第三話「歴史は繰り返されるわけないと豪語する奴ほど繰り返す」
第五章
次に目が覚めたのは驚いたことに学校の保健室のベッドの上だった。
清潔的な綺麗な白の壁、天井そんな周りのもの全てが私を冷静にさせてくれる
そしてそんな冷静な頭で考える。たしかこの前・・・。
そして、今おかれている状況を確認した時点で冷静でいた私の頭は混乱に陥った。
ベッドのすぐ横に人影が見えた。その人は黒く長い髪があり、白いセーラー服を来ているのに全体的に黒い。
そう、呪いの女の子だ。
「ウォオオアアアアアアアッッッ!!」
驚いた私は勢いよくベッドを転げ落ちた。
「だっ、大丈夫ですか!?」
私より血だらけのあんたの事心配しろよ!
顔が常時血だらけの彼女に心配されたところで何もうれしくない。
そんなツッコミも彼女に届くわけもない。
私は再び冷静になりベッドに腰掛ける。
そして呪いの女の子に声をかける。
「あなた、あの噂の呪いの女の子だよね?」
「はい!そうです!」
ニコッと可愛いんだけど可愛くない笑顔で自信満々に返事を返す。
「あの、この前はすみませんでした。私の説明が足らないばかりに驚かせちゃって・・・」
突然暗い顔をし謝ってくる。
「いや、大丈夫だよ。私にも非があるわけだし」
「"ひがある"???」
さすがにこの言葉は小学生には難しすぎたか。
「じ、じゃあおあいこだね」
と、手を差し伸べてくる呪いの女の子。これは、あくしゅするべきなのだろうか、いや、そもそも握れないじゃん。
あっ、と気づいたのか手を引く。
「ごめんなさい、手を出して」
指示通り手を差し出す。すると彼女はその私の手を握り返す。
どうやら、あちらからは握れるようだ。
その小さな手は少し冷たく、死人を思わせる感覚だった。
「で、本題なんだけど・・・」
?、と首を傾げる。
「なんであなた私と友達なんて、私無愛想でいいイメージないでしょ」
そう言うと呪いの女の子は少しうつむく。
「私、こんな存在感ないデータだからみんな気づいてくれなくて、でもあなたが少年といるところを見てすごく元気で羨ましくて・・・それでそんなあなたの友達になれたらいいなって思って」
うっすらと目尻に涙をためつつ言う呪いの女の子はまるで友達を作るのが苦手な少女のよう。
それでっあのっ、と続けようとした呪いの女の子の頬を叩こうとする。もちろんのことすり抜ける。
「馬鹿なのあなた?あんな回りくどいことしなくても友達にくらいならなってあげるわよ」
少し赤面していたかもしれない。顔が少し熱い。
そんな顔を隠そうと思い横を向いた。
と、そこにいたのは少年だった。扉を少し開けてこちらをのぞき見ていた。
「あなた、なにやってるの」と声をかけると体をビクッとさせたのち、ゆっくりと扉をあけた。
「いやぁ、一人でボソボソと喋ってるさまがおかしくって」
クスクスとバカにするように笑う少年は少し笑った後冷静な顔になり、呪いの女の子のいるあたりを見た。
「そこにいるんですよね、呪いの女の子さん。久美子さんとお友達になってもらいありがとうございます」
深々と頭を下げる少年。
そのへんにあった紙にマジックでどういたしまして、と書き少年に見せる呪いの女の子。
そのやりとりが何故かすごく恥ずかしく思えてきていた私。
ここで、人間世界から来た少女、呪いの女の子と呼ばれるバグデータ、正体不明の少年という不思議なコンビができた。
第六章
「え、部活動?」
この世界に来てから二週間くらい、ほとんど進展なしで無駄な時間が過ぎていった。
そんな私に少年は提案してくる。
「そうです、部活道をすればもっとお友達が増えるんじゃないかって思ったんです」
「あのね私はそんなことをしてる暇はないの。早くこの世界から出て社会復帰しないといけないの」
いつものように数学の教科書を読み漁る私に部活道をすすめるなんて。
「友達が増えたらさらに情報が増えると思うんですよ」
「え?」
思わず顔をあげてしまったがこんなの少年の作戦に決まっている。
「その手には乗らないわよ」
「まあまあそんな照れずに、さっ、行きましょ!」
と、無理やり手を引っ張られ校門前の掲示板へ連れていかれる。
いつも見える校門を抜けてすぐの学校。校舎への道をしばらく歩いて右側にある掲示板。そこにはたくさんの部活や委員会のポスターが貼られていた。
「じゃあどこに入りますか?サッカー?ソフトボール?バレー?」
ワクワクしているのか目を輝かせて掲示板をみつめる少年を横に私も少し探してみる。
「いつ私が部活に入るって言ったのよ、それに私運動は得意じゃないの」
「う~ん、そうですか。じゃあ文化部ですかね」
文化部のポスターの一群には科学部や文芸部、美術部などよくある部活のポスターがズラっと並んでいた。
しばらく見ていると私はひとつのポスターに目が止まった。ゲーム研究会である。現実世界ではほとんど見ることのないゲーム研究会、私の得意分野であるゲームプレイやプログラムが活かせる部活、かつ私も楽しめる部活。
「ここにするわ!」
「え、ゲーム研究会ですか?」
少し嫌そうな顔をする少年を丸無視して私は部室棟へ走り出す。
第七章
ゲーム研究会の部室は部室棟の最上階、四階の一番端にある。
その扉は他と比べてボロく、何故かここだけ木製である。
「ゲーム研究会よね?なぜこんなアナログなのかしら」
「いや、もしかしたら経費削減じゃないですか?w」
なるほど、と納得した私はさっそくノックする。静かに廊下に響き渡るノック音。ホントに静かだ。もう一度やってみる。変わらず静寂は続く。
あまりにも静かなので扉を開けて部屋の中を見てみた。そこにあったのは中学生くらいの男の遺体だった。
「キャァアアアアアアア!!!!!!」
「どっ、どうしたんですか!珍しく女の子らしい叫び声なんかあげて・・・!って、あなたですか・・・」
呆れた顔で少年は男の遺体へと近づく。
「珍しく」、に関していろいろと少年に質問したいが私にそんな心の余裕はなかった。
「なっ、あなた!その人の知り合いなの!?」
「えぇ、この人はハラダ。あなたと同じ、こっち側に連れてこられた人間ですよ、後安心してください、死んではいませんから」
しばらく目をパチクリさせて私は立ち上がる。
「私と同じこっちに連れてこられた人間?私の他にもいたの!?」
「はい、あなたが気づいていないだけでこの学校にはそういうやからはごまんといますよ?」
私がしばらく沈黙している間、少年はハラダというおとこを揺すり起こす。
「ハラダさん僕です!起きてください!」
少年がこれを言い終わるより早くハラダさんは立ち上がる。
「ハラダトシユキ!!サンンンッッジョウッッ!!!!」
ハラダさんはメガネで金のストリートパーマ、よくある学ランに黒マントをはおり、ドクロの指輪をしていた。
典型的な中二病である。
「我がゲーム研究会に入部しようとは、なかなか度胸のあるものと見える。貴様、いったいなにものだ」
正直に答える。
「わ、わたしはクミk・・・」
「いや、言わなくてもわかる。貴様、マスターフレアだろ。私に挑んでくる者など他にあるまい」
ダメだこの人。めんどくさい。
「ハラダさん、いい加減中二病やめたらどうです?」
「私の生き様を否定しようなど一億と二千年早いわ」
「・・・ッ、はあ、まあいいです。この人は大澤久美子さん。あなたと同じ、現実世界から来た人です」
ピクッとハラダさんの体が動く。
瞬間、彼は私の目前まで近づき、私のアゴをクイッとあげてみせる。
「貴様が現実世界から来たホモサピエンスだとでもいうのか」
しばらくの沈黙、ハラダさんは私のアゴに当てていた手を離し、そのまま自分の顔全体を覆った。
「いいだろう、貴様のこのグルーヴへの入部を許可しよう」
何が起こったか突然でわからなかったが、私はいつの間にか入部させられたようだ。