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第2話 咲き始めた未来

俺は通学時に、地下鉄を利用しており、渋谷駅で乗り換えをしなければならない。

渋谷駅は、まるでアリの巣のように地下に張り巡らされている。

そして、人がなんといっても多い。渋谷駅での1日の平均乗車人員の数はおよそ37万人。世界の乗降客数のランキングでは、渋谷駅はなんと2位なのだ。ちなみに、1〜23位までは日本の駅が独占しているらしい。おそろしいものだ。

朝の通学、通勤ラッシュの時間帯は人身事故がよく起こる。そのため、遅延や運転見合わせなどはもう慣れたものだ。


今日も、どうやら前の駅で人身事故が起きたらしく、俺は渋谷駅で足止めを食らっている。ホームで列に並んでスマホを取り出し、SNSに目を通す。

朝からタイムラインは活発だ。

『今日の古典の課題やってねぇ』『朝から親と喧嘩わず(- -;)』『昨日のドラマ最高だった!』など、様々だ。この待ち時間は、同級生のタイムラインで暇をつぶすくらいしかない。一番怖いのは、電車を待てないサラリーマンが暴れ出してさらに電車が遅れることだ。そのことが毎回微々たる不安だ。


『亮佑:遅刻しそう?』

LINEでいきなりメッセージが来た。どうやら、同級生の亮佑が気にかけてくれてるらしい。いまの時代、どの路線が遅延しているかなどの運行状況はSNSで手にとってわかる時代だ。


尾崎亮佑。高1のとき同じクラスとなり、最初の席で俺の左隣だったことをきっかけに仲が良い。野球部に所属しており、ポジションはキャッチャーだ。野球部の中では時期キャプテンと名が挙がっている。クラスのムードメーカーであり、周りの雰囲気を一瞬で我が物にする才能は本当に尊敬する。身長は188㎝と高く、野球以外のスポーツもなんなくこなせる運動神経抜群野郎だ。ただ成績の方はお世辞にも良いとは言えない。


『多分あと5分後くらいに電車くるからギリ間に合う』


スマホの画面上で親指を滑らせながらすぐに俺は返信する。


『双葉:遅延大丈夫?』


ほぼ同時に俺のことを気にかけてくれてLINEを送ってきてくれたのは、前園双葉。

彼女も1年生の時に席が左隣だったことをきっかけに仲良くなった。身長は158㎝ほどで黒髪ロングストレートが似合う可愛らしい顔立ちをしている。吹奏楽部に所属しており、楽器はフルートを担当している。また、学校の成績も良く、テスト期間になると俺と亮佑はよくお世話になっている。俺と亮佑と双葉の3人は気がつけばいつも一緒にいることが多くなった。2人と一緒にいると落ち着くし、なんでも気兼ねなく話せるため居心地が良い。


『1時限目には間に合うよ』


そう双葉に返信したところで、ホームのアナウンスと共に電車が来た。


案の定、電車の中はいつもより満員だった。遅延のせいで、ホームに溜まった乗客が一気に車両になだれ込んだためである。ガラス越しに次々と通り過ぎていく東京のビル群を横目に俺は扉に押し付けられる感じになり、いまはなんとか車内に収まっている。


『双葉:新しいクラス教えてほしい?( ´ ▽ ` )ノ』


また双葉からLINEがきた。新しいクラスなんてもうすでに把握済みだ。


『また、亮佑と双葉と同じクラスだろ?今年もよろしく♪(´ε` )』


『双葉:え?なんで知ってるの?亮佑から聞いた?』


なんで知ってるってそりゃあ学校の掲示板に張り出されてたからで‥‥‥え?


待てよ。なんで俺が学校の掲示板を見ることができるんだ。新しいクラス分けの紙が張り出されたのはおそらく学校が開く時間の7時頃。その頃、俺はまだ家のベッドにいたはずだ。他の誰かからクラス分けの結果を聞いたわけでもないのに、俺がその情報を入手できるわけがない。


けどなんで知ってる?

なぜ俺は知っているんだ。


だが、変な感じだ。まるでさっき掲示板を直接見た感じがする。

だが、言葉で説明することができない。


俺の目の前に同じように電車の扉に押し付けられるようにしているサラリーマンが新聞紙を小さく折りたたみながらも真剣な顔で記事に目を通している。


俺の方から見えるその新聞紙の記事の見出しにふと目が止まった。


【少子化進む、将来への不安】


将来………未来………


その瞬間、俺の中で不確かで不透明な仮説が生まれた。


未来が、見えているのか…?


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