かくて主催者は責任を放棄し、少女は怪物と出会う
〜〜森の奥の館〜〜
「主催者まずいです!殺人鬼23番が逃げ出しました‼︎」
そういって管理室に入ってきたのは、観覧室で権力者の反応を見ておく役を負っていた、職員の一人。
「なに?23が逃げた?どういうことだ?どこから?どうやって?ゲームはどうなった?」
と、返答したのはこの館の主人であり、今回のゲームの主催者である男だ。
「4人中3人は殺害完了、後の一人が壁を破壊したようで、そこから逃走。23番がそれを追って壁の外に出ました。」
「はあっ?お前はなにをいっとるだ、あの壁を壊した?ふざけたことを言うでないわ。」
「それが…過去の犠牲者達が地道に掘っていたらしく丁度カメラの映らない位置に…、それと、お客様方はゲームはどうなるのかと、少々苛立っておいでです。」
「まじか、っと、口調が。ん゛っんん。そうか、くそう、もっとちゃんと点検させとくんだったわ。」
「直ってませんよ、口調」
「やかましい、今はそんなことはどうでもいいわ。
しかし、ふむ…まぁ、もういいか、ほっとこう23番は。」
「え?放っておかれるのですか?」
「ああ、奴はなぁ。結構金をかけて改造したんだがなぁ。大口の権力者が大金賭けたのにことごとく当たらないってことで人気がなくてな、最近じゃ23番の時だけあまり金をかけてくれないんだよ、そのせいで他の連中もあまり金を出さない。権力者のために用意したパーティの方が金がかかって赤字になるんだ。だからもういいかなぁって。それに23番だからちょうど良かったんだ、アイツここの位置を教えることができるほど頭良くないし、俺がやった食いモンしか食べないように調教したし、そのうち飢え死ぬだろうよ。はぁ、戦闘力はうちでも1、2番目ぐらいには高かったんだけどなあ、運がなかったかなぁ。」
「は、はあ。」
「それにだ、あの怪物は私以外の人間を皆殺すぞ、いくら金を生まないといっても、私が手塩に掛けた殺人鬼の一体だ、捕まえようと思ったらどれだけ被害が出るか、飢え死にしてくれた方が私達には被害が少ないんだよ。私がいってもいいが奴の移動速度は決して遅くない。私にもやる事がたくさんあるから、ここにいた、あそこにいたといっても一々行くことはできん。」
「そう、ですか。」
「人を殺さないと自分が痛い目にあうと覚えこませたし、あの見た目だ、誰も怪物に情けをかけたりせんよ。それよりも権力者達への詫びの方が大切だ行くぞ。」
「はっ、はい!」
「おっと、すまないが詫びの品を持って行くから先に行っててくれないか?」
「え?あ、わ、私が持ちますよ?」
「いや、いい、あまり人に自分の倉庫を見られたくないものでね。」
「そうですか…では部屋の外でお待ちします。」
「そうか、そうしてくれ。では私の部屋に向かおう。」
〜〜
「ふむ、脱走か…最初の頃に一度あったか?いや、親父の代か、たしか仕留めたはいいが、田畑や川に水銀垂れ流しながら逃げたもんだから、その村に、たしか、そう、イタイイタイ病が蔓延したんだったか? もみ消すのにバカみたいな金がかかったようだし、まぁ俺の判断は間違ってなかったんじゃないかな。
さて、この愛玩殺人鬼でも渡したら彼らの機嫌も取れるだろうか?」
男はそう呟きながら中小のゲージが積まれた台を押して部屋を出て、外で待っていた男に声をかけた。
「君、これをおしていってくれ。」
「は、はいっ。わかりま、し?あの、オーナー、これはいったい。」
「ああ、これはね、私が動物をベースに作り上げた殺人鬼の失敗作さ、人を殺す能力が低い上に動物から作ったせいか、人を恐れて近づかないんだよ。そのくせしっかりと飯代はかかるからね、いっそここで詫びの品として新しい家族と幸せに暮らしな。と言うわけさ」
「た、確かに見た目は可愛らしい動物のようなのも多いですね、…一目で精神を削ってくるような見た目のもいますが。」
「勿論改造済みだから、いくら低いと言っても人を殺す能力はある、取り扱いについてもしっかり説明しなければならないのがネックだよ。」
「まあ、ここに集まってる人はこういうの好きでしょうから、気に入ってはもらえるでしょうね。」
「ああ、それは僕も思ってたさ。気に入られないことはないだろうよ、きっと。まぁ気に入ってもらえなかったら秘蔵のワインでも引っ張り出してくるさ。」
「オーナーの秘蔵のワインですか、…さぞ美味しいんでしょうね。」
「ん?では今月の給料はワインにしておくか?」
「む?それは…ん?むーん。か、考えておきます。」
「ははははは」
「は、ははははは」
そのが行われた愛玩殺人鬼の受け渡しは成功し、権力者たちに大いに気に入られた。
権力者たちが殺到したせいだろう、この時誰も一体の愛玩殺人鬼が逃げ出したのに気づかなかったのは。
ちなみに、オーナーはこの愛玩殺人鬼は高く売れるのでは?と思い付き、新しく事業を開始して大成功したらしい。
夜の帳が下りようとしている頃
「ん゛ん゛ん゛ん‼︎‼︎」
「クッソ!静かにしやがれ‼︎」
「―――ッ‼︎」
「おいおい、あんまりいじめてやんなよ。せっかくいい体してんだからよう。くはははは!」
「別にいいだろ、最後には証拠隠滅のために処分するんだから。」
「それとこれとは別だよ。綺麗な体を貪りたいだろ、お前にそういう趣味があるなら僕の後にしてくれ。」
街はずれにある林の中、少し開けた場所で、手足を縛られている少女を、優男、ヤンキー、陰湿といった風貌の三人の男が囲んでいる、車が近くに停めてあることからきっとここまで車できたであろうことが察せられる、勿論お友達の集まりではない、三百六十度どこからどう見ても事案物である。
そう、少女は現在拉致られ中である。
(どうしよう、どうすれば逃げられる?いや、もう詰んでない?私。犯されるだけならまだ再起の道もあったかもだけど、なんか処分とか聞こえたなぁ?気のせいかなぁ?気のせいじゃないよなぁ。)
勿論少女も冷静ではない、頭の中で強がっているだけである。現に彼女の顔は涙とかでぐちゃぐちゃである。
「おい、誰かに見つかる前にさっさとヤっちまおうぜ。」
「それもそうですね、さっさとしてしまいましょうか。
といってもここはそうそう人はこないですし、そんなに心配しなくても大丈夫でしょう。」
「早くしようぜ。」
と、言った陰湿な男が少女の服を強引に引き裂いて行く。
(ひっ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!誰か助けて!お母さん!お父さん!お兄ちゃん!嫌だよう!怖い怖い怖い!)
「ヒュー、やっぱりいい体してやがる。なんて綺麗な肌だ。」
「じゃあ僕からさせてもらおうかな?」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛あ゛あ゛」
「こら、暴れるな、服を脱がしにくい。」
「ハハッ、脱がすっつーか剥いてるけどな。」
がさっ
「「「!!!」」」
「だれですか?大丈夫、何もしないから出てきてください。」
「早く出てきやがれ!!痛い目には会いたくないだろ!あ゛?」
「ちょっと、見て来る。」
そう言って少女の服を剥いていた陰湿そうな男が林の中に入っていく。
「というか、狸とか猫とかそこら辺の動物の可能性もありましたね。」
「そうだな、ちょっと気張りすぎてたか?」
少女は安堵した。誰かいるなら助かるかもしれない。そうでなくても、この恐怖の根源達が少しでも自分から遠ざかる状況は少女の心にひとときの、ほんの少しの安寧をもたらした。
(今のうちに、逃げなきゃ!)
少女は逃げようと身をよじった、客観的に見れば逃げられる状況ではない。しかし、直前まで恐怖に縛られていたことで、解放された今が一番のチャンスだと思ったのだろう。しかし、動ける距離は微々たるもの。勿論少女を襲った男達が見逃すわけもなかった。
「おい、逃げようとしてんじゃねぇよ。」
「おや?逃げようとしたのですか?バカですね、この状況から手足を縛られたあなたが逃げられるわけないでしょう。」
と、男が言ったところで――
「ギィヤァァァァァァ‼︎‼︎‼︎や、ヤメロォォォ‼︎嫌だ、嫌ダァァォァ‼︎‼︎誰かぁ!早く、早く助けてくれぇ!」
陰湿男のものであろう悲鳴が辺りに響いた。
「なっ!」
「ああ゛⁉︎なんだ⁉︎おいっ!どうしたっ!」
「はやくっ!嫌だ、まだ死にたくない!殺される!殺されるぅぅぅぅ‼︎」
「ちっ!ちょっと待ってろ今俺が―――
瞬間、先程までとは比べ物にならないような悲鳴が聞こえ、辺りは一切の静寂を取り戻した。
「……何が起こったんだ?」
「……今のを聞く限り、おそらくは、……殺されたのでしょう。人か、熊か、一体何がいるんでしょうね。」
「まじかよ……」
優男は強がっているものの若干顔が青ざめており、ヤンキーは冷や汗を流している。どちらも恐怖しているに違いない。少女は恐怖で体が震えていながらも二人の男の表情にそういった判断を下した。
(まぁ、だからって私が助かるわけでもないし、最悪殺されるわね。)
少女は恐怖に体を支配されつつも、眼前の恐怖が他の何かに恐怖したことで、若干の冷静を取り戻していた。
「すこし、様子を見に行って見ます。」
「は?何行ってやがる!お前も殺されるかもしれねぇだろ。」
「何か罠に引っかかった、という可能性もあります。そうならばはやく助けに行かなければなりません。」
「ならっ!なら俺も!!」
「いえ、あなたはここで、そこの少女を見張っててください、逃げることは無理でしょうがこの林のどこかに隠れられたら見つけるのに手間がかかりますから。」
「そ、そうか。たしかにこいつを放っておけはしないしな。」
「ええ、ではお願いしますね。」
「わかったぜ。」
(ええっ、それじゃあ逃げられないじゃないのよ。もうっ、これだから頭のいいガキは嫌いだよ、ってふざけてる場合じゃないよね。)
少女は意外と冷静だった。恐怖の上に恐怖が重なって、もうひっくり返ってしまっているのかもしれない。
「ちょっと心細いな。そうだ!」
と、ヤンキーが少女の口に貼ってあるガムテープを剥がし、
「ちょっと話し相手になってくれよ。」
などとのたまった。
「あんたふざけてんの⁉︎ 人のこと拉致ってきた上に今からいろいろしようとしてたじゃない!!今すぐこれほどきなさいよ、私をお家に帰してよ!」
「いや、でもさ、いや、うん確かにその通りだけど。最初は俺だって反対してたんだぜ?でも俺ってこん中で一番立場低くてさ、逆らったら何されるかワカンねぇからよ。」
「……いや、この中で一番暴力的な見た目してるのあなたじゃない、それに私を黙らせようとお腹を殴ってきたのもあなたよね?」
「ああ、うんそうです。でも、俺が黙らせないと、多分もっとひどいことになってたと思うぜ。二人ともいろいろえげつないから。」
「ああそう、でもこの事件に加担したのは間違い無いわ、私から見れば全員同じよ。」
「ハハッ、あの二人と同じか……
それはねぇよ俺はあいつらみたいな人でなしじゃあねぇ。おれぁ二人にパシられてるし、もし逆らったら俺の家族に矛先が向くんだよ、お前もかわいそうだと思うけど俺にはどうしようもねぇんだわ。」
「……あなたの家族も悲しむでしょうね。自分の家族がこんな犯罪に加担してると知ったら。」
「確かにな、でも俺は家族のためならなんだってするさ、俺が二人にこき使われてる間、家族には手ェださねぇって言ってくれたしな。」
(家族殺されてるフラグが立っている気がする。南無三」
「なら、今逃げたらいいんじゃない?」
「は?そんなことできるわけ……いや最悪二人とも殺されてる、いや殺されることになるな、一体何が起こってるのかはわからないけど、それなら、俺は自由になれるのか?」
そのときだ、
優男が林に入ってちょうど5分ほどだった、
突然に
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
と、優男のものらしき叫び声が聞こえてきた。
「ッ!クソッあいつも殺されたか?あ、いや今の俺の立場だとその方がいいのか?うーん……逃げるか。」
と言って、ヤンキーは車に近づいていく。
「ちょっと!逃げるなら私も連れてってよ。さっき自分で本当はしたくなかったとか行ってたじゃない!」
「あー、うん確かにそうだけど、お前、俺のこと警察とかに言わないって言えるか?」
「言わないわよ!この状況でその選択肢が出るわけないでしょう!」
「それもそうだな、流石にここに置いていくのも忍びないしな。
うん?あれ、なんか聞こえねぇか?」
「え?あれ?確かに……こっちに向かって走ってくるような…」
「もしかして殺されてなくて戻ってきた⁉︎だとしたら早くしねぇと!おい!さっさとのれ!」
「あんた達のせいで縛られてんのよ‼︎」
「ああ、そうか畜生!」
男は少女に歩み寄りその体を持ち上げた。
「うおっ、なんだお前クッソ軽いなちゃんと飯食ってんのか?」
「余計なお世話よ!」
意外とほのぼのとした会話が続いているが、二人は気にしていない、というか結構焦っているのである。
少女を後部座席に乗せ、男が車に乗り込もうとした時、
「はぁっ、はぁっ、まっ、待ちなさい!何を、自分だけ、逃げようとしているのですか⁉︎」
優男が息を荒げながら戻ってきた。
「ヤベッ、戻ってきやがったっていうかどうした⁉︎その怪我は!」
「何がやばいのかは分かりませんが、早く逃げますよ。」
「はあっ?おい待て、じゃあやっぱり。」
「ええ、殺されてましたよ。殺した犯人も見ました。
いや、犯人というより、
化け物
ですかね。」
「は?化け物?ふざけてんのか?」
「いや、ふざけてなどいません、本当に化け物です。この傷だってそいつにやられたんですから。さっきの少女を囮にして逃げますよ。」
「……囮。」
「少女はどこですか? うん?なぜ彼女を車に?ははあ、あなた欲張りですね。独り占めしようとしたのですか?なんて行ってる暇はなかったですね、きっとあの化け物はすぐそこまできています。すぐに逃げ
「――うるせぇっ!」
「は?」
「俺は自由になる。お前のせいでいつもビクビクしてた日常とはおさらばだ。お前が殺されれば俺の家族に危険が及ぶことは無くなるさ!テメェが囮になっとけ!このクソ野郎‼︎」
優男はその言葉を聞くと同時に
「……そうですか、それは
懐から銃を取り出した。
残念です。」
「なっ?銃とかマジかっ!」
乾いた音が響き、放たれた銃弾は
「がっ!」
ヤンキーの足を撃ち抜いた。
「バカですねぇ、素直に言うことを聞いておけばあなたの命は助かっただろうに。」
そう言って優男は車に近づいてくる。
「あまり動けないでしょうが、囮にはなるでしょう。その命、私のために散らしなさい。」
「ひっ!」
車にたどり着いた男は、銃に恐怖し、口を開けなくなっている少女を車から下ろした。
「ああそれと、あなたの家族はとっくに死んでます。今まであなたが連絡を取っていたのは私が雇ったエキスタント。いやぁ、今まで無償で働いてくれてありがとうございました。そこの少女も囮としておいて行きますから、囮が二人いれば二倍の時間が稼げるでしょう。そこの少女は動けないでしょうから、あなたは動き回ってでも時間を稼ぎなさい。ククッ、運が良ければ生き残れるかもしれませんねぇ!」
「な!うっ嘘だろそれじゃあ約束は!」
「約束ぅぅ?そんなもの知りませんねぇ。」
「クッソがぁっ!」
「う、あぁ。」
「では!さよならです!」
そう言って男は車のエンジンをかけて、来た道を引き返そうと発進し、
ナニカにぶつかったかのように止まった
「は?なんで?クソッ、うごけっ!動きなさいっ!」
エンジンはかかっている、タイヤが動く音もする、しかし全く車が進まないのだ。
「ああ!もう!こんな時にスタックでもしましたか⁉︎」
「……おい、おいおい、なんだアレ⁈」
「おば、け?」
優男には見えない位置、木の上から車を抑えるナニカの両腕、それが囮となった二人には見えていた。
「クッソ!動け動け動け動け動け動け動け動け動けっ!」
優男は自らの口調が乱れていることも気にせずどうにか車を動かそうとしている。
「気づいてねぇのか?今のうちに逃げれるか?」
そう言ってヤンキーは撃たれた足を引きずりながらゆっくりと移動していく。
それを見た少女は
(あっ、置いてかれるんだ。はぁ、少しでも期待した自分がバカだったかな?)
きっと自分は助からないと悟ったのだろう、急に恐怖がこみ上げて来た。
「うぅ、怖いよぅ。誰かぁ誰か助けてよう。お兄ちゃん!
お父さん!お母さん!」
「こいつを置いていくのもなぁ。俺の良心が痛むなぁ。」
「えっ?」
隣にいたのは逃げようとしていたヤンキーである。
「助けて、くれるの?」
「あぁ、俺らどっちも被害者だ、なら被害者どうし助け合わなきゃな。ってお前を襲おうとした俺が言っても説得力ねぇか。」
「うん、全く無いよ。なに?あなた達が勝手に私をここに連れてきておいて、あなたが私を助けても好感度なんて上がらないわよ、フラグなんて立たないわよ。」
「……チッ!」
「今舌打ちしたでしょう。」
「喧しい!置いてくぞ?」
「あぁ待って置いてかないで!ごめんなさい!謝るから。」
「はあっ、こっちは家族が死んでるって聞かされてだいぶショック受けてんのになぁ。」
「そうには見えないけど?」
「ああ⁉︎まだあんま実感ねぇんだよ‼︎」
「……」
そんなやりとりがある中で、
ガシャンッ!
という音が車の方から響いた。車のドアが破られたのだ。
「やっべ!さっさと逃げんぞ、捕まれってそうか縛られてんのか。じゃあこうだ。」
「最悪よ!あんたみたいな男にお姫様抱っこされるなんて、ああもう、吊り橋効果がなんぼのもんじゃい!」
「女の子がそんな言葉使っちゃいけません。ていうか吊り橋効果?なに?惚れんの?」
「惚れないわよ、冷静に考えれば考えるほどそれは無いわよ。でもねぇ、女の子ってのはこういう状況に弱いのよ。でもまぁあなたは無いわ、助けてくれた見知らぬ人ってんならまだあったかもしれないけど、私をここに連れて来たのあんた達だから!私あんたに襲われそうになってたから!」
「おう!確かにそんな奴に惚れるなんてありえねぇわ!自分でもそう思う。」
「ええい、もっとペースあげなさいよ、遅いのよあんた!さっきの優男がやられる前に逃げるのよ。」
「それはわかってるよ!でも傷がいてぇんだよ分かれよ馬鹿野郎!」
「ああっ!今バカって言ったわね!バカって言った方がバカなのよこのバカ‼︎」
「うっせ!ならお前もバカだ!バーカバーカ!」
「なぁっ!このバカ、バーカバーカバカバカ」
「「バーカバーカ!バーカバーカ‼︎‼︎」」
そんなこんなで林の中まで逃げ込んだ二人は、
「オマエ、ハジメテ、ミル、ナンダ?」
逃げる事は不可能と悟った。