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そんなどうでも良いことを考えていると、屋敷に着いてしまった。
男は私をゆっくりと降ろした。この浮遊感が心地よくなってきたところだったので、残念だ。自分の足で移動するのも面倒だ。
普段、村人は山の麓にすら近づかない。
こんな間近に屋敷を見るのは初めてだった。
門が開き、ゆっくりと屋敷に入る。
男に案内されて、大広間に通される。
そこに居たのは、白い肌に紅い瞳、そして銀髪をした端正な顔の青年が立っていた。
私は思わず見惚れてしまう。
世の中にこんな美男子が存在していたなんて。
人間離れしている麗しさ。あ、人間じゃないのか。
そう思って、ぼうっとしていると、私を運んだ男が青年に呼びかける。
「ハリー様、選んできました」
「ありがとう、セバスチャン」
セバスチャンと呼ばれた男は恭しくお辞儀する。
ハリーと呼ばれた青年はどこか哀れみの表情を浮かべて、こちらに手招きする。
「お嬢さん、運命だと思って受け入れてほしい。こちらへ」
まるで新手の口説き文句のような言葉。
私は言われるがまま、ふらふらと足を運ぶ。
吸い寄せられるようにハリーの元に着いた私は髪を一房掬われる。
「私はハリー・ウィリアムズだ。お嬢さん、名前は?」
「アマンダ・キャンベル」
そうか、とハリーは目を伏せ、私の首元に唇を近づける。
吐息が擽ったく、身動ぎしそうになるのを堪える。
私は抵抗をしなかった。彼があまりにも私好みのイケメンだったから。
私は目を閉じ、自分の運命を受け入れる。
僅かに首元に鋭い痛みを感じる。
そして、麻酔を打った時のような酩酊感。
「ぐっ…」
血を吸われた、と思った瞬間だった。
ハリーは思い切り噎せた。
そして、ハリーは口元を手で拭う。
「何だこの脂っぽさは…」
目の前にいるイケメン吸血鬼は眉を顰め、端正な顔立ちを歪めた。
「不味い…」
まさかの展開だった。
どうやら日々のぐうたら生活の所為で、血が物凄く不味くなっているらしい。
私は餌としての役割を果たすことが出来ない喜びよりも、彼に顔をしかめられたショックが大きかった。
わなわなと震えている私を見て、ハリーは、ハッとしたように謝る。
先程の言葉がつい、本心が出てしまったことを強調するようで、より心が抉られた。
「すまない、さっきのは…」
「あの!」
急な大声にハリーとセバスチャンは、驚いたような顔をした。
「少し時間をください!ハリー様の舌に合うような餌になってみせます」
突拍子のない私の言葉に、ハリーとセバスチャンは呆気にとられていた。
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