいるって噂だぞ。つい最近発表された新しい『大罪衆』のメンバーは俺達とそう変わらない年齢って話だ。」


 それはつい数ヵ月前の話だ。

 ある日突然、この国の政府組織である朝廷機関が『大罪衆』に新規メンバーを加えることを発表した。


コードネームは『憂鬱』。


 新たに『大罪衆』となる人物の名前や顔などは伏せられたものの、その人物がまだ16歳であることは公表された。


 朝廷機関が保有する秘密部隊ということで、彼らの素性の一切は公表されることはないのだが、メンバーの年齢は公表しなければならないという規則があった。


 しかし彼らの中には、自身が『大罪衆』のメンバーであることを公表し、素顔をさらけ出して堂々と活動しているものもいて、その場合は政府が、その者が『本物』であることを発表している。


「そうね、うちの学園なら居てもおかしくないでしょうね。というより、十中八九いるはずよ。」


 蓮也の言葉に、思いの外きちんとした返事を返す華乃。その声色は適当な推論を口にしているようなものではなく、何か確固たる根拠のようなものがあるような強く、しかしどこか不安げで、まるで()()()()()と自分に言い聞かせているようで──


「『憂鬱』だけじゃないわ。10年前に発表された『虚飾』も。当時はまだ6歳にも満たない子供だったという話だから、彼、もしくは彼女も今年で16になるはず。もしそうなら──」


「急に饒舌に喋るんだな。さっきまでとはえらい違いだ。」


 いつしか捲し立てるように吐き出されていま華乃の言葉を、蓮也の声が遮った。


「──ッ」


 それで我に返ったのだろう。ピタリと喋るのをやめ、その整った顔を苦々しげに歪める。


「何でもないわ。さっさと朝御飯にしましょう。」


 どうやら自分はとことん目の前の少女と馬が合わないらしい、と溜め息をつく蓮也だった。



















前回までの話に段落をつけるためにまた改稿しますが、内容は変えないので気にしないでいただけると嬉しいです。一回で済ませよ!って?その通りですすいません(泣)

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