プロローグ
私は、かけていた黒縁眼鏡を外しテーブルの上に静かに置いた。
やっぱり、眼鏡は好きになれない。
何年こいつとともにしているかなんとなく数えてみるが、途中で馬鹿らしくなってきてやめた。
小鼻に指を当てる。眼鏡をかけると、無性にここが痛くなる。
走ればずれるし、温かいものを口にする時なんかレンズが曇るし。
かと言って、コンタクトレンズにしようと思っても、付けることが怖くて1歩踏み出すことができないのだ。
だったら黙って眼鏡を着けてろ、と世間の人々は言うだろう。
それは私も思う。でも、だ。
いくら慕っている友人にだって、嫌な所が1つ、2つくらいあるでしょう?
そういうことなんだよ。人間、不思議な生き物だから。
眼鏡を外すと、必ず視界がぼやける。
これも、眼鏡の嫌いな所だ。
私はぼやけたままの目で時計を探す。
「12時か」
ここは、とても落ち着いた駅前のカフェテリア。
私は今日、ここで人と待ち合わせをしている。
私が会いたくて...訂正。仕方なく会わなければいけない人物と。
だがしかし、私は時間よりも前に着いてしまいこのようにぼーっと、暇を持て余した状態なのだ。
別に楽しみだからじゃあない。
時間に余裕をもって行動しただけ。
店内は多少の話声は聞こえるものの、やはり静かだ。
自然と、眠気が襲ってくる。
私は、いつの間にか眠りにつき、夢をみた。
懐かしい、過去の私たちの夢を。