92、高位魔法具
久しぶりの投稿です。
「それでどうして兵士がいる場所が分かったの?」
人目を避けて身を潜め、人気の少ないくらい裏路地を走りながら目的地に向かって弥叉が先導して移動していた。
「説明いるか?」
「「「「いる(いります)(いるよ)」」」」
目的地も確信に至った理由もまだ説明していないかった。
面倒くs・・・説明しなくても分かってくれると思って流していたがそういう訳にはいかないようだ。
「これから向かう場所は貴族保護を目的とした要塞?に行く」
「要塞じゃなくて貴族の避難所だよ」
「戦闘しない貴族用で用意されたあれですか。確かに100や200は入れられますね」
「確信もあるぞ。こいつだ」
そう言って弥叉はアイテムボックスからシノが見つけて取りあえず持ってきた道具を取り出した。
見つけた時の様な禍々しいオーラは消えている。
「それは?」
「これは”封印されし者”っていう装置で高位魔法具みたいなんだ」
高位魔法具は四人は興味が湧いたのか装置に視線が集中した。
見た目ただの丸いだけなので驚くのも無理はない。
「気持ちは分かるが前を向け危ないぞ。それにこれだけで高位魔族を無力化はできないからな」
食料庫からの撤退後に見た鑑定結果がこれ。
『封印されし者』・・・本体とこの装置を含む4つの装置を配置することで機動させる事ができる装置の一つ。起動後本体の起動停止か二つ以上の停止で起動が停止する。高級素材で作られた高位魔法具で単体でもかなりの価値がある。
「四つの装置と連動するタイプの魔法具ですか。効果は本体を見ないと分からないんですね」
「あぁ、でも俺はこれが相手の切り札な気がするんだ」
「それでこれが何で避難所に繋がるんですか?」
シノはまだピンと来てない様だ。
イヨとスーは分かっているみたいでコロルは分かってますよって顔でいるがこれは分かっていないだろ。
「今回相手の貴族が占領した場所と拠点となる屋敷。屋敷はここから東、宝物庫が更に東にあって武器庫がここから北側にある」
「最後に食料庫が南側にあるから」
「あぁ!避難所入れれば屋敷を中心に綺麗に四方向になってますね!」
声を出したのは分かった顔してたコロル。やっぱし分かっていなかったのか。
シノも合点がいったようで頷いている。
全員が理解した所で一般人ではなさそうな者が視界に入り、手を上げて足を止めた。
その動作に合わせ後ろも止まり俺の視線の先にいるのが兵士だろうと意見が一致し路地を曲がって迂回してやり過ごしながら進んでいく。
「どうやら当たりらしいな」
「そうですね。ここから先は兵士が多いですし」
上手く隠れながら避難所を目指したが最初の兵士を見てから避難所の周りを囲むように兵士が配置されており見つからずに進むには限界に思えた。
「どうしますか?もう隠れて潜入とはいきませんよ」
「食料庫みたいに崖で死角ができてたりしないからこの辺が限界だと私も思う」
「今考えてる」
一回りして警備が均一に配備されているようだからこれ以上は隠れてのルートは無さそう。
しかしここから強攻するのは無理だ・・・・・だからこそ何か案が必要なんだが。
「・・・・・この距離だとな」
「・・・・・戻りますか?」
「え?」
「ここが捕虜になっている可能性が高いという情報を領主側の兵に伝えて数をそろえてから再度狙う。それか魔法具が不安でしたら他の場所を狙ってもいいんです。ここに拘らずとも戻っても問題はないと思います」
イヨの意見は実に的を射ている意見だ。
「・・・・・」
「それとも何かここに拘る必要が?」
「いや、そういう訳じゃないんだ。だけど・・・」
だけど戻るという案に賛成できない自分がいた。
「さっきの魔法具が切り札じゃないかって言ったよな」
「はい」
「この戦いはラセスが対象であり最大の難敵なんだ。そのラセスに勝たなければならない戦いでラセスを倒す算段が付いてない訳がない」
「それがこれだと」
「確信はないがもしそうなら既に起動している今戻っている時間はないんじゃないかって思ってな。・・・安全が一番なのに無茶なこと言ってるな」
幾らなんでも確信がないのに四人を危険な目に遭わせる訳にもいかないよな。
「いいんじゃない」
「そうですね。ここまで来て危険だから引き返すのは」
「腰抜けですね」
「そうそう」
「え?」
「はぁ、あなた達も大分ヤシャさんに染まってますね。前ならここは戻る所でしょう。まぁ私もこのままこっちを狙う事に賛成ですけど」
え~と、どういう事?
「危険だよ?危ないよ?いいの?ここから先は保証しかねるんだけど」
「私達からしたら食料庫も同じ感じでしたよ?」
「むしろここで戻らないのがヤシャさんだろうなぁ~って戻るって案を聞いて真っ先に思いつきましたよ」
「なんでヤシャさんが逆に止めに入っているんですか。私達は全然OKですよ」
三者三様に言われ笑われると逆に心配したこっちが恥ずかしくなってきた。
「それじゃあ無理はしない程度にできる限り隠れて進んでみて、それで駄目なら他に移動する。・・・でいいのか?」
「ここまで来たらとことんついて行きますよ」
「そうです」
死にに行きたいわけではない。無理なら無理で割り切って感情抜きで他に移ろう。
「・・・・・ねぇ、みんな」
「どうしたの、スー」
「なんか周りの兵が騒がしくなった」
「「「え?」」」
スーに言われて見てみると配置された兵士とは別に新しい兵士が慌てたようにやって来た。
そして何か言いながらある方向を指さしている。
気になり俺達もそちらを向くと距離の離れた街の反対側で煙が上がっていた。
方向からして東側だから屋敷からかと思ったが距離が離れすぎている。その先と言うと、
「宝物庫が襲撃された?」
「ああ・・・そういうことだよな」
弥叉達は知らない事だが現在の宝物庫周辺は大人数による乱戦になっていた。
片方は守備として配備されていた兵士でもう片方は当然領主の兵・・・ではなくこの街にいた盗賊やお尋ね者の犯罪者たちであった。
この機に宝物を盗もうと思った者達が集まって襲っているのである。
その数は意外と多く、配備されていた兵を軽く超える数が集結していて兵士側は造園を呼ばざる負えない状況に陥っていたのである。
「どうやら宝物庫で戦いになっているみたいだな」
「真っ先に宝物庫を狙うって何を考えているんでしょう」
「イヨ、私達も人のこと言えない」
「それよりどうしますか?私達も加勢に行きます?」
スーの突っ込みにイヨは無反応でスルーして受け流した。
そんな二人を横目に再び慌てていた兵士を見る。未だに慌てた様子は変わらず何やら話をして二人ともその場からいなくなっていた。
「このまま避難所の潜入を続けよう。・・・すでにここまで見えるだけの煙を上げている戦いにここから向かってもどう頑張っても間に合わない」
ここから宝物庫までの距離もだが間に屋敷を挟む事も考えると迂回するにしても突っ切るにしても時間が掛かるだろう。なら幸い向こうの戦いが激しいおかげでこちらの警備も慌ただしく動き出している今が潜入する好機に思えた。
「みんなはどう思う?」
「少し綻んでいますね」
「私もそう思います」
「兵達の動きが浮足だってますからさっきよりも潜入しやすくなった」
「急げば大丈夫な気がするよ」
全員が賛成して意見が纏まった。
シノが言うように急がないとすぐにまた警備が再編されてしまう。
「よし、それじゃあ行こう!」
◇ ◆ ◇
「ふう、これで何人目だったかしら?流石に戦闘狂の様に戦闘しただけ元気になるよう鬼種と違って身体にきますわね。私ももう少し動かないとダメかしら?」
気絶したこのフロアの相手だった男を踏みつけながらラセスは自分の身体が久しぶりの激しい運動の反動で来る筋肉の軋みに普段事務仕事に追われて昔ほど運動していないのを痛感していた。
足元には踏んでいる男の他にも二桁いく人数がある者は気絶しある者は四肢を折られて、ある者は麻痺していたがラセスの視界にはもうただのゴミとしか映っていない。
「?・・・あれって宝物庫の方よね?・・・・あぁ、なんか頭痛の種を見た気がしますわ。いつでも対処できるからと放っておくべきではありませんわね」
血生臭さも立ち込める部屋にいるが次の部屋に行くとまたすぐ戦いになるか分からないので気分転換に見た窓からの街の景色。
その景色は東側だったらしく窓からは高々と上がる煙が見えていた。
そして今の兵士の量とここに来るまでに集まっていた兵士の数を比較すると宝物庫なんかで戦う余力があるわけがないからと言う思考を経て野盗や犯罪者連中が金目の物を盗んでいるんだなと言う結論に至り額に手をついて頭を振る動作をする。
「予想はできた事だけど後処理するのは私なんですのよ。・・・どうせなら武器庫を襲ってほしかったですわ」
武器類は在庫の資料があるから回収が楽なのだが宝物類は他の領の献上品や担保なんかで所有者の数が多いので盗まれると回収がしにくいだけでなく所有者の文句も対応しないといけない。
中には面倒な部類の相手もしないといけないと考えただけ頭痛が一割増で強くなった気がした。
「それもこれもあの馬鹿貴族共がこんな戦いを仕掛けるからですわ。・・・しっかり落とし前を付けてあげませんとね」
そういったラセスは休憩を終え、踏んでいた男を蹴り飛ばして次の部屋に続く扉へと入っていくのだった。
◇ ◆ ◇
「ヤシャさん後はここをまっすぐ進めばいいだけです」
「何とかここまでこれたな」
宝物庫の襲撃で他の所から援軍を寄越さなくてはいけなくなり兵の移動を余儀なくされたようで、この機に便乗して俺達は避難所の内部の残りの直線道の前まで辿り着いた。
「その気になれば来れるものですね」
「私もっと前の段階で乱戦を覚悟してました」
「それは戦う前に撤退したかもな。・・・それはそれとしてだ」
直線道前までは無事来れたが当然ながらその直線道の前には見張りが立っている。人数は二人だが見つかった瞬間に仲間を呼ばれるのは必然だろう。そうなれば集まってきた多くの兵士と相手をしなければならなくなる。
迂回ルートが存在しないので隠れてやり過ごすのは出来そうにない。
戦うほかないんだよな。
「あの二人をどうするか・・・」
「?、何を言っているんです」
「はい、もうここまで来たら隠れる必要ありません」
「サクッとやっちゃいましょう」
「・・・だいじょうぶか?」
「当たり前です。戦う覚悟はすでにできていますよ」
四人を見回すと躊躇していたのはどうやら自分だけであったらしい。
「ではコロル、シノ、スー。あの二人の相手をした後は一本道に入り足止めを頼みます。その間に私とヤシャさんとで捕虜となっている兵士の開放をします」
「「「了解」」」
「不利になりそうなら後退してもいい。無理せず時間稼ぎだけしてくれ」
「わかりました。行くよ二人とも!」
そうして俺とイヨを残して三人がその場から飛び出して行く。飛び出すと同時に二人の見張りのうちの一人の方がこちらに気づいたようだ。
「貴様ら何者だ!どうやってここまでは言って・・・」
「死んで下さい」
「ぐっ・・・がぁ!?」
「な・・・」
「貴方も死んでね」
「くそが!」
電光石火の早業で動揺する一人を片付けたが二人目の呼子は止められなかった。しかしその男もすぐに無力化する。
何度も狩りで見ていたが改めて見ると三人の技術の高さに思わず見入ってしまった。
「ヤシャさん今のうちに向かいますよ!」
「そうだな。見とれてないでさっさと行こう」
「ええ」
守る者がいなくなった一本道に入る際三人にここは任せたと言って走り抜けていく。
一本道には兵は配備されていなかったようで何の障害もなくその先の開いた場所へと到着した。
感想で誤字脱字が多いという意見があったのですがなかなか気がつかないもの、特に合っていると思っている漢字の誤字は改善しにくくあるので教えてもらえると助かります。また厳しい感想の中に自分の思い通りにキャラクターを捉えてくれていました。
読者の皆様にこちらの伝えたいことが伝わっているのか分からないのでこういった感想でどんどん伝えてもらいたいです。
次回もまた時間が掛かるかと思いますがこれからもよろしくお願いします。