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朝日の少女と無垢な怪物  作者: 小麦
4/5

かくて自己紹介は終了し、怪物の名前が決定する

〜〜少女の家〜〜


「では、それぞれ自己紹介をしましょう。」


「いえーい。」


「ドンドン、パフパフ?」


「どんなノリよ。」


「まあまあ、いいじゃないか。それじゃぁ僕から、僕は朝日の兄の鎖ヶ丘(くさりがおか)(あさひ)だ。今は大学に通ってる、普通科でねまだ何をやりたいかは決まってないんだ。」


「ん?あさひ?妹さんもあさひだったような。」


「そうよ、改めて自己紹介するわ、私は鎖ヶ丘(くさりがおか)朝日(あさひ)、来年高校生よ。お兄ちゃんは、難しい方の一文字で書く旭、私は小学生でもわかる二文字で書く朝日よ。」


「全く、子供を二人とも同じ読みの名前にするなんて、酔狂な親もいたもんだよ。」


「それって、不便じゃないか?」


「「不便よっ」だっ」


「このせいで病院とかに行ってもしょっちゅう戸惑われるし。」


「小学校の時は毎日からかわれた記憶があるよ。」


「この苗字も相当よね。」


「ああ、確かに気になりました。それだいぶ珍しいですよね。どう思ってるんですか?」


「ここら辺は昔兵器とかを抑えたり、船に使われてた鎖とかを作ってたらしくてね。」


「その名残らしいのよ、この苗字は。それで、この苗字がどうかっていわれると、


「「かっこいいからいいんじゃない?」」


「あっ、はい」


「コッチハ、アサヒ、コッチモ、アサヒ、…ムズカシイ」


「親は何て呼んでたんですか?」


「僕のことをアー君、朝日のことをアーちゃんって呼んでたな。」


「お父さんは私のことをアサ、お兄ちゃんのことをアサヒって呼んでたわね。」


「なるほどでは旭さんのことはアサヒさんと呼ばしてもらいます。妹さんは、……姉御?」


「なんでよ⁉︎」


「いやぁ、気が強いし、ね?」


「ね?じゃないわよ、あのねぇ、私普段こんな感じじゃないのよ?もっとおとなしいの、今日こんなことがあったから荒ぶってんの!わかった⁉︎」


「わかりました姉御」


「だーかーらー!」


「いいじゃないですか、姉御。俺こういうのしてみたかったんすよ。」


「そうですよ姉御」


「アネゴ?」


「ああ⁉︎お兄ちゃんまで、それとあなたも!てゆーか、口調も変えてんじゃないわよ。」


「アネゴ、チガウ?」


「違うわ」


「ン、ワカッタ。」


「物分かりのいい子は好きよ」


「ン」


「「フラグが!」」


「たってないわよ‼︎」






「じゃあ今度は俺が、俺は、その、あの」


「なによもったいぶってないで早く言いなさいよ。」


「あっ、旭川(あさひかわ)(しょう)で―ブフェオゥ‼︎」


「ナイスキック、お兄ちゃん。」


「ああ、兄として当然のことをしたまでさ」


「…もったいぶるなって言われたから言ったのに」


「ナイスキック?コロス?」


「いや、殺さなくていいよ。」


「はぁ、びっくりだわ、なんなの?どんな奇跡よ。」


「本当にね、アサヒ兄弟の所に旭川さんが来るとか、もういたずらとしか思えないよね。」






「最後はあなたね、あなた名前は?」


「ナ、マエ、……ニジュウサン、バン」


「まぁ、なんとなく予想はしてたね。」


「ええ、だからいい名前をつけようなんてことになったわけだしね。」


「名前かぁ、そうだなぁ、………………そうだ」


「…もう思いついたんだ、早いわね」


「うん、ファートゥム 、なんてどうかな。ラテン語で運命。僕的にはすごく運命的な出会いをしたと思うし、いいかなって。」


「ファートゥム 、ファートゥム。じゃあフーちゃんね。いいわ、しっくりくる。」


「…フーちゃん」


「ファートゥム?ファートゥム 、フーチャン?」


「君はファートゥム、今日からファートゥムだ!フーちゃんは朝日が呼んでるだけ、ニックネーム、あーんと、愛称さ。」


「ン、ファートゥム 、キョーカラ、ファートゥム、ダ、ヨ?」


「よかったな、デカブツ、名前がついてよ」


「デカブツ、チガウ、ファートゥム」


「愛称だよ、愛称」


「ン、ワカッタ」


「彼は素直すぎるね。」


「うん、私もそう思う。」





〜〜鎖ヶ丘家リビング〜〜

「ところでだ、このデカブツは最初こんなに小さくなかったよな?」


「あ、確かに。」


「そうなのかい?」


「ええ、私たちの前に現れた時は少なくとも4メートルはあったわ。」


「ふむ、ねぇファートゥム、…ファートゥム長いな、もう少し短くまとめられないか?」


「だからフーちゃんでいいじゃん。」


「それは男が呼ぶにはキツイよ。」


「じゃあさ、ファムとかどう?シャムみたいな。」


「うーん、それでいいかな。呼びやすいし、さほど違和感もないし。」


「ファーム?」


「それじゃ畑だろ」


「農場だね、大意としては間違ってないけど。」


「それで?フーちゃんがどうしたのよ。」


「ああ、そうだった、ファムが一体どんなことができるのかを知っておきたくてね。」


「あ、確かに。とりあえず小さくなることはできるんだよね?」


「ン、デキル」


と言った途端、ぐんぐんと大きくなっていく。


「うわあっ!ストップストップ!それ以上はいけない!」


「ン」


「危ないところだったわね。もうちょっとで二階と一階が吹き抜けになるところだったわ。」


「おい、ダメだぞ、デカブツ」


「ン、ゴメン」


「まあ、いいか。じゃあ小さくもなれる?」


「ン」


今度はスルスルと小さくなっていき、デフォルメされたゆるキャラのようになった。


「「か、可愛い」」


「お兄ちゃん、これは売れるよ」


「ああ、俺もそう思った」


「かわいいか?これ」


「「可愛いだろ!」わよ!」


「アッハイ」


「カワイイ?デフォメ?」


「ねぇ、ファム、どのくらいじっとできる?」


「ン?ンー、ズート、デモ、ズート、ウゴカナイ、ツカレル、ヨ?」


「一日、うーんと、明るくなって暗くなるくらいは?」


「ン、ヘイキ、ソレ、サンカイ、ハ、ウゴカナイ、デキル、ヨ?」


「おお、それはすごい。」


「お兄ちゃん、フーちゃんに何させるの?」


「いやね、あさひが学校に行く時、キーホルダーにでもなっててくれないかなって」


「ええっ、それじゃあフーちゃんがかわいそうだよ。」


「あのね、今日なんでそのフーちゃんをうちに連れてくることになったか覚えてる?」


「「あっ」」


「君もか!なんで忘れてるんだ!はぁ、とにかくだ。家族の心配くらいさせてくれ、対策は取らせてもらうよ。フーちゃんもあさひが痛い目に遭わされたら嫌だろ?」


「ン、イタイ、ダメ、コワイ、オナジコト、アサヒ、シテホシクナイ、アサヒ、コロス、イケナイ、オシエテクレタ、アサヒ、イナイ、ファートゥム、イケナイ、シツヅケタ、ダカラ、アサヒ、オンジン?ダヨ」」


「あさひを守ってくれるかい?」


「ン、マモル、アサヒ、モ、オッキイ、アサヒ、モ、マモル、ヨ」


デフォルメファートゥムは、とても可愛らしい動きをしながら朝日の頭まで登り、その上でカマキリが獲物を威嚇するようなポーズをする。


「ははっ、カワイイね」


「いや、案外可愛くないっすよ。紙もらっていいですか?アサヒさん。」


「え?あ、いや、うんいいけど、何するの?」


「まぁ見ててください。おい、ファートゥム 、練習だ、この紙を敵だと思え、俺の手は切るなよ。」


「ン、レンシュウ」


そう言った翔は、紙をそっと朝日の頭に近づけていく、もう少しで紙が朝日の頭に触れようとした、その瞬間。


目にも留まらぬ速さで何かが紙を切り裂いた、細切れである。


「うえっ⁉︎何が起こったんだい?」


「ファートゥムが切り裂きました。」


「え?でも彼何も持ってないよ?居合とか?」


「いえ、みてください、ファートゥムの指、おい、ちょっと開いてくれ。」


「ン、ワカッタ」


シュルリシャラルリン、と、金属質な、しかし絹が擦れ合うような音をして、ファートゥムの指の一本一本が複数枚の極薄の刃に分裂していく


「……なるほど!何枚もの薄い刃で指を構成してるのか、しかもこれは、重ねる枚数を変えることで切れ味と強度を調節してるのか。はあぁ、興味深い。」


「しかも、これ、俺の手の産毛と爪までいい感じに仕上がってやがる。器用なこったなぁ」


「おお、本当だ、すごいな」


「ン、スゴイ」


「スゴイわねぇ、フーちゃん、褒めてあげるわ」


「ン、ホメル」


「あら、意外と手触りいいのね、あなた。」









「さて。ところで、だ、二人共ファムのこの外見どう思う?」


ファートゥムの格好は後ろに逸れたシルクハット、

顔は所謂ペスト医師と呼ばれるマスク、

一言で表すと禍々しいと言った感じで、背中の部分に円を描くようにルーン文字が書かれているローブをまとい、

長いを腕ローブの袖に通し、

光沢があり節が四つある手を、モフモフとした白い毛の付いた袖口から出している、

身体はスレンダーで、硬質な皮膚なのか服なのかよくわからない黒い鱗状のもので覆われており、

首からは十字架を三つ重ねて禍々し化した感じの首飾りを掛けている。



「かっこいいと思うわ。」


「恐ろしいって感想が真っ先に出てきたんだが、俺は間違ってるのか?」


「間違ってはないさ、人それぞれ感性が違うだけ。まぁ僕はかっこいいと思うけど。というか、そこじゃあないんだ、僕が言いたいのは。」


「じゃあ、何が言いたかったの?」


「ねぇ、ファム。その格好は自分でしたものかい?」


「ン?チガウ、ヨ?コレハ、アルジサマ、シタ、アルジサマ、


コレゾオトコノロマンダー


テ、イッテタ」


「何故だろう、きっとひどいことしてるだろうけど、その人とは感性が合いそうだ。」


「あら、私もよ。」


「ついていけねぇ」


「にしても、どんなオーバーテクノロジーなんだ?よく考えたら服も大きくなったり、小さくなったりしてるし。」


「オーバーテクノロジー?なんで?」


「いや、だってファムはこの格好を主人様って人にさせられたんだろ?ならその人は、ファムみたいな生物を作ることができるってことだ、ファム自身が二三番って呼ばれてたみたいなんだから少なくとも二十三体はいるんだろうね」


「ン、イタ、ヨ、タクサン」


「ほら」


「ほんとね」


「こんなのがたくさんとか、…ヤベエよ、世紀末かよ」


「ア」


「ん、どうしたの?フーちゃん」


「ピィ、ワスレテキタ」


「「「ピィ?」」」


「ン、ピィ、ファートゥム、ガ、ヒトリ、トキ、オリ、ヌケテキタ、ソト、イナイトキ、イツモ、イッショ、ピィ、サミシイ、カモ」


「なるほど、友達がいたのか」


「でもフーちゃん場所覚えてないらしいわよ、探そうにも探さないわ」


「意外とそいつも脱走してくるかもしれないぜ?」


「それは流石に」


「ないと思うわよ?」



その時


ドンッ


窓に何かぶつかる音がした。


「「「……」」」


「ン?」

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