58、定番 パート1
一矢走雷の使用タイムが長ければ長いほど切れた時の反動がデカいのにも拘らず限界まで使用してしまったため気絶し12時間程眠ってようやく起き上がれるようになった。
起き上がるとマリアとゼルフの姿はなく寝ている部屋は見覚えのない一室だった。
今までの泊まっていた宿とは比べるまでもなく豪華な造りであることから屋敷の一室ではないかと思い至った。
それからすぐ屋敷内が後処理や今後の対応で忙しいらしく多くの人間が屋敷内を右往左往しながら走り回っていて騒がしい音が弥叉のいる部屋まで届いてきた。
ゆっくり眠っているのが申し訳なくなりなんか手伝う事はないかと部屋から出てシャルを探すことにした。
それにあの後どうなったのかも聞いておきたい。
どこにいるか分からないけど取りあえず歩いて回ることにした。
・・・・・・それからしばらくして食事を食べに行っていたマリアとゼルフが部屋へと訪れていた。
そして弥叉がいないことに気づき慌てた様子でマリアが部屋を飛び出すのが目撃された。
(広い・・・)
戦いの中で一階から三階まで行っているはずだがいざ、こうして一人で回ると部屋は多いし廊下長いしで道に迷う。
というか既にもう今いる場所がどこなのか分からなくなっていた。
「ここは書斎か?・・・凄いな、これが異世界の本か。
『魔法使いリュウの悲劇』、『上級魔法とは』、『魔物の使役方法』色々あるな」
気になって一冊取って読んでみようとしたら文字を読む事が出来ずに諦めて本棚に本を戻した。
「まだ名前を読むぐらいしかできないからな。仕方ないか」
部屋を出てまたシャルの捜索を再開した。
すると部屋を出てすぐ、
「おいヤシャ殿じゃないか。もう寝ていなくて平気なのですか?」
「フローウさんもう戦い終わったんですから殿はもうよしてくれよ。あんたのが年上なんでまたこの街の、シャルの隣で宰相をするんだろ?ただの旅人にそんな敬語で話さないで下さい」
「それならヤシャの方も敬語は止めて下さい。貴方は我々の恩人の一人、私も敬語で言われるのは正直・・・」
「分かったよ、フローウ」
それから俺はシャルを探していることと道に迷って現在地が分からないことを言って教えてもらって、今度は行き先が分かった。
そこまでの道順さえわかればこっちのもん。さっさと向かおう。
「あっ!?でも今は行かない方がいい・・・・」
後ろの方でフローウがまだ何か言ったがそこまで気にすることじゃないだろう。
それからさっきの道に迷っていたのが嘘のように部屋まで寄り道無し迷う事なしでシャルがいるという部屋の前まで来ると勢いそのままにノックをするのも忘れて扉を扉を勢いよく開いた。
「シャル、いるか――?」
「っ!?」
扉を開け部屋に入る俺に対して部屋の住人は息を飲むで驚いた表情をしていた。
部屋の住人とはフローウの言っていた通り探していたシャル本人。
本来ならやっと会えたと思うところだがそんなこと考えることはできない。
なぜならシャルの状態が・・・・・着替え途中だったのか下着姿で上着を持って固まっいた。
年頃の女性の張りのある肌に純情そうだから白、かと思いきや下着の色は赤、紅色ではなく緋色の上下セットで、着痩せするタイプだったのか出る所はしっかり出ていて・・・・・
俺は思考停止、身体は膠着して動かない。昔小説なんかでよくあるシチュエーションを見て「あ~何やってんだよ」と覗いた男性を見て常々思っていたがまさか自分が同じ状態になるなんて思ってもみなかった。
そして今まで馬鹿にして本当に申し訳ない。いざ当事者になってみるとどうしていいか分からないわ。
後ろを向く?いやそれより部屋を出るのが先か?だが即謝るの方がいいとも・・・
「・・・・・な!?・・・」
しかし残念ながらタイムリミットまでに俺も最善の選択肢をすることはできずに終わった。
「い、いや―――――――――!!!」
「す、すいませんでした―――――!!!」
悲鳴が屋敷に駆け巡り俺は反射的に謝りながら部屋を飛び出し外に出た。
運がいいのか廊下には誰もいない。
まだ頭は混乱してる、心臓の鼓動が聞こえる。落ち着け俺、この後シャルが着替え終えて入っていい許可が出たら謝り倒して許してもらえばまだ何とかなるはず、
「ヤシャ――?ちょっとこっちでお話ししましょうね?」
――――――――――どうやら俺の命はここで終わりを迎えるらしい。
さっきまで確かに廊下には誰もいなかったはずなのに俺の後ろに修羅を纏ったマリアとその肩に乗ってガクガク震えているゼルフが見えて、
それから俺はもう二度とこんなことをしないと心に誓うほどの恐怖を味わう事となった。
・・・・・フラグじゃないぞ!
◇ ◆ ◇
そんな弥叉の地獄の三丁目行きが決まったのをシャルゼルフ以外に二人、息を潜めて見守っている者がいた。
「ヤシャ様のピンチだよ。助けないと」
「駄目だよ、ハク。相手はマリア様だし今のはどう見てもヤシャ様の方に非があるから出て行っても何も変わらない。逆に巻き込まれるだけだよ」
そうしている間に視界にとらえていた弥叉は首元を掴まれて引き摺られながら自分達とは反対方向へと連れてかれて行った。
出るタイミングもなくなりハクも助けるのを諦めた様で腰が上がっていた体勢から元に戻した。
ホムラとハクは弥叉が倒れた後、兵士に取り囲まれたが最後に「二人の所為じゃない」と言った弥叉の言葉を聞いた兵はその時の弥叉の鬼気迫るような表情で放った訴えを「二人は関係ない。手を出すな」とある意味正しい解釈をしたため監視はあったが危害は加えられることはなくシャルが戻ってきた後弥叉に何を言われたのか聞かれてそのまま答えたら、
「それなら解放していいわ」
と、その場で解放された。
解放されてからは倒れた弥叉の事が気になってずっと秘かに待機していたのだが出よう出ようと思っているのに一歩が出せず結局先程の騒ぎになり出ることが出来なかった。
「これからどうするの?」
「ヤシャ様は私達に主人のいない生活を、自分たちで考えて生活しながら世界を旅して世界観を広げてから戻ってきなさいと言っていた」
「なら次会う時までにもっとヤシャ様のお役に立てるようになって戻ってくれば喜んでくれるってことだよね?」
「そうだ!ヤシャ様は冒険者?っていうのになったって言ってたから、それになって旅をしながら功績を上げて手土産に持っていくのはどう?」
「それいい。なら早速冒険者・・・・・この街じゃできないからヤシャ様とは逆方向の一番近い魔族ギルドに行こう」
決めるや否や二人は即行動に移ってその場から姿を消した。
そして街で目撃されることはなく門を通過して街を出て行った。
現在怒られ中の弥叉がそのことを知ることはない。
ついでにいつの間にかホムラとハクの主人としての契約を結ばれていたことを知ることも今は知る由もないのであった。




